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甲状腺で認知症?[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 甲状腺機能低下症 バセドウ病 甲状腺機能亢進症 エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など)  糖尿病編 をクリックください

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。認知症自体の診療を行っておりません。また、認知症の患者に対応できる体制ではありません。

甲状腺の病気や亜鉛欠乏症が原因の治る認知症

日本の認知症患者数は2012年で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人です。

認知症の予備群「軽度認知障害(MCI)約400万人を合わて、高齢者の約4人に1人です。

厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年度版)によると、介護が必要になる原因の第一位(16.6%)を占めます。[2位が脳血管疾患(脳卒中)、3位が転倒・骨折]

その中には、一部、甲状腺の病気亜鉛欠乏症が原因の「治る認知症」が含まれています。

Summary

甲状腺機能低下症は脳の活動も緩慢になり、せん妄、幻覚、幻視なども起こりうるため、うつ病や認知症と間違われる。甲状腺機能低下症自体が認知症の危険因子か議論があり。甲状腺機能亢進症は認知症リスクを増大させる報告が多い。甲状腺機能低下症の徐脈はアリセプト®(ドネペジル)・レミニール®(ガランタミン)・リバスタッチ®(リバスチグミンで悪化。高齢者の甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺クリーゼでは妄想・幻視・夜間せん妄など認知症状が増悪。重症筋無力症合併で認知症のように。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬は精神症状・認知症様症状を悪化。

Keywords

甲状腺,認知症,ベンゾジアゼピン,甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,せん妄,甲状腺クリーゼ,ドネペジル

甲状腺機能低下症で認知症

甲状腺機能低下症では脳の活動も緩慢になり、思考力低下・記憶障害が起きるため、うつ病や認知症と間違われるケースがよくあります(仮性認知症)。また、脳内の神経伝達物質への影響からパーキンソン症状をおこすことがあり、パーキンソン自体の仮性認知症も加わります。

ただし、甲状腺機能低下症自体が認知症を発症させる危険因子になるのか議論があるところです。甲状腺機能亢進症は認知症のリスクを増大させるとの報告が多いです。(甲状腺ホルモンと認知症の関係

甲状腺機能低下症で認知症

甲状腺機能低下症で、せん妄、幻覚をおこす事も

甲状腺機能低下症では脳の活動が緩慢になるだけでなく、せん妄、幻覚、幻視などの本当の認知症と区別できない症状をおこす事もあります(甲状腺と本当の認知症との比較)[Cureus. 2020 Aug 28;12(8):e10100.][J Psychiatr Pract. 2020 Sep;26(5):417-422.]。例えば、夜、誰もいないのに誰かを激しく叱っているところを家族が目撃したなどの事例があります(まさか、この世に在らざる者が見えていたとでも言うのだろうか)。幻聴は高度な聴覚ー言語の脳活動が必要なので、認知機能低下状態では起こり難い。

原因として、

  1. 甲状腺ホルモン低下そのものによる脳神経細胞の代謝異常、神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニン、GABA)受容体の変化(甲状腺機能低下症の精神障害 )(Ment Illn. 2016 Nov 23;8(2):6787.)(Rev Venez Endocrinol Metab 2014;12:4-11.)
  2. 橋本脳症
  3. 粘液水腫性昏睡(J Am Osteopath Assoc. 2017 Jan 1;117(1):50-54.)

が考えられます。

また、甲状腺機能低下症の治療薬である甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン、日本ではチラーヂンS)を突然中止して、せん妄、見当識障害、記憶障害、言語障害を起こした報告があります。[Ment Illn. 2016 Nov 23;8(2):6787.]

甲状腺機能低下症/橋本病を間違えてアルツハイマー型認知症の治療をしたら大変なことに!?

甲状腺機能低下症/橋本病を間違えてアルツハイマー型認知症の治療をしたら大変なことになります。

アリセプト®(ドネペジル)・レミニール®(ガランタミン)・リバスタッチ®(リバスチグミン)は、アルツハイマー型認知症/レビー小体型認知症の進行を遅らせる最も一般的な抗認知症薬です。これらは、アセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)を阻害するため、アセチルコリンが過剰になると、洞停止(心臓のリズムが止まる事)・徐脈・心臓ブロック(心筋の電気刺激の伝導が妨げられること)などの副作用がおきます。甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの心臓刺激作用が弱くなるため、徐脈・心臓ブロックを起こしやすい状態です。アリセプト®(ドネペジル)・レミニール®(ガランタミン)・リバスタッチ®(リバスチグミン)の相乗効果で、これらが更に悪化します。

認知症と間違えられる高齢者の甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺クリーゼ

高齢者の甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺クリーゼでは、

  1. 妄想・幻視(幻覚)・夜間せん妄などの精神神経症状が増悪する
  2. 中枢神経症状として妄想・幻視(幻覚)・夜間せん妄などの認知症状がおこる

ため、認知症の発症・増悪と間違えられることがあります)(高齢者甲状腺クリーゼ)。(Eur J Endocrinol. 2000 May;142(5):438-44.)(Curr Neurol Neurosci Rep. 2021 Mar 11;21(5):21.)

また、潜在性甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも、物盗られ妄想をおこした症例が報告されています。(第55回 日本甲状腺学会 P0-01-05 精神症状を主徴としたバセドウ病の4例)

さらに、顕在性、潜在性を問わず甲状腺機能亢進症/バセドウ病自体が本当の認知症を発症する危険因子となります(Neurobiol Aging. 2009 Apr; 30(4):600-6.)(J Clin Endocrinol Metab. 2012 Dec; 97(12):E2230-7.)(Clin Endocrinol (Oxf). 2000 Dec;53(6):733-7.)。その理由は解明されていませんが、筆者は脳血管内皮障害が原因と考えています(甲状腺機能亢進症/バセドウ病で脳梗塞)。

原発性副甲状腺機能亢進症、ビタミンD中毒、サルコイドーシスなど高カルシウム血症で、中枢神経症状おこり、軽い意識障害を認知症と間違えることがあります。

重症筋無力症の併発

自己免疫性甲状腺疾患の橋本病/バセドウ病に、同じく筋肉への抗アセチルコリン受容体抗体を持つ重症筋無力症を合併することがあります。全身の筋力低下、易疲労性(夕方・入浴後に症状が憎悪)が現れ、ぼおっとして、あたかも認知症のようになります。甲状腺眼症(橋本病眼症/バセドウ病眼症)のような眼瞼下垂、複視など見られます。

甲状腺機能低下症の喉頭浮腫/心のう液貯留甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺クリーゼの心不全ような呼吸困難(重症筋無力症では呼吸筋麻痺による)

球症状(嚥下・構音障害)は、筋無力症性クリーゼという危険な状態で血漿交換・ステロイドパルスを行います。(巨大甲状腺腫・甲状腺癌の様)

詳しくは、 重症筋無力症とは を御覧下さい。

抗アセチルコリン受容体抗体(全身型の80%・眼筋型の50%に陽性)/ 抗筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)抗体(前者陰性の場合)測定

薬剤誘発性認知症:ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬、抗コリン剤で認知症

  1. ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬[サイレース®、ロヒプノール®、トリアゾラム(ハルシオン®)]は、もうろう状態・健忘・精神錯乱をおこし、認知症様症状を悪化させる事があります。甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症のうつ症状・不眠に投与すると、それらの精神症状・認知症様症状を悪化させる危険があります。
    ベンゾジアゼピン系薬剤の鎮静解除、呼吸抑制の解除にはベンゾジアゼピン拮抗薬のフルマゼニル投与。
     
  2. 抗コリン薬(三環系抗うつ薬,抗ヒスタミン薬,抗精神病薬):甲状腺機能低下症をうつと誤認し、これら抗コリン薬を投与すると、精神症状・認知症様症状が悪化する危険があります。
    また、抗コリン剤を継続使用している高齢者の8割に軽度認知障害を認める報告があります。

甲状腺ホルモンと認知症の関係

  1. 甲状腺の病気のない正常な高齢男性で、甲状腺ホルモンのFT4[遊離サイロキシン(チロキシン)]濃度が正常範囲の高い目の人は、認知症になりやすいとの報告があります。理由は全く不明、真偽も不明。
  2. 女性で甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度が高いか低い場合、アルツハイマー病リスクが2倍以上になるとのフラミンガム研究データが出ています。やはり血管障害か?

  3. ロッテルダムスタディーでは、MRIでのみ異常が認められ特に治療を必要としない脳血管障害(脳虚血性変化)と甲状腺機能は無関係。甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度が低い程、(脳虚血性変化とは無関係に)認知症のリスクが高くなる。(J Endocrinol Metab. 2019 Aug;9(4):82-89.)

  4. 潜在性甲状腺機能亢進症は認知症の危険因子だが、潜在性甲状腺機能低下症は危険因子にならない(J Clin Endocrinol Metab. 2016 Dec;101(12):4945-4954.)。

  5. デンマーク全国患者登録(DNPR)コホートおよびOPENTHYROレジストリコホートによると、バセドウ病であれ、中毒性結節性甲状腺腫であれ甲状腺機能亢進症の患者は、アルツハイマー病脳血管性認知症になるリスクが高いとの結果です。[Thyroid. 2020 May;30(5):672-680.]

  6. 甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症の患者を最長27年経過を観た報告では、
    甲状腺機能低下症は治療により甲状腺機能正常の状態が維持されれば認知症のリスクは低下
    甲状腺機能亢進症は(特にFT4が高い程)治療により甲状腺機能正常の状態が維持されても認知症のリスクは増加(J Endocrinol Metab. 2019 Aug;9(4):82-89.)

甲状腺と本当の認知症との比較

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

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大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

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