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甲状腺と高体温・低体温[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学大学院医学研究科(現、大阪公立大学大学院医学研究科) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。高体温・低体温症自体の治療を行っておりません。

低体温・高体温は甲状腺の病気?:瞬間体温計サーモピッパー

Summary

バセドウ病/甲状腺機能亢進症、甲状腺中毒症、甲状腺クリーゼは過剰な新陳代謝で熱発生し高体温。甲状腺機能低下症、粘液水腫性昏睡、下垂体機能低下症・副腎機能低下症、低血糖、低栄養は低体温。抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)無顆粒球症、薬剤熱、薬剤過敏症も高体温。低体温症は急速に進行、気付いた時は行動不能。軽度低体温は震え、歩行障害、ろれつが回らない、意識障害(不穏状態)。中等度低体温は震えも消失、歩行不能、頻呼吸、錯乱状態、不整脈。高度低体温(28℃以下)は筋硬直、意識消失、心室細動[J波(Osborn波)]で死亡の危険。

Keywords

バセドウ病,甲状腺機能亢進症,甲状腺中毒症,甲状腺クリーゼ,高体温,甲状腺機能低下症,粘液水腫性昏睡,低体温,心室細動,J波

低体温は本来35℃未満でしたが、最近は35℃台も低体温になります。デジタル体温計、特に実測式でない予測式体温計は、高体温では比較的正確ですが、低体温下では不正確です。逆に昔の水銀式体温計は、時間は掛かるが正確な測定値になります。

長崎甲状腺クリニック(大阪)で使用している瞬間体温計サーモピッパーは、サーモグラフィーの簡易版で、瞬時に正確な体温を測定できます。

体温は、

  1. 計測する部位
  2. 時間帯
  3. 月経(生理)周期
  4. 運動前後
  5. 食事前後
  6. 精神的ストレス

などで変動するため注意を要します。

甲状腺ホルモンと体温異常

瞬間体温測定器サーモピッパー

甲状腺ホルモンが多くて体の新陳代謝が活発になり過ぎると、過剰な熱が発生し体温が上昇します。逆に甲状腺ホルモンが少な過ぎると、熱が産生されず体温が低下します。

即ち、甲状腺機能亢進症なら高体温甲状腺機能低下症なら低体温になりやすいと言えます。[Clinical Methods: The History, Physical, and Laboratory Examinations. 3rd edition. Boston: Butterworths; 1990. Chapter 135.][Pol Arch Intern Med. 2019 Aug 29;129(7-8):526-534.]

バセドウ病/甲状腺機能亢進症甲状腺中毒症甲状腺クリーゼ、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の副作用で無顆粒球症薬剤誘発性過敏症薬剤熱が起こった時は高体温に。

真夏に甲状腺機能亢進症甲状腺中毒症状態にあると、内部の熱産生増加・発汗過多による脱水から熱中症になりやすいと言えます。40℃以上・意識を失う程(Ⅲ度)の熱中症では微温湯噴霧・冷たい生食大量輸液し39~38℃まで冷却します。詳しくは、 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症 を御覧ください。

甲状腺機能低下症粘液水腫性昏睡では低体温:例えば(心筋梗塞などによる)心原性ショックでは、33℃24時間の低体温療法を行いますので、33℃位では、さほど問題ないようです。また、低体温療法の限界は32℃とされます。

偶発性低体温症 

低体温症

甲状腺機能低下症では低体温症になりやすく、特に

  1. 体温を失い易い高齢者;筋肉量が減少し、新陳代謝が低下
  2. 運動不足で筋肉量が減少した人、サルコペニア
  3. 肺炎や感染症で衰弱した状態、低栄養状態
  4. アルコール過飲、脳血管障害、パーキンソン病など自律神経障害で体温調節機能が低下した状態
  5. マラソンなど寒冷時の過酷な環境(強風、雨風、雪)
  6. 冬山登山、甘く見た夏山登山[汗冷え+強風+急な天候悪化(気温低下・雨・風)]
  7. 夏でも川、海のレジャーで水中に入る場合(流れがあるので体温を奪われやすい)(写真;Greenfieldより)
    ※服のまま溺れた時は、①仰向けになる、②あるいは顔だけ水面から出す、③靴は水に浮くため脱がない、を守って救助を待ちます。
  8. 台風など激しい雨風での屋外作業

が危ないです。偶発性低体温症甲状腺機能低下症粘液水腫性昏睡以外、内分泌疾患(下垂体機能低下症副腎皮質機能低下症)、低血糖症、低栄養などでおこります。

低体温症の症状は、急速に進行します。おかしいと気付いた時には、行動不能になっています。

  1. 軽度低体温(35~32℃);代償性に体温を上げるための震え。歩行障害、ろれつが回らない、意識障害(おかしな事を言う、不穏状態)。
  2. 中等度低体温(32~28℃);震えも消失。歩行不能、頻呼吸、意識障害さらに増悪し錯乱状態、不整脈
  3. 高度低体温(28℃以下) ;筋硬直。意識消失、心室細動で死亡する危険。

体温が30℃以下になると、心臓の筋肉が刺激されやすく、体を動かすだけで心室細動→突然死が起こります。そのため、中等度-高度低体温(32℃以下)が予想される症状(歩行不能、四肢体幹の筋の硬直、錯乱状態、傾眠)なら、ゆっくり屋内に移動させ、濡れた衣服を丁寧に脱がせ、毛布などで保温。

J波(Osborn波)

心電図では徐脈、Brugada症候群でもみられるJ波(Osborn波)から心室細動に至ります。

J波症候群は、低体温症、Brugada症候群だけではありません。逆に甲状腺中毒症の交感神経刺激、交感神経破壊を伴う頸部根治手術後(頚部に広範囲に浸潤した甲状腺癌の手術)でも早期再分極による心室細動として起こります(第58回 日本甲状腺学会 P2-7-6 破壊性甲状腺炎による甲状腺中毒症とJ波症候群を伴った心肺停止の1例)。

ST上昇型の早期再分極

ST上昇型の早期再分極(J波の出現)はアスリートが多く、V1-V3でJ波を伴うRsr'型ST上昇を認める。Ⅱ誘導でSTが平坦ないしは下降型の場合は予後が悪くBrugada症候群が含まれます。(Circulation. 2011 Jun 14;123(23):2666-73.)

ST上昇型の早期再分極(J波の出現)はアスリートが多く、V1-V3でJ波を伴うRsr'型ST上昇を認める。Ⅱ誘導でSTが平坦ないしは下降型の場合は予後が悪くBrugada症候群が含まれます。(Circulation. 2011 Jun 14;123(23):2666-73.)

低体温症治療の禁忌

低体温症治療

低体温症の治療で、してはならない事。復温ショックを誘発する以下の事、

  1. 温熱ヒーターなどで急速に身体を温めると、手足に貯まった冷たい血液が心臓へ急速に流れ込み心室細動→心停止に至ります。重症の低体温症ほど、緩やかに温めなければなりません。
  2. 心臓マッサージ;すでに心室細動・心停止になっている時は、遠慮なく行います。しかし、洞調律(規則正しい心拍)で、心臓マッサージすると手足に貯まった冷たい血液が心臓へ急速に流れ込み心室細動→心停止に至ります。
    低体温での心停止は、先に脳が停止(冬眠)していたら、蘇生後の脳障害が軽減される可能性があります。

(図 日本血液製剤機構HPより)

たとえ復温しても、その後、不整脈や循環不全を起こす場合もあるので、入院での経過観察は必要。

低体温症の治療に経皮的心肺補助(PCPS)が有用

経皮的心肺補助法(PCPS)

心肺停止している28℃以下の重症低体温症では、電気的除細動は通常無効です。経皮的心肺補助(PCPS:percutaneous cardiopulmonary support)による急速加温が絶対的適応になります。(Artif Organs. 1993 Jul;17(7):625-9.)

(経皮的心肺補助法(PCPS) 看護rooより)

甲状腺ホルモン正常なのに体温異常

甲状腺ホルモンが正常なのに高体温低体温の体温異常がある場合、

  1. 元々の体質(汗っかき体質、冷え性の体質)
  2. 女性ホルモン男性ホルモンのアンバランス(思春期、更年期)
  3. 心因性発熱
  4. 加齢による新陳代謝の低下で低体温
  5. 甲状腺以外のホルモン異常・内分泌代謝異常

が考えられます。

1. 元々の体質(汗っかき体質、冷え性の体質)

元々の体質(汗っかき体質、冷え性の体質)による高体温低体温があります。

対処法は、体を冷やす食べ物、温める食べ物。内科・婦人科などで漢方薬を処方してもらうのもよいかもしれません[長崎甲状腺クリニック(大阪)では扱っていません]。

※長崎甲状腺クリニック(大阪)がお勧めする産科・婦人科・女性診療科

冷やす、温める食材

冷やす、温める食材

体を温める食材

体を温める食材

2. 女性ホルモン・男性ホルモンのアンバランス(思春期、更年期)

女性ホルモン(エストロゲン)が多いと末梢血管が拡張し、熱を体外に逃がすため低体温気味になります。逆に、黄体ホルモンが多いと高温状態になります。これらのホルモンが不規則に分泌されると体温の変動も激しく、体の調節機能が付いていけなくなります。

  1. 甲状腺と似ている女性更年期障害 男性更年期障害
  2. 不妊・生理不順-中枢性性低ゴナドトロピン性腺機能低下症男性不妊も)

3. 心因性発熱

心因性発熱(しんいんせいはつねつ)は、ストレスが原因で交感神経が活性化され、褐色脂肪細胞が分解されて体温上昇が起こる発熱です。心身症としての発熱と言えます。交感神経の活性化は甲状腺機能亢進症/バセドウ病と共通ですが、心因性発熱で甲状腺ホルモンは正常です。

交感神経作用なので解熱鎮痛剤は効きません。

4. 加齢による新陳代謝の低下で低体温

加齢による筋肉量の減少、臓器機能の低下、細胞機能の低下などで、全身の新陳代謝が低下し、低体温気味になります。

  1. サルコペニア/サルコペニア肥満症
  2. フレイル

などと呼ばれる病態です。

5. 甲状腺以外のホルモン異常・内分泌代謝異常

甲状腺以外で高体温低体温をおこすホルモン異常・内分泌代謝異常として、

  1. 下垂体機能低下症
  2. 副腎皮質機能低下症
  3. 成人成長ホルモン分泌不全症
  4. 亜鉛欠乏症
  5. 女性更年期障害 男性更年期障害

があります。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療      長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区,東大阪市,浪速区,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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