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女性のライフサイクルと甲状腺の病気[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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女性と甲状腺 世界甲状腺デー

本章「女性のライフサイクルと甲状腺の病気」は、日本甲状腺学会の「甲状腺検査 促進運動」の冊子より改変して構成されています。

甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。

その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用) 橋本病の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

Sunnary

女性のライフサイクルは女性ホルモンだけでなく甲状腺ホルモンや甲状腺の病気と密に関係。甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能亢進症/バセドウ病ともに女性に多く思春期、月経(過多月経、過少月経、生理間隔・周期異常)、不妊・習慣性流産(率高くなる)、妊娠(甲状腺ホルモンは胎児の脳と身体発育に必要不可欠)・出産後出産後甲状腺炎)、更年期[疲労感、精神的な症状(イライラ感、抑うつなど)、のどの違和感、筋肉痛/頭痛/耳鳴り、動悸/息切れ、腹痛、微熱、多汗、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)などが共通]に大きく影響。女性の不定愁訴の8人に1人が甲状腺の病気。

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女性,甲状腺,橋本病,バセドウ病,思春期,女性ホルモン,習慣性流産,妊娠,出産,更年期

女性のライフサイクル

女性のライフサイクルと甲状腺の病気

女性のライフサイクルは女性ホルモンの変化によって5段階に分けられます。

  1. 小児期:卵巣が未熟で、女性ホルモン分泌はごく少量。
      
  2. 思春期:10~12歳ぐらいに卵巣が発達、女性ホルモン分泌が増加し「初経(初潮)」。卵巣の機能は不完全で、「思春期」初期は月経不順(生理不順)・月経痛(生理痛)・心身のアンバランスにより不安定。
    「思春期」後期は、卵巣機能が成熟しつつあり、女性ホルモン分泌が活発に。
       
  3. 成熟期:卵巣機能が成熟、充分な女性ホルモンが分泌され、妊娠出産が可能に。
      
  4. 更年期:「閉経」をはさんだ前後10年を「更年期」と言い、女性ホルモンの分泌量が急激に減少し、月経異常や様々な更年期症状が出ます。
      
  5. 高年期(老年期):生理は止まり、安定します。

女性ホルモンは、甲状腺の病気の発症・増悪に大きく関係するため、思春期-妊娠出産から更年期以降まで各ライフステージに応じて、好発する甲状腺の病気も異なります。

女性に多い甲状腺の病気

女性に多い甲状腺の病気

甲状腺の病気は女性に多く、男性の6-10倍とされます。甲状腺ホルモン(FT4, FT3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定する事で、早期発見できる確率が増えます。

※たとえ、これらのホルモンが正常でも、甲状腺超音波検査(エコー)で異常が見つかったり(甲状腺腫瘍甲状腺癌甲状腺のう胞自己抗体陰性橋本病など)、橋本病バセドウ病の自己免疫抗体だけ陽性に出ていたり(甲状腺機能正常橋本病甲状腺機能正常バセドウ病)するため、甲状腺専門医による正確な診断が必要です。

女性の原因不明の症状は甲状腺の病気を疑う

第61回 日本甲状腺学会で興味深い報告がありました。東京女子医大東医療センター性差医療部の女性専門外来では、「女性の不定愁訴は1/4が内科の病気で、しかもその半数(12.5%)以上は甲状腺の病気だった」そうです。

不定愁訴=「頭が重い」、「イライラする」、「疲れが取れない」、「よく眠れない」など、何となく体調が悪いという自覚症状。一般的な検査をしても原因が見つからない。

→「女性の不定愁訴では8人に1人が甲状腺の病気」 

と言う結論です。(第61回 日本甲状腺学会 WS-5 女性医療における日本甲状腺学会の役割 )

筆者も常に経験することですが、不定愁訴の女性は、通常の血液検査で問題ないため、甲状腺の検査が行われないまま、「内科的に問題なし」との誤診がなされるケースが非常に多いです。

思春期と甲状腺

思春期と甲状腺

甲状腺ホルモンの異常は、卵巣機能、月経(生理)に影響します。思春期の女性では、月経異常(生理の異常)から甲状腺の病気が見つかる場合があります。

甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症では、初経(初潮)が遅く(遅発思春期)なり、甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症では、初経(初潮)が速く(早発思春期)なります。

さらに、甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症では、生理の間隔が短くなったり、量が多くなります(過多月経)。甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症では、生理の間隔が長くなったり、量が少なくなります(過少月経)。

月経(生理)異常、不妊・習慣性流産と甲状腺

不妊・習慣性流産と甲状腺

甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症女性における月経(生理)異常は25~60%です。

甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症女性での、月経(生理)異常は約22%です。しかし、ほとんどの場合、排卵周期は保持されています。[Ann N Y Acad Sci. 1997 Jun 17;816:280-4.]

甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症では、不妊・流産率が高くなます。習慣性流産、不妊症の女性の10人に1人以上は軽度の甲状腺ホルモン不足(潜在性甲状腺機能低下症)が原因とされます。

そのため、妊娠希望(妊活中)・妊娠中に甲状腺ホルモン異常が存在する場合は治療が必要となります。

詳しくは、不妊症/習慣性流産・不育症と甲状腺 、不妊症/習慣性流産・不育症甲状腺機能亢進症・バセドウ病 を御覧ください。

妊娠と甲状腺

妊娠と甲状腺

甲状腺ホルモンは胎児の脳を含めた身体発育のために、必要不可欠なホルモンです。母体の甲状腺ホルモンが不足すると、胎児の成長に大きな影響を及ぼすため、治療が必要です。

詳しい情報は

妊娠甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺クリーゼ
橋本病/甲状腺機能低下症妊娠

を御覧ください。

出産後と甲状腺

出産後と甲状腺

出産後の女性(甲状腺の病気を持っていない女性も全て含めて)の20人に1人(報告によっては軽いものを含めると約30%)は、甲状腺ホルモンの異常を起こします。「産後の肥立ちが悪い」「育児ノイローゼ」と言われる中に出産後甲状腺炎が多く含まれます。

出産後甲状腺は、甲状腺ホルモンが多くなる場合(甲状腺中毒症)、少なくなる場合(甲状腺機能低下症)、それらが連続して起こる場合、一過性の場合、永続性になる場合など多種多様です。

甲状腺中毒症の症状は、

  1. 甲状腺腫(甲状腺の腫れ):甲状腺全体がそのままの形ではれる「びまん性甲状腺腫」、心臓の拍動に合わせて甲状腺が震動することもあります。
      
  2. 動悸:健康な人の脈拍は1分間に 60~90ですが、甲状腺中毒症では90以上になります。
      
  3. 新陳代謝の亢進:甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を活発にするホルモンのため、一見ハイで、皮膚ツヤもよく、元気そうに見えます。しかし、新陳代謝の異常な亢進は、発熱・発汗(暑がり・皮膚のかゆみ)・顔や体のやつれ/体重減少・筋肉の衰え、貧血などをおこします。また、安静時でも不必要にエネルギーをどんどん消費するため、疲れやすくなります。
      
  4. 軟便・下痢・肝障害(無症状)
      
  5. 手のふるえ(お茶をいれる時にこぼすなど)
      
  6. 精神的に不安定[そううつ・抑うつ・不眠症]、イライラ、集中力/落ち着きがない

甲状腺機能低下症の症状は、

  1. 甲状腺刺激ホルモン(TSH)が増えて、甲状腺を刺激するため、甲状腺が腫れます(甲状腺腫)。
      
  2. 全身の新陳代謝代謝が低下(甲状腺ホルモンは糖・脂肪を分解して熱を作るホルモンです)
    全身の熱産生が減り、寒さに弱く、低体温気味になります。
    食欲がないのに体重が増える[カロリー消費が減ってお腹がすかない、脂肪が分解されない。むくみ(粘液水腫)も関与]
    胃腸の働きが悪くなり、便秘、硬い便に。
    皮膚が乾燥します(かゆみも)。
       
  3. むくみ:「粘液水腫」と呼ばれます。弾力性があり、押してへこませてもすぐ元に戻ります。朝起きると手や顔がこわばり、関節リウマチと勘違いすることがあります。顔・まぶた・唇がむくんで、舌が大きくなり、ろれつが回りにくくなります。また、喉頭(のど)にむくみがくると声がかすれます(嗄声:させい)。
       
  4. 心拍数が少なく、徐脈になります。1/3~1/2の方で、心臓を包む袋(心のう)に水がたまります(心のう液貯留)。
      
  5. 無気力・うつ傾向になります。脳の代謝が低下し、頭の回転が鈍くなって認知症のようになります。また、居眠りをすることもあります。
      
  6. 生理(月経)が回復すると、生理(月経)の量が多くなり、長く続くことがあります(過多月経)。不妊、性欲減退、インポテンツの原因にもなります。

詳しくは、 出産後甲状腺炎をごらんください

更年期と甲状腺

女性のライフステージにおいて、更年期性成熟期(妊娠可能期)から老年期へと移行する過渡期であり、閉経前後の各5年(計10年間)と定義されています。

更年期と甲状腺

更年期の症状は、

  1. 疲労感
  2. 精神的な症状(イライラ感、抑うつなど)
  3. のどの違和感
  4. 筋肉痛/頭痛/耳鳴り
  5. 関節痛
  6. 動悸/息切れ
  7. 腹痛
  8. 微熱、多汗、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)

など甲状腺の病気(甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症/橋本病)とよく似ています。更年期の症状と決めつけると、甲状腺の病気を見逃してしまう事になります。[Prz Menopauzalny. 2017 Jun;16(2):33-37.][Climacteric. 2013 Oct;16(5):555-60.]

東京女子医科大学 女性専門外来では、更年期障害と診断されていた女性の15%に甲状腺機能異常(甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症)が見つかったそうです(第61回 日本甲状腺学会 O23-4 女性の甲状腺機能異常は見逃されやすい:女性専門外来初診者 1478人の主訴と甲状腺機能の関連解析から)。

甲状腺乳頭癌は閉経後にエストロゲン受容体αが増加し、浸潤性が高まる可能性があります[Surgery. 2018 Jan;163(1):143-149.]

詳しくは、 甲状腺と似ている女性更年期障害(更年期症候群) を御覧ください。

老年期と甲状腺

女性老年期において

  1. 橋本病(慢性甲状腺炎)の自己抗体[抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)]陽性者の割合が年齢とともに増加
  2. 甲状腺機能低下症の症状には特別なものがないため(非特異的)、医者も本人も気付かず見逃されやすい(甲状腺機能低下症の症状
  3. 潜在性甲状腺機能低下症は10%以上に上る(潜在性甲状腺機能低下症
        
  4. 高齢者甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、若年性バセドウ病中年性バセドウ病と異なる症状を示します[Arch Intern Med. 1988 Mar;148(3):626-31.]。(高齢者バセドウ病
      
  5. 機能性結節は数年から数十年掛けて徐々に増大し、その分、自律性ホルモン産生が増加するため、潜在性甲状腺中毒症顕在性甲状腺機能亢進症に。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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