長崎甲状腺クリニック(大阪)新着情報[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
2014.02.21
甲状腺癌/甲状腺腫瘍と遺伝性
甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)・動脈硬化・内分泌代謝専門の長崎甲状腺クリニック(大阪)からのお知らせです。日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医として甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,内分泌などのホットな話題をお届けします。
甲状腺乳頭癌
甲状腺癌の85%を占める甲状腺乳頭癌の5-8%は遺伝性であり、血縁者内でBRAFという遺伝子の同じ個所に変異が証明できる場合もあります。
BRAFの変異にも多くの種類がありますが、その遺伝子を構成する600番目のアミノ酸の情報が、本来はバリンである筈がグルタミン酸に変わるV600Eという変異が、45%(29-69%と報告は様々)の甲状腺乳頭癌に見付かっています。
V600E変異のある甲状腺乳頭癌は、変異がない癌と比較して、甲状腺外に浸潤し易く、ヨードが取り込みにくいため放射性ヨード治療が有効でなく、悪性度が高いと考えられます。
近親者が甲状腺乳頭癌をされている方は、甲状腺超音波(エコー)検査が必要です。
また、御自分が甲状腺乳頭癌なら、血縁者の甲状腺超音波(エコー)検査が必要です。
甲状腺髄様癌と多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)
甲状腺内に、ごくわずか存在するC細胞(甲状腺傍濾胞細胞)はカルシトニンというホルモンを分泌します。これは血液中のカルシウム濃度を下げるホルモンです。C細胞が癌化したものが甲状腺髄様癌です。甲状腺髄様癌は約30%は遺伝性であり、約70%は非遺伝性(散発性)です。
甲状腺髄様癌の20%は、遺伝性の多発性内分泌腫瘍症2型[Multiple Endocrine Neoplasia type 2、略してMEN (メン) 2型]と呼びます。
MEN 2型は2つのタイプに分類されます。
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MEN 2A:ほぼ100%に甲状腺髄様癌、68%に副腎の褐色細胞腫(その半数は両側)、13%に副甲状腺機能亢進症(軽症が多い)を発生します。(Jpn J Clin Oncol 1997;27:128-134.)
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MEN 2B:ほぼ100%に甲状腺髄様癌、約50%に副腎の褐色細胞腫、舌や口唇・腸の粘膜下神経腫(抗S-100蛋白抗体陽性)、神経節腫、マルファン様体型(やせ型で手足が長い)
欧米ではもっとも悪性度の高い甲状腺髄様癌ですが、日本の10年生存率は92%との報告あり
甲状腺髄様癌の10%は、遺伝性に甲状腺髄様癌のみができる家系で、MEN 2型とは区別して、家族性髄様癌(Familial Medullary Thyroid Carcinoma:FMTC)と呼びます。
MEN 2型あるいはFMTCは、常染色体優性遺伝です。親から子供へ男女関係なく遺伝し、遺伝する確率は1/2です。逆に遺伝しない確率も1/2ですので、血縁者全員が遺伝するわけではありません。ほぼ100%にRET遺伝子変異を認めます。
甲状腺乳頭癌と多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)
内分泌の専門家でも知らない方が多いのですが、多発性内分泌腺腫症1型(MEN1;教科書的には原発性副甲状腺機能亢進症、膵消化管内分泌腫瘍、下垂体腺腫を主徴)でも20%に副腎腫瘍、2%に甲状腺癌を合併します。
病変 | 浸透率 |
---|---|
原発性副甲状腺機能亢進症 | 95% |
膵・消化管内分泌腫瘍 | 60% |
下垂体腫瘍 | 50% |
副腎皮質腫瘍 | 20% |
胸腺・気管支神経内分泌腫瘍 | 7% |
皮膚腫瘍 | 40% |
甲状腺乳頭癌 | 2% |
詳しくは、 甲状腺癌/甲状腺腫瘍と遺伝性 を御覧ください。
今日は「甲状腺癌と遺伝性」の話でした。
文責:長崎甲状腺クリニック(大阪)院長 日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 長崎俊樹
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区も近く。