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甲状腺の歴史(医学史)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック大阪]

甲状腺の基礎知識を、初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が解説します。

巨大甲状腺腫

高度で専門的な知見は

を御覧ください。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

Summary

ローマ帝国時代の頚部腫瘤・甲状腺腫瘤切除手術が行われ、反回神経麻痺が分かっていた。コッハーは最初の甲状腺全切除(甲状腺全摘出手術)に成功、甲状腺切除後悪液質(現在の甲状腺全摘出後甲状腺機能低下症)を報告。甲状腺ホルモンが原因と分かるのは先の事。甲状腺切除後悪液質の11歳の患者マリー・ビッシェルは小さく、顔面・手がむくみ、精神遅滞も来した。治療は動物の甲状腺を食べる事で、豚の甲状腺で作った乾燥甲状腺「チラーヂン末」へと発展。1912年、橋本策(はかる)博士が、struma lymphomatosa(リンパ球浸潤した甲状腺腫、リンパ球性甲状腺炎)を発表。

Keywords

手術,コッハー,甲状腺全摘出,甲状腺機能低下症,甲状腺ホルモン,甲状腺,橋本病,歴史,橋本策,甲状腺機能

医学の歴史は、

  1. 紀元前4世紀ころ(4大文明の時代)までは、経験的・呪術的医療
  2. 紀元前5世紀~16世紀ころ(日本では戦国時代)までは、哲学的な科学的医療;甲状腺の歴史は、ここらから始まります。
  3. 17世紀(日本では江戸時代)~現在までは、自然科学の科学的医療

と呼ばれます。

甲状腺の歴史は、筆者も最近まで知りませんでした。以下は日本甲状腺外科学会50周年記念誌を参考にしています。

紀元2世紀、既に頚部腫瘤に対する切除手術が行われていました。ガレノス(ローマ帝国時代のギリシアの医学者)は、映画グラディエーターの時代、ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニウスの典医であり、多くの外科手術を行っていたそうです。ガレノスは、頚部腫瘤(おそらく甲状腺腫瘤も多く含まれていたはず)切除の後に声が出なくなるのは、反回神経を傷付けるのが原因である事を、豚を使った実験で証明しました(現代では動物虐待になりますが)。ローマ時代に既に甲状腺手術が行われていたとは・・・。

グラディエーター

映画「グラディエーター」

豚の反回神経切除実験

豚の反回神経切除実験

ガレノス(ローマ帝国時代のギリシアの医学者)

ガレノス(ローマ帝国時代のギリシアの医学者)

1656年、日本は江戸時代、イギリスの解剖学者トマス・ウォートン (Thomas Wharton)が甲状腺をthyroidと命名。

1883年、まだホルモンと言う概念は存在せず、甲状腺ホルモンも見つかっていませんでした。しかし、ロンドン臨床医学会では「クレチン症」「粘液水腫」「甲状腺切除後悪液質」は別物でなく、甲状腺機能が失なわれた同じ病態と考えられ、後に甲状腺機能低下症となります。(ちなみに、甲状腺機能低下症橋本病でない事がお分かりいただけると思います)

エミール・テオドール・コッハー

写真は、外科手術器具コッヘル鉗子の発明者でノーベル賞医学者、エミール・テオドール・コッハー(Emil Theodor Kocher、1841年8月25日-1917年7月27日)。

甲状腺は周囲に頚動脈・頚静脈・反回神経・胸管・気管・食道が複雑に密集し、手術が不可能とされていました。コッハーは1876年に最初の甲状腺全切除(甲状腺全摘出手術)に成功、1883年には甲状腺全切除(甲状腺全摘出手術)によって甲状腺切除後悪液質(現在で言う甲状腺全摘出後甲状腺機能低下症)に至ることを報告しました。 甲状腺機能の低下が、甲状腺ホルモンの低下が原因と分かるのは、まだまだ先の事。

巨大甲状腺腫

コッハーが残した巨大甲状腺腫のスケッチ。こりゃあ切るしかないわな。もしも、甲状腺全切除(甲状腺全摘出手術)でなく、一部甲状腺を残す甲状腺部分切除だったら、甲状腺切除後悪液質は回避されるか、軽度で済んだかもしれません。さすがのコッハーもそこまで気が付かなかったか。

甲状腺切除後悪液質の患者、マリー・ビッシェルと妹

写真の姉妹は、コッハーが論文に残した甲状腺切除後悪液質の患者、マリー・ビッシェルと妹。左写真は11歳時に甲状腺切除された姉のマリー・ビッシェル(右、矢印)と妹(左)で、姉の方が大きいですが、右写真は20歳の姉(左、矢印)の方が小さく、顔面・手がむくんでいます。精神遅滞も来し、自分で服を着る事も出来なかったそうです(Arch Klin Chir 29:254, 1883.)

甲状腺機能低下症(「クレチン症」「粘液水腫」「甲状腺切除後悪液質」)の治療として、動物の甲状腺を食べるのが有効である事も見つかり、Edward Foxは「週1回、羊の甲状腺を半分、軽くソテーして野イチゴジャムを添えて」食べることを勧めた。現在は、もう製造されていませんが、豚の甲状腺で作った乾燥甲状腺「チラーヂン末」(現在のチラーヂンSが開発される前の原始的な薬)へと発展していきます。

橋本病を発見した橋本策(はかる)博士

1912年、我らが橋本策(はかる)博士が、struma lymphomatosa(リンパ球浸潤した甲状腺腫、リンパ球性甲状腺炎)を発表します(第一次世界大戦前のドイツで)。橋本策博士は、甲状腺機能低下症とは、一言も言っていません(甲状腺機能低下症橋本病と違う)。(橋本病(慢性甲状腺炎)とは )

(表;バーチャル臨床甲状腺カレッジより)

エコーはギリシャ神話に出てくるおしゃべりな森のニンフ(妖精)です。神ゼウスが不倫をしている間、おしゃべりでゼウスの正妻、女神ヘラの注意をそらそうとして怒りを買い、他人の言葉をそのまま返すことしかできなくなります。美青年ナルキッソスに恋をするも会話ができず、失意のまま窶れて声だけになってしまいます。

エコー ギリシャ神話

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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