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甲状腺:最新・専門の検査/治療/知見②      [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波(エコー)検査の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:最新専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)でしかできない検査/治療・当院ホームページでしか得られない情報が満載です。これらは、院長が最新の海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等  糖尿病編 をクリックください

甲状腺専門医 長崎クリニック(大阪)

甲状腺編 では収録しきれない最新・専門の検査/治療です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)の理念

---全ては専門医療のために---
All for one, all for thyroid.

(目次) 

放射線と甲状腺

  1. 福島原発事故と甲状腺、ヨード131内部被曝放射線、放射線誘発性甲状腺癌

甲状腺の病気で注意する事

  1. ヨードと甲状腺    ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は全くの別物
  2. 禁煙指導;タバコは甲状腺の病気に悪影響・受動喫煙の恐怖;甲状腺に忍び寄る副流煙
  3. 甲状腺と風邪薬/痛み止め急性扁桃炎(溶連菌感染)でバセドウ病再発!・インフルエンザ・肺炎球菌
  4. チラーヂンS錠で副作用・ チラーヂンS錠が下痢/食事/薬で吸収されない?
  5. 甲状腺と活性酸素
  6. セレン欠乏症亜鉛欠乏症は甲状腺機能低下症
  7. ゴイトロゲン(甲状腺を腫れさせる食物)
  8. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症

甲状腺と遺伝

  1. 甲状腺と遺伝
  2. 甲状腺癌/甲状腺腫瘍と遺伝(MEN含む)

甲状腺と似ている病気①

  1. 似ている、合併している副腎皮質機能低下症 ・甲状腺腫瘍と副腎腫瘍
  2. 髄膜炎菌/肺炎球菌で副腎クリーゼ(急性副腎不全)、副腎出血
  3. 成人成長ホルモン分泌不全症
  4. 甲状腺と似ている合併している亜鉛欠乏症、甲状腺でむずむず脚症候群
  5. 甲状腺と似ている女性更年期障害男性更年期障害
  6. 現代日本にも脚気(かっけ)・ビタミンB1欠乏
  7. サルコペニア/サルコペニア肥満症・フレイル

甲状腺と関節痛、関節リウマチ、筋肉痛・筋けいれん

  1. 関節痛、関節リウマチと甲状腺・乾癬性関節炎
  2. 甲状腺と筋肉痛・筋けいれん

甲状腺と認知症、てんかん、神経内科、橋本脳症、精神神経病、頭痛

  1. 甲状腺で認知症?
  2. 甲状腺とてんかん
  3. 甲状腺と神経内科(パーキンソン病,多系統萎縮症,本態性振戦,手根管症候群)
  4. 橋本脳症・脳の病気/脳梗塞と甲状腺
  5. 甲状腺と精神神経病
  6. 甲状腺と頭痛
  7. 回転性めまい:メニエールでなく甲状腺/動脈硬化が原因

甲状腺と免疫(IgG4、胸腺)

  1. 未知のIgG4関連甲状腺炎(IgG4甲状腺炎とは異なる)
  2. 甲状腺と密接な胸腺腫/重症筋無力症 CASTLE甲状腺癌 ・大動脈炎症候群 ・上縦隔甲状腺腫瘍

薬剤性甲状腺機能障害、環境ホルモン

  1. 薬剤性甲状腺機能障害、環境ホルモンの影響       MPO-ANCAと甲状腺

甲状腺と血液の病気

  1. 多発性骨髄腫と甲状腺・高カルシウム血症 , 甲状腺アミロイドーシス
  2. 甲状腺と出血--後天性血友病A/後天性von willebrand病特発性血小板減少性紫斑症(ITP)
  3. 甲状腺と血球貪食症候群

甲状腺と似ている病気②

  1. 化学物質過敏症
  2. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病に間違える筋萎縮性側索硬化症(ALS)・悪性症候群、無顆粒球症のような重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
  3. 甲状腺の病気に似ているミトコンドリア病・ライソゾーム病(ポンペ病など)

甲状腺と救急・外科手術

  1. 甲状腺と救急:頭部打撲・腹腔内出血・心肺蘇生・そのくすりダメ・両側反回神経麻痺・甲状腺摘出後出血
  2. 本病の手術             橋本病の巨大甲状腺腫に131-Iアイソトープ治療
  3. 甲状腺ロボット手術
  4. 穿刺細胞診の気を付ける点(医療従事者用)      何度穿刺細胞診しても血液成分のみ:甲状腺血管腫
    穿刺細胞診後に新たな腫瘍?穿刺経路痕跡

甲状腺未知の領域

  1. サイログロブリン、一体何をやってるの?
  2. 伝染性紅斑(リンゴ病)で無痛性甲状腺炎・橋本病発症
  3. 手術不能・適応外甲状腺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法(RFA)

甲状腺の社会問題

  1. 橋本病に対する偏見
  2. ヒヤリハット、チウラジールとチラージン
  3. 海外から日本へ来る甲状腺患者さん
  4. 乱用される『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用

ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は全くの別物

ヨウ素(ヨード)は制限、葉酸(ようさん)はドンドン摂取

長崎甲状腺クリニック(大阪)では混同を避けるため、患者さんには「ヨード」と言う表現に統一しています。しかし、世間では、ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)を混同している方が多くいます。甲状腺の悪い方にヨウ素(ヨード)の過剰摂取制限は必須(ヨードと甲状腺)ですが、葉酸(ようさん)は摂った方が良いのです。特に甲状腺機能低下症/橋本病妊婦さんは、

  1. ヨウ素(ヨード)制限を厳格にして(ヨードと甲状腺)
  2. 葉酸(ようさん)を可能な限り摂取

しなければなりません。

葉酸(ようさん)とは

葉酸(ようさん)は水溶性ビタミンB群の一種で、妊娠期に欠かせない栄養素として注目されています。その名(葉っぱの酸)の通り、

  1. ほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなど陸生植物の緑葉に多く、
  2. イチゴや夏みかんなどの果物類
  3. 大豆や納豆など

にも含まれています。葉酸(ようさん)はタンパク質や核酸合成の補酵素として、細胞合成に必要です。また、ビタミンB12と共に、赤血球合成に必要です。

甲状腺と葉酸欠乏

甲状腺と葉酸

  1. 甲状腺機能低下症では、葉酸の吸収障害・利用障害により
  2. 甲状腺機能亢進症では、葉酸の需要増大により

葉酸欠乏が起こります。

妊娠葉酸

故に、妊娠期において葉酸は胎児の体を形成するのに必要不可欠です。胎児の細胞分裂が最も活発な妊娠初期(4週~12週)の葉酸欠乏は、二分脊椎症など神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなります。

また、授乳期葉酸欠乏は、乳児の発育障害の原因になります。

葉酸動脈硬化を予防

葉酸は、動脈硬化の危険因子のホモシステインの産生を抑制します。ホモシステインは、必須アミノ酸のメチオニンが代謝されて生成されるアミノ酸です。血中ホモシステインは、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症、深部静脈血栓症の危険因子です。甲状腺機能低下症2型糖尿病、葉酸・ビタミンB6・ビタミンB12欠乏で高値になります。

葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血

葉酸はビタミンB12とともに、造血に不可欠です。葉酸欠乏は、巨赤芽球性貧血という大球性貧血(大きな赤血球だが数は少ない)をおこします。

詳しくは、 巨赤球性貧血と甲状腺・副腎・糖尿病 を御覧ください。

葉酸欠乏による口内炎・皮膚炎・肌荒れ

葉酸が欠乏すると新陳代謝が活発な口腔内や皮膚、粘膜などに炎症や肌荒れが現れます。

葉酸(ようさん)をどの様に補給するか?

葉酸サプリメント

妊娠希望女性は葉酸1日400μg、妊婦推奨量は440μgです。葉酸400μgは、ほうれん草約200g(1把分)に相当しますが、そんな量のほうれん草を食べ続ければシュウ酸カルシウムの過剰摂取になり、腎臓結石・尿路結石になります。甲状腺機能低下症/橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)を服用中の方なら、ほうれん草のシュウ酸カルシウムと食物繊維がチラーヂンS錠の腸吸収を妨げます。

その他、ブロッコリー、アスパラガスなど陸生植物、イチゴや夏みかんなどの果物類も同じく食物繊維がチラーヂンS錠の吸収障害を起こし、納豆など大豆製品はチラーヂンS錠を吸着し、腸から吸収させないようにします(チラーヂンS錠で副作用・ チラーヂンS錠が下痢/食事/薬で吸収されない?)。

甲状腺機能正常橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)を服用する必要のない方は、気にせずこれらの食品を摂取して問題ありません。これらの食品は甲状腺を腫れさせるゴイトロゲンと呼ばれるものが多いですが、動物実験のみの話で、甲状腺に問題が出た報告は1例もありません。(ゴイトロゲン(甲状腺を腫れさせる食物)

葉酸は、加熱に弱いため、調理中に失活しますが、だからといって特に夏場、生のままで食べれば食中毒の可能性がないわけではありません。

結論として、最も簡単で確実なのは、葉酸サプリメントを飲むのが良いでしょう。ただし、ヨウ素(ヨード)が入っているのは止めてください。

筆者がお勧めなのは、大塚製薬の「ネイチャーメイド」で、余計なものが一切入っていないのが良いです。(筆者も服用しています)

ゴイトロゲン(甲状腺を腫れさせる食物)

甲状腺を腫れさせる物質をゴイトロゲンと言いますが、食物にも該当するものがあります。しかし、ゴイトロゲンが、人間の甲状腺を腫れさせたり、甲状腺機能低下症をおこしたりと言う臨床報告は存在しません(動物実験のみの話です)。長年、日本甲状腺学会に出席していますが、そのような報告は1例もありません。

甲状腺腫瘍甲状腺癌の大きさを増大させる可能性も、理論上は有り得ます。ただし、だれも証明した人はなく、そのような報告もありません。ゴイトロゲンには、以下のようなものがあります。

  1. 大豆
  2. アマの種子[亜麻仁油(アマニ油)]- シアン化物を含み、体内でチオシアネートに変換、甲状腺機能低下症
  3. サツマイモ・タケノコ
  4. イチゴ・ナシ・モモ
  5. キャベツ、メキャベツ、ハクサイ、カリフラワー、ブロッコリー、カブ
  6. ホウレンソウ、ミズナ、ノザワナ、コマツナ、チンゲンサイ
  7. ピーナッツ

以上、ゴイトロゲンと言われる食品は、甲状腺機能低下症でチラーヂンSを服薬されている方には問題起こす可能性あります。それは、いずれも食物繊維を多く含むため、チラーヂンSの吸収を邪魔するのです。

詳しくは、 チラーヂンS錠で副作用・ チラーヂンS錠が下痢/食事/薬で吸収されない? を御覧下さい。。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症

甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で甲状腺ホルモンが正常になっていない方は、熱中症になる危険性が高いです。甲状腺ホルモンが過剰な状態では、体の糖や脂肪がドンドン燃焼され熱を発生します。

人間の体は、汗をかく事により体内の過剰な熱を捨て、体温の異常上昇を防ぐ機能があります。しかし、汗をかいた分、水分を補充しなければ、汗が出なくなり、熱が体にこもり体温が異常上昇します(熱中症)。

甲状腺ホルモンが高い状態の方は、普通の人より多くの水分を摂取しなければ、たちまち熱中症になってしまいます。

メルカゾール、プロパジール/チウラジールなどの薬で、甲状腺機能を正常にコントロールできている方は、普通の人と同じ条件です(甲状腺関係ない人でも熱中症でバタバタ倒れていますし・・)。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で甲状腺ホルモンが正常になっていない方は、熱中症や脱水の予防のため、

  1. 身体を冷やす。(炎天下に長時間いない、冷房下にいる)
  2. ミネラルを含んだ水分を補給する(ミネラルウォーター、茶)

必要が、普通の人より多くあります。

同時に甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、カリウムが過剰に体外に排出され、低カリウム血症になりやすく、筋の脱力や低カリウム性不整脈を起こします。汗にカリウムが失われれば、さらに低カリウム血症が進み、横紋筋融解症や致死性不整脈などの重篤な状態に陥る危険があります。

故に補給する水分はカリウムなどのミネラルを含んだミネラルウォーター、茶でなければなりません。

40℃以上・意識を失う程(Ⅲ度)の熱中症では、一次救急病院で微温湯噴霧・冷たい生食大量輸液し39~38℃まで冷却します。

橋本病の手術

長崎甲状腺クリニック(大阪)は内科系甲状腺専門医ですので手術自体は大阪市立大学附属病院 内分泌外科に依頼します

明らかな腫瘍がなくても、気道圧迫や増大傾向を理由に、橋本病を手術する事があります。九州の野口病院では、10年間で58例、このような手術を行ったそうです。しかし、

  1. 摘出した甲状腺の手術標本では、16%に甲状腺原発悪性リンパ腫(8例がMALT,1例が形質細胞腫)が見つかり
  2. 術前の甲状腺超音波(エコー)検査では、後方エコー増強が強いのが特徴との事です。
    (第58回 日本甲状腺学会 P1-7-5 慢性甲状腺炎の判断で手術を行い、術後に悪性リンパ腫と診断された症例の検討)

倉敷中央病院でも、レボサイロキシン(甲状腺ホルモン剤)によるTSH抑制療法が無効で、橋本病の巨大甲状腺腫が徐々に増大し、気管狭窄が悪化する症例を手術対象としています。(第54回 日本甲状腺学会 P223 当院で切除手術を施行した橋本病による巨大甲状腺腫の10例)

橋本病巨大甲状腺腫(気管圧排)1

橋本病巨大甲状腺腫(気管圧排) 矢状断 Bモ-ド

橋本病巨大甲状腺腫(気管圧排)2

橋本病巨大甲状腺腫(気管圧排) 水平断 ドプラー

橋本病(縦隔進展)

橋本病でも縦隔まで進展すると気管・大血管・心臓を圧排するため手術せざる得なくなります。

超音波(エコー)検査では、鎖骨の高さで本来見えないはずの甲状腺が確認されれば、縦隔進展です。

甲状腺ロボット手術

1999年高度先進医療として認可されたda Vinciサージカルシステムによるロボット支援下甲状腺手術。長崎甲状腺クリニック(大阪)は内科系甲状腺専門医で、外科手術をする訳ではありません。よって、異論は多いと思いますが、外科手術を必要とする患者様を見つけ出し、内分泌外科に紹介する者の立場から、意見を述べさせていただきます。

ロボット支援下甲状腺手術は、首の部分を切開せず、わきの下から内視鏡鉗子などを挿入するため、首に手術跡が出来ない美容上のメリットがあります。特に女性には有難い事だと思います。具体的には、頚部皮膚を特殊な鉤(かぎ)で持ち上げ、胸鎖乳突筋と言う顎から鎖骨をつなぐ筋肉の間を通り、甲状腺の外側に出ます。これを「低侵襲」と言えるかは意見の分かれる所と思います。

大阪市立大学 附属病院にもda Vinciサージカルシステムがあり、もっぱら泌尿器科が前立腺手術に使用しています。前立腺と異なり、甲状腺は周囲の頚動静脈・反回神経などのためデリケートな手術が要求されます。旧世代のロボット支援下甲状腺手術は操作性が悪く、甲状腺周囲の剥離、反回神経周囲の繊細な操作、リンパ節郭清が十分に行えないため普及しませんでした。

改良されたda Vinci Sは、術者の指で操作する全可動域ロボットアーム2本、補助アーム1本、内視鏡カメラ1本を用い、甲状腺周囲の剥離、反回神経周囲の繊細な操作や、十分なリンパ節郭清が可能との事です。

医療ロボット技術は、ほぼ完成されたのか!?。すべてをロボットまかせにすれば良いのか?幾つかの難点は残ります。

  1. わきから狭い経路を通るので、アーム同士が干渉し合い、手術操作が難渋する可能性
  2. メスなどの手術用具をロボットアームが持ち、直接人間が触れないため、触覚がない視覚のみで行う手術になります。筆者は内科系なので判りませんが、人間の手の感覚なしでどうなのでしょうか?
  3. もし手術中に、機械が故障し、簡単に修理できないた場合、中止して後日やり直しになるのでしょうか?

筆者は内科系なので、的を得ていない所もあるかもしれませんが、内科系甲状腺専門医の立場で書かせていただきました。

穿刺細胞診の気を付ける点(医療従事者用)

  1. 不適正検体
  2. 穿刺細胞診の有害事象
  3. 穿刺時出血
  4. 穿刺細胞診後、急激な甲状腺腫脹
  5. 穿刺するには危険すぎる場所

不適正検体

甲状腺穿刺吸引細胞診

甲状腺穿刺吸引細胞診を行っても、

  1. 数mm大の微小な病変(針先より小さい、同じくらい)
  2. 穿刺が困難な場所にある病変
  3. 石灰化や線維化が強い病変
  4. 良性の病変
    ・当然、細胞数は少ない
    腺腫様結節は壊死組織を含んでいる
  5. 例え悪性腫瘍でも内部が壊死(組織が溶けてしまう事)を起こしていると

十分な検体採取ができず、「検体不適正」「細胞成分少数」「判定不能」などになることがあります(甲状腺穿刺吸引細胞診の限界)。また、良性でも悪性腫瘍(病変)でも、血管の豊富な組織や崩れやすいもろい組織は針を刺した時の出血で「血液のみ」「判定不能」になる事あります。

不適正検体の確率は、施設により異なりますが約10%と言われます。2回穿刺行うと、いずれか一方が適正検体である確率は99%になるとされます(2回とも不適正である確率1%)。

(第54回 日本甲状腺学会 P143 甲状腺穿刺細胞診における2回穿刺法の有用性について)

穿刺細胞診の有害事象

どんなに気を付けても、甲状腺機能亢進症/バセドウ病など血流の多い甲状腺を避けても、穿刺細胞診の有害事象は一定の割合で起こります。

順天堂大学の報告では、穿刺細胞診した663 例の内、

  1. 穿刺細胞診直後の甲状腺全体の腫脹(1 例,0.13%)(下記の「穿刺細胞診後、急激な甲状腺腫脹」参照)
  2. 腫瘍側方に出現し、組織を圧排しながら増大する無エコー域(7 例,0.93%)(1.と同じ事象が局所的に起こったと推察されます)
  3. 穿刺細胞診最中もしくは直後に穿刺部位に出現した点状から索状の高エコー域(5 例,0.67%)(おそらく軽度の穿刺時出血と推察されます)

が起こったそうです。無事象群と各有事象群間において腫瘍径や血管密度、内部エコーなどに差は無く、予測は難しいとの事です。(第57回 日本甲状腺学会O1-5 穿刺吸引細胞診後に甲状腺超音波所見が変化した症例の検討)

穿刺時出血

甲状腺穿刺時に「絶対に、唾(つば)は飲まないで下さい。」と必ず患者さんに注意しますが、それでも唾を飲む方が稀におられます。針が甲状腺に刺さった状態で唾を飲むと、針が曲がり、甲状腺内で出血おこります。最悪、気道閉塞(窒息)の危険があります。

このような場合、

  1. 用手圧迫行い、嚥下痛が持続しているか確認
  2. 再度、超音波(エコー)行い、出血の有無を確認しますが、1時間しても超音波(エコー)上、(出血しているのに)変化を認めない事あります。
  3. その時は、造影CT、耳鼻咽喉科に依頼して喉頭ファイバー行います。出血・喉頭腫大が確認されれば入院し、ステロイド投与。最悪、気道確保。
  4. 検査所見で改善認めれば10日程で退院。
    (第54回 日本甲状腺学会 P148 FNA施行時に合併した甲状腺出血により気道狭窄をおこし入院を要した症例)

穿刺細胞診後、急激な甲状腺腫脹

甲状腺穿刺細胞診自体は、うまく行ったのに、直後(1-3分後)、急激な穿刺部の痛みと甲状腺腫脹を来す症例があります。穿刺時出血との鑑別重要で、穿刺部を中心に

  1. 甲状腺腫大、あるいは甲状腺外側を取り囲むような前頚筋腫大と
  2. 線状の無エコー帯(ドプラーで血流乏しく、エラストグラフィーで軟らかい):おそらく穿刺刺激により、何らかの血管透過性物質が放出されたためと推察されます。
  3. 甲状腺推定重量は、穿刺80 分後には2倍以上で、甲状腺内部の血管は拡張、甲状腺機能・サイログロブリン(Tg)に大きな変化はなく、炎症所見もなし。

認めます。治療は、

  1. 局所冷却
  2. ステロイド点滴静注(報告例では、腫大時44g位の大きさならメチルプレドニゾロン125mg程度で、甲状腺推定重量は3 時間後に著減、24 時間後に元の大きさに)

穿刺細胞診後、急激な甲状腺腫脹は、初診当日いきなり穿刺を行った患者が多く、不安感と緊張状態(交感神経亢進)が関与している可能性が考えられます。

(第54回 日本甲状腺学会 P142 穿刺吸引細胞診後に急速にびまん性甲状腺腫脹をきたした甲状腺腫瘍の2例)
(第54回 日本甲状腺学会 P150 甲状腺穿刺吸引細胞診直後に急速一過性頚部腫大を来たした5例)
(第55回 日本甲状腺学会 P1-043 超音波ガイド下吸引細胞診後に急激な甲状腺腫脹を認めた1 例)

穿刺するには危険すぎる場所

穿刺細胞診するには、あまりにリスクが大きく、断念せざる得ない場合があります。たとえば、頚動脈に接する小さな甲状腺腫瘍。甲状腺微小乳頭癌の可能性があるため、穿刺細胞診したくても、頚動脈を刺してしまう危険を考えれば断念するのが正しいと思います。「退く勇気」も大切なのです。その代わり、甲状腺腫瘍が大きくならないか、腫瘍マーカーは上昇しないか、定期的に経過を見る必要があります。

総頚動脈に接する甲状腺微小乳頭癌疑い腫瘤(拡大)

総頚動脈に接する甲状腺微小乳頭癌疑い腫瘤

総頚動脈に接する甲状腺微小乳頭癌疑い腫瘤(拡大)

総頚動脈に接する甲状腺微小乳頭癌疑い腫瘤

何度、穿刺細胞診しても血液成分のみ:甲状腺血管腫

3回以上穿刺細胞診しても血液成分のみであれば、甲状腺血管腫かもしれません。非常に稀で、甲状腺専門医でも一生に一度、遭遇するかどうか分からない程です。和歌山県立医科大学の報告では、甲状腺超音波(エコー)検査にて形状不整、境界不明瞭、内部血流豊富な低エコー腫瘤です。成程、悪性を疑う所見ですが、甲状腺乳頭癌甲状腺原発悪性リンパ腫とは異なる見え方です。最後は、組織生検せねばならず、そこで初めて甲状腺血管腫の診断が付きます。(第56回 日本甲状腺学会 P1-095 甲状腺血管腫の一例)(写真はJournal of Ultrasound in Medicine Volume 33, Issue 4より引用)

甲状腺血管腫 超音波(エコー)画像
甲状腺血管腫 超音波(エコー)画像

甲状腺血管腫 超音波(エコー)画像

甲状腺血管腫 超音波(エコー)画像 ドプラー

甲状腺血管腫 超音波(エコー)画像 ドプラー

穿刺細胞診後に新たな腫瘍?穿刺経路痕跡

甲状腺腫瘍に穿刺細胞診した後に、新たな腫瘍らしきが見つかることあります。穿刺経路痕跡で、針を刺した跡が瘢痕化したもので、腫瘍ではありません。(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

穿刺経路痕跡 超音波(エコー)画像
甲状腺穿刺経路痕跡 病理組織

橋本病の巨大甲状腺腫に131-Iアイソトープ治療

橋本病の巨大甲状腺腫に131-Iアイソトープ治療

橋本病の巨大甲状腺腫に131-Iアイソトープ治療を行う試みが始まっています。甲状腺機能低下症甲状腺ホルモン剤を補充し、血中の甲状腺ホルモンが正常範囲になっても巨大甲状腺腫が縮小せず、のどの圧迫感が強く、飲み込みにくい(嚥下障害)状態が続く場合、131-Iアイソトープ治療が有効な事あります。

九州の田尻クリニックが、発表されております。(第58回 日本甲状腺学会 P1-10-5 T4投与にても大きな甲状腺腫が持続する橋本病甲状腺機能低下症の1例:甲状腺腫縮小に対するRI治療

ただし、全ての橋本病の巨大甲状腺腫に適応がある訳ではなく、99mTc(テクネチウム)シンチグラフィーで取り込みがある症例に限定されます。

橋本病を基盤とした無痛性甲状腺炎をおこしている場合

同じく田尻クリニックの報告で、橋本病を基盤とした無痛性甲状腺炎をおこしている場合、低下症期(回復期)に131-Iアイソトープ治療を行うと取り込みが良いとの事です。(第55回 日本甲状腺学会 P1-09-07 無痛性甲状腺炎に対して放射性ヨード治療を行った1 例)

伝染性紅斑(リンゴ病)で無痛性甲状腺炎橋本病発症

伝染性紅斑(リンゴ病)で無痛性甲状腺炎・橋本病発症

ヒトパルボウイルスB19で無痛性甲状腺炎橋本病を発症する症例が多く見つかっています。ヒトパルボウイルスB19は、伝染性紅斑(リンゴ病)おこす他、赤芽球勞・再生不良性貧血の原因にもなります。伝染性紅斑(リンゴ病)に罹り、その経過中に無痛性甲状腺炎橋本病おこす症例が報告されています。(第58回 日本甲状腺学会 O-1-2 伝染性紅斑により橋本病を発症したと考えられる17症例)

伝染性紅斑(リンゴ病)

伝染性紅斑(リンゴ病)は、小児が感染すると軽症ですが、成人の感染では、

  1. 38度以上の熱発
  2. 頬の蝶翼状紅斑、平手打ち様紅斑(写真 皮膚疾患ペディア より)
  3. 四肢の網目状紅斑
  4. 多発関節痛:関節リウマチ・血管炎起こす事あり
  5. 約2週間後に無痛性甲状腺炎橋本病発症

伝染性紅斑(リンゴ病)の診断は、血中ヒトパルボウイルスB19 IgMを調べます。

伝染性紅斑 蝶型紅斑

伝染性紅斑 蝶型紅斑

伝染性紅斑 平手打ち紅斑

伝染性紅斑 平手打ち紅斑

伝染性紅斑 網目状紅斑

伝染性紅斑 網目状紅斑

ヒトパルボウイルスB19で無痛性甲状腺炎橋本病発症おこす機序

ヒトパルボウイルスB19で無痛性甲状腺炎橋本病発症おこす原因は不明です。

ヒトパルボウイルスB19は、赤芽球勞・再生不良性貧血の原因にもなる事から、血球系に影響し、自己免疫を抑える制御系に障害をもたらす可能性を考えています。(あくまで、私見ですが)

伝染性紅斑(リンゴ病)で、関節リウマチ・血管炎起こるのも同じ機序と考えられます。

手術不能・適応外甲状腺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法(RFA)

甲状腺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法(RFA)は、昭和大学で2007年より行われている治療です。海外では研究・臨床適応が進んでいるそうです。超音波ガイド下に、皮膚上から電極針を甲状腺腫瘍の中心に到達させ、ラジオ波(電気メスと同じ450キロヘルツの高周波電流)の熱で甲状腺腫瘍を壊死(破壊)させます。

確かに、手術不能・適応外の甲状腺微小乳頭癌甲状腺癌術後再発・リンパ節転移には有用であると私も思います。不思議な事に、ほとんど普及していません。機械そのものは、他臓器の癌(肝癌など)に使用するのと同じなので、普及しそうなものですが・・・、保険適応と認められていないため、普及しないのかもしれません。

甲状腺腫瘍が無制御に甲状腺ホルモンを産生する機能性結節に対しても、ラジオ波焼灼療法(RFA)は行われています。ただ腫瘍が大き過ぎると難しいかもしれません。手術不能の機能性結節に有用と思うのですが・・。(第56回 日本甲状腺学会 O2-3 甲状腺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法(RFA)の臨床的評価)

ラジオ波焼灼療法(RFA)の合併症は、約3%と言われ

  1. 一過性反回神経麻痺(一時的な声の変化)で、アルコールを注入するPEITと同じ
  2. 血腫の形成
  3. 皮膚熱傷
  4. 一過性軽度甲状腺中毒症(約50%)

などです(第56回 日本甲状腺学会 P1-094 甲状腺RFA 治療後に一過性甲状腺機能亢進症を呈した症例の検討)。

橋本病に対する偏見

医療情報の氾濫は、間違った知識・病気に対する偏見を広げる事が多々あります。「橋本病は治らない病気だから難病だ」と言う、あまりにも短絡的な誤解が世間に蔓延している現実があります。

東京都予防医学協会の調査報告では、生命保険会社16 社中、橋本病患者の加入不可1 社、条件付きで加入可10 社、加入可1社、回答できない4 社(加入不可なんでしょうね)との事です。難病だと思われるため職場に橋本病の病名を言えない、橋本病の病名を言ったために会社の面接を落とされた(ただこれは、病気以外が原因かもしれませんが・・・)などの訴えは良くあります。(第55回 日本甲状腺学会P2-02-05 橋本病患者が被っている社会的不利益の現状)

確かに橋本病は治らないでしょうが、治療方法は100%確立され、甲状腺ホルモン剤を飲むだけで健康な人と同じ生活ができるのです。不治の病であっても難病ではないのです。

糖尿病はどうでしょう?薬を飲んでも良くならない人が多く、毎日インスリンの自己注射までしてもコントロール不良で、透析・網膜剥離に至る人が後を絶ちません。これこそ難病やん!

高血圧・高脂血症の人は、例外はあっても薬が合えば、健康な人と同じ状態を維持できます。薬を止めれば、もとに戻るため、治った訳ではありません。橋本病と一体、何が違うのでしょうか?高血圧・高脂血症については、子供でも「塩分摂り過ぎは良くない。」「卵はコレステロールが多い。」と知っているのに、橋本病に対する知識が普及していないのが原因と思われます。人は、得体のしれない物には排他的になり、偏見を持ちます。

世界甲状腺デーが新設されたのを契機に、日本甲状腺学会も本腰を入れて甲状腺の病気の普及活動に乗り出しています。橋本病に対する偏見も消える日は来るでしょうか?

ヒヤリハット、チウラジールとチラージン

ヒヤリハットの語源は、「ヒヤリとした」「ハッとした」で、間違った医療行為が行われそうになる事態です。「ハッ」と間違いに気付き、事なきを得ればよいのですが、間違いに気付かなければトンデモナイ事になります。甲状腺の世界で長らくヒヤリハットの原因であり、いまだに解決される見込みのない「チウラジール」と「チラージン」の問題。チラージン(チラーヂン)S錠は、誰でも知ってる国民的な甲状腺ホルモン剤で、甲状腺機能低下症の治療薬です。一方、チウラジール(50mg)錠は、過剰な甲状腺ホルモンを低下させるための甲状腺機能亢進症/バセドウ病の治療薬です。この相反する薬効の2つの薬は、名前が非常に似ています。

甲状腺専門医療機関の門前薬局の薬剤師なら間違える事は、まずありません。しかし、あまり甲状腺の患者さんが訪れない院外薬局や、甲状腺薬の経験に乏しい薬剤師・アルバイトの薬剤師の中には、「チウラジール」と「チラージン」の区別が付いていない人が少なからずおられます。恐ろしいことですが事実です。

特にチラーヂンS(50)錠チウラジール(50)錠は、数字まで同じなので、最も間違えやすい様です。

たとえ間違えられても、患者さんの方が気付きますが、認知症の掛かったお年寄りならどうでしょうか?何の疑いもなく飲んでしまったら!?

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、このようなヒヤリハットを予防するため、田辺三菱製薬製の「チウラジール」でなく、中外製薬性の「プロパジール」を使用することにしています。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


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