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てんかんと甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

てんかんと甲状腺

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。てんかんの診療は行っておりません。

Summary

てんかんと甲状腺を解説。甲状腺クリーゼの中枢神経症状として、強直性間代性けいれんの事ある。抗てんかん薬フェノバルビタール・カルバマゼピン・フェニトインは肝臓の薬物代謝酵素系CYP3Aなどを誘導、甲状腺ホルモンの分解代謝を促進、薬剤性甲状腺機能低下症に。無痛性甲状腺炎(痛みを伴わない甲状腺の急性破壊)を誘発することも。イーケプラ®(レベチラセタム)も甲状腺機能低下症。バルプロ酸は脱アセチル化酵素阻害により、甲状腺未分化癌の放射線感受性・抗癌剤効果を高める。TSH産生下垂体腺腫など下垂体腺腫が、浸潤性に脳内に広がれば、てんかん起こす可能性。

Keywords

てんかん,甲状腺,甲状腺クリーゼ,強直性間代性けいれん,フェノバルビタール,カルバマゼピン,薬剤性甲状腺機能低下症,無痛性甲状腺炎,バルプロ酸,甲状腺未分化癌,TSH産生下垂体腺腫

てんかんでなく、甲状腺クリーゼの中枢神経症状

甲状腺クリーゼの中枢神経症状として、強直性間代性けいれんおこす事もあります。甲状腺クリーゼの死亡率は10%程ですので、適切に治療されねばなりません。強直性間代性けいれん以外に、

  1. 38℃以上の発熱
  2. 頻脈(脈が1分間130以上)
  3. 心不全起こし、呼吸困難[肺水腫、肺野の50%以上の湿性ラ音(肺に水がたまった音)、心原性ショックなど重度な症状
  4. 嘔気・嘔吐、下痢、黄疸

のいずれか一つを満たせば、甲状腺クリーゼと診断できます。

の詳細は、 命の危険:甲状腺クリーゼ を御覧ください。

てんかん薬と甲状腺

生活リズムが狂った時にてんかん発作が起こり易くなります。抗てんかん薬を増量したり、種類を増やしたりする時は副作用に要注意。

抗てんかん薬による甲状腺機能障害

抗てんかん薬は、てんかんの種類によって使い分けられます。いずれの抗てんかん薬も甲状腺機能障害が多いです。

  1. 全般発作にバルプロ酸
  2. 大発作にフェノバルビタール:薬剤性甲状腺機能低下症
  3. 部分てんかん発作・成人未分類てんかん発作にカルバマゼピン:薬剤性甲状腺機能低下症無痛性甲状腺炎SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)
    第2選択フェニトイン:薬剤性甲状腺機能低下症低カルシウム血症(ビタミンD代謝障害)
  4. 欠神発作にエトスクシミド
  5. ミオクロニー発作にクロナゼパム(リボトリール®)、ピラセタム[GABAの環状誘導体]併用

が用いられます。

フェノバルビタール・カルバマゼピン・フェニトインは肝臓における薬物代謝酵素系のcytochrome P3A、cytochrome P450などを誘導するため、バルプロ酸もcytochrome P450の阻害作用を持つため(Neurology. 2001;57:445–449.)、

  1. 甲状腺ホルモンの分解代謝を促進、薬剤性甲状腺機能低下症に。甲状腺(あるいは甲状腺を制御する視床下部-下垂体)に問題が無い人では、視床下部―下垂体系が機能し甲状腺ホルモンの合成・分泌を促進して代償される場合が多いです。しかし、橋本病(慢性甲状腺炎)中枢性甲状腺機能低下症では代償できず、薬剤性甲状腺機能低下症に至ります。
    無痛性甲状腺炎(痛みを伴わない甲状腺の急性破壊)を誘発することもあります。
     
  2. ビタミンDの不活性化が促進、骨代謝にも悪影響を与え、骨粗しょう症の原因になります(Ann Neurol. 2005 Feb;57(2):252-7.)。
    カルシウム吸収障害、骨吸収(骨破壊)の増加、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺ホルモン(PTH)抵抗性、カルシトン欠乏症、ビタミンK欠乏など複合要因が関与します。
     
  3. 副腎皮質ホルモンの分解代謝を促進するため、副腎皮質機能低下症の治療でヒドロコルチゾン(コートリル®)投与量を増量する必要がある(副腎皮質機能低下症の治療

カルバマゼピンとフェニトインは、それに加えて、甲状腺ホルモン[サイロキシン(T4)]と甲状腺ホルモン結合蛋白[血中サイロキシン結合蛋白(TBG)]の結合を阻害します(Acta Endocrinol (Copenh). 1984 Apr;105(4):477-81.)。

バルプロ酸

若年てんかん患者の15.2%で、バルプロ酸投与12ヶ月後に潜在性甲状腺機能低下症をおこした報告があります(Acta Neurol Belg. 2020 Jun;120(3):615-619.)。

また、てんかん児の約30%で、長期バルプロ酸単剤療法により甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離トリヨードサイロニン(FT3)の上昇が起きたとされます(解釈が難しいのですが)(Epileptic Disord. 2016 Jun 1;18(2):181-6.)

一方、バルプロ酸単独投与で甲状腺ホルモンに影響無いが、カルバマゼピンとの併用で潜在性甲状腺機能低下症を起こし易くなる報告があります(Pediatr Neurol. 2001 Jul;25(1):43-6.)。

バルプロ酸は、肝臓における薬物代謝酵素系のcytochrome P450の阻害作用を持ち、ビタミンDの不活性化による骨代謝害をおこす報告があります(Neurology. 2001;57:445–449.)。

バルプロ酸はカルバペネム系の抗菌薬と併用禁忌で、急激にバルプロ酸の血中濃度が下がる報告があります(Int J Clin Pharmacol Ther. 2015 Jan;53(1):92-6.)。

バルプロ酸は、他の抗てんかん薬の交差感受性による薬疹が非常に少ない薬です(Neurology. 2008 Nov 4;71(19):1527-34.)。

バルプロ酸の長期投与でL-カルニチンが欠乏し、

  1. 脂肪燃焼が阻害され、肥満・メタボリック症候群
  2. うつ病(バルプロ酸は、双極性障害の躁状態・混合状態にも効果があるが、うつ状態に対する効果は乏しい)

のリスクが上がるため、L-カルニチンの同時投与が推奨されます[Clin Toxicol (Phila). 2009 Feb;47(2):101-11.]。

甲状腺未分化癌にバルプロ酸

甲状腺未分化癌は予後不良で平均生存期間は約6か月です。バルプロ酸はヒストンの脱アセチル化酵素[ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)]阻害作用があり、甲状腺未分化癌の放射線感受性・抗癌剤ドキソルビシンやパクリタキセルの効果を高めることが報告されています。[J Endocrinol. 2006 Nov;191(2):465-72.][Endocr Relat Cancer. 2007 Sep;14(3):839-45.][Int J Endocrinol. 2016;2016:2930414.](第59回 日本甲状腺学会 O1-6 甲状腺未分化癌に対するバルプロ酸併用集学的治療)

詳細は、甲状腺未分化癌にバルプロ酸 。

カルバマゼピンで薬剤性甲状腺機能低下症

カルバマゼピンにより、甲状腺ホルモンの代謝分解が促進され、薬剤性甲状腺機能低下症をおこします。添付文書には、慎重投与「甲状腺機能低下症の患者〔甲状腺ホルモン濃度を低下させるとの報告がある。〕 」、「甲状腺機能検査値の異常(T4値 の低下等) 」とも書かれています。

カルバマゼピンはフェニトインと同じく、甲状腺ホルモン[サイロキシン(T4)]と甲状腺ホルモン結合蛋白[血中サイロキシン結合蛋白(TBG)]の結合を阻害します(Acta Endocrinol (Copenh). 1984 Apr;105(4):477-81.)。

カルバマゼピン投与数年後に甲状腺機能を調べた報告では、TSHは変化しないが、FT4のみ有意に低下する報告が多数あります。これは、中枢性甲状腺機能低下症の所見と考えられます(J Child Neurol. 2015 Jan;30(1):63-8.)(Epilepsia. 2004 Mar;45(3):197-203.)

イーケプラ®(レベチラセタム)

新しい抗てんかん薬のイーケプラ®(レベチラセタム)は、従来の抗てんかん薬に比べ副作用が少ないと言われます。しかし、添付文書には、

  1. 易刺激性、錯乱、焦燥、興奮、攻撃性等の精神症状が出る事あるとされます。
  2. 内分泌障害として、①甲状腺腫 ②高プロラクチン血症 ③甲状腺機能低下症
  3. 高血圧

など、それなりに副作用がある様です。カルバマゼピンとの比較研究では、イーケプラ®(レベチラセタム)は甲状腺機能に影響なかったそうです(Epilepsy Behav. 2019 Jan;90:15-19.)。

異質なラモトリギン(ラミクタール®)

そう病・双極性障害治療薬でもあるラモトリギン(ラミクタール®)は高率に皮膚障害の副作用[中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群:スティーブンスジョンソン症候群)、薬剤性過敏症症候群]をおこします。出来る限り薬疹を回避しなければなりません。特にラモトリギン(ラミクタール®)は初回投与量が多いと重症薬疹のリスクが高くなります。しかしながら、甲状腺はじめ、内分泌系の副作用、骨粗しょう症は報告されていません。

元来、古典的な抗てんかん薬の薬疹発現率は高く、かつ1剤で薬疹が起これば他剤でも起こる交差反応の確率も高い。ラモトリギン(ラミクタール®)は新しい抗てんかん薬であるにも関わらず、薬疹発現率・交差反応の確率が高いです。

側頭葉てんかん(複雑部分発作)

側頭葉てんかん(複雑部分発作)は、側頭部、前側頭部を中心とする一側性、両側性のてんかんで、複雑で高次の精神・運動機能異常症状がみられます。

側頭葉てんかん(複雑部分発作)では、動作が止まり、一点を凝視、口をぺちゃぺちゃさせたり、手をもぞもぞさせたりの自動症が見られます。呼びかけても返事がなく(意識障害を起こしているため)、数分で回復することが多いが、その時のことを本人に尋ねても、全く記憶がありません。けいれんを伴わないてんかんです。

そのため、認知症と間違えられることも多いが、Mini-Mental State Examinationなどの認知症検査でほとんど問題なし。

側頭葉てんかん(複雑部分発作)の診断は、頭部MRI で海馬萎縮・硬化を確認。頭部MRI に異常がなくても、脳波異常を認めることが多い。

側頭葉てんかんにはテグレトール®(カルバマゼピン)、併用薬にガバペンチン、トピラマート、ラモトリジン、イーケプラ®(レベチラセタム)。イーケプラ®(レベチラセタム)は薬剤性甲状腺機能低下症、高血圧などの副作用。

抗てんかん薬、ガバペンチンは肝腎で代謝されず、血中蛋白とも結合しないため他剤と併用しやすく、他の抗てんかん薬のような血中濃度モニタリングは不必要ですが、腎不全では容量調節要。ガバペンチン改良型のレグナイト®はむずむず脚症候群に保険適応あります。

下垂体腺腫によるてんかん、脳外科手術後てんかん

中枢性甲状腺機能亢進症の原因となるTSH産生下垂体腺腫など下垂体腺腫が、浸潤性に脳内に広がれば、てんかんを引き起こす可能性があります。

また、それらを広範囲に外科的切除おこなった場合、脳外科手術後続発性てんかんが起こる事があります。

外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury:TBI)と甲状腺

外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury:TBI)による てんかん

外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury:TBI)により、てんかんが起こります。外傷性脳損傷(TTBI)後のてんかんの特徴は、全身性強直性間代性けいれんです。

外傷性脳損傷

外傷性脳損傷

全身性強直性間代性けいれん

全身性強直性間代性けいれん

外傷後てんかんが原因のけいれん重積発作(5分以上続く発作)では直ちに治療が必要。まず静脈確保して、第一選択薬は、

  1. ジアゼパム(セルシン®、ホリゾン®);塩酸チアミン(ビタミンB1)100mg静注→50%ブドウ糖50mL→ジアゼパム静注(5~10mg/分)
  2. ロラゼパム(ロラピタ静注®);外傷後てんかんと関係ありませんが、甲状腺手術前のロラゼパム投与で術後の吐き気・嘔吐の発生率が低下[Cah Anesthesiol. 1996;44(2):159-62.]
  3. 小児ではミダゾラム(ドルミカム®);甲状腺ホルモンは薬物代謝酵素CYP3A活性を低下させ、ミダゾラムの代謝分解を低下させる可能性があります[J Clin Pharmacol. 2010 Jan;50(1):88-93.]。‎

外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury:TBI)と甲状腺

甲状腺ホルモンは、子供における脳の発達、成人での大脳機能の維持に必要です(Nat Clin Pract Endocrinol Metab. 2007 Mar; 3(3):249-59.)(Trends Endocrinol Metab. 2010 Mar; 21(3):166-73.)。甲状腺ホルモンが脳神経細胞に作用する経路は、

  1. 甲状腺ホルモン受容体を介する(Endocr Rev. 2010 Apr; 31(2):139-70.)
  2. Nongenomic actionでT3が直接作用する(Nat Rev Endocrinol. 2016 Feb; 12(2):111-21.)

2通りがあります。

そのため、外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury:TBI)を受けた後の神経ニューロン回復(神経再生)にも、甲状腺ホルモンが関与する可能性があります。

同時に外傷性脳損傷(TBI)では、下垂体障害または視床下部損傷による中枢性甲状腺機能低下症になる可能性があります(頭部外傷後の中枢性甲状腺機能低下症)。(Eur J Endocrinol. 2010 Jan; 162(1):11-8.)

動物実験では、外傷性脳損傷(TBI)に甲状腺ホルモン(T3)投与すると、脳浮腫や神経機能が改善する報告が複数あります。(Pharmacol Res. 2013 Apr; 70(1):80-9.)(Mol Cell Neurosci. 2009 Dec; 42(4):408-18.)(Mol Cell Endocrinol. 2017;452:120–130.)

熱性けいれんと甲状腺

単純型熱性けいれんは、

  1. 1~3 歳で発症することが多い
  2. 両側性全身性のけいれん
  3. 5 分以内に消失
  4. けいれん後、速やかに意識回復
  5. 発熱時に1 回のみで終了し、繰り返すことは少ない
  6. 発熱の度に繰り返しても、6 歳以降には消失することが多い
熱性けいれんと甲状腺

単純型熱性けいれんで発症した2歳9ヶ月の幼児の甲状腺クリーゼ (原疾患は甲状腺機能亢進症/バセドウ病)の報告があります。(Pediatrics. 2020 Feb;145(2):e20191920.)

生後からレボチロキシン(甲状腺ホルモン剤、チラーヂンS)を服用している先天性甲状腺機能低下症児の熱性痙攣の発生率は1.6%で、正常コントロール小児の8.2%と比較して有意に低い(Acta Paediatr. 1998 Jun;87(6):623-6.)

ギテルマン症候群(Gitelman症候群)は、

  1. 低身長(16.3%);その約30%が成長ホルモン(GH)欠乏症と診断され、成長ホルモン補充療法が開始
  2. 熱性痙攣の既往(13.7%)
  3. 甲状腺機能障害(4.3%);甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症が半々
  4. てんかんと診断された(2.5%)

(Kidney Int Rep. 2018 Sep 28;4(1):119-125.)

妊娠中の母親の甲状腺機能異常は、小児てんかんの危険因子

妊娠中の母親の

  1. (顕性)甲状腺機能低下症(TSH>10 mIU/L)は、小児てんかんの危険因子(adjusted hazard ratio = 3.5[CI 1.2-10])
  2. (顕性)甲状腺機能亢進症は、生後1年以内のてんかんの危険因子 (aHR = 3.0 [CI 1.03-8.4]).

(‎Thyroid. 2018 Apr;28(4):537-546.)(J Pregnancy. 2013;2013:636705.)

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

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  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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