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ヨウ素(ヨード)と甲状腺    [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学医学部附属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

甲状腺専門医療施設でも、一般内科でも「普通に常識量食べる分にはヨウ素(ヨード)制限は必要ない、過剰に食べなければ良い。」と言われる事がほとんどです。しかし、どこまでが常識量で、どこからが過剰量か知った上で言ってる医者はほぼ皆無です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、診察時に個々の甲状腺患者さんの食生活・生活習慣をヒアリングしてヨウ素(ヨード)過剰摂取制限を指導いたします。(電話での対応はお断り致します。)

※ここで述べているヨウ素(ヨード)過剰摂取制限は、甲状腺の病気に対する日常の注意です。ネットでも、よく混同されていますが、アイソトープ(放射性ヨウ素; 131-I)治療1-2週間前から始める、一時的で厳格なヨウ素(ヨード)摂取制限とは異なります(これは、甲状腺または甲状腺腫瘍に131-Iを多く取り込ませ、放射線治療効果を上げるためのヨウ素(ヨード)摂取制限)。

Summary

日本は国際的にも稀なヨウ素(ヨード)過剰摂取国。ヨードはコンブ、昆布だし、根昆布、ヒジキ、モズクに多く、ワカメ、海苔(のり)、寒天、魚は無視できる程。橋本病ヨード過剰摂取は①甲状腺組織の破壊促進②甲状腺ホルモン合成を抑制(持続性ウォルフチャイコフ効果)③無痛性甲状腺炎誘発④甲状腺癌発生の可能性⑤バセドウ病誘発。バセドウ病も甲状腺乳頭癌の発生、抗甲状腺薬メルカゾールが効き難くなる可能性からヨード過剰摂取制限すべき。のど粘膜からもヨードは100%吸収されイソジンうがい液 ・のどスプレー・ルゴールスプレーは要注意。アズレン系のうがい薬はヨードが入っていない。

Keywords

橋本病,ヨード,甲状腺,甲状腺ホルモン,ウォルフチャイコフ効果,無痛性甲状腺炎,甲状腺癌,バセドウ病,ヨウ素,甲状腺機能低下症

ヨードと甲状腺

以下はヨウ素(ヨード)過剰摂取を何年~何か月続けた場合、起こリ得る様々な害を説明したものです。毎日の事でなければ、時々、摂り過ぎるくらいは問題ありません。

例①:おせちで昆布巻を食べ過ぎた⇒それくらい大丈夫です。
例②:造影CT(またはMRI)でヨード造影剤を使った。⇒毎月1回のペースで何か月も延々と続けなければ大丈夫です。
例③:風邪をひいたので、1週間イソジンでうがいした。⇒それくらい大丈夫です。

ヨウ素(ヨード)摂取量

コンブはヨードの過剰摂取の原因

日本は国際的にも稀な海藻類を日常的に多く摂取する国で、日本人は海藻類(昆布・ヒジキ・モズクなど)の摂り過ぎです。日本の土壌には多量のヨウ素(ヨード)が含まれ(大昔、日本は海底だった)、米にすら微量のヨウ素(ヨード)が含まれています。食品の成分表示で分かるように、かなりの食品にヨウ素(ヨード)エキスが入っていて、日本人はどんなにヨウ素(ヨード)摂取を制限してもヨウ素(ヨード)欠乏になりません。日本でヨウ素(ヨード)欠乏により甲状腺機能低下症を起こした報告は1例もありません。

ヨウ素(ヨード)の口からの吸収率は100%、皮膚からは0.1%です。

日本人の1日のヨウ素(ヨード)平均摂取量は0.5mg-3mg(500μg-3000μg)とされ、厚生労働省の推奨値0.13mg(130μg)、上限値2.2mg(2200μg)を超えています(Thyroid 18: 667-668,2008)。

WHO(世界保健機構)の勧告では、1日のヨウ素(ヨード)推奨量は250μg(0.25mg)で、

  1. 妊娠時は500μg(0.5mg)以上を過剰摂取
  2. 非妊娠時は300μg(0.3mg)以上を過剰摂取

としています(これじゃ、日本人の大半はヨウ素(ヨード)過剰摂取じゃん)。[Geneva, World Health Organization(WHO),2007]

食品のヨウ素(ヨード)含有量

みそ汁200mlで一日分のヨード量

インターネットが普及する前の昭和の時代には、海藻は体に良いので、どんどん食べろと言われていました。海草に多く含まれるヨウ素(ヨード)は甲状腺ホルモンの原料ですが、甲状腺の病気がない健康な人でさえ、1日のヨウ素(ヨード)摂取量が1.5mg(1500μg)を超えると甲状腺機能低下症をおこします(Metabolism. 1988 Feb;37(2):121-4.)。

※元々、甲状腺の病気がある人、遺伝的な素因のある人は、さらに甲状腺機能異常を起こしやすい。[ヨウ素(ヨード)過剰摂取の害]

食品中のヨード含有量
食品中のヨード含有量
妊娠中のヨード過剰摂取制限

表より、特にコンブ、昆布だしにヨウ素(ヨード)が過剰に含まれているのが分かります(根昆布はケタ違いに多い)。次いで、ヒジキ、表にありませんがモズクです。ワカメ、海苔(のり)、寒天、魚は無視できるほどです。よって、長崎甲状腺クリニック(大阪)では、コンブ(昆布だし)、ヒジキ、モズクの3点セットを制限するよう指導しています。

表には書いてありませんが、メカブ100g当たりヨウ素(ヨード)390μg(0.39mg)で少ないです(ワカメの茎なので)。

厚生労働省の1日のヨウ素(ヨード)摂取量の推奨値0.13mgに対し、コンブわずか1gに含まれるヨウ素(ヨード)量でも10倍の1.3mgです。日本人のヨウ素(ヨード)過剰摂取は、コンブ、特にコンブ出汁(だし)が最大の原因です(J Epidemiol. 2016 Dec 5;26(12):613-621.)。

日本人の食生活には、避けても避けても避けきれないヨードが含まれているため、どんなにヨード制限しても、ヨード欠乏になる事は無いのです。

ヨウ素(ヨード)過剰摂取の害

ヨード(ヨウ素)は甲状腺に集まる

体の中に入ったヨード(ヨウ素)は甲状腺に集まり、甲状腺ホルモンを作る原料になります。

しかし、甲状腺ホルモン合成に必要な量を遥かに超えるヨウ素(ヨード)過剰摂取は、下記のようにトンデモナイ事になる危険性があります。「過ぎたるは及ばざるがごとし」。(ほんとは怖い家庭の医学のように・・・・)

甲状腺の病気がない健康な人でさえ、1日のヨウ素(ヨード)摂取量が1.5mg(1500μg)を超えると甲状腺機能低下症をおこします(Metabolism. 1988 Feb;37(2):121-4.)。

まして、既に甲状腺が悪い方には、ヨウ素(ヨード)過剰摂取の害は更に深刻で、摂取量が一日0.5mg(500μg=日本人の平均摂取量の下限値)以上になると甲状腺機能に異常が起こります。(Am J Clin Nutr. 2012 Feb;95(2):367-73.)

ほとんどの甲状腺の病気で共通する注意点は、ヨウ素(ヨード)の過剰摂取を制限することです(ただし常識量は可)。

ヨウ素(ヨード)の過剰摂取は、

1. 甲状腺組織の破壊を促進、橋本病(慢性甲状腺炎)を誘発

日本人女性の約20%は、程度の差はあれ、自己免疫により甲状腺組織が破壊される橋本病(慢性甲状腺炎)を持っているとされ、ヨウ素(ヨード)により加算されるダメージは深刻です。

同時に、ヨウ素(ヨード)により、甲状腺に対する自己免疫が誘導され、橋本病(慢性甲状腺炎)になる可能性があります。ヨウ素(ヨード)過剰摂取国の日本で橋本病(慢性甲状腺炎)が異常に多い理由の1つと考えられます。

ヨウ素(ヨード)による甲状腺障害・自己免疫誘導の具体的なメカニズムは、まだ不明ですが、

  1. 過剰なヨウ素(ヨード)により、サイトカイン・ケモカイン産生が誘導され、甲状腺組織を障害する免疫細胞が集まる。(J Autoimmun. 1999 May; 12(3):157-65.)(Exp Mol Pathol. 2003 Feb; 74(1):1-12.)
    特にIFN-γ、IL-4、IL-17が誘導されます(J Autoimmun. 1999 May; 12(3):157-65.)(Endocrinology. 2009 Nov; 150(11):5135-42.)
  2. 甲状腺ホルモンを産生する甲状腺濾胞上皮細胞で、処理するヨウ素(ヨード)が多過ぎると、イオン化したヨウ素(ヨード)により酸化ストレスのレベルが上昇し、有毒な活性酸素(フリーラジカル)・過酸化脂質が発生。甲状腺組織傷害が起こる。(Endocrinology. 1995 Nov; 136(11):5054-60.)(Endocrinology. 2008 Jan; 149(1):424-33.)
    サイログロブリンが酸化され抗原となる(Biochem J. 2001 Dec 15; 360(Pt 3):557-62.)→抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)が誘導される。
  3. 甲状腺ホルモンを合成する過程で、サイログロブリンヨウ素(ヨード)が結合すると、抗原となり、免疫細胞に攻撃される(Science. 1985 Oct 18; 230(4723):325-7.)→抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)が誘導される。

などの説があります(Int J Mol Sci. 2014 Jul; 15(7): 12895–12912.)。甲状腺組織が遺伝子レベルで損傷すると発がんが起こる可能性もあります。

2. 甲状腺ホルモンの合成を抑制(持続性ウォルフチャイコフ効果)

ヨウ素(ヨード)の過剰摂取は、甲状腺ホルモン合成過程でのヨード有機化を障害し、甲状腺ホルモン合成を抑制します[急性ウォルフチャイコフ(Wolff-Chaikoff)効果](J Biol Chem. 1948;174:555–564.)。

健康な人はヨウ素(ヨード)の過剰摂取が続いても、48時間以内に甲状腺内へのヨウ素(ヨード)取り込みが減少(Na-Iシンポーターが減少)して、急性ウォルフチャイコフ(Wolff-Chaikoff)効果が解除されます(エスケープ現象)。(Endocrinology 140:3404-3410,1999)Clin Endocrinol Metab. 1975;40:435–441.)。

しかし、

  1. 橋本病(慢性甲状腺炎)
  2. 抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)治療後で寛解状態のバセドウ病
  3. アイソトープ(放射線、131-I)治療後バセドウ病
  4. 出産後甲状腺炎
  5. 亜急性甲状腺炎後
  6. 甲状腺腫瘍で甲状腺半葉切除後
  7. 高齢者
  8. 胎児・新生児
  9. 透析患者
  10. 慢性肺疾患
  11. 神経性食欲不振症

などでは、エスケープ現象がおこらず、甲状腺ホルモンの合成が抑制され続けます[持続性ウォルフチャイコフ(Wolff-Chaikoff)効果](J Clin Endocrinol Metab. 1975;40:435–441.)。

甲状腺癌だけでは、持続性ウォルフチャイコフ(Wolff-Chaikoff)効果が起こらないとされます(Cancer. 1988 Apr 15;61(8):1674-8.)。

持続性Wolff-Chaikoff効果

甲状腺の病気が無い健康成人のヨウ素(ヨード)と甲状腺機能の関係

日本甲状腺学会で行われている大規模な調査では、甲状腺の病気が無い(過去にした事も無い)健康成人2,087名のヨウ素(ヨード)超過剰摂取者(3000μg=3.0mg/日以上)と、それなりに過剰摂取者(3000μg/日未満)の甲状腺刺激ホルモン(TSH)値は、前者が有意に高いが、正常範囲だった様です(TSH 2.687 vs 1.919μIU/mL)。

(第62回 日本甲状腺学会O1-2 健康成人におけるヨウ素摂取量と甲状腺機能との関連についての全国調査)

※日本人の1日のヨウ素(ヨード)平均摂取量は0.5mg-3mg(500μg-3000μg)とされ、厚生労働省の推奨値0.13mg(130μg)、上限値2.2mg(2200μg)を超えています(Thyroid 18: 667-668,2008)。

甲状腺の病気がない健康な人でさえ、1日のヨウ素(ヨード)摂取量が1.5mg(1500μg)を超えると甲状腺機能低下症をおこします(Metabolism. 1988 Feb;37(2):121-4.)。

いくら正常範囲と言っても、ヨウ素(ヨード)が甲状腺ホルモン合成を抑制しているのは明らかす。しかもTSH 2.687 >2.5は妊娠可能女性なら潜在性甲状腺機能低下として不妊症・習慣性流産・不育症の原因になり得るため、例え甲状腺の病気が無い人でもヨウ素(ヨード)過剰摂取は良くないと思います(潜在性甲状腺機能低下症不妊症・習慣性流産・不育症)。

4. 甲状腺癌の発生率を増加させる可能性

さらに恐ろしいことに、甲状腺乳頭癌になった人は、バセドウ病橋本病だけの人と比べて、かなり多くのヨードを摂取していたとする研究が複数(最低でも17論文)あります。

結論は、

  1. 甲状腺乳頭癌のサイズとヨード摂取量は関連があり
  2. ヨード過剰摂取地域(要するに日本)では、ヨード摂取量と甲状腺乳頭癌の発生に有意な関連がある;東京の国立がんセンター Japan Public Health Center-based Prospective Study Groupの論文(Eur J Cancer Prev. 2012 May; 21(3):254-60.)

に集約されます。逆に、その因果関係を否定する論文は見当たりません。

ヨード甲状腺乳頭癌特有のBRAFという遺伝子の変異、MAPキナーゼ1[Mitogen activated protein kinase 1 (MAPK1)]活性化などをおこさせるためと考えられます。

(Tumour Biol. 2014 Nov;35(11):11375-9.)(Biol Trace Elem Res. 2018 Aug;184(2):317-324.)(Head Neck. 2017 Aug;39(8):1711-1718.)(Cell Physiol Biochem. 2017;43(4):1325-1336.)

5. 甲状腺腫瘍のサイズを増大させる可能性

「2. 甲状腺ホルモンの合成を抑制(持続性ウォルフチャイコフ効果)」により、血中甲状腺ホルモンが低下すると、脳下垂体からのTSH(甲状腺刺激ホルモン)分泌が増えます。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)は、正常な甲状腺組織を刺激するだけでなく、TSH受容体を持つ甲状腺良性腫瘍( 腺腫様甲状腺腫  良性濾胞腺腫 )・甲状腺分化癌( 甲状腺濾胞癌 甲状腺乳頭癌 )も刺激します。刺激により、腫瘍細胞の増殖が促進され、腫瘍のサイズが増大するとされます。

6. バセドウ病を誘発する事ある

ヨードの過剰摂取で、甲状腺機能亢進症/バセドウ病を発症させる事があります(通常は、甲状腺機能低下症をおこし、無痛性甲状腺炎を誘発)。(第54回 日本甲状腺学会 P196 昆布ダイエットを契機にバセドウ病及びバセドウ病眼症を発症した一例)

バセドウ病とヨウ素(ヨード)

バセドウ病ヨウ素(ヨード)制限には一定の見解はなく、某有名甲状腺専門病院のホームページでも「ヨードを制限する必要はないだろう」と述べています。

ヨウ素(ヨード)過剰摂取制限が、甲状腺機能亢進症/バセドウ病

  1. 初期治療での抗甲状腺薬(メルカゾール等)の効果を高めない(J Endocrinol Invest. 2006 Apr; 29(4):380-4.)
    ※ただし、寛解率で長期的に調べた報告では、ヨウ素(ヨード)過剰摂取制限でバセドウ病寛解率が上がる(J Clin Endocrinol Metab. 1985 Aug; 61(2):374-7.)(Ann Intern Med. 1987 Oct; 107(4):510-2.)
    基礎実験の話ですが、‎慢性的なヨウ素(ヨード)過剰摂取は、抗甲状腺薬の甲状腺濾胞細胞細胞への取り込みを減らし、排泄を促進するため効果が弱まる)。‎(Endocrinology. 1976 Apr; 98(4):1031-46.)
  2. 寛解後の1年間における再発率を減らさない(Eur Thyroid J. 2015 Mar;4(1):36-42.)
    ヨウ素(ヨード)欠乏地域では再発率を減らすとの報告あり(Lancet. 1965 Oct 30;2(7418):866-8.)

とする報告があります。これは、その通りだと思います。

しかし、数年~数十年の単位で視点を変えた場合、以下の様な事が考えられます。

  1. バセドウ病橋本病はコインの裏表であり、両方の抗体が併存し、どちらに行くかはTh1/Th2リンパ球の比率による」のです(橋本病バセドウ病は入れ替わる---元は同じ自己免疫性甲状腺疾患 )。
    よって、バセドウ病であっても、ヨードの過剰摂取で、①甲状腺組織の破壊が促進、②無痛性甲状腺炎(痛みを伴わない甲状腺の亜急性破壊)を誘発(特にバセドウ病寛解期に起こる事があります)する可能性があります。
    最近では、軽症バセドウ病にヨウ化カリウム(KI)単独投与を数か月~年単位行う甲状腺専門病院があります(
    筆者は懐疑的なヨウ化カリウム(KI)単独療法)。それはヨード過剰摂取と同じ状態になり無痛性甲状腺破壊性甲状腺炎アミオダロン誘発性甲状腺中毒症2型(破壊性甲状腺炎型)と同じ原理)を起こす可能性があります(Intern Med. 2021 Jun 1;60(11):1675-1680.)。
  2. バセドウ病の1.3%に甲状腺乳頭癌が発生すると言われています。一方でヨード甲状腺乳頭癌特有のBRAFという遺伝子の変異を起こさせる事が最近明らかになりました。(バセドウ病と腫瘍・癌
     
  3. 甲状腺ホルモン正常化していない不安定な状態で造影CT(またはMRI)でヨード造影剤を使うと、死亡率10%の甲状腺クリーゼをおこす危険があります。
     
  4. ヨードの過剰摂取で、甲状腺機能亢進症/バセドウ病を発症させる事があります(通常は、甲状腺機能低下症をおこし、無痛性甲状腺炎を誘発)。(第54回 日本甲状腺学会 P196 昆布ダイエットを契機にバセドウ病及びバセドウ病眼症を発症した一例)
    また、ヨウ素(ヨード)過剰領域におけるバセドウ病患者では、バセドウ病の活動性抗体TS-Abの陽性率は91.7%で、軽いヨウ素(ヨード)欠乏地域の66.7%と比べ有意に高い(Zhonghua Nei Ke Za Zhi. 2006 Feb;45(2):95-9.)。
     
  5. ヨードの日常的な過剰摂取で、抗甲状腺薬メルカゾールが効きにくくなる事があります。京都市立病院の報告では、料亭板前見習いの25歳男性バセドウ病患者で、職業上大量の昆布出汁を試飲し尿中ヨード排泄量1490μg/g・Cre と高値、メルカゾール60mg(12錠)まで増量したが甲状腺機能改善せず。ヨード制限行い6週目に尿中ヨード排泄量68μg/g・Creと低下すると共に、甲状腺ホルモンが下がり出したため、甲状腺全摘術施行したそうです。
    原因として、抗甲状腺薬メルカゾールは甲状腺ホルモン合成酵素甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)ヨード有機化作用(ヨードをチロシンに結合させる作用)を阻害しますが、多量のヨードが阻害効果を減弱させる可能性が推察されます。
    (第59回 日本甲状腺学会 P1-2-4 ヨード過剰摂取によりチアマゾールの薬効が阻害されたと考えられた一例)

これを知っていれば「気にせずにヨードを普通にとってかまいません。」などとは、とても言えないと思います。

赤色3号・赤色105号

ヨードを含む赤色105号

赤色3号・赤色105号はチェリー・福神漬・紅生姜・梅干・赤ソーセージ等に使われる赤色色素です。ヨード(ヨウ素)が含まれていますが、毎日多量に食べなければ大丈夫です。医療機関で処方される薬

  1. フルイトラン錠®(トリクロルメチアジド錠);高カルシウム血症、高尿酸血症(痛風)、光線過敏症も起こすので、可能なら変更した方が良いと思う
  2. メキシチールカプセル®(メキシレチン)
  3. ハルシオン0.125mg錠®(トリアゾラム);認知症の原因になるので、できるだけ変更した方が良い
  4. ビタメジンカプセル;ただのビタミン剤だが、赤色の付いていない他剤に変更をお勧めします。

にも含まれています。毎日の事になるので、他の薬で代用が可能なら変更した方が良いでしょう。

スピルリナ・クロレラ

スピルリナ

健康食品のスピルリナもヨード(ヨウ素)が含まれていますが、2.5~4.5mg/100g(0.025~0.045mg/1g)です。コンブ(昆布だし)、ヒジキ、モズクより遥かに少なく、わかめ、海苔より若干少ないにおで、さほど問題にはなりません。ただし、ヨード(ヨウ素)過剰摂取国の日本なので、敢えて摂取しなくても良いと思います。

クロレラにもヨードが含まれます

健康食品として簡単に購入できるクロレラにもヨード(ヨウ素)が含まれている事があります。

サン・クロレラAなどは、ヨード(ヨウ素)が含まれていない様で、全てのクロレラがヨード(ヨウ素)を含む訳ではありません。

クロレラに対する日本医師会の注意勧告

クロレラが免疫系に作用するかは、定かでなく、「インフルエンザ等への免疫を高める」ことは証明されていません。甲状腺機能低下症/橋本病に合併する関節リウマチなど自己免疫疾患には念のためクロレラの使用を控えた方が良いでしょう。

胃薬ヨウ化オキサピウム、不整脈治療薬 アミオダロン(アンカロン®)、皮膚科で使うヨウ化カリウム(KI)自体も要注意

最近、あまり使われなくなりましたが、胃薬ヨウ化オキサピウム(エスペラン、トイペラン、オキサペラン、アリプロイド、エスパレキサン錠®)も1錠あたり2.7mgと多量のヨード(ヨウ素)を含みます。毎日の服薬であるため、自ずとヨード(ヨウ素)過剰摂取になります。化学式はC22H34INO2です。

不整脈治療薬 アミオダロン(アンカロン®)もヨード(ヨウ素)を大量に含んで甲状腺機能障害を起こします(不整脈治療薬 アミオダロン(アンカロン®)が引きおこす甲状腺機能異常 )。

ベーチェット病などが原因で起こる結節性紅斑の治療に、1日400~900 mgの大量ヨウ化カリウム(KI)が投与されると、無痛性甲状腺炎甲状腺機能低下症を起こします(結節性紅斑の治療で無痛性甲状腺炎甲状腺機能低下症)。

ヨード(ヨウ素)は気管支粘膜の分泌促進、粘液の粘度を低下させるため、去痰作用(痰を切る効果)があります[大量ヨウ化カリウム(KI)の添付文書に書かれています]。 しかし、実際に去痰目的で使用されているのを見た事はありません。

皮膚からのヨード吸収

ヨード(ヨウ素)軟こう

皮膚からのヨード(ヨウ素)吸収率はわずか0.1%ですが、熱傷などで皮膚の粘膜バリアが破たんした状態での吸収率は、さらに高いと考えられます。例えば、全身の重度熱傷で、ヨード(ヨウ素)含有軟膏を1日1500g使用すれば、数週で甲状腺機能低下症になります。

  1. 白糖・ポビドンヨード(ヨウ素)配合軟こう(ユーパスタ®・ソアナース®):100g中ヨード3g配合
  2. ヨウ素(カデックス®・ヨードコート®)軟こう・外用散0.9%:100g中ヨード0.9g配合

で、たとえ0.1%の吸収率でも過剰量になります。

また、たとえ少量のヨード(ヨウ素)含有軟膏であっても、数か月間使用すると甲状腺機能低下症に至ります。

閉塞性動脈硬化症糖尿病壊疽で、足の潰瘍・壊死部にヨード(ヨウ素)含有軟膏剤(ユーパスタ®)長期使用して、急激な甲状腺機能低下症[急性ヨード(ヨウ素)中毒]を起こします。

[閉塞性動脈硬化症糖尿病壊疽ヨード(ヨウ素)含有軟膏剤(ユーパスタ®)使用して、急激な甲状腺機能低下症(急性ヨード(ヨウ素)中毒)]を御覧下さい。]

ポビドンヨード10%消毒液

外用消毒液 イソジン液10%は1mL中にポビドンヨード 100mg(有効ヨウ素として10mg)を含有します。小さな傷口にチョチョと塗るだけなら問題ありません。

傷口のない広範囲の正常皮膚に10mL塗ればヨード(ヨウ素)100mg x 0.001=0.1mgが吸収される計算になります。しかし、実際は損傷しバリアの崩壊した皮膚に塗布するため吸収量は遥かに多くなります。

手術の消毒でもポビドンヨードは使用されます。帝王切開手術でポビドンヨードを使用された母親の甲状腺ホルモン・尿中ヨウ素を調べた報告があります。ポビドンヨード使用群では、非使用群に比べてFT3の減少は約1.5倍、TSHレベルは有意に増加、尿中ヨウ素は有意に増加(25% vs 2%)。 (J Matern Fetal Neonatal Med. 2014 Jul;27(10):1020-2.)

ポビドンヨード10%消毒液のヨード(ヨウ素)毒性は、体表面の20%を超える熱傷の消毒後に起こりやすいとされます[Lancet. 1976 Feb 7;1(7954):280-2.]。小児ではさらに狭い面積で起こり得ます[Case Rep Crit Care. 2021 Jun 24;2021:5528210.]。

イソジン液10%のその他副作用として、

  1. 皮膚から体内に吸収される事によりアナフィラキシーショック(0.1%未満)
  2. 皮膚接触皮膚炎、そう痒感、灼熱感、皮膚潰瘍、皮膚変色(0.1%未満)

があります。

また、含よう素泉というヨウ素イオン(I-)を含む温泉もあり、甲状腺の病気がある人は要注意です。(温泉・入浴・お風呂・サウナと甲状腺

ヨード造影剤と甲状腺

沿岸性甲状腺腫地方 /日本国内でもヨウ素(ヨード)摂取量に大きな違いがある

日本人のヨウ素(ヨード)必要量0.1mg/日、平均摂取量1-3mg/日であるのに対し、海沿いで甲状腺腫(甲状腺の腫れ)が多発する沿岸部甲状腺腫地方では30mg/日(300倍)の異常な量のヨウ素(ヨード)(日常の食事に10~20gの昆布が含まれる)を摂取し、甲状腺がんの発生が多いです。北海道沿岸地域が代表的で、沿岸性甲状腺腫が初めて報告されたのは日高、礼文、利尻の調査でした。(第59回 日本甲状腺学会 専門医教育セミナーⅡ)

日本国内でもヨウ素(ヨード)摂取量に大きな違いがあります。

公益財団法人成長科学協会の調査では、北海道と北陸地方が特にヨウ素(ヨード)摂取量が多い。

第60回 日本甲状腺学会での調査報告では、各地の企業検診で952名の尿中ヨウ素濃度を調べた結果、中央値は215 μg/gCre

  1. 関東地域:125.5-151.0μg/gCre
  2. 北海道厚岸郡:248μg/gCre
  3. 神戸市(兵庫県、港町):302.5μg/gCre
  4. 宇土市(熊本県、島原湾に近い):222μg/gCre
    (第60回 日本甲状腺学会 O2-1 食品からのヨウ素摂取量が甲状腺機能に及ぼす影響について)

関東地域が少ないですが、理由は不明。関東の人は、コンブ(汁含む)・ひじき・モズクを、あまり食べないのだろうか?(関西人の筆者には分かりません)。北海道厚岸郡が多いのは、何となく理解できます。神戸市も、そこそこ多いのは、なぜだろうか?大阪で診療してる筆者の経験では、大阪人は、とにかくコンブ(汁含む)・ひじき・モズクの摂取量が多い。神戸市も同じと考えるなら納得できます。

第65回 日本甲状腺学会の臨床重要課題では、学童の随時尿中ヨウ濃度(UIC)の中央値が最も高いのは北海道中標津町で1071 μg/L、最も少ないのは種子島で209 μg/Lだったそうです(第65回 日本甲状腺学会 R-5)。

ただ、この調査報告の問題点は、

  1. 学童を対象としており、成人のデータではない。高齢者と学童が同じヨウ素(ヨード)摂取量のはずは無く、コンブをたんと食べる高齢者は珍しくありませんが、コンブを多く食べる学童は変わり者です。
    また、WHOは学童の随時尿中ヨウ素濃度(UIC)の中央値を地域住民全体のヨウ素(ヨード)摂取量の指標としていますが、あくまで高齢者と学童が同じヨウ素(ヨード)摂取量であるのが前提です。日本のように高齢者と学童で極端に異なる国は想定していません。
  2. 単位がμg/Lと尿中クレアチニン(Cr、要するに筋肉量)で補正されていないため、体型・体格・成長具合によりばらつきが大きくなります。大きな欧米人の学童と、小柄なアジア人の学童を単純比較する結果となり、正確な比較にはなりません。

(おまけ)日本人の民族性はヨウ素(ヨード)過剰摂取によるのか?

日本甲状腺学会で非常に興味深い動物実験の結果がありました(あくまで動物実験です)。ヨウ素(ヨード)過剰摂取による脳機能発達への影響を調べるため、生後10週のマウスに20倍量ヨウ素(ヨード)を投与、行動実験を行います。結果、甲状腺濾胞の肥大傾向あるも甲状腺ホルモン値に異常なし、雌マウスで学習獲得能の上昇を認め、雄マウスでは社会的新奇探索性の低下を認めました。(第62回 日本甲状腺学会 P2-2 マウスモデルを用いた慢性ヨウ素摂取過剰による脳発達への影響 の解明)

雄雌を度外視すれば、日本人の民族性に当てはまるような気がします。例えば、戦国時代の鉄砲。日本人が発明した訳ではありません、種子島で南蛮人から譲り受けた鉄砲を独自に改良、量産化してしまいます。物理・化学・数学・・、科学の法則は皆西洋で探求されたもの。ヨウ素(ヨード)過剰摂取は日本人の民族性に影響しているのでしょうか?

(おまけ)海藻類は誤嚥性肺炎・窒息の危険

海藻類はヨウ素(ヨード)が多いだけでなく、

  1. 嚥下機能の低下した高齢者
  2. 甲状腺癌の反回神経浸潤甲状腺手術後の反回神経麻痺

の方が食すると、

  1. 誤嚥(誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎
  2. のどに詰めて窒息(モチをのどに詰めて輪状甲状間膜切開

する危険性があります。

日本以外はヨード欠乏国

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

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