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不妊症/習慣性流産/体外受精(IVF)と甲状腺    [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波(エコー)検査の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:最新・専門の検査/治療/知見①甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎クリニック(大阪)

ジェンザイム社のキャラクター、タイロンちゃん

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)でしかできない検査/治療・当院ホームページでしか得られない情報が満載です。これらは、院長が最新の海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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ジェンザイム社のキャラクター、タイロンちゃんです。

Summary

甲状腺の病気、甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能亢進症/バセドウ病における不妊症/習慣性流産/体外受精(IVF)を解説。甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)、ヨード過剰摂取、抗リン脂質抗体症候群、子宮卵管造影検査等も説明。

不妊症/習慣性流産と甲状腺

衝撃的事実

  • 習慣性流産、不妊症の約20%は橋本病の自己抗体[自分の甲状腺を破壊する抗体;抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]が原因との報告がありますが、一方で関係ないとの意見もあります(最近では、これらの抗体は無関係で、下記の甲状腺ホルモン自体の問題との結論になっています)。
    しかしながら、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性妊婦では、妊娠が進むにつれ、甲状腺ホルモン低下か顕著になり、流産の危険は増していきます。
  • また、習慣性流産、不妊症の10数%は軽度の甲状腺ホルモン不足(潜在性甲状腺機能低下症)が原因とされ、ほぼ確定的です。
  • 不妊治療専門クリニックで治療されている方の10数%は、実は甲状腺が原因とされます。

    習慣性流産とは3回以上流産する場合で、甲状腺異常の他、抗リン脂質抗体症候群・子宮形態異常・凝固因子異常などが原因です

潜在性甲状腺機能低下症

潜在性甲状腺機能低下症不妊症・習慣性流産

甲状腺ホルモン(FT3,FT4)は正常だが、TSHが高値の状態を「潜在性甲状腺機能低下症」と言います。潜在性甲状腺機能低下症は、女性に多いです。

ジェンザイム社のキャラクター、タイロンちゃん

習慣性流産、不妊症の10数%に、潜在性甲状腺機能低下症が存在すると報告されます。厚生労働省の統計では、日本人女性の流産率は13%ですが、上條甲状腺クリニックの上條桂一先生によると、TSH≧2.5の流産率は30%以上とされます。

そして、甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]補充治療により無事出産できた症例も報告されています。韓国の甲状腺研究者の報告では、治療による出産率は50%とされます。

すなはち、甲状腺専門医による適切な治療が必要不可欠なのです。

どうして、潜在性甲状腺機能低下症で不妊症・習慣性流産になるの?

プロラクチン(PRL)の上昇

脳下垂体ホルモンで、乳汁分泌をおこし、一方で妊娠を妨げるプロラクチン(PRL)は、脳内でTSH(甲状腺刺激ホルモン)と調節機構が同じです。

原発性甲状腺機能低下症橋本病)をはじめ、甲状腺自体に問題がある甲状腺機能低下症)では、

甲状腺ホルモン不足→下垂体-甲状腺フィ-ドバック機構によるTRH(TSH放出ホルモン)上昇→TSHとプロラクチン上昇

がおこり、妊娠し難く、かつ受精しても妊娠を維持出来なくなります。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)が、子宮内膜NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化

TSH(甲状腺刺激ホルモン)が、子宮内膜NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化するとの論文があります。NK(ナチュラルキラー)細胞は血液中の癌細胞やウイルス感染細胞を排除するリンパ球で、子宮内に移動、子宮内膜NK細胞となり、胎児を守ります。しかし、NK(ナチュラルキラー)細胞活性が強過ぎると、胎児を排除する方向に働きます。[Clin Rev Allergy Immunol. 2010 Dec;39(3):176-84]

では、甲状腺ホルモン剤どこまで増やせばいいの?

妊娠可能かつ甲状腺の病気がない健康女性で、TSH(甲状腺刺激ホルモン)は0.39(ほぼ0.4)~3.0μU/ml(95%信頼区間)です。隈病院の網野先生(尊敬しております)は、一般的な正常上限の5.0でなく3.0をカットオフ値とし、甲状腺ホルモン剤でTSHを3未満にすると、84.1%が妊娠したと報告されています。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、米国甲状腺学会のガイドラインに乗っ取り、着床直前から妊娠前期で推奨されるTSH<2.5になるよう厳格に調整します。

日本人妊娠可能女性のTSH正常値
甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)補充量の目安
妊娠前TSH(μIU/ml) チラーヂンS補充量(μg)
2.5-3.537.5
3.6-4.550
4.6-6.062.5

ただし、チラーヂンSは吸収率に、かなりの個人差があるため。あくまで目安です。

甲状腺ホルモン剤を増やせば出産できるの?

右は潜在性甲状腺機能低下症・顕在性甲状腺機能低下症妊婦の非常に有名な研究です。橋本病の有無(橋本病の自己l抗体を持っているか否か)に関係なく、甲状腺ホルモン剤を増やし、TSH<4.0にするだけでも流産がゼロに近くなり、満期出産が80%以上になります。(Thyroid 2002,12,63-68)

この研究では、橋本病の自己l抗体自体は流早産・不育に関係なく、甲状腺ホルモンの多い少ないのみが関係すると言う事になります。

甲状腺ホルモン補充療法後の流早産率の変化

橋本病の自己抗体

甲状腺ホルモンが正常でも、橋本病の自己抗体[自分の甲状腺を破壊する抗体;抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]が高い女性は不妊症/習慣性流産/出産後甲状腺炎おこす確率が高く、抗体価を減らすような生活習慣の改善が必要になります。東京の伊藤病院では抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]は流産率に関係ないとの見解を出しています。しかし、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性妊婦では、妊娠が進むにつれ、甲状腺ホルモン低下が顕著になり、流産の危険は増していくため、適切な甲状腺ホルモン補充療法が必要不可欠です。(確かに適切に甲状腺ホルモン補充療法がなされれば、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]があっても流産率は上がりません)

甲状腺ホルモン補充後 流産率

表は、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性妊婦(妊娠12週未満)にTSH<2.5になるよう甲状腺ホルモン補充療法行った有名な研究です。(J Clin Endocrinol Metab. 2010,95,1699-1707)

HYPO(甲状腺機能低下症妊婦)かつUniversal screeningが甲状腺ホルモン補充療法行った妊婦(左前方)。
HYPOかつCase findingの低リスク群が甲状腺ホルモン補充療法しなかった妊婦(左後方)。
EUは何もしない正常妊婦(右)

TSH<2.5になるよう甲状腺ホルモン補充療法行うと、例え抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性であっても、流早産率は正常妊婦と同じになります。

流産しないための甲状腺ホルモン補充療法

以上の結果が、現在の米国甲状腺学会ガイドライン2011の元になっています。長崎クリニック(大阪)では、忠実に米国のガイドラインに乗っ取り、流産しないための甲状腺ホルモン補充療法行います。

※ただし、甲状腺無関係の健常日本人妊婦の流産率は13%(厚生労働省の統計)ですので、甲状腺ホルモン補充しても、甲状腺以外の原因で流産は起こる可能性あります。

米国甲状腺学会ガイドライン2011に準じて

  1. 妊娠前期(13週まで):甲状腺刺激ホルモン(TSH) 0.1~2.5μU/ml
  2. 妊娠中期(14週~27週):                〃        0.2~3.0μU/ml
  3. 妊娠後期(28週~41週):                〃        0.3~3.0μU/ml

になるようコントロールします。

ヨード過剰摂取と不妊

日本人はヨード過剰摂取する食生活が普通です。橋本病の女性がヨード過剰摂取していると、甲状腺ホルモンの合成が抑制され(持続性ウォルフチャイコフ効果)、甲状腺機能低下症が悪化します。甲状腺機能低下症は前述の通り、不妊の原因となります。

また、橋本病の女性でも、橋本病でない女性でも、ヨード過剰摂取は甲状腺組織の破壊を促進し、妊娠後の甲状腺ホルモン必要量の増加(非妊娠時の1.3-1.5倍)をまかなうための予備力を低下させます。

日本人の1日のヨード平均摂取量は0.5mg-3mgとされ、厚生労働省の推奨値0.13mg, 上限値2.2mgを超えています(Thyroid 18: 667-668,2008)。WHO(世界保健機構)の勧告では、1日のヨード推奨量は250μg(0.25mg)で、

  1. 妊娠時は500μg(0.5mg)以上を過剰摂取
  2. 非妊娠時は300μg(0.3mg)以上を過剰摂取

としています。(Geneva, World Health Organization,2007)

潜在性高プロラクチン血症

脳下垂体ホルモンの一つプロラクチン(PRL)は脳内でTSH(甲状腺刺激ホルモン)と調節機構が同じです。これが、わずかに高い状態(潜在性高プロラクチン血症)でも不妊の原因となり、甲状腺の治療のみで妊娠が成立しない場合、治療を要します。

甲状腺機能正常化しても、血中プロラクチン(PRL)値が30 前後で正常上限、カベルゴリンを併用して妊娠・出産に至った症例。

甲状腺ホルモン剤少量にてプロラクチン(PRL)は軽度低下したが、さらにカベルゴリンを併用し、直後に妊娠が成立した症例。

が報告されています。(第55回 日本甲状腺学会 P1-10-04 自己免疫性甲状腺疾患を伴った不妊症例に対するカベルゴリン併用治療の有用性について)

院長の論文

子宮卵管造影検査

不妊症の原因の約20~30%は卵管因子であり、子宮卵管造影検査は避けて通れないものです。子宮卵管造影検査はヨード造影剤を使用するので、妊娠、子供への影響を心配する声が多いです。

より妊娠率が高い油性ヨード造影剤のリピオドール(ヨード化ケシ油脂肪酸エステル)は、1回の検査で2.4-4.8g(2400-4800mg)の異常な量のヨードを含んでおり(コンブ出汁200mlでヨード3mg)、一年以上の高ヨウ素血症と甲状腺腫、6か月間の甲状腺刺激ホルモン(TSH)上昇が続きます。

また、甲状腺と無関係の不妊女性にリピオドールを使用すると、高ヨウ素血症が1カ月後にピークになり、甲状腺機能低下が2-3カ月後におこり、6カ月後まで続きます。

水溶性ヨード造影剤のイソビスト(イオトロラン)は、体内に蓄積せず、最小限の影響で済むため、甲状腺の病気を持つ(特に橋本病/甲状腺機能低下症)女性にお勧めです。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病における不妊症/習慣性流産

コントロールされた甲状腺機能亢進症/バセドウ病における不妊症の率は5.8%、流産率は11.4-12.5%と報告されており、厚生労働省の統計での日本人女性の流産率13%と差はありません。

しかし、未治療の甲状腺機能亢進症/バセドウ病の流産率は21%と報告されています。(Br J Obstet Gynaecol 87: 970-975,1980)

体外受精(IVF)と甲状腺

採卵前の頻回注射(FSH/hMG)

体外受精(IVF)をおこなう際、採卵前の頻回注射(FSH/hMG)(上図)は急激な甲状腺機能低下(TSH上昇・ fT4低下)を起こします(下図)。甲状腺に異常がない不妊治療女性でも、TSH≧2.5になることあります。まして、元々甲状腺ホルモン産生する予備力のない橋本病/甲状腺機能低下症女性では、甲状腺機能低下の程度が、甲状腺に異常がない健常女性に比べ、はるかに大きくなります(下図)。(Fertil Steril. 2012;97:585-91.)

甲状腺に異常がない健常女性、橋本病/甲状腺機能低下症女性ともに、甲状腺機能低下(TSH上昇・ fT4低下)のピークは、排卵誘発のhCGワンショット後1週間におきます。

FSH/hMGは卵巣を刺激して卵胞を発育させる目的で使用されます。結果、急激な血中エストロゲン(女性ホルモン)増加により、血中の甲状腺ホルモンと結合するTBG(甲状腺ホルモン結合タンパク)も増加、体内で自由にホルモン作用をおこすfT4が急減少し甲状腺機能低下が一気に進みます。

この時の甲状腺機能低下が、その後の着床・妊娠成功率にどのような影響を与えるのか、いまだ論文・学会発表はありません。

排卵誘発剤GnRH

排卵誘発剤GnRH投与で、甲状腺を破壊する抗体;抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]が陽性者は無痛性甲状腺炎(痛みを伴わない甲状腺の亜急性破壊)を誘発おこしやすくなります。

男性不妊と甲状腺(御主人が原因の不妊かも)

男性不妊と甲状腺の関係が報告されています。甲状腺機能亢進症/バセドウ病の男性の精子数は著しく低くなり、性欲減退/インポテンツも起こり、男性不妊の原因になります。テストステロン(男性ホルモン)と黄体形成ホルモン(LH、脳下垂体ホルモン)の減少によるものです。テストステロン減少が強いと、乳房肥大(女性か乳房)も起こります。

抗リン脂質抗体症候群(抗カルジオリピン・β2GPI複合体抗体)

抗リン脂質抗体症候群は、胎盤血栓を形成、胎盤梗塞を起こします。胎児に血液供給途絶え、反復性の流産・子宮内胎児死亡に至ります。抗リン脂質抗体が原因の習慣性流産・死産は約4.5%と言われます。

抗リン脂質抗体は、動・静脈血栓症[脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞、下肢深部静脈血栓症(写真のように痛風と区別しにくい事あります)、腎梗塞、血栓性微小血管障害(TMA)]を起こします。若くて動脈硬化がないのに脳梗塞、心筋梗塞を起こした方は抗リン脂質抗体症候群の可能性あります。出血・血栓症を繰り返す場合もあります。

シェーグレン症候群・SLE(全身性エリテマトーデス)など膠原病、自己免疫性甲状腺疾患(橋本病バセドウ病)に合併します。また職場の検診で梅毒反応(RPR法)陽性で見つかる事もあります(生物学的偽陽性、TPHAは陰性)。

  • リン脂質を介する凝固反応を阻害するため活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)・プロトロンビン時間(PT-INR)延長、血小板数が正常か減少。
  • 抗リン脂質抗体抗カルジオリピンβ2グリコプロテイン 複合体抗体(3カ月間隔で2回陽性なら確定)、最近は抗プロトロンビン抗体が新たに発見されています。

抗リン脂質抗体症候群の詳細は、 甲状腺と血栓症---深部静脈血栓(プロテインS・プロテインC・アンチトロンビン欠損症)、抗リン脂質抗体症候群・非典型溶血性尿毒症症候群)  を御覧ください。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎クリニック(大阪)


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