検索

不妊症/習慣性流産・不育症/TSHと甲状腺機能低下症[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪]

このエントリーをはてなブックマークに追加

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。不妊治療を行う産婦人科・レディースクリニックと提携して妊活中の甲状腺管理を行っています。

ジェンザイム社のキャラクター、タイロンちゃん

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学医学部附属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会学術集会で入手した知見です。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編   内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等   糖尿病編 をクリックください

ジェンザイム社のキャラクター、タイロンちゃんです。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)(≧2.5)プロラクチン(PRL)[妊娠させないホルモン]≒ 相対的にLHFSH[妊娠に必要な卵胞黄体刺激ホルモン]

Summary

不妊治療専門クリニックの10数%は甲状腺が原因。潜在性・顕在性甲状腺機能低下症によるTSH(脳下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン)上昇でプロラクチン(PRL)[妊娠させないホルモン]も上昇。TSH≧2.5での流産率は30%以上。抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性では妊娠が進むと甲状腺ホルモン低下が顕著になり流産が増す。橋本病女性のヨード過剰摂取は甲状腺機能低下を増悪。甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)補充で妊活中妊娠前期TSH<2.5、中期・後期TSH<3.0μU/mlを維持すれば、甲状腺だけが原因の不妊・流産・不育症は解決。未治療甲状腺機能亢進症/バセドウ病の流産率高い。

Keywords

不妊症,習慣性流産,甲状腺,橋本病,甲状腺機能低下症,甲状腺ホルモン,TSH,プロラクチン,チラーヂン,TPO抗体

不妊症/習慣性流産・不育症と甲状腺

衝撃的事実

不妊治療専門クリニックで治療されている方の10数%は、実は甲状腺が原因とされます。

  • 習慣性流産(反復性流産)・不育症、不妊症の約20%は橋本病の自己抗体[自分の甲状腺を破壊する抗体;抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]が原因との報告がありますが、一方で関係ないとの意見もあります(最近では、これらの抗体は無関係で、下記の甲状腺ホルモン自体の問題との結論になっています)。
    しかしながら、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性妊婦では、妊娠が進むにつれ、甲状腺ホルモン低下が顕著になり、流産・不育症の危険は増していきます。
     
  • また、習慣性流産(反復性流産)・不育症、不妊症の10数%は軽度の甲状腺ホルモン不足(潜在性甲状腺機能低下症)が原因とされ、ほぼ確定的です。しかも、流産リスクは中等度以上の甲状腺機能低下症(顕性甲状腺機能低下症)と同程度とされます。

    習慣性流産(反復性流産)とは3回以上流産する場合、不育症とは連続して2回以上流産・死産(生後1週間以内の新生児死亡を含む)を繰り返す場合で、甲状腺異常の他、糖尿病、卵管狭窄・閉塞、抗リン脂質抗体症候群、子宮形態異常、凝固因子異常などの原因がありますが、原因不明の場合が多いです。

潜在性甲状腺機能低下症

潜在性甲状腺機能低下症不妊症・習慣性流産・不育症

甲状腺ホルモン(FT3,FT4)は正常だが、TSH(脳下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン)が高値の状態を「潜在性甲状腺機能低下症」と言います。潜在性甲状腺機能低下症は、女性に多いです。

不妊と甲状腺

習慣性流産(反復性流産)・不育症、不妊症の10数%に、潜在性甲状腺機能低下症が存在すると報告されます。厚生労働省の統計では、日本人女性の流産率は約13-15%ですが、上條甲状腺クリニックの上條桂一先生によると、TSH≧2.5の流産率は30%以上とされます(上條甲状腺クリニックの甲状腺疾患Q&A)。

そして、甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]補充治療により出産できる確率は増えます。韓国の甲状腺研究者の報告では、治療による出産率は50%とされます。

※100%にならないのは、甲状腺以外の原因も同時に持っているからです(例えば、加齢による卵子の劣化、女性ホルモン・子宮自体の問題、夫の精子との相性)

甲状腺専門医による適切な治療で、甲状腺が原因の不妊については解決できます。

どうして、潜在性甲状腺機能低下症不妊症・習慣性流産・不育症になるの?

妊娠させないホルモンのプロラクチン(PRL)上昇

脳下垂体ホルモンの1つで、乳汁分泌をおこし、一方で妊娠を妨げるプロラクチン(PRL)[妊娠させないホルモン]は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)と脳内での調節機構が同じです(不妊・生理不順 高プロラクチン血症)。

プロラクチン(PRL)[妊娠させないホルモン]上昇は、相対的なLH(黄体形成ホルモン)FSH(卵胞刺激ホルモン)低下→プロゲストロン(黄体ホルモン)エストラジオール(E2)[妊娠ホルモン]低下を起こします。

橋本病(慢性甲状腺炎)甲状腺機能低下症では、

甲状腺ホルモン不足→下垂体-甲状腺フィ-ドバック機構によるTRH(TSH放出ホルモン)上昇→TSHとプロラクチン(PRL)上昇がおこり、妊娠し難く、かつ受精しても妊娠を維持出来なくなります。

プロラクチン(PRL)脳とTSH(甲状腺刺激ホルモン)の調節機構
甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)で、どれ位プロラクチン(PRL)[妊娠させないホルモン]が低下するか?

甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)治療で実際、どれ位プロラクチン(PRL)[妊娠させないホルモン]が低下するのでしょうか?報告では、妊娠希望女性21例、

  1. 年齢34.8±7.5歳
  2. 血中TSH値 5.44±2.41μIU/mL
  3. 血中PRL値  25.5±13.1ng/mL

甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を平均35μg 投与、

  1. 補充後血中TSH値 1.66±0.96μIU/mL
  2. 補充後血中PRL値 20.8±10.6ng/ mL

有意な低下を認めた(P<0.05)そうです。簡単に考えると 血中TSH値 3~7を、2.5未満にすれば、プロラクチン(PRL)は平均5(約20%)低下する事になります(これは大きい!)。
(第60回 日本甲状腺学会 P1-2-1 妊娠希望の潜在性甲状腺機能低下症患者に対する甲状腺ホルモン 補充療法前後の血中プロラクチン濃度の変化)

わずかなプロラクチン(PRL)上昇も不妊の原因になるとの報告もあり(潜在性高プロラクチン血症)重要な事だと思います。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)が、子宮内膜NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化

TSH(甲状腺刺激ホルモン)が、子宮内膜NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化するとの論文があります。NK(ナチュラルキラー)細胞は血液中の癌細胞やウイルス感染細胞を排除するリンパ球で、子宮内に移動、子宮内膜NK細胞となって胎児を守ります。しかし、NK(ナチュラルキラー)細胞活性が強くなり過ぎると、胎児を排除する方向に働きます。[Clin Rev Allergy Immunol. 2010 Dec;39(3):176-84]

では、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)をどこまで増やせばいいの?

妊娠可能かつ甲状腺の病気がない健康女性で、TSH(甲状腺刺激ホルモン)は0.39(ほぼ0.4)~3.0μU/ml(95%信頼区間)です(日本甲状腺学会雑誌 5;66,2014)。そこで、男女・年齢を問わない一般的なTSHの正常上限の5.0を基準にせず、甲状腺ホルモン剤でTSHを3.0未満にすると、84.1%が妊娠し、最終的に59.4%が出産したそうです(Endocr J. 2015;62(1):87-92.)。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、米国甲状腺学会のガイドラインに乗っ取り、妊活中~着床直前―妊娠前期で推奨されるTSH<2.5になるよう厳格に調整します。

日本人妊娠可能女性のTSH正常値
甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)補充開始量の目安
妊娠前TSH(μIU/ml) チラーヂンS補充量(μg)
2.5-3.0 12.5
3.0-3.5 18.75
3.5-4.0 25
4.0以上 37.5

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、表を参考に初期量(補充開始量)を設定しています。

ただし、チラーヂンSは吸収率に、かなり個人差があり、また、患者さんの血圧・脈拍などを考慮せねばならないため、あくまで目安です。

その後は、定期的にTSH、測定間隔によって甲状腺ホルモン本体のFT4を測定し、維持量を調整します。

甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)補充量は変動する

TSH<2.5を維持するには、手間がかかります。一度、TSH<2.5になったからと言って、同じ量の甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)をそのまま続ければ良いのではありません。

TSHの値は

  1. 寒さ(冬場)(Clin Biochem. 2018 Sep;60:59-63.)
  2. 産婦人科で投与する不妊治療薬排卵誘発剤卵胞ホルモン剤黄体ホルモン剤ゴナドトロピン製剤)、子宮卵管造影検査(HSG)で使用するヨード造影剤

により上昇します。寒くなったら、あるいは不妊治療薬を増やしたら、いつの間にかTSHが2.5を超えているのはよくある事です。不妊治療薬を増やすのが最優先なので、仕方ないのですが、増やせば増やす程、不妊を作り出してしまう危険性もあるわけです。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、妊活女性の甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)投与量は、よほど安定した方以外、2カ月に1回、TSHを測定して決めます。(逆に、かなり不安定な方は1カ月に1回)

甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を増やせば出産できるの?

右は潜在性甲状腺機能低下症顕在性甲状腺機能低下症妊婦の非常に有名な研究です。橋本病の有無(橋本病の自己抗体を持っているか否か)に関係なく、甲状腺ホルモン剤を増やし、TSH<4.0にするだけでも流産がゼロに近くなり、満期出産が80%以上になります。(Thyroid 2002,12,63-68)

この研究では、橋本病の自己抗体自体は流早産・不育に直接関係なく、甲状腺ホルモンの多い少ないのみが関係するとの結果です。

甲状腺ホルモン補充療法後の流早産率の変化

橋本病の自己抗体

甲状腺ホルモンが正常でも、橋本病の自己抗体[自分の甲状腺を破壊する抗体;抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]が高い女性は不妊症/習慣性流産・不育症/出産後甲状腺炎をおこす確率が高いと言われていました。しかし、最近では、

  1. 橋本病の自己抗体自体は流早産・不育症に関係なく、甲状腺ホルモンの多い少ないのみが関係する
     
  2. 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性妊婦では、妊娠が進むにつれ、甲状腺ホルモン低下が顕著になり、流産・不育症の危険は増していくため、適切な甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の増量が必要不可欠です。
    (確かに適切に甲状腺ホルモン補充療法がなされれば、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]があっても流産率は上がりません)
     
  3. 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性妊婦では、出産後甲状腺炎を起こし易い

と言う事になっています。

甲状腺ホルモン補充後 流産率

表は、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性妊婦(妊娠12週未満)にTSH<2.5になるよう甲状腺ホルモン補充療法行った有名な研究です。(J Clin Endocrinol Metab. 2010,95,1699-1707)

HYPO(甲状腺機能低下症妊婦)かつUniversal screeningが甲状腺ホルモン補充療法行った妊婦(左前方)。
HYPOかつCase findingの低リスク群が甲状腺ホルモン補充療法しなかった妊婦(左後方)。
EUは何もしない正常妊婦(右)

TSH<2.5になるよう甲状腺ホルモン補充療法行うと、例え抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]陽性であっても、流早産率正常妊婦と同じになります。

流産・不育症の確率を下げるための甲状腺ホルモン(チラーヂンS)補充療法

以上の結果が、現在の米国甲状腺学会ガイドライン2011の元になっています。日本では、治療基準(ガイドライン)が未だに作られていません。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、忠実に米国のガイドラインに乗っ取り、流産・不育症の確率を下げるための甲状腺ホルモン(チラーヂンS)補充療法行います。

※ただし、甲状腺無関係の健常日本人妊婦流産率は約13-15%(厚生労働省の統計)ですので、甲状腺ホルモン補充しても、甲状腺以外の原因で流産・不育症が起こる可能性はあります。

米国甲状腺学会ガイドライン2011に準じて

  1. 妊娠前期(13週まで):甲状腺刺激ホルモン(TSH) 0.1~2.5μU/ml
  2. 妊娠中期(14週~27週):                〃        0.2~3.0μU/ml
  3. 妊娠後期(28週~41週):                〃        0.3~3.0μU/ml

になるようコントロールします。

米国甲状腺学会ガイドライン2017の落とし穴

具体的な欠陥内容

米国甲状腺学会ガイドライン2017が発表されましたが、やはりアメリカは橋本病の患者が少ないためか、橋本病の研究者が少ないためか、「理解していない」部分が多くあります。なぜ不妊症で甲状腺ホルモン剤)治療をするのか、原理を理解していません。

自然妊娠を試みる場合

米国甲状腺学会ガイドライン2017によると、⾃然妊娠予定の女性でも意味不明で矛盾に満ちた記載が・・・。

「(Recommendation 18)⾃然妊娠を試みている甲状腺自己抗体(橋本病の抗体)陰性の潜在性甲状腺機能低下症(TSH>5μIU/ml)⼥性は流産などのリスク増加が予想される。LT4(甲状腺ホルモン剤、チラーヂンS)治療が受胎能を改善するかどうかを決定する証拠は不⼗分である。ただし、妊娠が達成されると、より重大な甲状腺機能低下症への進行を防ぐ能力があるため、この設定ではLT4の投与を検討することができる。」

  1. 流産リスクが増えると予想されるのに、必ずしも甲状腺ホルモン剤、チラーヂンS投与せずとも良い事になります。それに、前述の通り、甲状腺ホルモン剤投与の効果を証明する論文は数多く出ています。何より、実際にチラーヂンSを投与している日本の甲状腺専門医が身をもって分かっている事です。
     
  2. 橋本病の抗体の有無でなく、甲状腺ホルモン自体が不妊の原因なのだ。そもそも橋本病の抗体[抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)が陽性化するのは閉経前後の女性ホルモンが欠落した時に多く、若い妊娠可能年齢の女性では甲状腺超音波(エコー)検査で明らかに甲状腺組織が破壊され橋本病(慢性甲状腺炎)の所見でも、抗体が陽性化しない事が多いんだ[橋本病(慢性甲状腺炎)破壊の程度の評価]。
     
  3. しかも、妊娠すりゃ、重大な甲状腺機能低下症になると認めてるなら、先に甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)補充しとかないと間に合わないでしょう。チラーヂンの半減期は1週間なので、飲んでもすぐに効かず、血中濃度が安定するのに最低でも2週間は掛かるんだ(何も知らねーな🤢)。

高度生殖補助医療(ART)[体外受精(IVF)や顕微受精(ICSI)]の場合

米国甲状腺学会ガイドライン2017によると、「高度生殖補助医療(ART)[体外受精(IVF)や顕微受精(ICSI)]においては、

「(Question 26) 甲状腺自己抗体の有無によらずTSH値が非妊時基準値上限以上の潜在性甲状腺機能低下症(TSH>5μIU/ml)の場合はTSH2.5μIU/ml 未満を目標としたレボチロキシン(甲状腺ホルモン剤)治療するのがprudent(⽤⼼深い、慎重である、賢明である)。

基準値上限以下(TSH<5μIU/ml)でも抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性の場合はレボチロキシン(甲状腺ホルモン剤)治療の潜在的利益を考慮する」

と記載されています。

この時点で既に意味不明、まるで役人が書いた文書の様に、あいまいな表現。

体外受精(IVF)や顕微受精(ICSI)などでは、

  1. 甲状腺自己抗体が無くTSH 2.5-5.0 μIU/ml の場合、2.5 μIU/ml 未満にしなくても良いんかい?素人でも、矛盾に気付きます。
     
  2. 「潜在的利益を考慮する」と意味不明な文言です。
    (ガイドラインとは、たとえ専門家でなくても、その通り行えば間違いのない基準なのに、言葉の意味が不明ではガイドラインにならんわ😩)

    甲状腺ホルモン剤使うのか否か、TSHをいくらにするのか数値目標無し!

    確かに、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)は甲状腺の破壊の程度に相関し(Thyroid Res. 2013 Mar 23;6(1):5.)、TPO抗体陽性妊婦は甲状腺の予備力が低下しているため、妊娠週数が進むにつれ甲状腺ホルモン低下が大きくなります。

    しかし、重要なのは妊娠するか否かの最も初期で、着床時に「甲状腺自己抗体の有無によらず」、TSHが低い=プロラクチン(PRL;授乳ホルモン、妊娠させないホルモン)が低いなのです。
     
    また、前述の如く、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗)が陽性化するのは閉経前後の女性ホルモンが欠落した時に多く、若い妊娠可能年齢の女性では甲状腺超音波(エコー)検査で明らかに甲状腺組織が破壊され橋本病(慢性甲状腺炎)の所見でも、抗体が陽性化しない事が多いんだ[橋本病(慢性甲状腺炎)破壊の程度の評価]。

すなわち、「TSH>5であろうが<5であろうが」、「甲状腺自己抗体の有無によらず」、着床(妊娠成立)するための条件がTSH2.5 μIU/ml 未満なのです。

日本での現実

日本での現実は以下の通り、

  1. 厚生労働省の統計では、日本人女性の流産率は約13-15%ですが、上條甲状腺クリニックの上條桂一先生(尊敬しております)によると、TSH≧2.5の流産率は30%以上とされます。
     
  2. 妊娠可能かつ甲状腺の病気がない健康女性のTSH(甲状腺刺激ホルモン)は0.39(ほぼ0.4)~3.0μU/ml(95%信頼区間)です(日本甲状腺学会雑誌 5;66,2014)。
     
    そこで、男女・年齢を問わない一般的なTSHの正常上限の5.0を基準にせず、3.0をカットオフ値として甲状腺ホルモン剤でTSHを3.0未満にすると、84.1%が妊娠し、最終的に59.4%が出産したそうです(Endocr J. 2015;62(1):87-92.)。

ならば、「高度生殖補助医療(体外受精IVF や顕微受精ICSI)」を行わなくても、不妊女性はTSH<2.5 μIU/mlにすべきは明らかです。 

日本では、挙児を希望するカップルの10~15% が不妊に悩んでおり、不妊女性潜在性甲状腺機能低下症の頻度は約12%、流産リスク顕性甲状腺機能低下症と同程度です。近年、日本の出生率は減少から転じて微増傾向にあります。不妊医療を行う婦人科の先生方の甲状腺に対する関心が高まり、甲状腺専門医が協力して管理を行う事で満期出産が増えたのが一因と思います。(必ずしもアベノミクスの恩恵だけでもないと思います)

それに水を差すかのような米国甲状腺学会ガイドライン2017は無視(一蹴)してよいと考えます。アメリカと日本では、人種やヨウ素(ヨード)摂取量の違いによりTSHの基準値は異なるはずで、そのことを考えず米国のガイドラインを鵜呑みにしてはいけません。

ヨウ素(ヨード)過剰摂取と不妊症/習慣性流産・不育症

日本人はヨウ素(ヨード)を過剰摂取する食生活が普通です。橋本病の女性がヨウ素(ヨード)過剰摂取を続けると、甲状腺ホルモンの合成が抑制され(持続性ウォルフチャイコフ効果)、甲状腺機能低下症が悪化します(ヨウ素(ヨード)と甲状腺 )。甲状腺機能低下症は前述の通り、不妊症・習慣性流産・不育症の原因となります。

また、橋本病の女性でも、橋本病でない女性でも、ヨウ素(ヨード)過剰摂取は甲状腺組織の破壊を促進し、妊娠後の甲状腺ホルモン必要量の増加(非妊娠時の1.3-1.5倍)をまかなうための予備力を低下させます。

日本人の1日のヨウ素(ヨード)平均摂取量は0.5mg-3mgとされ、厚生労働省の推奨値0.13mg、上限値2.2mgを超えています(Thyroid 18: 667-668,2008)。WHO(世界保健機構)の勧告では、1日のヨウ素(ヨード)推奨量は250μg(0.25mg)で、

  1. 妊娠時は500μg(0.5mg)以上を過剰摂取
  2. 非妊娠時は300μg(0.3mg)以上を過剰摂取
    (Geneva, World Health Organization,2007)

としているため、妊娠時非妊娠時とも日本人はヨウ素(ヨード)過剰摂取なのです。

  1. 甲状腺の病気がない健康な人でさえ、1日のヨウ素(ヨード)摂取量が1.5mg(1500μg)を超えると甲状腺機能低下症をおこします(Metabolism. 1988 Feb;37(2):121-4.)。
  2. 橋本病をはじめ甲状腺が悪い方では、ヨウ素(ヨード)摂取量が一日0.5mg(500μg)以上になると甲状腺機能に異常が起こります。(Am J Clin Nutr. 2012 Feb;95(2):367-73.)

潜在性高プロラクチン血症

脳下垂体ホルモンの一つプロラクチン(PRL=妊娠させないホルモン)は脳内でTSH(甲状腺刺激ホルモン)と調節機構が同じです(つまり連動している)。

プロラクチン(PRL)が、わずかに高い状態(潜在性高プロラクチン血症)でも不妊症/習慣性流産・不育症の原因となるため、可能な限りTSHを下げる(TSH<2.5)のは当然です。

しかし、それでも妊娠が成立しない場合、甲状腺の治療に加えて、プロラクチン(PRL)自体を積極的に下げる治療を要します。

プロラクチン(PRL)とTSH(甲状腺刺激ホルモン)の調節機構
  1. 甲状腺機能正常化しても、血中プロラクチン(PRL)値が30ng/mL前後で正常上限(閉経していない女性の正常値;6.1~30.5ng/mL)につきカベルゴリン(カバサール®、プロラクチン分泌抑制薬)を併用して妊娠出産に至った症例。(第55回 日本甲状腺学会 P1-10-04 自己免疫性甲状腺疾患を伴った不妊症例に対するカベルゴリン併用治療の有用性について)
     
  2. 甲状腺ホルモン剤少量にてプロラクチン(PRL)は軽度低下したが、さらにカベルゴリンを併用し、直後に妊娠が成立した症例。(同じ)
     
  3. 甲状腺ホルモン剤のみで妊娠しにくく、生理中のプロラクチン(PRL)正常値15ng/mlを超える不妊女性にカベルゴリンを併用すると、3か月以上投与継続できた14例のうち、半数が、併用開始から平均5か月(3~8か月)で妊娠成立した。(まみ内科クリニックさんの報告)(第61回 日本甲状腺学会 O37-3 当院における不妊症例に対するレボチロキシン補充療法およびカ ベルゴリン併用治療の有用性の検討)

が報告されています。

[※長崎甲状腺クリニック(大阪)では、カベルゴリン(カバサール®)の投与は行っておりません。]

院長の論文

甲状腺機能亢進症/バセドウ病女性の不妊症/習慣性流産・不育症

甲状腺機能亢進症/バセドウ病における不妊症/習慣性流産・不育症

甲状腺機能亢進症/バセドウ病における不妊症/流産率

コントロールされた甲状腺機能亢進症/バセドウ病における

  1. 不妊症の率は5.8%;甲状腺機能低下症不妊率と同程度
  2. 流産率は11.4-12.5%;厚生労働省の統計での日本人女性の流産率13%と差はありません。

しかし、未治療の甲状腺機能亢進症/バセドウ病流産率は21%(Br J Obstet Gynaecol. 1980 Nov;87(11):970-5.)、子宮内胎児発育遅延(IUFR)の約7%・子宮内胎児死亡(IUFD)の4%(J Pregnancy. 2013;2013:619718.)と報告されています。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病不妊率甲状腺機能低下症と同程度である理由として、甲状腺機能亢進症/バセドウ病妊娠は母児ともに命の危険が生じるハイリスク妊娠妊娠バセドウ病)なので、

  1. 甲状腺機能が安定するまで数年の長い時間が掛かる
  2. 甲状腺機能が安定してもバセドウ病抗体(TR-Ab)が高いと胎児・新生児バセドウ病とおこす危険がある

ため妊娠が許可されないのが理由でしょう(Int J Endocrinol. 2014; 2014: 982705.)。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病女性の不妊治療の問題点

甲状腺機能亢進症/バセドウ病女性不妊治療では以下の問題があります。

  1. hCG注射薬・hMG注射薬は甲状腺を刺激してバセドウ病を増悪・再発させる危険性があります。
  2. 女性ホルモン剤、黄体ホルモン剤はバセドウ病の活動性を抑えますが、生理周期に合わせて投与したり止めたり(バセドウ病を抑えたり、放したり)を繰り返すと、リバウンドでバセドウ病を増悪・再発させる危険性があります。

もちろん、必ずしも甲状腺機能亢進症/バセドウ病が増悪・再発するとは限りません。

しかし、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が再発すると、不妊治療は中止となります。甲状腺機能が安定するまで再開のめどは立ちません。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の投薬開始(再開・増量)後は、頻回の副作用チェックが必要になります。そのため長崎甲状腺クリニック(大阪)での診療は①大阪市と隣接市のバセドウ病患者に限定(他府県、遠隔地の方は診れません)②来院できず薬を自己中断するバセドウ病は診れません。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

診療時間電話番号や地図はこちら