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甲状腺:専門の検査治療/知見③・長崎甲状腺クリニック(大阪)だけの亜急性甲状腺炎の治療プロトコル[甲状腺 専門医 エコー 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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メリーランド州 ボルチモア

国際学会デビューは1995年、アメリカ メリーランド州 ボルチモアでした。
(右端)コンベンションセンター(学会場)
(中央)隣接するハイアットリージェンシーが大西洋に面しています。
------甲状腺を連想させる形に運命的なものを感じます。

(目次)

亜急性甲状腺炎

  1. 長崎甲状腺クリニック(大阪)オリジナルの亜急性甲状腺炎の治療プロトコル

甲状腺と血液の病気

  1. 甲状腺と再生不良性貧血
  2. 多発性骨髄腫と甲状腺・高カルシウム血症
  3. 甲状腺と出血--後天性血友病A/後天性von willebrand病特発性血小板減少性紫斑症(ITP)
  4. 甲状腺と血球貪食症候群

甲状腺と似ている病気②

  1. 化学物質過敏症
  2. 甲状腺の病気に似ているミトコンドリア病・ライソゾーム病(ポンペ病など)

甲状腺と救急・外科手術

  1. 橋本病急性増悪
  2. 甲状腺と救急:甲状腺損傷・気道閉塞・そのくすりダメ   甲状腺と救急(アウトドア編)   甲状腺の手術合併症
  3. 本病の手術橋本病の巨大甲状腺腫に131-Iアイソトープ治療
  4. 甲状腺ロボット手術 甲状腺内視鏡手術
  5. 1泊2日入院で、安心の穿刺細胞診コース(高次機能病院との連携)
    穿刺細胞診の気を付ける点(医療従事者用)        何度穿刺細胞診しても血液成分のみ:甲状腺血管腫
    穿刺細胞診後に新たな腫瘍?穿刺経路痕跡  穿刺排液困難、何度、排液しても液がたまる巨大のう胞腺腫

甲状腺未知の領域

  1. サイログロブリン、一体何をやってるの?    甲状腺アミロイドーシス
  2. 伝染性紅斑(リンゴ病)、突発性発疹、ヘルペスと無痛性甲状腺炎・橋本病・バセドウ病
  3. 手術不能・適応外甲状腺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法(RFA)
  4. iPS細胞から甲状腺細胞が作れる?

甲状腺の社会問題

  1. 橋本病に対する偏見
  2. ヒヤリハット、気付かず処方ミス、チウラジールとチラージン
  3. 甲状腺と体臭症
  4. 海外から日本へ来る甲状腺患者さん    環境ホルモン
  5. 乱用される『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用  他臓器癌合併した甲状腺機能亢進症/バセドウ病で抗甲状腺薬使えなくなる
  6. 患者自身が作り出す「やせ薬」による甲状腺中毒症
  7. 甲状腺と巨大災害
  8. 甲状腺癌の終末期医療(ターミナルケア)/緩和ケア

以下は亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎の基本的なことは亜急性甲状腺炎を御覧ください。

Summary

長崎甲状腺クリニック(大阪)オリジナルの亜急性甲状腺炎の治療は、中途再燃・再発を防ぐため、超音波(エコー)検査で炎症範囲を毎回調べ、改善度に応じてステロイド量を調整。炎症の強い部分は黒く、血流乏しく、エラストグラフィーで青くなる。副作用チェックはステロイド肝障害・膵炎・筋障害・低カリウム血症・糖尿病。甲状腺乳頭癌の合併、亜急性甲状腺炎ではなく、甲状腺乳頭癌の事も。亜急性甲状腺炎バセドウ病,橋本病に合併、あるいは誘発する事も。頚部腫大、甲状腺中毒症が先行する場合、エコー検査で偶然見つかる事も。数年かかっても完全治癒しない亜急性甲状腺炎も稀に存在。

Keywords

甲状腺,甲状腺機能低下症,バセドウ病,甲状腺機能亢進症,甲状腺乳頭癌,橋本病,亜急性甲状腺炎,橋本病,エコー,ステロイド,再発

長崎甲状腺クリニック(大阪)オリジナルの亜急性甲状腺炎の治療プロトコル

長崎甲状腺クリニック(大阪)オリジナル亜急性甲状腺炎治療プロトコル

亜急性甲状腺炎は診断さえ付けば、副腎皮質ステロイドが劇的に効きます。2-3日で嘘のように痛みが消え、血液検査でも炎症反応(WBC/CRP)・甲状腺ホルモン値が正常化するため、あたかも完治したような錯覚おこします。そして、うかつに副腎皮質ステロイドを中止、急な減量おこなうと、短期間で再燃・再発し、結局一からやり直すことになります(結局1年以上かかった症例も報告されています)。中途再燃・再発した亜急性甲状腺炎の方が長崎甲状腺クリニック(大阪)を訪れ、ステロイド治療をやり直すことが非常に多いのが現状です。

なるほど痛みも消え、炎症反応(WBC/CRP)・甲状腺ホルモン値も正常化した状態では、何を基準にステロイド減量していけば良いのか判らないのが一般的です。教科書には「3か月かけて、2週間に5mgずつ減量せよ」と書いてあります。

亜急性甲状腺炎 急性期 超音波(エコー)画像

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、中途再燃・再発を防ぐため、甲状腺超音波(エコー)検査で亜急性甲状腺炎の炎症範囲を毎回調べ、改善度に応じてステロイド投与量を調整していく画期的な治療を実践しています。

写真は亜急性甲状腺炎の急性期の超音波(エコー)画像です。痛みのある場所に一致して黒く(低エコーに)なり、ここが炎症を起こしている場所です。

急性期は黒い(低エコー)領域に血流がほとんど無く、炎症が活動しています。この段階でステロイドを減らすと、すぐに炎症がブリ返し、治療を最初からやり直す破目になります。

亜急性甲状腺 回復期 超音波(エコー)画像

亜急性甲状腺の回復期の超音波(エコー)画像です。白黒画像では、急性期と何も変わらない様に見えます。

亜急性甲状腺 回復期 超音波(エコー)画像 血流

しかし、ドプラーモードで見ると、黒い(低エコー)領域に血流が集中しています。これは、炎症が治まり、ダメージを受けた甲状腺組織が修復されているのです。この段階なら、ステロイドを減らせます。

また、ステロイドの開始量も、外来使用最大量の20mgに設定します。しかし、どうしても30mg以上必要と判断される場合、大阪市立大学医学部 代謝内分泌内科への入院となります(20mgまで減量した時点で退院)。

先日の甲状腺学会で、隈病院の中村浩淑先生も同じ方法で亜急性甲状腺炎を治療していることを知り驚きました。

長崎甲状腺クリニック(大阪)オリジナル亜急性甲状腺炎治療副作用チェック

長崎甲状腺クリニック(大阪)オリジナル亜急性甲状腺炎治療副作用チェックとして

  1. 肝機能(ステロイド肝障害)
  2. 膵酵素(ステロイド膵炎
  3. 筋酵素(ステロイド筋障害)
  4. カリウム(ステロイド低カリウム血症)
  5. 血糖(グルコース)もしくはHbA1C(ステロイド糖尿病)

を必要に応じて1カ月ごとに調べます。

エラストグラフィーを用いて不可逆な破壊(永続性甲状腺機能低下症)になるかを判定

日本では亜急性甲状腺炎の数%が不可逆な破壊(永続性甲状腺機能低下症)になるといわれます。Saudi Arabiaでは14.3%(Int J Endocrinol. 2014;2014:794943.)

隈病院の統計では、53.6%が発症後6カ月以内に一時的に甲状腺機能低下症になるが、永続的甲状腺機能低下症になるのは5.9%。副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)使用で永続的甲状腺機能低下症になる確率は下がります。永続的甲状腺機能低下症になった人は全員、甲状腺の左右両側に低エコー領域があり、最終的に甲状腺は萎縮したそうです。(J Endocrinol Invest. 2009 Jan;32(1):33-6.)

エラストグラフィーを用いて亜急性甲状腺炎永続性甲状腺機能低下症になるかを判定する試みが始まっています。石川県立中央病院の発表では、硬さの指標ストレインレ-ト(strain ratio)が大きいと、永続性甲状腺機能低下症になるようです(第57回 日本甲状腺学会P2-053 亜急性甲状腺炎経過後に、永続性甲状腺機能低下症に至る要因に関して)。

下は亜急性甲状腺炎の超音波(エコー)画像で、炎症の強い部分は黒く、エラストグラフィーでは青くなります。

亜急性甲状腺炎(超音波画像:エラストグラフィー)

既に別の病気でステロイド剤を飲んでいる場合

既に別の病気でステロイド剤(PSL;プレドニゾロン)を飲んでいる場合、全体量を20mg(治療抵抗性なら30mg)になる様、追加投与します。例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)でPSL 12.5mg飲んでいる場合、7.5mgを追加投与します。(第53回 日本甲状腺学会 P42 SLE治療中に発症した亜急性甲状腺炎の一例)

亜急性甲状腺炎で甲状腺超音波(エコー)するメリット:実は甲状腺乳頭癌だった

亜急性甲状腺炎ではなく、甲状腺乳頭癌だった

甲状腺乳頭癌は無痛が普通ですが、

  1. 被膜浸潤
  2. 腫瘍内出血
  3. 急速な増大
  4. 甲状腺乳頭癌周囲の炎症巣[血液検査で炎症反応(WBC, CRP)も陽性で、炎症部の穿刺細胞診でも癌細胞検出されず、亜急性甲状腺炎と勘違いします。ステロイド治療で炎症治まれば、低エコー領域は縮小しますが、甲状腺乳頭癌本体は消えないため、再度の穿刺細胞診で診断されます。手術摘出後の病理標本では、甲状腺乳頭癌周囲のリンパ球浸潤が確認されます。]

で痛みが生じることあります。亜急性甲状腺炎と高をくくっていても、甲状腺超音波(エコー)検査で甲状腺乳頭癌だった症例報告があります。

甲状腺乳頭癌のみでも穿刺細胞診すると多核巨細胞が見られることがあります。多核巨細胞は亜急性甲状腺炎だけの特異的な所見ではないのです。

亜急性甲状腺炎甲状腺乳頭癌が合併

亜急性甲状腺炎は、上の超音波(エコー)写真のように炎症部が低エコーになり、あたかも腫瘍のように見えます。亜急性甲状腺炎の炎症と高をくくっていても、何ヶ月しても改善しないため細胞診してみたら甲状腺乳頭癌だった症例報告があります。

ステロイド治療し、甲状腺全体の腫れが引くと、甲状腺乳頭癌の低エコー域も縮小するので、亜急性甲状腺炎の炎症と勘違いする可能性があります。例え縮小しても、消えなければ、しかも石灰化を伴っていれば甲状腺乳頭癌を疑うべきです。亜急性甲状腺炎が沈静化しない内に穿刺細胞診すると、炎症所見が混ざって、病理医が甲状腺乳頭癌の診断を下し難い様です。

亜急性甲状腺炎回復期に微小乳頭癌

早く見つかり過ぎる亜急性甲状腺炎(先行する頚部腫大/甲状腺中毒症)

教科書通りでない亜急性甲状腺炎の不規則型が多数あります。いずれの型でも、採血の数値だけ見ていては解決しません。甲状腺超音波(エコー)検査は、共通の所見です。数字に惑わされてはいけません。

甲状腺乳頭癌、甲状腺原発悪性リンパ腫、無痛性甲状腺炎と鑑別必要なのも共通。

亜急性甲状腺炎の非典型例、境界不明瞭な低エコー領域は共通、甲状腺乳頭癌、甲状腺原発悪性リンパ腫、無痛性甲状腺炎と鑑別。①最初は痛み無く、頚部腫大、甲状腺中毒症が先行②無症状だが偶然、頚部超音波エコー検査で見つかる③発熱、頚部腫脹と疼痛・圧痛、圧痛部に一致した低エコー域、炎症反応認め典型的な亜急性甲状腺炎だが、甲状腺中毒症無く、サイログロブリンだけ上昇④数年かかっても完全治癒しない亜急性甲状腺炎。副作用の危険性の高いステロイド剤を長期間使うより非ステロイド系抗炎症剤で対症療法しながら永続性甲状腺機能低下症になるまで待った方がましな事も。

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先行する頚部腫大

先行する頚部腫大で、亜急性甲状腺炎が早く見つかり過ぎることがあります。発熱・甲状腺の痛みが起きる前に、甲状腺のはれに気が付く事があります。

甲状腺超音波(エコー)では、無痛性の境界不明瞭な低エコー領域で、あたかも甲状腺乳頭癌か、甲状腺原発悪性リンパ腫無痛性甲状腺炎の様に見えます。穿刺細胞診では、悪性細胞は見つからず、多核巨細胞が見つかり、亜急性甲状腺炎であるのが判ります。(ただし甲状腺乳頭癌でも多核巨細胞が見つかる事があるので注意)

  1. 2週間程で、発熱・甲状腺の痛みがおきると、典型的な亜急性甲状腺炎になります。(第58回 日本甲状腺学会 P1-8-6 甲状腺エコー所見が先行し、経過中に下腿紫斑が出現した亜急性甲状腺炎の一例)
     
  2. 3か月しても痛み・発熱おこらず、CRPも正常のまま、甲状腺超音波(エコー)上、低エコー領域は左右に移動していきます(不顕性型亜急性甲状腺炎)。(第53回 日本甲状腺学会 P51 F-18-FDG 集積により偶然に発見された無痛性の亜急性甲状腺炎の1 例)
エコーで偶然発見された無症候性亜急性甲状腺炎

エコーで偶然発見された無症候性亜急性甲状腺炎

エコーで偶然発見された無症候性亜急性甲状腺炎(拡大)

エコーで偶然発見された無症候性亜急性甲状腺炎(拡大)

先行する甲状腺中毒症

先行する甲状腺中毒症で、亜急性甲状腺炎が早く見つかり過ぎることがあります。急性上気道炎が先行し、数週間後、微熱(市販の解熱剤で改善せず)・頸部腫大(自発痛や圧痛無し)・軽度甲状腺中毒症/炎症反応(報告例ではCRP 4.19 mg/dl,FT4 2.4 ng/dl,TSH<0.1μIU/ml)・甲状腺エコーで境界不明瞭な低エコー域(あたかも甲状腺乳頭癌甲状腺原発悪性リンパ腫無痛性甲状腺炎の様)。数日後、頸部の別の場所に痛みと低エコー域が出現。(第56回 日本甲状腺学会 P1-056 当初無痛性であった亜急性甲状腺炎の一例)

甲状腺中毒症無いが、サイログロブリンだけ上昇

発熱、頚部腫脹と疼痛・圧痛、圧痛部に一致した低エコー域、炎症反応を認め、典型的な亜急性甲状腺炎であるが、甲状腺機能正常で甲状腺中毒症無いが、サイログロブリンだけ上昇する場合もあります。

高松内科クリニックの報告例では、

  1. 67歳女性、WBC 6300/μl、CRP 2.4mg/dlと軽度高値。FT4 1.09ng/dl、FT3 3.23pg/ml、TSH 1.34μIU/ ml、TgAbTPOAb陰性、血中サイログロブリン 290.0ng/mlと高値
  2. 75歳女性、WBC 7500/μl、CRP 4.0mg/dlと中等度高値。FT4 0.97ng/dl、FT3 2.38pg/ml、TSH 2.07μIU/ml、TgAbTPOAb陰性、血中サイログロブリン  244.4ng/mlと高値
    ((第60回 日本甲状腺学会 P1-3-1 痛みのない非典型的な亜急性甲状腺炎を疑われた破壊性甲状腺中毒症の一例 )

偶然でしょうか、2例とも高齢女性です。筆者が考える可能性として、TgAbTPOAb陰性であっても、元々、甲状腺機能低下症を持っていて、甲状腺組織の破壊によりFT4、FT3上昇しても高値にならないのかもしれません。

バセドウ病と亜急性甲状腺炎

バセドウ病亜急性甲状腺炎を合併 /亜急性甲状腺炎からバセドウ病が誘発

バセドウ病亜急性甲状腺炎を合併する事があります。

  1. 元々持っていたが、発見されなかったバセドウ病の経過中に亜急性甲状腺炎を発症するのか?
    (第55回 日本甲状腺学会 P2-08-03 バセドウ病診断時に亜急性甲状腺炎を合併していた1 例)
    (第54回 日本甲状腺学会 P075 バセドウ病に亜急性甲状腺炎が合併した症例と無痛性甲状腺炎が合併した症例の甲状腺機能の相違)
     
  2. 亜急性甲状腺炎からバセドウ病が誘発されるのか?(第55回 日本甲状腺学会 P2-08-02  亜急性甲状腺炎からバセドウ病を発症した比較的高齢女性の1 例)(第56回 日本甲状腺学会 P1-048 亜急性甲状腺炎の加療中にバセドウ病を発症した一例)

不明です。可能性として

  1. ステロイドを減量する際、潜在的に持っていたバセドウ病が、リバウンド的に誘導されるのかもしれません。
  2. 亜急性甲状腺炎の免疫反応自体が原因で、バセドウ病の自己免疫が誘導される。
  3. 破壊された甲状腺組織が抗原となり、抗体が出現する

などが、考えられます。

バセドウ病亜急性甲状腺炎が同時に存在する時の99mTcシンチグラフィ

バセドウ病亜急性甲状腺炎が同時に存在する時の99mTcシンチグラフィは、亜急性甲状腺炎の炎症巣では、取り込み欠損を認め、非炎症巣では、摂取率高値になります。

バセドウ病抗体(TRAb)のみ陽性になり、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が発症しない・一過性で終息

バセドウ病抗体(TRAb)のみ陽性になり、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が発症しない・一過性で終息する様な症例も報告されています。兵庫県立加古川医療センターの報告では、

  1. 症例1;血液検査でTSH 0.003μIU/ml,FT4 1.66ng/dl,FT3 4.45pg/ml,CRP 1.95mg/dlと破壊性甲状腺炎のパターン。後日TRAb 3.4IU/L(<2.0)が判明、99mTcシンチグラフィでは右葉に集積。プレドニゾロン漸減・投薬中止後も甲状腺機能は正常を維持(TRAb が、その後下がったか不明)。
     
  2. 症例2;TSH 0.003μIU/ml,FT4 3.03ng/dl,FT3 9.21pg/ml,CRP 3.09mg/dlと甲状腺機能はバセドウ病パターン。初診時TRAb 1.1IU/L(<2.0)とグレーゾーン、1ヶ月後8.6 IU/Lまで上昇、99mTcシンチグラフィでは右葉に集積。プレドニゾロン漸減・投薬中止と後、一時的に甲状腺機能低下になったが、甲状腺機能は正常を維持(TRAb が、その後下がったか不明)。

(第60回 日本甲状腺学会 P1-3-3 TRAb陽性を認めバセドウ病との鑑別を要した亜急性甲状腺炎の2例 )

ただ単に、TRAbのみ陽性になっただけか、実際に甲状腺機能亢進症/バセドウ病になったのか、前項の99mTcシンチグラフィで、はっきりする可能性があります。

橋本病と亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎の際の血液検査で、橋本病(慢性甲状腺炎)の自己抗体[抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)]を認めることがあります。その理由として

  1. 橋本病(慢性甲状腺炎)の経過中に亜急性甲状腺炎を発症する
  2. 亜急性甲状腺炎から橋本病(慢性甲状腺炎)が誘発される

2通りのパターンがあります。可能性として

  1. ステロイドを減量する際、潜在的に持っていた橋本病(慢性甲状腺炎)が、リバウンド的に誘導されるのかもしれません。
  2. 亜急性甲状腺炎の免疫反応自体が原因で、橋本病(慢性甲状腺炎)の自己免疫が誘導される。
  3. 破壊された甲状腺組織が抗原となり、抗体が出現する

などが、考えられます。

伊藤病院の報告では、ステロイドを使用しなかった亜急性甲状腺炎293人中の69人(23.5%)が抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)陽性。NSAIDsも使用せず経過観察した38人中の19人(50%)が持続陽性、19人(50%)が陰性化したとの事です。(第54回 日本甲状腺学会 P098 亜急性甲状腺炎(SAT)での自己抗体の推移)

本当に存在する数年かかっても完全治癒しない亜急性甲状腺炎

「数年かかっても完全治癒しない亜急性甲状腺炎が存在する」と言われれば、「別の病気を亜急性甲状腺炎と間違えてるんちゃうん?」と誰しもが思います。筆者も、そう考えていました。しかし、現実にそのような症例は存在するのです。

亜急性甲状腺炎は通常、数ヶ月の経過で治癒します。しかし、稀に、一度寛解しても数か月後、別の場所に病変が現れ、再度ステロイド投与で治癒しては、数か月後、再燃を繰り返す悪夢のような亜急性甲状腺炎が存在します。

筆者も自分自身で、そのような症例に遭遇するまで信じられませんでした。筆者自身が経験した症例は、ステロイド剤が著効し、数カ月でエコー上、亜急性甲状腺炎の炎症部(低エコー領域)が完全に消失し治癒するが、1-2カ月で違う場所に痛みを伴う低エコー領域が出現し、何度もステロイド剤投与を繰り返すものでした。

隈病院の中村 浩淑先生にも相談した所、やはり、高活動型の亜急性甲状腺炎を完全に抑え込むには、プレドニゾロン(PSL)開始用量を30mgにした方が良いと言う結論になりました(30mgは外来で使用できない用量ですので、大阪市立大学附属病院に入院の上行います)。

それでも、再燃したら?「甲状腺全体に炎症が広がり終息する」まで待つしかありません。「亜急性甲状腺炎は炎症が甲状腺全体に広がるまでは治癒しにくい」と言う説があり、それなら最初から副作用の危険性の高いステロイド剤など長期間使わず、ロキソニンなど非ステロイド系抗炎症剤で対症療法しながら永続性甲状腺機能低下症になるまで待った方がましな事もあります(もちろん、このような症例に限定してですが)。ただし、副作用の危険性を回避するのと引き換えに、永続的甲状腺機能低下症は避けられない可能性を患者さんに納得してもらわねばなりません。

すみれクリニックも、途中何度も再発を繰り返し2年かけて沈静化した亜急性甲状腺炎の症例を報告していました(第57回 日本甲状腺学会P2-059 治癒までに2 年かかった亜急性甲状腺炎の一例)。筆者の経験と同じく、次々と甲状腺内の違う場所に病変が時間差を置いて出現し、「甲状腺全体に炎症が広がるまで終息しない亜急性甲状腺炎なのか?」と考えざる得ません。

さらに、田尻クリニックも同様の症例を報告しており、プレドニゾロン(PSL)中止後も弱いながらも炎症が持続していた可能性を考察しておられます(第59回 日本甲状腺学会 P2-3-3 1 年間に再燃を繰り返した亜急性甲状腺炎の1 例)。プレドニゾロン(PSL)開始用量は15mgで、確かに少量ですが、当院の症例は20mgだったにもかかわらず再燃を抑えられませんでした。

あり得ない、亜急性甲状腺炎で右心不全

亜急性甲状腺炎で右心不全おこした、通常では考えられない症例が報告されています。甲状腺機能亢進症/バセドウ病で高拍出量性心不全、右心不全おこすのは珍しくありませんが、亜急性甲状腺炎で起こした例は筆者も見た事ありません。報告では、FT4 2.28ng/dl、FT3 5.78 pg/ml、TSH 0.007 μU/mlと甲状腺中毒症は軽度、WBC 5100、CRP 2.06 mg/dlと炎症自体も軽度です。労作時呼吸困難と両肺の胸水、全身浮腫を認めるも、プレドニン20mgとプロプラノロール30mg投与5日目で胸水ほぼ消失したそうです。筆者が思うに、元々、右心不全おこす何らかの素因があったのでしょう。(第53回 日本甲状腺学会 P-55 全身浮腫、胸水貯留、労作時呼吸困難等の心不全症状を合併するも、PSL投与にて著明な改善を認めた亜急性甲状腺炎の1例)

コントロール不良糖尿病に亜急性甲状腺炎を合併すると高血糖高浸透圧症候群(HHS)に

コントロール不良糖尿病亜急性甲状腺炎を合併すると

  1. 甲状腺中毒症による血糖上昇
  2. 嚥下痛で飲水・摂食が不十分となり脱水

により高血糖高浸透圧症候群を起こす可能性があります。(第60回 日本甲状腺学会 P1-3-5 亜急性甲状腺炎の発症を契機に、高血糖高浸透圧症候群に至った 2型糖尿病の1例)

甲状腺部に痛みを呈する疾患

患者さんが甲状腺部に痛みを訴える病気で一番多いのは、亜急性甲状腺炎です。しかし、実際、亜急性甲状腺炎以外の場合が約25%存在します。

甲状腺の痛み  をご覧ください。

亜急性甲状腺炎と鑑別を要するのう胞内出血

のう胞性腫瘍内の、のう胞部分で出血おこすと急激な痛みが甲状腺におこります。

のう胞内出血 を御覧ください。

亜急性甲状腺炎と鑑別を要する急性化膿性甲状腺炎

詳細は、 急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍 を御覧ください。

亜急性甲状腺炎でも激烈なものは、

  1. 高度の甲状腺中毒症:FT4 ≧7.77ng/dl(甲状腺機能亢進症/バセドウ病無痛性甲状腺炎の様)
  2. 血中Tg(サイログロブリン)異常高値 1723.0ng/ml
  3. 高度の炎症:WBC11800μl(好中球81.1%), CRP 12.0mg/dl(急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍の様)

をおこします。(第54回 日本甲状腺学会 P097 核の左方移動を伴う白血球増加がみられた亜急性甲状腺炎の1例)

亜急性甲状腺炎と鑑別を要する降下性壊死性縦隔炎(DNM)

降下性壊死性縦隔炎 を御覧ください。

亜急性甲状腺炎と鑑別を要する橋本病急性増悪

亜急性甲状腺炎と鑑別を要する組織球性壊死性リンパ節炎・伝染性単核球症・風疹・急性喉頭蓋炎ブルセラ症(波状熱)

甲状腺関連の上記以外の検査・治療      長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ 谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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