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バセドウ病抗体が陰性の甲状腺機能亢進症;甲状腺機能性結節[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

Plummer 病(プランマー病) 機能性結節(腺腫様結節) 超音波画像

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Summary

バセドウ病の抗体が陰性の甲状腺機能亢進症の1つ甲状腺機能性結節機能性甲状腺腫)。良性濾胞腺腫腺腫様甲状腺腫甲状腺乳頭癌/濾胞癌のTSH受容体またはGsα(刺激性Gタンパク)遺伝子の後天的な活性型変異で、甲状腺ホルモンを作る刺激信号に制限が掛からなくなる。1個ならPlummer 病(プランマー病)、複数は中毒性多結節性甲状腺腫(TMNG)潜在性甲状腺機能亢進症がほとんど。甲状腺エコー検査では血流多く穿刺細胞診難、穿刺刺激で甲状腺クリーゼの危険。ヨードシンチグラム(123-I シンチグラフィー)が有用。手術が主流だったが、放射性ヨード治療もある。

Keywords

バセドウ病,甲状腺機能亢進症,甲状腺機能性結節,TSH受容体,Plummer 病,プランマー病,中毒性多結節性甲状腺腫,甲状腺乳頭癌,機能性甲状腺腫,ヨードシンチグラム

バセドウ病の抗体が陰性の甲状腺機能亢進症---甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)とは

甲状腺腫瘍、甲状腺結節の中には、遺伝とは関係なく(後天的に)遺伝子変異し、甲状腺ホルモンを作る刺激信号に制限が掛からなくなるものがあります。機能性甲状腺腫と呼ばれ、甲状腺機能性結節[自律性機能性甲状腺結節 (AFTN:autonomous functioning thyroid nodule)]

  1. 1個の場合、Plummer 病(プランマー病)
  2. 複数の場合は中毒性多結節性甲状腺腫(TMNG; toxic multinodular goiter)

日本では、甲状腺機能亢進症のほとんどはバセドウ病で、甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)は1%弱です(ヨード欠乏地域の海外では一桁多い)。

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)に変異するのは、もともと甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞が腫瘍化した良性濾胞腺腫腺腫様甲状腺腫甲状腺乳頭癌/濾胞癌(機能性甲状腺腫の約8.2–29%)です。中毒性多結節性甲状腺腫(TMNG)は、ほとんど腺腫様甲状腺腫です。

甲状腺機能性結節の悪性度

甲状腺機能性結節内外合わせての癌合併率は5~23%で、約半数が10mm未満の甲状腺微小乳頭癌との報告があります。(J Postgrad Med 2007;53:157–60.)

甲状腺機能性結節の一部が甲状腺微小乳頭癌であっても、甲状腺機能性結節は血流が多く穿刺細胞診できない事が多く、穿刺細胞診できたとしても甲状腺微小乳頭癌の箇所を特定して行うのは困難です。実際は術後病理標本で甲状腺微小乳頭癌が見つかるのが、ほとんどです。(第56回 日本甲状腺学会 P2-104 術後に微小癌の合併が判明した甲状腺機能性結節の1 例)

甲状腺機能性結節機能性甲状腺腫)で甲状腺中毒症おこす場合

甲状腺機能性結節機能性甲状腺腫)における甲状腺機能は様々で、

  1. 潜在性甲状腺機能亢進症がほとんどで、経過観察する事が多い。結節内の血流多くなければ穿刺細胞診できるので、機能性甲状腺乳頭癌の診断可能。
  2. 高齢者、罹病期間が長い、腫瘍径が大きいと甲状腺中毒症をきたす傾向にある

異所性Plummer 病(プランマー病)

甲状腺の外にできる異所性Plummer 病(プランマー病)も報告されています。異所性Plummer 病(プランマー病)を疑う場合、甲状腺の外にも注意を払う必要がありそうです。(第58回 日本甲状腺学会 P1-3-4 当初無痛性甲状腺炎と考えられた心不全で発症した異所性Plummer 病の1例)

頚部にできた異所性甲状腺は、甲状腺超音波(エコー)検査でよくみつかります(頚部異所性甲状腺 )。異所性Plummer 病(プランマー病)の有名なものは、卵巣甲状腺腫 です。

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)の遺伝子変異

甲状腺機能性結節の遺伝子変異は、甲状腺腫瘍の細胞膜に存在する

  1. TSH受容体
  2. Gsα(刺激型GTP結合蛋白-αサブユニット)(変異遺伝子はgsponcogeneと言います)

遺伝子の後天的な活性型変異が知られます。

甲状腺機能性結節の遺伝子変異

代表的なのは

  1. TSH受容体;exon 9、10のMet453Thr変異やcodon 630-633の集団変異
  2. Gsα;exon 7-10のcodon 201や codon 227変異
    (Endocr J. 2009;56(6):791-8.)

中毒性多結節性甲状腺腫(TMNG; toxic multinodular goiter)の遺伝子変異は、個々の機能性結節ごとに異なり、当然ながら、非機能性結節も混在します。(第54回 日本甲状腺学会 YIA-6 機能性結節性甲状腺腫におけるTSH受容体遺伝子およびGsα遺伝子の変異に関する検討)

甲状腺乳頭癌/濾胞癌による甲状腺機能性結節(機能性甲状腺癌)

機能性甲状腺癌[甲状腺癌による甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)]は約8.2–29%とされます。(Thyroid 2010;20:1029–32.)

  1. 甲状腺乳頭癌(76%以上)(Eur J Endocrinol 2008;159:799–803.)(Jpn J Surg 1989;19:363–6.)
  2. 甲状腺濾胞癌(5-8%)(Eur J Endocrinol 2008;159:799–803.)(Jpn J Surg 1989;19:363–6.)
  3. 甲状腺髄質癌(0.6-4%)(Eur J Endocrinol 2008;159:799–803.)(Jpn J Surg 1989;19:363–6.)
  4. 甲状腺未分化癌(まれ)(JAFES 2012;27:109–13.)

甲状腺エコー(超音波)検査では、血流が多く、とても穿刺細胞診できません。また、下手に穿刺すると、その刺激で甲状腺クリーゼおこす危険あるため、穿刺を避ける施設が多いです(する所もありますが)。

よって、

  1. 甲状腺エコー(超音波)検査で、典型的な甲状腺乳頭癌[甲状腺濾胞癌は、甲状腺エコー(超音波)検査でも穿刺細胞診でも診断できません]
  2. 明らかな転移を認める

等でない限り、良悪性の診断は不可能で、甲状腺乳頭癌/甲状腺濾胞癌の診断が遅れます。(Endocr Relat Cancer. 2019 Jul;26(7):R395-R413.)

※筆者の経験では、怪しい石灰化部分を含む機能性の腺腫様結節は、石灰化の箇所が癌化している可能性があります。

結局、手術標本でしか甲状腺乳頭癌/濾胞癌を診断できないため、例え抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)でコントロール出来ていても、外科手術を考慮すべきと筆者は思います。

機能性甲状腺癌の遠隔転移があると手術後も甲状腺中毒症が遷延

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)の切除手術後も甲状腺中毒症が遷延する場合、肺・骨など遠隔転移巣が、甲状腺ホルモンを産生し続けている可能性があります。(第60回 日本甲状腺学会P1-8-7 左葉甲状腺腫切除術後に甲状腺中毒症が遷延し,全身99mTcシンチグラフィから甲状腺濾胞癌の腸骨・胸椎転移と診断した1例)

全身のヨードシンチグラム(123-I シンチグラフィー、あるいは甲状腺全摘出されているなら最初から治療に移行するため131-I シンチグラフィー)、または99mTc- シンチグラフィー or FDG-PETを行えば、機能性甲状腺癌の遠隔転移が診断できます。

もし、甲状腺エコー(超音波)検査から典型的な甲状腺乳頭癌で、最初から、機能性甲状腺癌が濃厚なら、123-I シンチグラフィー、99mTc- シンチグラフィー行う際、頚部だけでなく、最初から全身も測定範囲に入れるべきです。

先端巨大症と甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)

先端巨大症では、成長ホルモン(GH)による細胞増殖刺激と細胞自然死(アポトーシス)抑制により、甲状腺に腫瘍(腺腫様甲状腺腫76%、甲状腺癌7%、機能性結節約10%、toxic multinodular goiter(TMNG)約1%)ができやすくなります。(第59回 日本甲状腺学会 P3-1-3 先端巨大症にtoxic multinodular goiter を合併し、下垂体腺腫からのTSH 産生の有無が問題となった一例)

TSH産生下垂体腫瘍と甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)

先端巨大症の場合と機序が異なると考えられますが、TSH産生下垂体腫瘍甲状腺機能性結節を合併した例が報告されています。FT3 6.3 pg/ml、FT4 2.3 ng/dl、TSH 3.20 IU/mlとSITSHの状態で、甲状腺機能亢進の程度も高くありません。甲状腺結節が血流豊富であっても、「TSH刺激によるものか」と片ずけてしまうのが普通でしょう。当然、下垂体腫瘍を摘出後、TSHは低下するも、FT3、FT4は正常化しないため甲状腺機能性結節、もしくはバセドウ病の合併が疑われる事となります。(第53回 日本甲状腺学会 P-3 TSH産生下垂体腫瘍を合併した中毒性多結節性甲状腺腫の1例)

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)の症状

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)が産生する甲状腺ホルモン量は多くなく、血液中の甲状腺ホルモンは軽度上昇するのみです。軽度の甲状腺機能亢進症を起こします。

甲状腺クリーゼは血液中の甲状腺ホルモン値とは無関係に起こる可能性あるため、甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)甲状腺クリーゼ起こした症例も報告されています。極めてまれで、

  1. 7cm大の良性濾胞腺腫(第57回 日本甲状腺学会 P2-036 甲状腺クリーゼをきたした Autonomously functioning thyroid nodule(AFTN)の一例)
  2. 5cm大の甲状腺腫瘍(第60回 日本甲状腺学会 P2-2-9 Plummer病による甲状腺クリーゼに対して外科治療を行うことで 救命し得た一例)
  3. 14cm大の甲状腺乳頭癌+リンパ節転移(第61回 日本甲状腺学会 O14-3 機能性甲状腺乳頭癌による甲状腺クリーゼの一例)

、概して大きな甲状腺機能性結節が多い様です

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)バセドウ病を合併するとマリンレンハート症候群と呼ばれます。

ごくまれに出血性梗塞おこし自己焼灼

甲状腺機能性結節は、ごくまれに出血性梗塞おこし自己焼灼する事があります。それに伴い甲状腺機能が正常化したり、逆に甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行したりします(第54回 日本甲状腺学会 P086 一過性に甲状腺中毒症とTSAb陽性を認め、その後の経過でhot noduleが消失したPlummer 病の一例)

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)の診断

機能性結節(腺腫様結節) 超音波画像

機能性結節腺腫様結節) 超音波画像;潜在性甲状腺機能亢進症ですが、甲状腺エコー(超音波)検査では、血流が多く、穿刺細胞診をためらうような腫瘤です。

Plummer 病(プランマー病)超音波画像

機能性結節腺腫様結節) 超音波画像;中等度の甲状腺機能亢進症で、甲状腺エコー(超音波)検査では、血流が多く、とても穿刺細胞診できません。

機能性結節(腺腫様結節) 超音波(エコー)画像

機能性結節腺腫様結節)  超音波(エコー)画像;甲状腺エコー(超音波)検査では、何の変哲もない腺腫様結節

機能性結節(腺腫様結節) 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

機能性結節腺腫様結節) 超音波(エコー)画像 ドプラーモード;血流増加が著明。

確定診断は、ヨードシンチグラム(123-I シンチグラフィー)で、腫瘍に放射性ヨードの取り込みがあれば、確定診断できます。(バセドウ病では甲状腺全体に放射性ヨードを取り込みます。)

プランマー病
中毒性多結節性甲状腺腫 ヨードシンチグラム(123-I シンチグラフィー)

中毒性多結節性甲状腺腫(TMNG; toxic multinodular goiter)で、機能性結節が甲状腺全域にある場合、びまん性集積している様に見え、バセドウ病と鑑別しにくい事があります。甲状腺超音波(エコー)検査で血流多い結節と、局所での放射性ヨードの取り込み方が一致するか否かを検討すれば容易に診断できます。

(BMJ Case Rep. 2013 Mar 1;2013:bcr2013008909.)

比較的容易な99mTcシンチグラフィでも代用可能ですが、あくまで血流シンチであり、ヨードシンチグラム(123-I シンチグラフィー)のように甲状腺ホルモン合成を調べるものではありません(バセドウ病アイソトープ検査)。

甲状腺機能性結節に穿刺細胞診してよいか?

甲状腺機能性結節の良悪性(乳頭癌か否か)を調べるために穿刺細胞診(腫瘍に針を刺して細胞を採取する検査)してよいか?

機能性結節の場合、

  1. 穿刺による刺激で、甲状腺クリー(致死的な甲状腺中毒症)おこす危険あるため(実際に起こした症例を筆者は見た事ありませんが)
  2. 甲状腺エコー(超音波)検査で見ると、腫瘍内の血流が多く、穿刺時・後出血の危険かあるため

、穿刺を避ける施設が多いです(する所もありますが)。

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)の治療

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)の治療は①エタノール注入(PEIT)は廃れた②放射性ヨード(131-I;アイソトープ)治療で手術と同程度の治療効果。効果発現に時間掛かり、バセドウ病、甲状腺眼症(バセドウ病眼症)に移行する可能性③機能性甲状腺乳頭癌の可能性あれば手術。抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)で甲状腺機能を正常化した後に行う。ヨウ化カリウム(KI)は甲状腺機能亢進症が悪化する可能性④抗甲状腺薬だけで甲状腺機能正常化⑤ラジオ波焼灼術(RFA)普及せず。転移性機能性甲状腺分化癌は甲状腺全摘手術後に131-Iアブレーション治療。

かつて主流だったエタノール注入(PEIT)

かつて主流だった経皮的エタノール注入療法(PEIT)は、

  1. 本当に、甲状腺ホルモン過剰産生を改善させるのかエビデンス(明確な証拠)がない。有効な事もあれば、無効な事もある
  2. ほぼ全例に反回神経麻痺、ほとんど一過性だが、エタノール注入が多過ぎると永続性の反回神経麻痺になる

ため、廃れました。

放射性ヨード(131-I;アイソトープ)治療

欧米では放射性ヨード(131-I;アイソトープ)治療で、手術と同程度の治療効果です。甲状腺機能亢進症/バセドウ病よりも多くの放射性ヨード(131-I)を必要とするため、2~3回の分割照射になります。
1回でするなら 28 mCi くらい、それでも効果不十分で追加投与になる場合、あきらめて外科手術になる場合も。
手術と比べ、効果が出るのに時間が掛かり(約半年)、約40%で甲状腺腫(甲状腺の腫れ)は縮小。
反回神経麻痺(2%)・副甲状腺機能低下症(2%)
(Surgery. 2002 Dec;132(6):916-23; discussion 923.)

ただし、日本では外来で行える13.5mCi(500MBq)で行う事が多く、結節の大きさや数にもよるでしょうが、欧米の報告程、治療抵抗性はない様に思います。

甲状腺機能正常でタイミングよく止めれないため、永続性甲状腺機能低下症に移行していきます。 
但し、機能性甲状腺乳頭癌の可能性がある場合は、手術になります。

放射性ヨード治療後甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行、甲状腺眼症(バセドウ病眼症)に移行

甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行

甲状腺機能性結節に放射性ヨード治療行うと、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行することがあります(理由は不明ですが)。postradioiodine immunogenic hyperthyroidism、放射性ヨウ素治療後免疫性甲状腺機能亢進症とも表現され

  1. 機能性甲状腺腫全体の1.1%
  2. Plummer 病(プランマー病)の1.4%
  3. 中毒性多結節性甲状腺腫(TMNG; toxic multinodular goiter)の0.9%
  4. 非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進(結節形成しない)の1.0%

に起こります。特に放射性ヨード治療前に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)が高値だと10倍おこり易く、放射性ヨード治療後はTR-Ab(TSHレセプター抗体)と共に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)も上昇します。(Thyroid. 2006 Mar;16(3):281-8.) 。

日本の伊藤病院の統計では、289例中2例の0.69%です。日本では、200人に1人以上と言う事になります。(第58回 日本甲状腺学会 O-3-3 中毒性単結節性甲状腺腫(toxic adenoma; TA)の131I内用療法(RIT)後にバセドウ病を発症した2症例)

放射性ヨード治療後甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行する理由

放射性ヨード治療後甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行する理由は、全くもって不明です。筆者の個人的推論ですが、

  1. 亜急性甲状腺炎の経過中、バセドウ病に移行するのと同じく、炎症によるサイトカインの上昇が潜在的に存在したバセドウ病を顕在化させた(亜急性甲状腺炎バセドウ病橋本病(慢性甲状腺炎)の合併/移行
  2. 元々、バセドウ病機能性甲状腺腫(甲状腺機能性結節)が合併するマリンレンハート症候群: Marine-Lenhart症候群機能性甲状腺腫のホルモン産生が優位だったが、放射性ヨード治療後(サイトカインの上昇で?)バセドウ病が優位になった

と考えています。いずれも、眠っていたバセドウ病が顕在化したと考えるのが自然ではないでしょうか?

逆もあり、バセドウ病を放射性ヨード治療後、機能性甲状腺腫に移行

逆にバセドウ病を放射性ヨード治療後、機能性甲状腺腫に移行した報告もあります(Arq Bras Endocrinol Metabol. 2014 Jun;58(4):398-401.)。

甲状腺眼症(バセドウ病眼症)に移行

甲状腺眼症(バセドウ病眼症)に移行した報告があります(第62回 日本甲状腺学会 P17-2 放射性ヨウ素内用療法後に甲状腺眼症が顕在化したPlummer病の2例)。筆者が気付いたのは、放射性ヨード治療前の

  1. TRAbは1.0-1.9 IU/Lのグレーゾーン(カットオフ値2.0未満)、TS-Ab値は不明
  2. 甲状腺機能亢進は軽度ながらFT3優位

のため、最初からバセドウ病機能性甲状腺腫(甲状腺機能性結節)が合併するマリンレンハート症候群: Marine-Lenhart症候群で、放射性ヨード治療で甲状腺眼症(バセドウ病眼症)が誘発された可能性があります(Case Rep Endocrinol. 2014;2014:423563.)。

甲状腺切除手術

手術の場合、先に、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)で甲状腺機能を正常化した後に行います(手術をより安全に行うため)。※ヨウ化カリウム(KI)使用は慎重に(下記)

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)へのヨウ化カリウム(KI)は慎重に

ヨード欠乏地域の欧米では、甲状腺機能性結節へのヨウ化カリウム(KI)投与は、甲状腺機能亢進症を増悪させるため禁忌です。(Clin Endocrinol (Oxf). 1977 Aug;7(2):121-7.)

ヨード過剰地域の日本では、ヨウ化カリウム(KI)投与は、禁忌とまで行きませんが慎重にすべきです。伊藤病院の統計では、特に多単結節性の中毒性多結節性甲状腺腫(TMNG; toxic multinodular goiter)にヨウ化カリウム(KI)投与すると、76.9%で甲状腺機能亢進症が悪化したとの事です。(第58回 日本甲状腺学会 O-1-1 ヨウ化カリウム(KI)投与による自律性機能性結節性の甲状腺機能への影響)

その一方で、単発性の機能性甲状腺結節;Plummer 病(プランマー病)に対し、根治治療を希望されない症例にヨウ化カリウム(KI)の長期投与を試み、甲状腺機能が改善、6か月以上効果が持続、内服中止時には甲状腺機能亢進症が再燃した報告もあります。ただ、年単位での治療効果の報告が無いため、本当にヨウ化カリウム(KI)の長期投与が良いのか分かりません。(第59回 日本甲状腺学会 P4-5-1 ヨウ化カリウムで治療した自律性機能性結節の3 例)

抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)

もちろん、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)だけでコントロールできる軽症の甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)も存在するので、絶対に放射性ヨード治療、手術しなければならない訳ではありません。但し、機能性甲状腺乳頭癌の可能性がある場合は、本人が断固拒否しない限り手術になります。

ラジオ波焼灼術(RFA)、レーザー焼灼術、高密度焦点式超音波治療法

肝臓がん等に行われているラジオ波焼灼術(RFA)、レーザー焼灼術、高密度焦点式超音波治療法などを、甲状腺に応用している施設もありますが、保険適応は無く、普及していません。ラジオ波焼灼術(RFA)は手術に比べると低侵襲で放射線被曝を伴わず、腫瘍縮小効果がありますが、肝臓よりはるかに小さい甲状腺に行うので、焼灼範囲が広くなると、周囲組織にダメージを与える可能性があります。また、機能性甲状腺乳頭癌だった場合、周囲のリンパ節郭清が出来ない難点があります。

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)の予後

甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)は、手術摘出すれば治癒します。ただし、

  1. 左右両側の甲状腺機能性結節
  2. 甲状腺癌が強く疑われる

場合を除き、片葉切除(半切除)あるいは部分切除になるため、甲状腺組織が残ります。

術後再度、甲状腺中毒症を認めたら、

  1. 手術のストレスで無痛性甲状腺炎起こした
  2. 切除しなかった非機能性結節が、機能性結節化した
  3. 実は、非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進で、残りの甲状腺組織が活動を始めた

転移性機能性甲状腺分化癌の治療

転移性機能性甲状腺分化癌の治療は、厄介です。通常の甲状腺分化癌乳頭癌濾胞癌と同じく、甲状腺全摘手術後に131-Iシンチグラフィーを兼ねて131-Iアブレーション治療(放射性ヨード治療)を行います(甲状腺癌131-I放射線治療と再発・合併症・2次発癌)。甲状腺癌自体が甲状腺ホルモンを産生するため、転移巣が多ければ、甲状腺中毒症も強くなります。

報告例では

  1. ケガの功名で131-I取り込み良いが、転移性機能性甲状腺濾胞癌であったため効果は不十分(転移性甲状腺濾胞癌の特徴
  2. 2回目の131-Iアブレーション治療後、通常の甲状腺機能性結節で報告があるように(放射性ヨード治療後甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行)、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行
    131-Iアブレーション治療後に「プレドニゾロン20mg投与し4週間掛けて減量」を繰り返す事で、TRAb陰性化と甲状腺機能亢進症/バセドウ病の改善に成功したそうです。
    (第53回 日本甲状腺学会 P-209 131I内照射により誘発された TSH 受容体抗体がプレドニゾロン治療で陰性化し、甲状腺機能亢進症が軽快した転移性機能性甲状腺濾胞癌の一例)

妊娠中に見つかる甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)

妊娠中甲状腺中毒症から甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)が見つかる場合があります。当然、バセドウ病妊娠 妊娠時一過性甲状腺機能亢進  との鑑別が必要になります。甲状腺エコー(超音波)検査で、血流が異常に多い腫瘤が見つかれば、診断は容易です。バセドウ病抗体(TRAb,TSAb)が陰性(下記マリンレンハート症候群では陽性)、妊娠時一過性甲状腺機能亢進おこすほどhCGは高くありません。治療は難儀です。

  1. 当然、放射性ヨード治療はできず
  2. ヨウ化カリウム(KI)は中毒性多結節性甲状腺腫(TMNG)では増悪の危険があるので慎重に(上記)
  3. 抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)でも良いのですが、副作用のリスク、効き過ぎによる甲状腺機能低下症を考えると使いにくい
    実際、妊娠25週以降、プロパジールを使用、1時的に効き過ぎによる甲状腺機能低下症になりながらも乗り切り、出産後に手術した症例も報告されています。(第53回 日本甲状腺学会 P-192 PTU によりコントロールされた自律性機能性甲状腺結節 (AFTN) 合併妊娠の1 例)
  4. 何とか、しのいで必要なら妊娠後期出産後に手術

となるでしょう。

妊娠後期の顕在性甲状腺機能亢進症は甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)?

妊娠後期妊娠時一過性甲状腺機能亢進症が起きる事があります。この場合、

  1. 自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症妊娠後期に顕在化するため、鑑別が必要です。(非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症妊娠)
  2. 甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)??

との鑑別が必要になります。(Gynecol Endocrinol. 2020 Dec;36(12):1140-1143.)

日本甲状腺学会での四谷甲状腺クリニックの報告では、

  1. 妊娠後期にTSH受容体抗体陰性の甲状腺中毒症を呈し治療を要した10名中9名に多結節性病変を認めた
  2. hCGも正常値を超えるケースが大多数
  3. 産後半年以上経過が追えた8名では、1名が甲状腺機能正常化、3名が甲状腺機能亢進症の治療を要し(うち1名では一過性にTSAbが弱陽性化)、4名が潜在性機能亢進症が持続。甲状腺機能正常化しない7名のうち3名で自律性機能性結節が確認された。(潜在性機能亢進症状態の甲状腺機能性結節はシンチグラフィーでの検出は困難なので否定できないと思います)

(第63回 日本甲状腺学会 HS-10 妊娠後期非自己免疫性甲状腺中毒症の病態と産後の経過―hCGと結節性病変の関与―)

筆者が推測するに、hCG刺激が潜在的な甲状腺機能性結節(機能性甲状腺腫)を活性化させた(寝ている子を起こした)のではないでしょうか?島根大学の報告でも、hCG刺激で甲状腺機能性結節が増大し、さらに甲状腺ホルモン産生量が増えた可能性を指摘しています。(Gynecol Endocrinol. 2020 Dec;36(12):1140-1143.)

バセドウ病と機能性甲状腺腫(甲状腺機能性結節)が合併(マリンレンハート症候群: Marine-Lenhart症候群)

非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症と甲状腺機能性結節が混在---マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群

 

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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