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甲状腺と肺   [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波(エコー)検査の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

甲状腺と肺機能(スパイロメーター)

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。肺の病気の診療は行っておりません

Summary

甲状腺と肺を解説。バセドウ病橋本病に特にシェーグレン症候群/皮膚筋炎を合併すると、自己免疫性の間質性肺炎に注意。原因不明の空咳でKL-6・肺サーファクタント蛋白-D上昇。甲状腺癌の反回神経浸潤で嗄声(声のかすれ)・誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎(甲状腺癌の肺転移と鑑別)。甲状腺未分化癌甲状腺原発悪性リンパ腫リーデル甲状腺炎など急速に進行するものでストライダー(吸気時喘鳴)。肺機能(スパイロメーター)は診断に有用。傍気管空気嚢胞は右前頸部腫瘤として甲状腺腫瘍を疑われ見つかる事あり。甲状腺クリーゼで急性呼吸窮迫症候群(ARDS)起こり得る。

Keywords

甲状腺,肺,間質性肺炎,誤嚥性肺炎.バセドウ病,橋本病,スパイロメーター,甲状腺癌,ストライダー,甲状腺機能

間質性肺炎とKL-6(シアル化糖鎖抗原)・肺サーファクタント蛋白-D(SP-D)

原因不明の空咳は、間質性肺炎の可能性があります。自己免疫病であるバセドウ病橋本病に、肺の自己免疫病・間質性肺炎が併発する事が知られています。特に橋本病シェーグレン症候群/皮膚筋炎を合併すると、間質性肺炎の合併も考えねばなりません。シアル化糖鎖抗原-6(KL-6)サーファクタント蛋白-D(SP-D)間質性肺炎活動性を測る視標です。

甲状腺未分化癌治療で試験的に使用されるパクリタクセル(PTX)
アミオダロン誘導性甲状腺中毒症おこすアミオダロン(アンカロン®)
間質性肺炎をおこすことがあります。

誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎

びまん性誤嚥性細気管支炎 肺CT画像

甲状腺癌が反回神経に浸潤すると嗄声(声のかすれ)・誤嚥おこします。また、甲状腺癌と浸潤した反回神経を同時摘出した後も同様です。特に高齢者は誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎(胸X-pで異常なく、肺CTでびまん性小粒状陰影:甲状腺癌の肺転移と鑑別を要します)になります。肺炎球菌は重要な起因菌です。

発熱・せき・痰の典型的な症状に乏しく、喘鳴・呼吸困難生じます。

脳血管障害・パーキンソン病・認知症・橋本病合併潜在性シェーグレン症候群の口腔内乾燥・亜鉛欠乏症糖尿病合併で誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎おこしやすくなります。医療・介護関連肺炎(NHCAP)でもあります。

対処法は

  1. カプサイシン (唐辛子の辛味)(甲状腺機能亢進症/バセドウ病悪化の可能性)
  2. ACE阻害薬(サブスタンスP増加)(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン(2014)」で推奨)
  3. アマンタジンと葉酸(ドーパミン増加)(中枢性甲状腺機能低下症おこす可能性)
  4. 補中益気湯:気力・食欲向上し、免疫力・咀嚼筋力改善。(甲状腺機能亢進症/バセドウ病悪化の可能性)
  5. まめな口腔ケア・とろみ/ゼリー食などです。
  6. 予防に肺炎球菌ワクチンが有効。

肺機能(スパイロメーター)

バセドウ病橋本病に併発した間質性肺炎の診断、肺転移した甲状腺癌の呼吸機能評価。喫煙が原因の肺線維症、慢性気管支炎、肺気腫、気管支喘息の診断に。現在、長崎甲状腺クリニック(大阪)でスパイロメーターは行っておりません。

(左)スパイロメーターでは全肺気量・残気量以外の呼吸機能がわかります。
(右)スパイロメーターの波形  縦軸:肺活量、横軸:一秒率

ストライダー

上気道・中枢気道狭窄による喘鳴はストライダー(stridor)と呼ばれ、吸気時に著明になるため吸気時喘鳴とも呼ばれます。吸気時喘鳴(ストライダー)は、かなり気道が狭くなった時に起こり、遠からず気道閉塞に至ります。甲状腺および甲状腺以外の病気による上気道狭窄を考える必要があります。

甲状腺の病気でも特に、甲状腺未分化癌甲状腺原発悪性リンパ腫リーデル甲状腺炎など急速に進行するもので起ります。

甲状腺以外の病気では、Killer sore throat(致死的なのどの痛み) で起ります。

結核と甲状腺

Summary

日本の結核罹患率は、年々減少するも依然多い。甲状腺の結核感染は起こりにくいが、末期腎不全など免疫低下状態は可能性あり。症状は、腫瘤形成、圧痛、嚥下困難・嚥下痛・頸部圧迫感、反回神経圧迫による嗄声。甲状腺超音波(エコー)上、不均質な低エコー領域で石灰化した病巣は甲状腺乳頭癌と区別難。穿刺細胞診ではリンパ球・多核巨細胞、類上皮肉芽腫で確定、乾酪壊死組織は検体不適正。ほとんどが良性・悪性の甲状腺腫瘍として手術を受け、手術標本から甲状腺結核と診断。リファンピシン(RFP)、エチオナミド(ETH)による甲状腺機能低下症は重症、パラアミノサリチル酸(PAS)は軽症。

Keywords

甲状腺,結核,甲状腺乳頭癌,類上皮肉芽腫,乾酪壊死組織,甲状腺腫瘍,リファンピシン,エチオナミド,甲状腺機能低下症,パラアミノサリチル酸

日本の結核

結核(労咳;ろうがい)は決して過去の病気ではありません。日本の結核罹患率は、年々減少していますが、先進国の中では依然として多く、地球規模で見ても中規模の結核罹患率です。

よって、甲状腺結核も稀ながら、一定の割合で存在します。

甲状腺結核

甲状腺ホルモンは、

  1. 抗結核作用を担う役割があり
  2. 甲状腺内コロイドは殺菌作用があるため

甲状腺の結核感染は起こりにくいとされます。しかし、末期腎不全患者など免疫低下状態であれば、甲状腺結核が発症する可能性があります。

全身性粟粒結核の一部でなく単独の甲状腺結核は、本邦において60例に満たない稀な病気です。発症年齢は19歳から76歳まで広範囲。

甲状腺結核の症状は、

  1. ほとんどの症例で腫瘤形成
  2. 圧痛(35%)
  3. 嚥下困難・嚥下痛・頸部圧迫感
  4. 反回神経圧迫による嗄声(声がれ)

などです。痛みが無ければ甲状腺乳頭癌甲状腺原発悪性リンパ腫に、痛みが有れば亜急性甲状腺炎甲状腺低分化癌甲状腺未分化癌によく似ています。

甲状腺超音波(エコー)上も、不均質な低エコー領域で、甲状腺乳頭癌亜急性甲状腺炎によく似ています。石灰化した病巣は甲状腺乳頭癌と区別難です。

穿刺細胞診ではリンパ球・多核巨細胞を認め、亜急性甲状腺炎との鑑別難ですが、写真のような類上皮肉芽腫が検出されれば甲状腺結核と確定します。有名な乾酪壊死組織をいくら穿刺細胞診しても検体不適正になります。人間の先入観とは恐ろしいもので、「甲状腺癌疑い」の病名で提出された検体を病理医が悪性疑い(classⅣ)と診断してしまうことがあります。

末期腎不全患者など免疫低下状態であれば、甲状腺結核の可能性も考慮し、組織生検なども行うのが良いです(報告例の多くは末期腎不全、あるいは透析患者です)。

ほとんどが良性・悪性の甲状腺腫瘍として手術を受け、手術標本から甲状腺結核と診断されています。実際、「皮膚穿孔を伴う亜急性甲状腺炎」として発表された症例が、後日、甲状腺結核と判った症例もあるようです。少なくとも肺結核を伴っていれば、甲状腺結核をまず考えるべきでしょう。第58回 日本甲状腺学会 P2-2-1 「甲状腺の腫瘍性病変から結核の治療的診断に至った1例」でも、肺結核を伴っていたことが診断に繋がっています。
(第55回 日本甲状腺学会 P2-10-10 甲状腺結核の一例)
(Oxf Med Case Reports. 2015 Apr; 2015(4): 262–264. )

甲状腺結核 超音波(エコー)画像

甲状腺結核 超音波(エコー)画像

甲状腺結核  類上皮肉芽腫

甲状腺結核  類上皮肉芽腫

甲状腺結核 乾酪壊死

甲状腺結核 乾酪壊死

結核治療中甲状腺機能低下症糖尿病も悪化

肺結核のみならず、脊椎カリエス(脊椎)に抗結核薬を使用する場合、甲状腺機能低下症に要注意です。特にリファンピシン(RFP)、エチオナミド(ETH)による甲状腺機能低下症は重症で、TSHが200-300まで上昇します。

リファンピシン(RFP)、エチオナミド(ETH)、イソニアチド(INH:イスコチン®)

抗結核薬リファンピシン、エチオナミド(ETH)は肝障害おこすので有名ですが、肝臓での薬物代謝酵素系のCYP3Aなどを誘導して他の薬の分解を早め、作用を弱めます。甲状腺ホルモン・副腎皮質ホルモン・女性ホルモン剤が分解され、甲状腺機能低下症副腎皮質機能低下症(副腎不全)が悪化。。(Thyroid. 2007 Aug;17(8):793-5.)

4剤併用で治療開始(6か月コースならピラジナミド必須)し、反応よく2剤に途中で変更してもイソニアチド(INH:イスコチン)とリファンピシンは6か月間最後まで投与します。甲状腺機能低下症副腎皮質機能低下症(副腎不全)が最後まで続きます。

結核治療薬のイソニアチド(INH:イスコチン)は

  1. インスリン・経口血糖降下剤の効きを悪くし、糖尿病を悪化させる可能性があります。
  2. 末梢神経障害をおこすため(ビタミンB6投与で予防)、糖尿病性神経障害を悪化させる可能性もあります。

パラアミノサリチル酸(PAS)

イソニアジド(INH)・リファンピシン(RFP)に耐性を示す多剤耐性結核菌にパラアミノサリチル酸(PAS)が使用される頻度が増えています。パラアミノサリチル酸(PAS)の副作用の発生頻度は10~30%で、最も多いのは胃腸障害(腹痛・悪心,嘔吐・下痢など)ですが、甲状腺機能低下症の報告もあります。

パラアミノサリチル酸(PAS)は、甲状腺ホルモンの原料である

  1. ヨードの酸性化(イオン化)抑制
  2. ヨードのチロジン基の結合を阻害
  3. ヨードの甲状腺(濾胞細胞)への取り込みも低下させる

ため甲状腺ホルモンの合成障害を起こすとされます(Acta Endocrinol. 1959 31: 608-610.)。

通常の投与期間なら、パラアミノサリチル酸(PAS)の中止のみで甲状腺機能は回復しますが、1年以上の長期投与では甲状腺組織が破壊され永続性の甲状腺機能低下症になる可能性も報告されています(Acta Endocrinol. 1959 31: 608-610.)。

傍気管空気嚢胞

傍気管空気嚢胞は、一般人の1-3%にみられ、胸郭入口部の右気管後背部に多い空気嚢胞です。加齢・外傷・慢性閉塞性肺疾患(COPD)が原因です。右前頸部腫瘤として甲状腺腫瘍を疑われ、見つかる事があります。

甲状腺超音波(エコー)検査にて甲状腺右後下部に空気様腫瘤(ガス様陰影)として写ります。食道憩室のようにも見えますが、食道造影は異常なし。頸部CTで空気像を認め、気管と連続性あり。内部は空気と粘液で、穿刺すると空気と粘液が抜け、細胞診では気管粘膜と同じ線毛細胞が見られます。(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺と急性呼吸窮迫(こきゅうひっぱく)症候群(ARDS)

急性呼吸窮迫症候群(ARDS) は、重症患者に突然起こる呼吸不全/びまん性肺胞障害で、肺病変によるもの、肺以外が原因のものがあります。死亡率は40%で、もとの病気の治療と人工呼吸管理しかありません。

甲状腺クライシスが疑われたARDS合併重症バセドウ病の1例(日本内分泌学会雑誌 83(2) 328)」などの報告があり、甲状腺クリーゼでARDSがおこりえます。

プロカルシトニンは、甲状腺C細胞で産生されるカルシウム代謝ホルモン;カルシトニンの前駆物質ですが,ホルモン活性を持ちません。健常人ではプロカルシトニンは甲状腺外へ出ませんが、重症感染症/敗血症では甲状腺外でプロカルシトニンが産生され血中に出ます。敗血症の重症度判定と、感染性ARDSと非感染性ARDS の鑑別に有用です。

院長の論文

(Nihon Rinsho)
カルシトニン、プロカルシトニンの総説

肺CT

甲状腺癌の転移で最も多いのは肺転移です。胸部単純レントゲンのみでは発見できない事も多く、肺CTを提携する東住吉森本病院の放射線科に予約依頼しています。また、バセドウ病橋本病の自己免疫性甲状腺疾患には、自己免疫性肺炎である間質性肺炎を合併する事があり、肺CTが有用です。また、縦隔内甲状腺腫の気管食道圧排の評価にも有用です。

 

甲状腺関連の上記以外の検査・治療  長崎甲状腺クリニック(大阪)


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長崎甲状腺クリニック(大阪)

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