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結核と甲状腺、甲状腺結核、抗結核薬 [橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会学術集会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、甲状腺結核およびその他の結核診療を行っておりません。

Summary

日本の結核罹患率は依然多い。甲状腺の結核感染は起こりにくいが末期腎不全など免疫低下状態は別。症状は腫瘤、圧痛、嚥下困難・嚥下痛・頸部圧迫感、反回神経圧迫の嗄声。甲状腺超音波エコー検査では不均質な低エコー領域で石灰化し甲状腺乳頭癌と鑑別難。細胞診ではリンパ球・多核巨細胞、類上皮肉芽腫。乾酪壊死組織は検体不適正。ほとんどが良性・悪性甲状腺腫瘍として手術受け手術標本から甲状腺結核と診断される。リファンピシン(RFP)、エチオナミド(ETH)の甲状腺機能低下症は重症、パラアミノサリチル酸(PAS)では軽症。

Keywords

甲状腺,結核,甲状腺乳頭癌,類上皮肉芽腫,乾酪壊死,甲状腺結核,リファンピシン,エチオナミド,甲状腺機能低下症,パラアミノサリチル酸

過去の病気ではない結核

結核と甲状腺

結核(労咳;ろうがい)は決して過去の病気ではありません。日本においては

  1. 1940年代に結核発症率、死亡率が最大
  2. 1950年代は抗生物質の発達で激減
  3. 結核罹患率は年々減少するも、1997年に増加に転じ、1999年に政府が「結核緊急事態宣言」を出す
  4. 現在も、年間2万人以上が新たに結核を発症。先進国の中ではロシアに次いで多く、地球規模で見ても中規模の結核罹患率(結核の中等度蔓延国)です
  5. 近隣、アジア諸国の結核罹患率は日本の3-20倍で、インバウンドから持ち込まれる可能性があります

よって、甲状腺結核も稀ながら、一定の割合で存在します。

結核は、患者の咳やくしゃみが直接かからなくても、空気中に散布された結核菌を吸い込んで感染する(飛沫核感染、空気感染)です。

※一方、新型コロナウイルスなどは、患者の唾液、痰、喉(のど)の分泌物(飛沫)に接して感染する飛沫感染です。

肺結核を疑い検査すべきケースは

  1. 2週間以上の長びく咳(せき)、血痰
  2. 青白い顔
  3. 体重減少、微熱が続く(甲状腺機能亢進症/バセドウ病の様)
  4. 抗生物質に反応の悪い不明熱
  5. 1年以内に活動性結核患者と接触した人
  6. 副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤で治療中(甲状腺眼症:バセドウ病眼症橋本脳症亜急性甲状腺炎橋本病急性増悪)に咳・発熱が出現し治りが悪い

などです。よくあるのが、咳と微熱で近医を受診し、キノロン系抗菌薬を処方され解熱。数週間後に咳と微熱が再燃し、同じキノロン系抗菌薬の内服で改善。その後も再度、咳嗽と微熱、さらに喀痰が出現するなどのパターンです。結核菌にキノロン系抗生物質は感受性があるものの単独で治癒はできない。呼吸器感染症に対する安易な(クラビットなどの)キノロン系抗生物質投与は結核診断の遅れを招きます。本来、臨床の現場で行ってはならない事です。

胸部X線写真は肺結核診断の第一歩で、異常影は上肺野に多く、空洞影は典型的。[肺に空洞を形成するのは結核以外ではアスペルギルス、放線菌、ノカルジア(特殊な放線菌)ノカルジアはZiehl-Neelsen 染色で陽性に。]

このような場合、喀痰の抗酸菌培養検査を別の日に計3回行う(3回で陽性率が最も高くなる)。液体培地法では15.9日で培養同定可能。

ツベルクリンは手技や過去のBCG接種に影響されるため不安定です。T-SPOT.TBを感染したかどうかの判定に使うべきとの意見が広まっています。T-SPOT.TBにより血液検査で正確に結核感染を診断できます。T-SPOT.TB

  1. BCGワクチン接種や環境中の非定型抗酸菌の影響を受けない
  2. 現在活動していない結核でも陽性に出てしまう(陰性なら結核罹患歴がないことを示す)
  3. 結核発病者との接触後、陽性化するのに8週間かかります。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では実施しておりません。お近くの内科や呼吸器科を受診ください

結核の活動性評価はT-SPOT.TBでは不可能です。活動性を評価するには、

  1. 胸部レントゲン・肺CTなど画像診断
  2. 喀痰塗抹検査(ただし塗抹検査が陽性でも非定型抗酸菌の場合があります)。塗抹陽性の場合は、結核菌PCR(菌の遺伝子を検出する核酸増幅法検査:保険適応の「縛り」がきつく簡単には行えません)
  3. それでも診断できなければ気管支鏡で抗酸菌擦過塗沫染色・BAL(気管支肺胞洗浄)が必要です。呼吸器内科にしかできません。
  4. 結核性胸膜炎・腹膜炎は、胸水・腹水のPCRで陽性に出にくく、ADA測定は感度高いものの肝炎・肝硬変中皮腫悪性リンパ腫・その他感染症でも陽性になるため、結局、胸膜・腹膜生検が必要となります。
  5. 結核性心膜炎は、心タンポナーデ・収縮性心膜炎に発展し予後不良です。

抗酸菌が検出されれば、

  1. 感染症法における二類感染症なので医師は「結核の治療を必要とする患者」として直ちに保健所に届けねばなりません。
  2. 飛沫核感染(空気感染)を防ぐため、患者にはサージカルマスクを装着してもらいます。N95 マスクは呼吸をし難くするため、肺に炎症があって呼吸機能が低下している患者には適さない。
  3. 保健センターの仕事であるが、接触者の健康状態の確認と接触者健診を行わねばならない。

BCG 接種は1 歳までの乳児が対象で、小児結核の重症化を防ぐ効果があります。

結核患者の外来診察で最も重要な感染予防策は、陰圧個室での診察です。陰圧個室なんて、普通の医療機関にはないわい!

活動性肺結核 胸部エックス線写真

活動性肺結核 胸部エックス線写真

活動性肺結核 胸部造影CT画像

活動性肺結核 胸部造影CT画像

甲状腺機能低下症、糖尿病は結核になりやすい?

甲状腺機能低下症糖尿病の免疫不全者が、結核発病者との接触により潜在性結核感染症になっている可能性があります。

(写真 肺結核 単純X線)

若い時に結核に感染すると、一端、治癒しても結核菌が体内で眠ったまま残り、加齢、糖尿病甲状腺機能低下症などで体の免疫力が低下した時、再び活動を開始します。

日本のような高齢化社会では、糖尿病甲状腺機能低下症を持っている高齢者が多く、結核患者が減らない一因です。

肺結核 単純X線
樹枝状影

活動性の気道散布性結核;気道に沿って、コントラストの高い微細粒状影がびまん性に分布し、樹枝状影(tree-in-bud appearance、木の枝から芽が出る様子に似ているため)を呈します。(写真、Radiopaediaより)

甲状腺結核

甲状腺結核は非常に稀です。

  1. 甲状腺は血流が豊富で、酸素を取り込みやすく、リン パ管も発達しており抗結核作用がある
  2. 甲状腺内コロイド、ヨード(ヨウ素)には殺菌作用がある

ため、甲状腺の結核感染は起こりにくいとされます。しかし、末期腎不全患者など免疫低下状態であれば、甲状腺結核が発症する可能性があります。報告例の多くは末期腎不全、あるいは透析患者です。[Auris Nasus Larynx. 2022 Dec;49(6):1093-1097.]

全身性粟粒結核の一部でなく単独の甲状腺結核は、日本において60例未満の稀な病態です。発症年齢は19歳から76歳まで広範囲。

甲状腺結核の症状は、

  1. ほとんどの症例で腫瘤形成
  2. 圧痛(35%)
  3. 嚥下困難・嚥下痛・頸部圧迫感
  4. 反回神経圧迫による嗄声(声がれ)
  5. 結核性甲状腺炎による甲状腺中毒症[Postgrad Med J. 1992 Aug;68(802):677-9.]

などです。痛みが無ければ甲状腺乳頭癌甲状腺悪性リンパ腫に、痛みが有れば亜急性甲状腺炎甲状腺低分化癌甲状腺未分化癌によく似ています。

甲状腺超音波(エコー)上も、不均質な低エコー領域を呈し、甲状腺悪性リンパ腫甲状腺乳頭癌亜急性甲状腺炎によく似ています。石灰化した病巣は甲状腺乳頭癌甲状腺低分化癌甲状腺未分化癌と鑑別難です。[Auris Nasus Larynx. 2022 Dec;49(6):1093-1097.]

多結節性甲状腺腫に混在し、手術標本で甲状腺結核が見つかった報告もあります。[Acta Chir Belg. 2007 Jul-Aug;107(4):457-9.]

穿刺細胞診ではリンパ球・多核巨細胞を認め、亜急性甲状腺炎との鑑別難ですが、写真のような類上皮肉芽腫が検出されれば甲状腺結核サルコイドーシスなどに絞られます(Oxf Med Case Reports. 2015 Apr; 2015(4): 262–264.)。有名な乾酪壊死組織をいくら穿刺細胞診しても検体不適正になります。人間の先入観とは恐ろしいもので、「甲状腺癌疑い」の病名(臨床診断名)で提出された検体を病理医が悪性疑い(classⅣ)と診断してしまう事があります。

末期腎不全患者など免疫低下状態であれば、甲状腺結核の可能性も考慮し、組織生検(コア生検)などを行うのが良いでしょう(報告例の多くは末期腎不全、あるいは透析患者です)。

ほとんどが良性・悪性の甲状腺腫瘍として手術を受け、甲状腺摘出した後に手術標本から甲状腺結核と診断されます[Sao Paulo Med J. 2022 Jul-Aug;140(4):547-552.]。実際、「皮膚穿孔を伴う亜急性甲状腺炎」として発表された症例が、後日、甲状腺結核判った症例もあるようです。少なくとも肺結核を伴っていれば、甲状腺結核をまず考えるべきでしょう。第58回 日本甲状腺学会 P2-2-1 「甲状腺の腫瘍性病変から結核の治療的診断に至った1例」でも、肺結核の合併が診断に繋がっています。(第55回 日本甲状腺学会 P2-10-10 甲状腺結核の一例)
(Oxf Med Case Reports. 2015 Apr; 2015(4): 262–264.)

下は、とても甲状腺結核に見えないが、甲状腺結核だったケースの超音波(エコー)画像です[Sao Paulo Med J. 2022 Jul-Aug;140(4):547-552.]。

甲状腺結核 超音波(エコー)画像
甲状腺結核 超音波(エコー)画像

甲状腺結核 超音波(エコー)画像(Oxf Med Case Reports. 2015 Apr; 2015(4): 262–264.)

甲状腺結核  類上皮肉芽腫

甲状腺結核 類上皮肉芽腫(Oxf Med Case Reports. 2015 Apr; 2015(4): 262–264.)

甲状腺結核 乾酪壊死

甲状腺結核 乾酪壊死(Oxf Med Case Reports. 2015 Apr; 2015(4): 262–264.)

甲状腺結核 穿刺細胞診

甲状腺結核 穿刺細胞診

多核巨細胞(右)、類上皮肉芽腫(左)(日本甲状腺学会雑誌 2018;9(1):59-63)

抗結核薬治療により、甲状腺の低エコー域は消失し、甲状腺結核と治療的に診断される事もあります(報告では2か月後)。(日本甲状腺学会雑誌 2018;9(1):59-63)

また、膿瘍形成するとドレナージ等が必要な場合もあります。

他臓器の結核性病変

特に、甲状腺結核は、粟粒結核の一部として起こるものが多いとされます。

先に、肺結核・粟粒結核腸結核など、他臓器に結核性病変が見つかっている場合、逆に先入観を持って、甲状腺結核を考えるので診断がし易くなります。穿刺細胞診でZiel-Neelsen染色、結核培養検査などすれば良いでしょう。

甲状腺結核甲状腺癌と勘違いし、粟粒結核の肺を甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)肺転移ろ勘違いすると大変です。(粟粒結核

甲状腺結核ではなくリンパ節転移を伴う甲状腺乳頭がん

同時に見つかった結核性甲状腺炎粟粒性結核に対して抗結核薬を投与し、改善が見られたものの、甲状腺結節が消えなかったため甲状腺亜全摘術を施行。リンパ節転移を伴う甲状腺乳頭がんだった報告があります。[Endocrinol Jpn. 1990 Aug;37(4):571-6.]

結核治療中、甲状腺機能低下症が悪化

結核治療中、抗結核薬の副作用で甲状腺機能低下症・糖尿病も悪化します。抗結核薬リファンピシン(RFP)、エチオナミド(ETH)治療を開始すると、肝臓での甲状腺ホルモン分解が亢進され、甲状腺機能低下症が顕在化・増悪します。リファンピシン(RFP)、エチオナミド(ETH)の甲状腺機能低下症は重症、パラアミノサリチル酸(PAS)では軽症。[Expert Rev Endocrinol Metab. 2024 May;19(3):199-206.]

甲状腺機能正常橋本病患者でも、リファンピン投与後に血清TSH 170 μIU/mL の重症甲状腺機能低下症を発症(リファンピシン誘発性甲状腺機能低下症)。リファンピン中止により、甲状腺機能は正常化。[J Endocrinol Invest. 2006 Jul-Aug;29(7):645-9.]

リファンピシン(RFP)投与では、最悪、粘液水腫性昏睡に至ります。[Ann Endocrinol (Paris). 2023 Feb;84(1):81-82.]

エチオナミド(ETH)は多剤耐性結核治療に不可欠ですが、エチオナミド(ETH)誘発性甲状腺機能低下症も重症です。エチオナミド(ETH)中止後約2か月で甲状腺機能は正常化。[J Clin Diagn Res. 2015 Aug;9(8):OD08-9.][Ann Intern Med. 1984 Jun;100(6):837-9.]

エチオナミド(ETH)誘発性甲状腺機能低下症

エチオナミド(ETH)誘発性甲状腺機能低下症 [J Clin Diagn Res. 2015 Aug;9(8):OD08-9.]

甲状腺関連の上記以外の検査・治療  長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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