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橋本脳症と甲状腺       [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 甲状腺超音波エコー検査 長崎甲状腺クリニック大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

抗N末端α―エノラーゼ(NAE)抗体

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

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長崎甲状腺クリニック(大阪)では橋本脳症の診療は行っておりません。橋本脳症の診療は、神経内科専門医の仕事です。

Summary

橋本脳症は全例で橋本病抗体が陽性、特に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性者に多い。甲状腺ホルモン値に無関係。原因は細小血管炎による脳血流低下、MRIは異常なく、SPECTで脳血流が低下、抗N末端α-エノラーゼ(NAE)抗体陽性率・脳波検査陽性率が最も高い。急性脳症型/精神症状型/小脳失調型/クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)型がに分類される。急性脳症型ではステロイドが奏功するが、減量時の再発例も多く、免疫抑制剤(アザチオプリンなど)を併用。橋本脳症急性脳症型に甲状腺機能亢進症/バセドウ病、無痛性甲状腺炎を合併すると甲状腺クリーゼの診断基準を満たす。

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橋本脳症

橋本脳症とは

橋本脳症は自己免疫性甲状腺疾患に関連した脳症です。

橋本脳症の発症年齢は平均58歳(19~87 歳)で、20 歳台と50 歳台に二峰性のピーク。(結局、どの年齢でも起こり得る)
男:女=1:2~3(橋本病は1:20)

橋本病抗体は全例で陽性[特に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性者に多い]
甲状腺ホルモン値に関係ない(7割は甲状腺機能正常、高度の甲状腺機能機能低下甲状腺機能亢進は稀)のが特徴です。(J Neuroimmunol 2007.4; 185: 195-200.)

橋本脳症の原因は細小血管炎による脳血流低下と考えられ、MRIで異常なく、SPECTによる脳血流低下を証明する必要があります。

橋本脳症の分類

クロイツフェルト・ヤコブ病 脳波
  1. 急性脳症型(70%):意識障害、精神症状、痙攣など
    辺縁系に起こる型もあり、非ヘルペス性辺縁系脳炎に含まれる(Psychiatry and Clinical Neurosciences 2013; 67: 126–131)
  2. 精神症状型 (20%):幻覚、せん妄、認知症など
  3. 小脳失調型 (5%)
  4. クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)型(5%):
    (1)活動性の低下(傾眠傾向),うつ傾向,もの忘れ等で始まり
    (2) 認知症が急速に進行。言葉が出にくく,意思疎通できなくなり,特有のミオクローヌス(筋の突然の収縮が同時多発性におこる)が出現。寝たきりになります。PSD(周期性同期放電)脳波が特徴(心電図のような波形)。
    (Neurol Sci 24 : 138-140, 2003)

小脳失調型

橋本脳症(小脳失調型)の症状は、運動失調・筋緊張低下・構音障害(ろれつが回らない)、眼振が無いのが特徴。
慢性小脳失調で、脊髄小脳変性症と異なり、MRIで小脳萎縮が目立たず、軽度の性格変化・うつ傾向があり、脳波で基礎調律の徐波傾向が見られる(Euro Neurol 69:14-20. 2013)。
急性小脳失調型もあり、ウイルス性小脳炎、薬剤性小脳失調、ADEM(acute disseminated encephalomyelitis)と鑑別。

橋本脳症の症状

橋本脳症の症状は、福井大学から福井県立大学に移られた米田誠先生の統計によると

  1. 意識障害(66%)
  2. 幻覚・幻視・妄想の精神神経症状(53%)
  3. 認知症(38%)
  4. 震え・振戦(31%);甲状腺機能亢進症/バセドウ病を疑い、甲状腺ホルモン正常なら橋本脳症を考える
  5. けいれん(29%)
  6. 小脳失調・ふらつき(29%)

運動麻痺・感覚障害・脳卒中・パーキンソン症状・自律神経症状は稀。(Neuroimmunological Diseases, Springer, New York 2016, 235-244)(Neurology. 2016;86(16, supplement P2.257))

コタール症候群

橋本脳症でコタール症候群(Cotard 症候群、またはコタール妄想)を発症した報告があります。コタール症候群は、「自分がすでに死亡している、存在しない、腐敗している、血液や内臓を失っている」という妄想を抱く精神障害です。右脳の頭頂葉・側頭葉が障害されると、人や空間の認識ができなくなり、現実として感じられなくなります。前頭葉も障害されると、大脳辺縁系に感覚が伝えられず、見ても、食べても何も感じなくなり、自分が生きているのか分からなくなります。自分が死んでいるのか確認するため、自殺を試みる可能性もあります。[Neuropsychopharmacol Hung. 2019 Jun;21(2):85-93.]

橋本脳症の診断

橋本脳症の診断は

  1. 頭部MRI;異常が見つかる頻度は低い(約20%)で、慢性の精神症状に伴うびまん性白質病変・辺縁系病変に限られる
  2. 頭部血流SPECT;約70%で、びまん性血流低下、また、前部帯状回、前頭前皮質に局所的な血流低下(Euro Neurol 72:13-19. 2014)。
  3. 脳波検査;約90%で、多彩な異常所見が見つかります。基礎波の徐波傾向が多いが、鋭波や周期性突発波も出現します。
  4. 抗N末端アルファエノラーゼ抗体(抗NAE抗体、解糖系酵素への抗体)が橋本脳症に特異的。感度50%程度ですが、特異度90%。(残念ながら、日本では測定できる研究機関は無くなりました。2017年現在)

以上より、頭部MRIで異常が見つかる事は少なく、頭部血流SPECTと脳波検査行うしかありません。

抗N末端α―エノラーゼ(NAE)抗体

抗N末端α―エノラーゼ(NAE)抗体

橋本脳症 脳波

橋本脳症 脳波

院長が共同演者の学会発表

[P1-12-4] 甲状腺機能亢進症の精神症状が遷延し、診断しえた橋本脳症の1例

第89回日本内分泌学会学術総会

橋本脳症の鑑別

橋本脳症(急性脳症型)と鑑別すべきは、

  1. 粘液水腫脳症;意識障害同じ。原則、熱発しないので橋本脳症の急性脳症型と異なるが、肺炎など感染症が誘因となった粘液水腫脳症は熱発あります。(命の危険:粘液水腫性昏睡 )
  2. もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)と甲状腺機能亢進症/バセドウ病
  3. ウェルニッケ・コルサコフ症候群
  4. 脳動脈解離
  5. 中枢神経ループスと甲状腺
  6. 抗グルタミン酸受容体抗体(抗GluR 抗体)陽性の自己免疫性脳炎
  7. 可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)

橋本脳症(小脳失調型)と鑑別すべきは、

  1. 小脳梗塞・小脳出血・椎骨脳底動脈病変
  2. 多系統萎縮症(オリーブ橋小脳萎縮症)
  3. ウェルニッケ・コルサコフ症候群

橋本脳症(精神症状型)と鑑別すべきは、

  1. 精神神経病
  2. 甲状腺関係の認知症
  3. ウェルニッケ・コルサコフ症候群
  4. 本当の認知症

橋本脳症[クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)型]と鑑別すべきは、

  1. 橋本脳症と異なる本物のクロイツフェルト・ヤコブ病

橋本脳症の治療

橋本脳症の治療において、急性脳症型ではステロイドが奏功します。しかし、亜急性・慢性に精神症状を繰り返す型、臨床経過の長い場合の有効性は低いです(約20%)。長い経過になると脳に不可逆的な変化が生じます。

また、ステロイドが効いていても、(プレドニソロン10-15mgに)減量時に再発する例も多く、免疫抑制剤(アザチオプリンなど)の併用(保険適応外)が必要になります。(J Neuropsychiatry Clin Neurosci 18:1, 14-20, 2006)

報告されている急性脳症型の中にはステロイドパルス療法でも効果乏しく、血漿交換療法(PE)を3日間行い救命したが、大脳高次機能障害と難治性の症候性てんかんの後遺症が残ったケースもあります。(第56回日本甲状腺学会P2-049 バセドウ病治療中に意識障害と急性心不全で発症し血漿交換療法により救命しえた橋本脳症の1 例)

免疫抑制剤のアザチオプリン(イムラン®、アザニン®)

免疫抑制剤のアザチオプリン(イムラン®、アザニン®)は、痛風・高尿酸血症の薬の併用で作用が強まり、副作用がでやすくなります。

  1. フェブキソスタット(フェブリク®)、トピロキソスタット(トピロリック®、ウリアデック®)は併用禁忌
  2. アロプリノール(ザイロリック®)は併用注意
  3. ベンズブロマロン(ユリノーム®)は併用注意、併用禁忌になっていません(2022.5.8現在)

小児橋本脳症

最近では、稀ですが小児橋本脳症も報告されています。筆者は小児科の事は解りませんが、おそらく、ウイルス性脳炎と区別が付き難いと思います。

橋本脳症急性脳症型に甲状腺機能亢進症/バセドウ病、無痛性甲状腺炎を合併すると

橋本脳症急性脳症型の38℃以上の発熱・意識障害に、甲状腺機能亢進症/バセドウ病無痛性甲状腺炎を合併すると甲状腺ホルモン高値の条件が加わり、甲状腺クリーゼの診断基準を満たしてしまいます。本当の甲状腺クリーゼではないため、甲状腺クリーゼの治療しても意識障害は改善しません(最初だけのステロイド剤がわずかに効くかもしれません)。(第54回 日本甲状腺学会 P101 甲状腺クリーゼで発症した橋本脳症の一例)

甲状腺関連の上記以外の検査・治療      長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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