自己免疫性脳炎、可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症(MERS) [甲状腺 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
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甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(第二内科学教室)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックにつき、自己免疫性脳炎、中枢神経ループス、可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS) の診療を行っておりません。
Summary
自己免疫性脳炎は若年女性に好発、卵巣奇形腫に合併する傍腫瘍性辺縁系脳炎と非傍腫瘍性非ヘルペス性急性辺縁系脳炎があり、抗グルタミン酸受容体抗体(抗GluR 抗体)の1つ抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体抗体陽性。IL-6[インターロイキン6]も関与。橋本脳症と鑑別要。中枢神経症状を呈する全身性エリテマトーデス(SLE)は重症で中枢神経ループスで、抗リポゾームP抗体陽性、橋本脳症と鑑別要。可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS) と甲状腺クリーゼの合併報告あり。
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自己免疫性脳炎は若年女性に好発し、辺縁系が障害される急性非ヘルペス性脳炎(非ヘルペス性辺縁系脳炎)の一つです。
- 卵巣奇形腫に合併する傍腫瘍性辺縁系脳炎と
- 非傍腫瘍性非ヘルペス性急性辺縁系脳炎
の2つは抗グルタミン酸受容体抗体(抗GluR 抗体)の1つである抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体抗体陽性が特徴で、バセドウ病眼症・アミオダロン誘発性甲状腺中毒症2型、血球貪食症候群(甲状腺クリーゼに合併)でも上昇するIL-6[インターロイキン(Interleukin)-6]などのサイトカインが報告されています。自己免疫性脳炎と自己免疫性甲状腺疾患(橋本病、バセドウ病)との関連は不明、橋本脳症との鑑別は問題になります。
自己免疫性脳炎の治療は、
- 第一選択免疫療法(ステロイドパルス療法、免疫グロブリン大量療法、血漿交換療法):約50%は抵抗性
- 第二選択免疫治療(発症早期からシクロフォスファミド大量療法、リツキシマブ投与)が推奨されます(ただし日本では保険適応無し)
防衛医大の報告では5例(内3例は第一選択免疫療法抵抗性)の自己免疫性脳炎に、リツキシマブ投与し全例で改善を認めたそうです。しかも重篤な副作用はなかったとの事です。(第114回 日本内科学会 132 抗NMDA受容体抗体脳炎に対するrituximabの有効性の検討)
自己免疫性脳炎の死亡率は約7%。
全身性エリテマトーデス(SLE)は若年女性に好発し、慢性甲状腺炎[橋本病](12%)・甲状腺機能亢進症/バセドウ病に合併する場合があります。
中枢神経症状を呈する全身性エリテマトーデス(SLE)は重症(中枢神経ループス:NPSLE)。中枢神経ループスは全身性エリテマトーデス(SLE)の約30-40%に合併します。
中枢神経ループスの症状は、うつ状態、失見当識、妄想などの精神症状と痙攣(ケイレン)、脳血管障害。
中枢神経ループスと中枢性甲状腺機能低下症は深い関連があります[Mod Rheumatol. 2002 Dec;12(4):338-41.]。
中枢神経ループスは、
- 血清中に抗リポゾームP抗体
- 髄液にバセドウ病眼症・アミオダロン誘発性甲状腺中毒症2型、血球貪食症候群(甲状腺クリーゼに合併)でも上昇するIL-6[インターロイキン(Interleukin)-6]
を認めることがあります。
中枢神経ループスの治療は、ステロイド大量投与で効果が無い場合
- シクロホスファミド間欠大量静注療法
- シクロスポリン、アザチオプリン
- 血漿交換
を併用。
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (clinically mild encephalitis / encephalopathy with a reversible splenial lesion ; MERS)
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)とは
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)の原因
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)の原因は何でもよく、
- 感染性;インフルエンザウイルス(最多)、ロタウイルス、アデノウイルス、帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス-6(HHV-6)、サルモネラ菌、O157大腸菌による溶血性尿毒症性症候群(HUS)
- 薬剤性;化学療法薬1クール 目直後、抗痙攣薬減量後
- 代謝異常
- 膠原病に伴う血管炎
- 腎不全、電解質異常
(Brain & Development 2009; 31:521-528.)
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)の症状
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)の症状は、無症状の事も多いが、
- 発熱
- 意識障害(せん妄)
- 頭痛
- 痙攣発作
と似ています。甲状腺クリーゼの合併も報告されています(甲状腺中毒症性白質脳症)(Brain Dev. 2021 Apr;43(4):596-600.)。
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)と甲状腺クリーゼの合併(甲状腺中毒症性白質脳症)
報告症例は、甲状腺クリーゼでメルカゾールとヨウ化カリウム(KI)により治療開始。発熱、頻脈は改善するも、入院3日目に発語低下、上肢不随意運動が出現、けいれん重積状態となる。 可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)と診断されたそうです(甲状腺中毒症性白質脳症)。(第60回 日本甲状腺学会 O8-2 可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)を合併 した甲状腺クリーゼの1例)
甲状腺中毒症性白質脳症の原因として
- 代謝異常;甲状腺クリーゼ、すなはち究極の甲状腺機能亢進状態
- 薬剤性;メルカゾールとヨウ化カリウム(KI)
- 感染症;甲状腺クリーゼの誘因となる先行感染に続発
などが考えられます。薬剤性については、投与前にMERSが見つかっている報告があるため、否定的です(Brain Dev. 2021 Apr;43(4):596-600.)。
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)の診断
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)の治療と予後
可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)は、ステロイドパルス療法により神経症状の著明な改善を認めます。可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)のほとんどが1ヶ月以内に症状消失します。
甲状腺クリーゼの治療に用いるヒドロコルチゾン(300mg/日)程度の量では、MERSの症状は十分に改善しません。よって、単なる甲状腺クリーゼの中枢神経症状ではなく、可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)や橋本脳症の合併を疑う必要があります。(第63回 日本甲状腺学会 C6-3 可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)を合併した甲状腺中毒症の一例)
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区も近く。