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甲状腺と血球貪食症候群(HPS)、自然免疫、自己炎症性疾患[甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科(第二内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会学術集会で入手した知見です。

甲状腺と血球貪食症候群

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。血球貪食症候群(HPS)の診療は行っておりません。

Summary

血球貪食症候群は過剰なサイトカインによりマクロファージ/組織球/キラーT細胞が活性化した状態。2次性は①感染症②悪性リンパ腫、白血病③SLEなど膠原病④組織球性壊死性リンパ節炎など。sIL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)IL-6(インターロイキン6)が上昇、高フェリチン血症も。偶然合併か、バセドウ病の免疫により誘発されるか不明だが、血球貪食症候群に甲状腺機能亢進症/バセドウ病合併すると、重篤感があり、発熱・白血球/汎血球減少・肝機能障害は重複するが、リンパ節腫脹、肝脾腫、凝固異常、高LDH血症、DIC所見、高フェリチン血症は異なる。血球貪食症候群に甲状腺クリーゼ合併すると重篤。

Keywords

血球貪食症候群,サイトカイン,マクロファージ,甲状腺,sIL2-R,可溶性インターロイキン2受容体,IL-6,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺クリーゼ

血球貪食症候群(HPS)とは

血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS)または血球貪食性リンパ組織症(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)は、過剰なサイトカイン生成(高サイトカイン血症)により、マクロファージ/組織球(抗原提示細胞)とCD8陽性T細胞(キラーT細胞)が過剰に活性化/増殖、様々な臓器障害を起こします。

血球貪食症候群(HPS)の病因は、

  1. 1次性(遺伝性):家族性血球貪食性組織球症
  2. 2次性;強い免疫活性化を起こす疾患に続発
    ①感染症
    悪性リンパ腫血管内悪性リンパ腫)、白血病(Oncol Lett. 2018 Jul;16(1):1275-1284.)
    ③自己免疫疾患[SLE(全身性エリテマトーデス)など膠原病、甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺クリーゼ]
    組織球性壊死性リンパ節炎
    ⑤アルコールや薬物[抗甲状腺薬(メルカゾール)]、免疫不全
    甲状腺乳頭癌(J Pediatr Hematol Oncol. 2018 Mar;40(2):e97-e98.)

    です。

①感染症の内、EBV(エプスタイン・バール・ウイルス)、CMV(サイトメガロウイルス)、単純ヘルペス、水痘・帯状疱疹ウイルス、HHV-6[抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)薬剤性過敏症症候群の原因]などのヘルペス属ウイルスによるものが多く、EBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)による血球貪食症候群は重篤な場合が多いです。パルボウイルス、風疹ウイルスによる場合もあります。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の場合もあります。

血球貪食症候群(HPS)の症状

血球貪食症候群(HPS)の症状は

  1. 発熱
  2. 脾臓・肝臓腫大、肝障害
  3. リンパ節腫脹
  4. 皮疹
  5. 中枢神経症状(けいれん・意識障害)

などです。

血球貪食症候群(HPS)で上昇するサイトカイン

血球貪食症候群(HPS)で上昇するサイトカインは

  1. sIL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)
  2. IL-6(インターロイキン6)

血球貪食症候群(HPS)と甲状腺機能亢進症/バセドウ病

不思議な事に甲状腺機能亢進症/バセドウ病の経過中、甲状腺クリーゼで血球貪食症候群(HPS)をおこしたケースは、日本甲状腺学会で多数報告されていますが、海外では中国の1例のみです(J Clin Apher. 2011;26(3):159-61.)。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の経過中の血球貪食症候群(HPS)

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の経過中に血球貪食症候群(HPS)をおこした報告が多くあります。甲状腺機能亢進症/バセドウ病にしては「何かおかしい、重篤感があり過ぎる」と言った感じです

  1. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と被る発熱・白血球/汎血球減少・肝機能障害
    [抗甲状腺薬(メルカゾール)による無顆粒球症薬剤熱と鑑別]
  2. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病だけでは説明が難しいリンパ節腫脹、肝脾腫、凝固異常、高LDH血症、DIC所見(甲状腺クリーゼの様)
  3. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病とは異なる高フェリチン血症(1万異常なら、かなり疑わしい)(甲状腺機能亢進症/バセドウ病では鉄の消耗が激しくフェリチンも低下)

甲状腺機能亢進症/バセドウ病に合併する血球貪食症候群(HPS)は、偶然合併しただけなのか、バセドウ病の免疫機序により誘発されたのか不明です。報告では、WBC1400まで低下し、骨髄穿刺で活性化されたマクロファージと血球貪食像を認め、ステロイドパルス療法で改善。甲状腺機能亢進症/バセドウ病にはアイソトープ治療行ったそうです。(第54回 日本甲状腺学会 P206 血球貪食症候群を契機に診断されたバセドウ病の1例)

抗甲状腺薬(メルカゾール)により無顆粒球症と血球貪食症候群(HPS)が誘発

抗甲状腺薬(メルカゾール)により無顆粒球症と血球貪食症候群(HPS)が誘発される事があります。

無顆粒球症と皮疹が回復後に血球貪食症候群(HPS)を来した報告があります。ただし、無顆粒球症と薬疹の数週前に、鼠径部リンパ節炎を起こし、既に血球貪食症候群(HPS)の兆候があった様です。ならば原因は抗甲状腺薬(メルカゾール)と考えられます。(第62回 日本甲状腺学会 P42-2 チアマゾールでの無顆粒球症の治療後に血球貪食症候群を来したバセドウ病の1例)

また、抗甲状腺薬(メルカゾール)により無顆粒球症と血球貪食症候群(HPS)をおこした後、二重膜濾過血漿交換法(DFPP)で治療し、無事甲状腺摘出手術できた報告もあります(J Clin Apher. 2011;26(3):159-61.)。

血球貪食症候群(HPS)と甲状腺クリーゼ

甲状腺クリーゼ

  1. 汎血球減少(ここから疑いが始まる)
  2. 播種性血管内凝固症候群(DIC)所見(疑いが濃厚)
  3. 高フェリチン血症(疑いがかなり濃厚)
  4. sIL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)(甲状腺ホルモンだけでも上昇する)
  5. 骨髄穿刺・リンパ節生検で血球貪食像(確定)

高サイトカイン血症・播種性血管内凝固症候群(DIC)・血球貪食症候群(HPS)を合併した甲状腺クリーゼの症例が報告されています。汎血球減少があったため、血球貪食症候群(HPS)を疑い、高フェリチン(27600ng/ml)・高sIL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)(7218 U/ml)血症・IL-6(インターロイキン6)値上昇の結果から確信を持ったとの事です。sIL2RIL-6は非常に時間が掛かる(sIL2Rは4-5日、IL-6は1週間以上)検査で、甲状腺クリーゼが安定した(もしくは不幸な転帰を取った)後にしか結果が来ないため、高フェリチン血症が決め手になります。確定診断は、骨髄穿刺で血球貪食像を認めます。早期のヘパリンと副腎皮質ステロイド剤投与が功を奏したそうです。

血球貪食症候群(HPS)の甲状腺クリーゼとの合併報告は稀(いや、意外と見逃されているかもしれません)ですが、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)発症のリスクを高めます。(第56回 日本甲状腺学会 P2-019 高サイトカイン血症を呈し播種性血管内凝固症候群(DIC))

sIL2-R (可溶性インターロイキン2受容体)甲状腺機能亢進症/バセドウ病無痛性甲状腺炎でも、甲状腺ホルモンがリンパ球を刺激する事により高値になるため、必ずしも血球貪食症候群(HPS)にはなりません。(第55回 日本甲状腺学会 P1-03-11 可溶性インターロイキン2受容体(IL2-R)異常高値を示した肝不全、DIC合併の甲状腺クリーゼ(TS)の1例)

重症の甲状腺クリーゼでは、2重濾過血漿交換(DFPP)を行う事があります。甲状腺ホルモンとバセドウ病抗体(TRAb)を除去できますが、インターロイキン6(IL-6)やTNF-α は除去できないとの報告です。(第57回 日本甲状腺学会 P2-026 血漿交換と平温療法を行った甲状腺クリーゼの一例)

(2重濾過膜血漿交換(DFPP) 旭化成HPより)

2重濾過膜血漿交換(DFPP)

低T3症候群を伴う血球貪食症候群(HPS)

低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス)を伴う血球貪食症候群(HPS)は予後不良で、生存率が低くなります(Leuk Lymphoma. 2020 Jul 9:1-8.)。

自己炎症性疾患

自己炎症性疾患(autoinflammatory disease)は、リンパ球を介さない自然免疫系(マクロファージや好中球等)の異常です。家族性地中海熱が含まれます。

家族性地中海熱は遺伝性周期性発熱症候群では最多。

  1. 急激な発熱(38~40℃)の半日~3 日間持続を繰り返す(ストレス・感染・外傷などが引き金)
  2. 漿膜炎;腹膜炎による腹痛、胸膜炎による胸痛
  3. AA アミロイドーシス(人種により10~80%);血清アミロイド A(SAA)が甲状腺・副腎下垂体など全身臓器に沈着(甲状腺アミロイドーシス )
  4. 下腿の丹毒様皮疹

治療は、

  1. ステロイドや免疫抑制剤は無効
  2. 発作予防にコルヒチン長期継続投与が有効
    約5%は無効だがAA アミロイドーシスの予防は可能

甲状腺と自然免疫

自然免疫は、

  1. リンパ球を介さず、直接抗原(細菌、ウイルス、自分の細胞)を攻撃するナチュラルキラー細胞や好中球
  2. 抗原(細菌、ウイルス、自分の細胞)を捕捉し、二次リンパ組織のナイーブTリンパ球に抗原(自己および異物)を提示するマクロファージ、抗原提示細胞、樹状細胞

による免疫系です。

甲状腺と自然免疫

基礎医学が中心の話ですが、甲状腺ホルモンは、これら自然免疫系の細胞に作用し、活性化させる研究結果が出ています。マクロファージについては、活性化させるか、不活化するか意見が分かれていますが、ナチュラルキラー細胞、好中球、抗原提示細胞、樹状細胞については、活性化させると言うのが主流です。

あくまで動物実験ですが、甲状腺ホルモンが多過ぎる甲状腺機能亢進症では、逆にナチュラルキラー細胞が低下する報告があります(J Immunol. 1987 Oct 1;139(7):2502-7.)。

(Front Endocrinol (Lausanne). 2019 Jun 4;10:350.)

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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


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