橋本病合併シェーグレン症候群・潜在性シェーグレン症候群(ドライアイ,口中乾燥):耳下腺・顎下腺[橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。シェーグレン症候群の診療を行っておりません。
シェーグレン症候群の難病医療証で、甲状腺の検査・治療はできません。
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください
(本ページ)橋本病(慢性甲状腺炎)合併シェーグレン病(ドライアイ,口中乾燥):唾液腺(耳下腺・顎下腺)エコー
Summary
橋本病(慢性甲状腺炎)の16%にシェーグレン症候群、約40%に潜在性シェーグレン症候群合併。バセドウ病でも合併あり。症状は口・眼が乾き(ドライマウス・ドライアイ)、しゃべりにくい、食べにくい、虫歯・舌炎・口内炎・味覚異常、喉(のど)の違和感(甲状腺の病気と勘違い)、皮膚乾燥、脱毛、全身倦怠感・精神症状。抗SS-A抗体、抗SS-B抗体陽性。唾液腺(耳下腺・顎下腺)超音波エコー検査は僅かな破壊も診断可能。治療薬①人工唾液サリベート②セビメリン(サリグレン,エボザック)は甲状腺機能亢進症/バセドウ病で心房細動(Af)・頻脈性不整脈・狭心症/心筋梗塞誘発の危険。
Keywords
橋本病,甲状腺,シェーグレン症候群,潜在性シェーグレン症候群,唾液腺,耳下腺,顎下腺,エコー,抗SS-A抗体,甲状腺機能亢進症,バセドウ病
シェーグレン症候群は、唾液腺・涙腺・汗腺などの外分泌腺が壊される自己免疫の病気です(自己免疫性外分泌腺炎)。外分泌腺の組織に、Tリンパ球が浸潤して破壊がおこります。それは、内分泌腺である甲状腺に、Tリンパ球が浸潤して破壊する橋本病(慢性甲状腺炎)と極めて似た自己免疫反応です。
膠原病の診断基準を満たす(難病指定)顕在性シェーグレン症候群のほとんどは、血中抗SS-A抗体、抗SS-B抗体が陽性で、唾液腺に高度の破壊を伴います。
橋本病(慢性甲状腺炎)の16%にシェーグレン症候群が認められます。シェーグレン症候群の約7%で橋本病(慢性甲状腺炎)を、約3%でバセドウ病を合併します。[Clin Rheumatol. 2006 Mar;25(2):240-5.]

橋本病(慢性甲状腺炎)の33%は、唾液腺超音波(エコー)検査にて唾液腺の破壊が確認でき、口や眼が乾く(ドライマウス・ドライアイ)潜在性シェーグレン症候群を合併します。(J Rheumatol. 1997 Sep;24(9):1719-24.)
潜在性シェーグレン症候群を合併する橋本病(慢性甲状腺炎)は、合併しないものに比べて、甲状腺自己抗体[抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)]価、抗核抗体(ANA)価が有意に高い。さらに潜在性シェーグレン症候群を合併する橋本病(慢性甲状腺炎)患者の40%はドライマウス・ドライアイの症状を有します。
顕在性(膠原病の診断基準を満たす、難病指定)シェーグレン症候群のほとんどは血中抗SS-A抗体、抗SS-B抗体が陽性ですが、潜在性シェーグレン症候群における血中抗SS-A抗体、抗SS-B抗体の陽性率は低く、潜在性シェーグレン症候群を診断する役には立ちません。
(第53回 日本甲状腺学会 P-53 橋本病患者における唾液腺超音波検査を用いた潜在性シェーグレン症候群の検討)
顕在性(膠原病の診断基準を満たす、難病指定)シェーグレン症候群のほとんどで唾液腺破壊は高度ですが、潜在性シェーグレン症候群の唾液腺破壊は軽度です。しかし、唾液腺(耳下腺・顎下腺)超音波(エコー)検査は、わずかな破壊でも診断可能です。[Isr Med Assoc J. 2016 Mar-Apr;18(3-4):193-6.]
バセドウ病におけるシェーグレン症候群の合併率は0.8%です[Autoimmun Rev. 2019 Mar;18(3):287-292.]。
また、バセドウ病の20%に潜在性シェーグレン症候群が合併します(J Rheumatol. 1997 Sep;24(9):1719-24.)。筆者の恩師 稲葉雅章 大阪公立大学(旧 大阪市立大学)名誉教授の抗体併存説では、矛盾なく説明可能です。事実、橋本病(慢性甲状腺炎)の自己免疫抗体、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)のいずれかが甲状腺機能亢進症/バセドウ病の79%で陽性です(上條甲状腺クリニックの統計)。
潜在性シェーグレン症候群/顕在性シェーグレン症候群の症状
潜在性シェーグレン症候群/顕在性シェーグレン症候群の症状は
- 唾液腺、涙腺が破壊され、口や眼が乾く(ドライマウス・ドライアイ)→しゃべりにくい、飲み込みにくい
- 口内乾燥で虫歯・舌炎・口内炎・味覚異常をおこします(亜鉛欠乏症と鑑別)
顎骨壊死をおこすリスクが高い
- 喉(のど)も乾く。[喉(のど)の違和感、喉(のど)に引っかかる感じ[嚥下(えんげ)時の違和感]、嚥下障害。甲状腺それとも?]
- 酸っぱいものを食べた後に、顎下が痛む事がある
- 汗腺の障害により皮膚が乾燥(甲状腺機能低下症を合併するとさらに乾燥)
- 脱毛(甲状腺機能低下症を合併すると、さらに脱毛)(亜鉛欠乏症、副腎皮質機能低下症と鑑別)
- 鼻が乾燥して鼻出血を起こすことも
- 全身倦怠感・精神症状
1. ドライアイによる表層点状角膜炎
乾燥した角膜は機械的な障害により、びらん、潰瘍、瘢痕化、細菌感染(細菌性角膜炎、ブドウ球菌・緑膿菌・肺炎球菌・連鎖球菌が起炎菌)
2、口内乾燥(ドライマウス)で虫歯・舌炎・口内炎
4、汗腺の障害により皮膚が乾燥
シェーグレン症候群では、汗腺の障害により皮膚が乾燥します(Clin Rev Allergy Immunol. 2017 Dec;53(3):357-370.)。鑑別すべ病気は、内分泌的な代謝の低下、汗腺の神経障害です。
- 甲状腺機能低下症
- 亜鉛欠乏症
- 副腎皮質機能低下症
- 成人成長ホルモン分泌不全症
- 糖尿病性神経障害で汗腺の神経が障害
7、甲状腺機能低下症と同じ全身症状・精神症状
シェーグレン症候群・潜在性シェーグレン症候群の全身症状として、甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症、副腎皮質機能低下症と同様、疲労感・記憶力/集中力低下・頭痛/めまい・精神的に不安定/うつ傾向などをよくおこします。(Rheum Dis Clin North Am. 2017 Nov;43(4):519-529.)
シェーグレン症候群・潜在性シェーグレン症候群を合併した甲状腺機能低下症/橋本病では、これらの症状が、両方の病気から生じる可能性があります。
顕在性シェーグレン症候群の治療薬は、
橋本病(慢性甲状腺炎)合併潜在性シェーグレン症候群
甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)に対する放射性ヨード内用療法(RI 治療;I-131 アブレーション)で認められる有害事象(合併症)の一つ、唾液腺障害による口腔乾燥症
にも使われます。
- 人工唾液サリベート:成分はリン酸二カリウム/塩化カリウム 塩化カルシウム 塩化ナトリウム 塩化マグネシウムです。1日5回噴霧で10日分/1本。
- ヒアレイン点眼液®(ヒアルロン酸):ドライアイに
ジクアス点眼液®(ジクアホソルナトリウム点眼液);点眼液ながら肝障害[ALT(GPT)上昇]を起こす場合があるので注意
- セビメリン(サリグレン®,エボザック®)、、ピロカルピン塩酸塩(サラジェン®)[下記]
セビメリン(サリグレン®,エボザック®)、ピロカルピン塩酸塩(サラジェン®)
セビメリン(サリグレン®,エボザック®)、ピロカルピン塩酸塩(サラジェン®):副交感神経刺激薬(コリン作動薬)でアセチルコリン類似の化学構造。唾液腺に分布するムスカリン性アセチルコリン受容体(M3型)を刺激し、イノシトールリン脂質経路を活性化させて、唾液分泌を促進します。
禁忌は、
- 重度の狭心症/心筋梗塞[冠状動脈硬化による狭窄部位を、冠状動脈攣縮によりさらに狭小化し、心筋虚血を悪化させる危険](甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症の動脈硬化が原因の狭心症/心筋梗塞・甲状腺機能亢進症/バセドウ病による冠攣縮性狭心症)
- 気管支喘息/COPD[気管支収縮及び気管支粘液分泌亢進のため、症状を悪化](甲状腺機能低下症と気管支喘息)
- てんかん
- 虹彩炎[縮瞳が虹彩炎症状を悪化][バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の虹彩・毛様体炎]
特定の背景を有する患者に関する注意、または慎重投与として、甲状腺機能亢進症/バセドウ病患者の「心血管系に作用し、不整脈又は心房細動を起こすおそれがある。」と添付文書に記載されています。甲状腺機能亢進症/バセドウ病では心房細動(Af) 頻脈性不整脈 をおこす危険があります。
また、これらの薬は嘔気 、腹痛 、下痢 、多汗 などの副作用があり、甲状腺機能亢進症/バセドウ病でおきるこれらの症状を悪化させます。
甲状腺ホルモンが正常範囲を維持している安定したバセドウ病なら影響は少ないですが、甲状腺ホルモンが安定せず高いままの甲状腺機能亢進症/バセドウ病で問題になります。少なくとも、甲状腺ホルモンが正常化して、その後も正常値を維持できるようになるまで、これらの薬は避けるのが良いと思われます。
セビメリン(サリグレン®,エボザック®)とピロカルピン塩酸塩(サラジェン®)を比較した場合、
ピロカルピン塩酸塩(サラジェン®)は
- 頭頸部領域、分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞癌)の放射線治療(I-131 内照射)に伴う唾液腺障害(口腔乾燥症)にも有効[Nucl Med Commun. 2018 May;39(5):430-434.][Oral Dis. 2006 May;12(3):297-300.]
- 長期投与しても減弱しない
- セビメリン塩酸塩水和物で多くみられた嘔気は少ない
国立病院機構旭川医療センターの報告では、橋本病(慢性甲状腺炎)合併潜在性シェーグレン症候群の約15%は、1年後に顕在性シェーグレン症候群へ移行します。(第54回 日本甲状腺学会 P138 橋本病患者における唾液腺超音波検査を用いた潜在性シェーグレン症候群の検討:第二報)
抗SS-A抗体、抗SS-B抗体陽性のシェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)妊娠では、新生児エリテマトーデス(新生児ループス)に注意が必要(発症率は約10%)。
胎盤を通過した母親由来の自己抗体、抗SS-A抗体は、新生児エリテマトーデスも引き起こします。新生児の
- 鮮紅色環状紅斑;出生時から生後3カ月の間に浸潤を伴う環状の紅斑。抗SS-A抗体が減少する約6カ月後、色素沈着を残さずに治癒
- 血球減少
- 肝機能障害
- 房室ブロック・心筋障害(約 1%)[J Am Coll Cardiol. 2002 Jan 2;39(1):130-7.][Arthritis Rheum. 2009 Oct;60(10):3091-7.]
などです。完全房室ブロックでは、出生直後に恒久ペースメーカー植え込みの必要があります。
新生児エリテマトーデス(新生児ループス)の児は、同じ母親から生まれた兄弟と比較すると、将来、甲状腺機能低下症/橋本病を発症する可能性が高いとされます(Lupus. 2010 Mar;19(3):300-6.)(Arthritis Rheum. 2002 Sep;46(9):2377-83.)。
本来シェーグレン症候群の特異抗体である抗SS-A抗体陽性の全身性エリテマトーデス(SLE)では、蛋白漏出性胃腸症起こしやすいとされます。免疫複合体が消化管の毛細血管に沈着し、血管透過性が亢進するのが原因です。軟便が続き、低アルブミン血症、全身浮腫が著明になります。タンパク漏出シンチグラフィーで診断できますが、アイソトープ施設のある大学病院などでしか行えません。(日本内科学会雑誌 100:119-125,2011)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。