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SITSH、難病甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)のことも![甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 超音波(エコー)検査 内分泌の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

SITSH診断アルゴリズム

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Summary

TSH不適切分泌症候群(SITSH)は、甲状腺ホルモン(FT3, FT4)の数値が高いのに、 脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)は抑制されない状態です。SITSHのひとつ、難病指定の甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の病態、症状、診断、TSH産生下垂体腺腫との鑑別診断、治療を解説。甲状腺ホルモン受容体β(TRβ)遺伝子変異、T3抑制試験、TRH負荷試験なども説明。

TSH不適切分泌症候群(SITSH)

甲状腺ホルモンのFT4(ましてやFT3)が少しでも高値の時に、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が抑制されないのは異常です。

TSH不適切分泌症候群(SITSH)とは、甲状腺ホルモンの数値(FT3, FT4)が上昇しているのにも関わらず、 脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が抑制されない不可解な状態です。

TSH不適切分泌症候群(SITSH)には、以下のような可能性があります。

真のSITSH(TSH不適切分泌症候群)は約20%で

  1. 甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)
  2. TSH産生下垂体腺腫

真のSITSH(TSH不適切分泌症候群)の事は少なく、約80%は

  1. 無痛性甲状腺炎の経過中:TSHの低下がFT3、FT4上昇に遅れる
  2. 甲状腺ホルモン剤服薬中:①TSHの低下がFT3、FT4上昇に遅れる②FT4のみ上昇する事あり(FT4→FT3の脱ヨード反応が低下)
  3. 偽高値/偽低値(本当のTSH、FT3、FT4は正常だが、異常値に出てしまう)
  4. 未成年者のFT3高値(未成年者のFT3の正常上限は成人より高値)

甲状腺ホルモン不応症類縁疾患も稀に存在

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)とは

甲状腺ホルモン受容体(TR)遺伝子にはα型(TRα)とβ型(TRβ)の2つがあります。以下の甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群:RTH)は、TRβ遺伝子変異によるものです。

サミュエル・レフェトフ博士

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群、syndrome of resistance to thyroid hormone:RTH)は、常染色体優性遺伝[一家系のみ、常染色体劣性遺伝(J Clin Endocrinol Metab. 1992;74(1):49-55.)]により、50%の確率で遺伝します。

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の85%はβ型甲状腺ホルモン受容体(TRβ)遺伝子異常です[Best Pract Res Clin Endocrinol Metab.2007;21(2):277-305.]。

15%は、TRβ遺伝子に変異を認めず、甲状腺ホルモン受容体に結合するコファクター(転写共役因子)の異常が疑われます(nonTR-RTH)が、まだ証明されていません(J Clin Endocrinol Metab. 1996 Dec;81(12):4196-203.)。

※nonTR-RTHの中には、後日TSH産生腫瘍が発生するTSH産生下垂体腺腫の前段階が紛れているので注意を要しますます。(第59回 日本甲状腺学会 専門医教育セミナーⅠ甲状腺ホルモン不応症:RTHβとRTHα)

非家族性(散発性)に発症するTRβ遺伝子de novo 変異による甲状腺ホルモン不応症も存在し、全体の約20%とされます(第57回 日本甲状腺学会 P2-087 診断までに無痛性甲状腺炎を発症し、甲状腺機能の激しい変化を示した甲状腺ホルモン不応症の一例)。

(写真は、サミュエル・レフェトフ博士)

甲状腺ホルモン受容体β型(TRβ)遺伝子変異部位(甲状腺専門医以外は必要無し)

甲状腺ホルモン受容体β型(TRβ)遺伝子変異部位

(図)バーチャル臨床甲状腺カレッジより引用

甲状腺ホルモン受容体β型(TRβ)遺伝子の変異部位の85%は、

  1. 甲状腺ホルモンに結合する部位
  2. 甲状腺ホルモン受容体に結合するコファクター(転写共役因子)の結合部位

のいずれかに存在します。(残り15%は、コファクター(転写共役因子)自体の異常と言われます。)

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の頻度

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)は、甲状腺ホルモンの標的臓器への作用が減弱している状態です。米国のスクリーニング調査では4万人に1人で男女差なしとされますが、反して実際の報告例数は世界で約1000家系、3000例以上で、正しく診断されていない患者(バセドウ病/甲状腺機能亢進症と診断されているなど)が大多数と考えられます。

日本甲状腺学会が2009年に把握した国内の甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)症例はわずかに98例(71家系)で,日本では、いまだ多くの甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)症例が診断されないままの状態と考えられます。

橋本病/甲状腺機能低下症、無痛性甲状腺炎、バセドウ病/甲状腺機能亢進症の合併が多く、診断・治療を困難にしている事が一因と考えられます(甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の症状)。

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の分子メカニズム(甲状腺専門医以外は必要無し)

ドミナントネガティブ効果

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の分子メカニズムです。

正常では、甲状腺ホルモン受容体(TR)は、RXR(レチノイドX受容体)と二量体(ペア)を形成、さらにRNAの転写をストップするコリプレッサーが結合しています。甲状腺ホルモン(T3)が結合すると、コリプレッサーが外れ、代わりにRNAの転写を開始するコアクチベーターが結合します。

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)では、

  1. 甲状腺ホルモン(T3)との結合が弱いため、コリプレッサーが外れない。
  2. 甲状腺ホルモン(T3)との結合が正常でも、共役因子のコアクチベーターと結合が弱い。

ドミナントネガティブ効果と呼ばれます。(図)バーチャル臨床甲状腺カレッジより引用

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の病態

甲状腺ホルモン受容体(TR)は、甲状腺ホルモンが作用を及ぼす標的臓器の細胞核内に存在する受容体です。

TRには、αとβの2種類があり、甲状腺ホルモン不応症は、TRβの異常です。異常TRとT3(T4からヨードが一つ外れ、TRに結合しやすくなった甲状腺ホルモン)が結合できないため、甲状腺ホルモンが作用しません。(ただし、優性遺伝では片親の正常TRβも存在するため、全く作用がない訳ではありません)

異常TRは視床下部・下垂体にも存在します。正常人では、FT4は脳血液関門を通過し、2型脱ヨードによりFT3に変換され、視床下部・下垂体のTRに結合し、TRH(TSH放出ホルモン)や下垂体のTSH遺伝子を抑制(ネガティブフィードバック調節)します(FT4のTRへの結合は弱く、FT3が主体)。しかし、異常TRはFT3への結合が悪いため、TSHの抑制が起こりません(FT3によるTSHのネガティブフィードバックの破綻)。これが、TSH不適切分泌症候群(SITSH)起こす原因です。

ネガティブフィードバック調節

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の症状

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の症状は、

  1. 甲状腺ホルモンが高値にもかかわらず、甲状腺機能亢進症状を欠きます。
    甲状腺ホルモン作用の減弱が甲状腺ホルモン増加により代償されるため(代謝正常の全身型と定義されます)、多くは3.甲状腺腫と2.軽度の頻脈程度で治療を必要としません。


    しかし、甲状腺中毒症症状が強く、注意欠陥/多動性障害や著しい頻脈を示す患者もまれではありません(代謝亢進の下垂体型と定義されます)[Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2007;21(2):277-305.]


  2. 例外的に、心臓は アルファ型甲状腺ホルモン受容体(TRα)経路、甲状腺ホルモン受容体を介さず甲状腺ホルモンが心筋細胞膜に作用する経路(non-genomic action)が存在するため、動悸、不整脈、収縮期高血圧(上の血圧が高くなる)がおきます。
    頻脈から心房細動を起こす頻度が比較的高く、若年で脳梗塞を起こした報告もあります[QJM. 201;104(8):705-707.]
    自覚症状に乏しい症例でも、長期の心臓刺激により慢性心不全を発症することあります。
     
  3. TSHが持続的に高く、甲状腺を刺激し続けるので甲状腺腫(甲状腺の腫れ)を認めます(66-93%)。そのため、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)が陰性でない限りサイログロブリンも高値になります。(写真)バーチャル臨床甲状腺カレッジより引用
    また、123-I シンチグラフィー、99m-Tcシンチグラフィーも高値になります。
     
  4. 橋本病/甲状腺機能低下症無痛性甲状腺炎バセドウ病/甲状腺機能亢進症の合併が多く、診断・治療を困難にしています。[甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)が発見されない原因と考えられます]
    330人中77人(23.3%)(J Clin Endocrinol Metab. 2010 Jul;95(7):3189-93.)
     
  5. 末梢組織の不応性が、下垂体の不応性より強ければ甲状腺機能低下症となります。劣性型・ホモ型(両親からTRβ遺伝子異常を受け継ぐ)は、先天性甲状腺機能低下症の症状(知能発達遅延・低身長・難聴)起こす事あります[J Clin Endocrinol Metab. 1967;27(2):279-294.]。
     
    下垂体の不応性が、末梢組織の不応性より強ければ甲状腺機能亢進症となります。

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)と妊娠

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)と妊娠

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)女性が、遺伝子変異を持たない正常児を妊娠した場合、胎児は母体甲状腺ホルモンによる甲状腺中毒症おこし、流産率が高く、低出生体重児になる事があります[JAMA. 2004;292(6):691-695.]。

母体も胎児も両方が、甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)なら、問題は起こらないのです。

RTH;甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の母体、あるいは胎児
WT;正常なの母体、あるいは胎児
(図)バーチャル臨床甲状腺カレッジより引用

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の診断

summary

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群:RTH)診断アルゴリズムは最終的にTSH産生下垂体腺腫の鑑別。ダイナミック下垂体MRIで下垂体腫瘍を否定。TRH負荷試験は正常反応。保険適応外の性ホルモン結合蛋白SHBG, TSHのαサブユニットが正常。TRβの遺伝子変異を調べる検査で確定。ただし、甲状腺ホルモン不応症の15%は、TRβ遺伝子に変異を認めず、受容体に結合するコファクター(転写共役因子)の異常とされる。TRβの遺伝子変異が確認できなかった時のみT3抑制試験行う。片親の正常TRβも存在するため、部分的に抑制されるが、明確な判定基準もなく、リスクを伴う。

Keywords

甲状腺ホルモン不応症,レフェトフ症候群,RTH,診断,TSH産生下垂体腺腫,ダイナミック下垂体MRI,TRH負荷試験,TRβ,遺伝子変異,T3抑制試験

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群:RTH)診断アルゴリズム

SITSH診断アルゴリズム

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群、syndrome of resistance to thyroid hormone:RTH)診断アルゴリズムが厚労省研究班から出されています。

真のSITSH(TSH不適切分泌症候群)の事は少なく、約80%は

  1. 無痛性甲状腺炎の経過中:TSHの低下がFT3.FT4上昇に遅れる
  2. 甲状腺ホルモン剤服薬中:FT4のみ上昇する事あり
  3. FT3,FT4偽高値, TSH偽低値
  4. 未成年者のFT3高値(未成年者のFT3高値は成人より高値)

です。(甲状腺ホルモン不応症の臨床検査所見と鑑別診断.甲状腺疾患 改訂第2版.大阪:最新医学社;2012.pp.78-88.)

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の診断手順

注意!甲状腺専門医以外の医療従事者の方へ

前項でも述べたように、SITSH(TSH不適切分泌症候群)の約80%は真のSITSHでは無く、約90%は甲状腺ホルモン不応症ではありません。TRβの遺伝子変異を調べる検査は、各都道府県の甲状腺専門医を通して(セカンドオピニオンでも良いと思います)、本当に甲状腺ホルモン不応症が疑われる方のみに行うべきです。

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の診断は、TSH産生下垂体腺腫がないことを証明した上で、遺伝子解析になります。

  1. ダイナミック下垂体MRI:大阪市立大学病院 代謝内分泌内科、あるいは東住吉森本病院に依頼。TSH産生下垂体腺腫が存在しない事を確認。下垂体の偶発腫瘍(インシデンタローマ)は、かなり多く、TSH産生下垂体腫瘍は稀なので、下垂体腫瘍が見つかってもTSH産生下垂体腫瘍と即断してはいけません。
     
  2. TRH負荷試験:大阪市立大学病院 代謝内分泌内科に依頼(短期入院)
    ・TRHを静注。マクロアデノーマでは下垂体卒中に注意・妊婦は禁忌
    ・注射前、30分、60分後にTSHとプロラクチンを測定
     注射前と120分後にT3を測定、増加したTSHの生物活性(甲状腺を刺激できる正常な構造のTSHかどうか)を確認   します
    健常人や甲状腺ホルモン不応症では、TSHはTRHに反応して増加[TSH頂値≧10μU/ml(30分後]
    TSH産生腫瘍の92%がTRHに反応しません
    ・副作用として一過性の熱感・発汗、悪心・嘔吐、めまい、尿意。
     
  3. 保険適応外検査(血中の性ホルモン結合蛋白SHBG, TSHのαサブユニットが正常)
     
  4. TRβの遺伝子変異を調べる検査を
    ①京都医療センター(国立病院機構)
    ②群馬大学 病態制御内科学(日本甲状腺学会誌にて公示)
    ③名古屋大学 環境医学研究所(日本甲状腺学会誌にて公示)
    へ依頼。
    TSH不適切分泌症候群(SITSH)診断のアルゴリズムでは、早期に行うよう推奨されています。ただし、甲状腺ホルモン不応症の15%は、TRβ遺伝子に変異を認めず、受容体に結合するコファクター(転写共役因子)の異常が疑われていますが、まだ証明されていません。

    報告されているTRβの遺伝子変異R243Q,R243W,M313T,A317T,R320C,R320L,R338W,
    R438W,P453S,P453T
    Met310Val(hetero)など、かなりの種類がありますが、下記の3つのクラスター上に存在します。
     
    I250F(exon8)(新規変異)(第55回 日本甲状腺学会 P1-07-10 甲状腺ホルモン受容体β遺伝子に新規の変異を検出した甲状腺ホルモン不応症兄妹例)
    Y321C(exon9)(新規変異)(第55回 日本甲状腺学会 P1-07-09 甲状腺ホルモン受容体β遺伝子の新規変異を認めた甲状腺ホルモン不応症の1例)
    R320H(第56回 日本甲状腺学会 O8-7 SITSH2 症例におけるTRH 負荷試験併用T3 抑制試験を用いた甲状腺ホルモン作用の評価)
    R429Q(exon10)(第57回 日本甲状腺学会 P2-101 心房細動を契機に診断したR429Q 変異甲状腺ホルモン不応症の一例)
    P453A(exon10);日本での報告例は日本甲状腺学会の1例を合わせ計3例で、全て家族歴のない弧発例の疑い(第57回 日本甲状腺学会 P2-102 繰り返す動悸を契機に診断に至った家族歴を有さない甲状腺ホルモン不応症(RTH)の1 例)
     
  5. T3抑制試験:T3製剤で部分的にTSHが抑制されます[優性遺伝では片親の正常TRβも存在するため、全く抑制されない訳ではありません(部分的に抑制)]。(明確な判定基準もなく、リスクを伴うため、TRβの遺伝子変異が確認できなかった時のみおこないます。)
甲状腺ホルモン受容体β型(TRβ)遺伝子変異部位

TRβの遺伝子検査で異常が見つかった場合

TRβの遺伝子検査では、遺伝形式から、1人に異常が見つかれば、血縁者の遺伝子異常の確率まで自動的に判ってしまいます。

そもそもTRβ遺伝子診断は保険診療に認められておらず、簡単に検査センターで行えず,研究の一環として行われているのが現状です。遺伝子を扱う倫理上の問題,遺伝子診断に伴い発生する責任などのため、手続も煩雑で、病院の倫理委員会を通さねばなりません。

T3抑制試験

T3抑制試験は即効性の甲状腺ホルモン剤[合成トリヨードサイロニン(LT3)]を負荷して

  1. 50、100、200μg/日のT3を12時間毎に各3日間、計9日間経口投与
  2. 投与前日(day0)と各量最終日(day3,6,9)に
    血液検査[甲状腺機能、コレステロール、クレアチンキナーゼ、フェリチン、性ホルモン結合蛋白(保険適応外)]
    TRH負荷試験(TSHとプロラクチン測定)を行います。
  3. 体重、睡眠中脈拍、基礎代謝、食事摂取量の測定は毎日行います。
T3抑制試験判定
T3抑制試験 甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の場合
軽症の甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)

甲状腺ホルモン不応症が軽度の場合、TRH負荷試験併用T3抑制試験で、

  1. TSH前値はT3の用量依存性に低下(T3で抑制される)
  2. T3 増量投与後のTRH 負荷試験でのTSH の反応は徐々に鈍くなり消失(T3で抑制される)

と言う結果になります。T3 抑制試験で軽症の甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)診断は困難です。(このような場合、TRβの遺伝子検査の方が有用です)(第56回 日本甲状腺学会 O8-7 SITSH2 症例におけるTRH 負荷試験併用T3 抑制試験を用いた甲状腺ホルモン作用の評価)

TSH産生下垂体腺腫と甲状腺ホルモン不応症の鑑別診断

TSH産生下垂体腺腫がないことを証明せねばなりません。ただし、極めてまれに、甲状腺ホルモン不応症TSH産生下垂体腺腫を合併した報告や、非機能性下垂体腺腫を合併した報告があります。

  1. 家族性がある(甲状腺ホルモン不応症でも家族性が見つかっていない場合もあります)
  2. TRH負荷試験・ダイナミック下垂体MRI・保険適応外検査(血中の性ホルモン結合蛋白SHBG, TSHのαサブユニット)
  3. T3抑制試験:甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)は、T3製剤で部分的にTSHが抑制されます。

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の治療

ほとんどの甲状腺ホルモン不応症は、甲状腺ホルモン作用の減弱が甲状腺ホルモン増加により代償されるため,甲状腺腫と軽度の頻脈程度なので治療を必要としません。

  1. 頻脈強い場合、βブロッカー剤
     
  2. 甲状腺機能低下症状が顕著な場合、
    成人では、代謝マーカーを指標に、
    小児では、骨年齢、成長曲線、精神発達を考慮しながら
    甲状腺ホルモン剤(LT4;レボサイロキシン、チラーヂン)補充を行います。
    ただし、頻脈増悪するため、βブロッカー剤を併用します。
     
  3. TSHが高く甲状腺腫が大きい場合、少量の合成T3(LT3;トリヨードサイロニン、チロナミン)投与がTSH抑制と甲状腺の縮小に有効です。ただし、LT3は心臓を直接刺激するため、頻脈増悪、βブロッカー剤を併用します。
     
  4. 甲状腺機能亢進症状が強い場合、
    ①βブロッカー剤を投与
    ②不十分なら、TSH分泌を低下し甲状腺ホルモンレベルを下げる;ドパミン作働薬のブロモクリプチン(パーロデル®)、カベルゴリン(カバサール®)、ソマトスタチン誘導体(保険適応外かつ高額で使用難)
     
    抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール)を投与して甲状腺ホルモンを低下させるとTSH分泌は亢進し、甲状腺腫の増大・下垂体TSH産生細胞の過形成・下垂体腺腫形成を引き起こす危険性があるので避けます。

甲状腺ホルモン不応症患者が甲状腺摘出後の甲状腺ホルモン補充療法

甲状腺ホルモン不応症患者が、甲状腺癌/甲状腺腫瘍などで、甲状腺摘出後の甲状腺ホルモン補充療法はいかに行うか?もちろん、代謝マーカーが指標の一つですが、九州の田尻クリニックでは、手術前のTSH(甲状腺刺激ホルモン)値を指標にして甲状腺ホルモン補充療法量を調整するようです。[第58回 日本甲状腺学会 P1-10-6 腺腫様甲状腺腫に対して甲状腺全摘を行った甲状腺ホルモン不応症(RTH)の一例:甲状腺ホルモン補充量の目安について]

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の予後

ほとんどの症例で予後は健常人と変わりません

甲状腺ホルモン不応症に橋本病(慢性甲状腺炎)を合併した場合

甲状腺ホルモン不応症橋本病(慢性甲状腺炎)合併し、甲状腺機能低下症になるまで甲状腺が破壊された場合どうなるのでしょうか?

  1. TSHが通常よりも上昇し、甲状腺ホルモン(FT4,FT3)を代償性に上昇させねば、視床下部に抑制が掛からない
  2. 甲状腺ホルモン剤(LT4;チラーヂンS)投与しても、視床下部に抑制が掛からない→TSHが通常よりも低下しない

と言う事になります。甲状腺ホルモン剤(LT4;チラーヂンS)の反応性が悪い場合、第一に甲状腺ホルモン剤(LT4;チラーヂンS)の吸収障害を疑いますが、甲状腺ホルモン不応症橋本病(慢性甲状腺炎)合併している可能性もあります。

高知医療センターの報告では、FT3 2.40pg/ml、FT4 1.36ng/dl、TSH 140.7μIU/ml、抗TPO 抗体190U/ml、抗Tg 抗体40000U/mlー(LT4 250μg/日)→FT3 3.75~5.25pg/ml、FT4 2.93~3.72ng/dl、TSH 2.69~21.57μIU/ml と本来の甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の状態になったとの事です。(第58回 日本甲状腺学会 P2-103 甲状腺ホルモン不応症に慢性甲状腺炎を合併した一例)

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)に橋本病、バセドウ病/甲状腺機能亢進症を合併すると

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)に橋本病、バセドウ病/甲状腺機能亢進症を合併した症例を東海大学が報告しています。元々、患者は甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の家系で、遺伝子変異もP453Tと確定されていて、父親は橋本病合併甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)、母親は橋本病のみ。

  1. 甲状腺機能亢進症時には、TSH低値、FT3・FT4高値、TRAb強陽性で、TSHが抑制され、SITSHの状態がマスクされます。
    (事前に家系が分からなければ、ただのバセドウ病として治療され、甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)が見つからない原因の1つ)
  2. バセドウ病治療薬の抗甲状腺薬投与され、甲状腺機能改善するとTSHが正常値、FT3・FT4高値のSITSHの状態に戻ります。
  3. 抗甲状腺薬の調節は、バセドウ病/甲状腺機能亢進症発症前の甲状腺ホルモン値を参考に行います。
  4. 橋本病自体、最も多い日本人の甲状腺の病気なので、甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)の家系と交わり、診断を困難にしている様です。報告例も両親ともに橋本病でした。橋本病、バセドウ病はコインの裏と表で、橋本病の50人に1人はバセドウ病に移行します(橋本病バセドウ病は入れ替わる---元は同じ自己免疫性甲状腺疾患)。

(第53回 日本甲状腺学会 P121 甲状腺ホルモン不応症にGraves 病による甲状腺機能亢進症を合併した一例の下垂体・末梢組織の反応性とメチマゾール内服による治療経験)

甲状腺ホルモン不応症でTSHが抑制される場合

甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)でTSHが抑制される場合、診断は極めて困難になります。TSHが測定感度以下に抑制され、甲状腺ホルモンのFT4は上昇するが、FT3は正常範囲内の下限。全く同パターンを取るもので、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に低T3症候群を合併した場合があります(むしろ、こちらの方が一般的)。

日本医科大学の報告例では、

  1. TSH<0.1 μIU/ml(↓)、FT3 2.70 pg/mL(→)、FT4 3.6 ng/dL(↑)で
  2. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病としてメルカゾール投与後、TSH 265.7 μIU/ml(↑)、FT4 0.4 ng/dl(↓)と効き過ぎ
  3. メルカゾール減量後、TSH 12.3~18.2 μIU/ml(↑)、FT4 2.0~2.1 ng/dl(↑)と、ここで初めてTSH不適切分泌症候群(SITSH)の所見になり、TSH不適切分泌症候群(SITSH)の家族歴とTRβ遺伝子変異から甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)が確定したそうです。

甲状腺ホルモン不応症類縁疾患

甲状腺ホルモン不応症類縁疾患(甲状腺ホルモン抵抗症とも言われます)として、

  1. TRα(甲状腺ホルモン受容体アルファ)異常症(末梢型甲状腺ホルモン不応症)
  2. アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群 [monocarboxylate transporter 8(MCT8)異常症]
  3. SBP2遺伝子異常症 [selenocysteine insertion-sequence binding protein 2(SBP2)異常症]

があるが、甲状腺ホルモン不応症とは臨床像が異なる。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療・知見    長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ 谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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