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「放射線治療無効な分化型甲状腺癌」にネクサバール錠®・レンビマカプセル®[甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)ではネクサバール錠(ソラフェニブ)・レンビマ®カプセル(レンバチニブ)の取扱いはありません

受容体型チロシンキナーゼ(RTK)のシグナル伝達経路

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編   内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等   糖尿病編 をクリックください

Summary

受容体型チロシンキナーゼ阻害薬(分子標的治療薬)、ネクサバール(ソラフェニブ)とレンビマ(レンバチニブ)の適応・作用機序・効果・副作用を解説。肺やリンパ節転移に効き易いが骨転移に効き難い。放射線治療抵抗性の分化型甲状腺癌(甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌)の疾患関連10年死亡率30%なのに、盲目的な投与が横行、長年にわたりトンデモナイ副作用に苦しめられる事に。転移巣が進行性、大きい、脊椎骨転移による痛みや麻痺症状などがある、サイログロブリンが急上昇などの場合使用すべき。出血の副作用あるため、常に大出血おこす危険を考慮。甲状腺髄様癌にバンデタニブ(カプレルサ)が適応。

Keywords

ネクサバール,ソラフェニブ,レンビマ,レンバチニブ,甲状腺乳頭癌,甲状腺濾胞癌,肺転移,骨転移,甲状腺髄様癌,甲状腺がん

根治切除不能の甲状腺癌に、ネクサバール錠®・レンビマカプセル®

根治切除不能の甲状腺癌に、分子標的治療(バイオ製剤、生物学的製剤)が開始されています[長崎甲状腺クリニック(大阪)での取り扱いはありません]。

  1. ネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)が、 「根治切除不能な分化型甲状腺癌」に
  2. レンビマカプセル®(一般名:レンバチニブ)が「根治切除不能の甲状腺癌」治療薬として

保険適応が認められました。ネクサバール®が分化型甲状腺癌(乳頭癌濾胞癌)にしか適応がないのに対して、レンビマカプセル®は甲状腺髄様癌甲状腺未分化癌を含むすべての甲状腺癌に適応があります。

ネクサバール錠®(ソラフェニブ)

ネクサバール錠(ソラフェニブ)は根治切除不能、放射線内照射(131-I アブレーション)抵抗性の分化型甲状腺癌(甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌)に保険適応のある分子標的薬。がん細胞増殖に必要なチロシンキナーゼ経路のRaf、血管新生に必要な血管内皮増殖因子受容体(VEGFR) ・血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)を阻害。無増悪生存期間の延長効果。手足症候群は100%出て、すべての患者に副作用。レンビマ®(レンバチニブ)は、作用機序、副作用の種類と頻度が異なるため切り替える事も。効いて癌細胞が壊死(死滅)すると皮膚・咽頭・気管と交通し廔孔形成、血管壁が壊れ大出血。

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ネクサバール®(ソラフェニブ)の適応

ネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)は、 「根治切除不能な分化型甲状腺癌」(要するに転移などがあり、手術で完全にとり切れない甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)で、以下のように放射線内照射(131-I アブレーション)に抵抗性の症例に保険適応が認められています。

甲状腺全摘出後

  1. 131-I アブレーションが有効でない甲状腺分化癌
  2. 131-I 総投与量が600mCiを超えても制御できない甲状腺分化癌

(要するに放射線治療が効かない甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)に限定されます。

このような使い方も可能では?

今後考えられるネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)の有効な使用法として、

  1. 日本の放射線治療病室の入院待ちは、平均6か月程です。つまり、甲状腺全摘出して後、すぐに放射線治療開始できないのです。その間、ネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)を一時的に使用できれば良いと思うのですが、現時点で保険適応はなく、厚生労働省も許可していません。
     
  2. そもそも、131-I アブレーションは、甲状腺全摘出後にしか行えません。何らかの事情で、甲状腺全摘出できない方に使用するのは良い考えと思いますが、現時点で保険適応はなく、厚生労働省も許可していません。

ネクサバール®(ソラフェニブ)の作用機序

ネクサバール®(ソラフェニブ)の作用機序は、

ソラフェニブの作用機序
  1. 甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌の細胞増殖に必要なシグナル伝達酵素であるチロシンキナーゼを阻害し、細胞増殖を抑えます。チロシンキナーゼの経路(MAPキナーゼ経路)の中には、Rafという甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌の増殖に重要なタンパク質があるため、癌細胞の増殖がストップするのです。(このような特定の物質を狙い撃ちする薬を分子標的薬と言います)
     
  2. 癌細胞が増殖するには栄養血管が必要で、癌細胞は自分で栄養血管を作ります(血管新生)。血管新生の指令にはPDGFやVEGFというサイトカイン物質が関与し、その受容体である血管内皮増殖因子受容体(VEGFR) ・血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)を阻害すれば血管新生は抑えられ、癌細胞に栄養が。

ネクサバール®(ソラフェニブ)の効果

国際第3相試験(DECISION試験)の結果[Lancet 384(9940):319-28,2014]から、

  1. ソラフェニブ治療を受けた患者では無増悪生存期間(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌が悪化する事無く生きられた期間)が、プラセボ群(有効成分の入っていない薬を飲んだ群)の5.8カ月に対して10.8カ月(ハザード比0.587)という結果でした。この無増悪生存期間の延長は、患者の年齢・疾患の程度・転移部位に関係なくみられたそうです。
     
  2. 完全奏効(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌が消失)した患者はゼロ。客観的奏効率(腫瘍サイズが測定可能なほど減少)は、ソラフェニブ群で12%、プラセボ群では1%未満。
     
  3. 甲状腺乳頭癌のBRAF遺伝子変異・甲状腺濾胞癌のRAS遺伝子変異は、ソラフェニブ治療による無増悪生存期間の延長とは関連しませんでした。

国際第3相試験(DECISION試験)は、PS(パフォーマンスステータス、全身状態)0-2(悪くても日中の50%以上はベッド外)の全身状態の良い患者を対象にしたものですが、PS3-4(日中の50%以上をベッドか椅子で-寝たきり状態)であっても充分な効果が認められた症例も報告されています。(第58回 日本甲状腺学会 P2-6-1 PS不良の多発性骨転移・肺転移を伴う甲状腺乳頭癌患者に対してソラフェニブを使用し著効した1例)

下記の如く、重篤な副作用を起こすため、副作用で苦しむ日々を3カ月(150日)延長するだけなのかもしれません。実際に使用された先生に聞いたところ、「とんでもない薬だ!」との感想でした。

ネクサバール®(ソラフェニブ)の副作用

ソラフェニブ治療を受けたほぼすべての患者に副作用が出現。約3分の2が副作用のため、一時的に治療中止あるいは投与量を減量、約19%が完全に治療を中止。

ネクサバール®(ソラフェニブ)は、分子標的薬という新しい作用機序の薬であるため、従来の抗癌剤にはほとんどみられない副作用が高頻度に発現します。

  1. 中毒性表皮壊死融解症,皮膚粘膜眼症候群,皮膚有棘細胞癌(手足症候群は100%出る)
  2. 消化管出血,気道出血,脳出血
  3. 劇症肝炎
  4. 間質性肺炎
  5. 高血圧クリーゼ
  6. 可逆性後白質脳症
  7. 心筋梗塞,うっ血性心不全
  8. 消化管穿孔,消化管潰瘍
  9. 出血性腸炎,虚血性腸炎
  10. 白血球減少
  11. 膵炎
  12. 腎不全,ネフローゼ症候群
  13. 低ナトリウム血症低カルシウム血症
  14. ショック,アナフィラキシー
  15. 横紋筋融解症

など副作用のデパートです。2014年の甲状腺学会でも、このような副作用に「がん専門医でない甲状腺専門医が対応できるのか?」との意見が相次ぎました。確かに、これほど重篤な副作用のオンパレードでは甲状腺専門病院・クリニックでの対応は不可能と思えます。甲状腺専門医がいて、かつ全科そろった大学病院クラスでなければ使用は困難でしょう。

レンビマ®(レンバチニブ)は、作用機序の違いから、副作用の種類と頻度がネクサバール®(ソラフェニブ)と異なるため、副作用でレンビマ®(レンバチニブ)に変更する事もあります。(第59回 日本甲状腺学会 専門医教育セミナーⅠ甲状腺癌分子標的薬治療-根治手術不能甲状腺癌から未分化癌までTKI使用のタイミングと副作用マネージメント)

ネクサバール錠®(ソラフェニブ)が効いて甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)が縮小しても要注意

ネクサバール錠®(ソラフェニブ)が効いて甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)が縮小しても

  1. 腫瘤が壊死(組織が死滅する事)すると、皮膚・咽頭・気管と交通し、廔孔(孔が開く)形成。
    皮膚廔・気管廔は難治性で塞がりにくく、大血管に接している場合、血管壁が破壊され、大出血する事あります。
     
  2. ネクサバール錠®(ソラフェニブ)を(減量でなく)休薬すると、腫瘍が増大し、投薬前より大きくなる事あります(フレア現象)。

(第58回 日本甲状腺学会 ランチョンセミナー1 進行・転移性甲状腺癌治療-分子標的薬治療の課題と展望)

レンビマカプセル®(レンバチニブ)

レンビマカプセル®4mg(レンバチニブ)は甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌)、甲状腺髄様癌・甲状腺未分化癌含む根治切除不不能甲状腺がんに適応ある分子標的薬。腫瘍血管新生・腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(VEGFR、FGFR、RET)の選択的阻害。ネクサバール錠®(ソラフェニブ)抵抗性に効く事も。血管新生阻害作用強いため高血圧・ネフローゼ症候群・出血・血栓症の副作用、腫瘍が壊死すると出血の危険。可逆性後頭葉白質脳症、薬剤性心筋症も。休薬すると急激に甲状腺癌が進行するフレア現象。

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レンビマカプセル®(レンバチニブ)の適応

レンビマカプセル®4mg(一般名:レンバチニブメシル酸塩)は、甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)のみならず、甲状腺髄様癌甲状腺未分化癌を含む根治切除不能な甲状腺がんに適応のある日本で始めての分子標的薬です。

レンビマ®(レンバチニブ)の作用機序

レンビマの作用機序

レンビマ®(レンバチニブ)の作用機序は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR) や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、KIT、RET などの腫瘍血管新生・腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害薬です。特に甲状腺がんの増殖、腫瘍血管新生に関与するVEGFR、FGFR およびRET を同時に阻害します。

レンビマ®(レンバチニブ)の効果

臨床第III相試験(SELECT試験)において、

  1. 無増悪生存期間(甲状腺がんの進行がなく生存した期間)は、レンビマ®(レンバチニブ)群で中央値18.3か月、プラセボ群(有効成分の入っていない薬を飲んだ群)で3.6か月(ハザード比0.21)でした。
  2. 64.8%にレンビマ®(レンバチニブ)投薬に対する反応(改善)がありました。

レンビマ®(レンバチニブ)の使用方法

レンビマ®(レンバチニブ)の実際の使用方法として、推奨量は24mg/日ですが副作用のため継続困難なことが多く、愛媛大学臨床腫瘍学の報告では、8-10mgから開始し増量していくのが現実的との事です。その量でも、早期に甲状腺がんは縮小し、治療効果は大きいとの意見です。(第114回 日本内科学会 156 進行期甲状腺がんに対するレンバチニブ治療の検討)

ネクサバール錠®(ソラフェニブ)治療抵抗性でレンビマ®(レンバチニブ)が有効な事も

ネクサバール錠®(ソラフェニブ)が、最初は効いていても治療抵抗性になる場合があります。レンビマ®(レンバチニブ)に変更し、病勢の増悪無く経過した甲状腺未分化癌の症例が報告されています。(第59回 日本甲状腺学会 O4-5 ソラフェニブ無効となった甲状腺乳頭癌に対してレンバチニブへ変更した一例)

レンビマ®(レンバチニブ)の副作用

レンビマ®(レンバチニブ)の副作用はネクサバール®(ソラフェニブ)と同じようなものですが、ネクサバール®(ソラフェニブ)より血管新生阻害作用が強いため、高血圧・ネフローゼ症候群・出血・血栓症が多いとされます。

レンビマ®(レンバチニブ)治療の副作用は高血圧(67.8%)、下痢(59.4%)、疲労感(59.0%)、食欲不振(50.2%)、体重減少(46.4%)、吐き気(41.0%)でした。14.2%が副作用により使用中止しました。

レンビマ®(レンバチニブ)治療における口内炎の発症時期は退院後に多く、痛みで食事が摂り難くなります。患者が、ある程度、自己管理せねばなりませんが、対処法は、潜在性シェーグレン症候群/顕在性シェーグレン症候群の生活上の注意 に準じればよいと思います。

甲状腺学会でも、全科が関わるような副作用に「がん専門医でない甲状腺専門医が対応できるのか?」との意見が相次ぎました。確かに、これほど重篤な副作用のオンパレードでは甲状腺専門病院・クリニックでの対応は不可能と思えます。甲状腺専門医がいて、かつ全科そろった大学病院クラスでなければ使用は困難でしょう。

脳転移例に対する使用は要注意

レンビマ®(レンバチニブ)は、血管新生阻害作用強く、腫瘍が壊死すると出血おこる可能性があります。肺・骨転移では、気管内に浸潤した状態などを除けば、問題になりませんが、脳転移では、即、脳出血に至ります。

だからと言って、脳転移例に対するレンビマ®(レンバチニブ)使用が禁忌と言う訳ではありません(レンビマ®(レンバチニブ)は最終手段なので)。主治医は、脳出血の危険性を、あらかじめ説明しておくべきでしょう。

頚動脈浸潤、椎骨動脈浸潤での使用は慎重に

頚動脈浸潤、頚椎転移で椎骨動脈浸潤でのレンビマ®(レンバチニブ)使用は、頚動脈・椎骨動脈破綻による出血の危険があり 致死的となるため要注意です。

頚動脈破綻出血が起これば、救命目的で緊急ステントグラフト留置術を試みた報告ありますが、間に合わないし、癌が浸潤した場所なので一時しのぎにしかならないと思います。(頭頸部外科 28(2):177-182,2018)

頚動脈・椎骨動脈出血を避けるために

頚動脈・椎骨動脈出血を避けるための工夫を、東京医科大学が提案しています。特に、甲状腺未分化癌についてですが、術後1ヶ月でウィクリー パクリタキセル[weekly Paclitaxel(w-PTX)]開始、4ヶ月継続後、椎骨動脈周囲の遺残腫瘍は不明瞭化するも、右顎下部リンパ節転移gた出現。 ここでレンバチニブに切り替えたが椎骨動脈出血なく、術後16ヶ月で担癌生存中。

頚動脈・椎骨動脈出血を避けるため、マイルドな効果のパクリタキセル(Paclitaxel)で頚動脈・椎骨動脈周囲の甲状腺がんを縮小させ、その後、レンビマ®(レンバチニブ)に切り替えるのと言う方法です。(第60回 日本甲状腺学会 P2-8-8 甲状腺未分化癌手術の動脈周囲遺残腫瘍に対し、パクリタキセル 治療後にレンバチニブを投与した一例)

レンビマ®(レンバチニブ)の副作用;薬剤性心筋症による心不全

血管障害ではありませんが、レンビマ®(レンバチニブ)による薬剤性心筋症による心不全が疑われた症例が報告されています。虚血性心疾患・心臓弁膜症は、エコー、心血管造影(CAG)で否定されたそうです。(第60回 日本甲状腺学会 P2-8-4 レンバチニブ投与後に心不全を発症した甲状腺乳頭癌多発肺転移の1例)

レンビマ®(レンバチニブ)の添付文書情報でも、「心障害として、

  1. 心電図QT延長(5.0%)
  2. 駆出率減少(1.8%)
  3. 心房細動(Af)・粗動(AF)(0.5%)
  4. 心不全(0.3%)

等があらわれることがある。十二誘導心電図検査の実施等、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量、休薬又は中止等の適切な処置を行うこと。」と明記されています。

レンビマ®(レンバチニブ)の副作用;可逆性後頭葉白質脳症(PRES)による意識障害

レンビマ®(レンバチニブ)の添付文書では、可逆性後白質脳症症候群が0.3%で起こると記載されています。

レンビマ®(レンバチニブ)投与後、血圧上昇に伴う進行性の意識障害は、可逆性後頭葉白質脳症(PRES)の可能性あります。急激な血圧上昇による血管透過性亢進、血管内皮細胞障害による血管原性浮腫です。レンビマ®(レンバチニブ)中止で回復しますが、下記の如く、急激に甲状腺癌が進行するフレア現象が高率に起こります。 

レンビマ®(レンバチニブ)のフレア現象

副作用などの理由でレンビマ®(レンバチニブ)を休薬すると、急激に甲状腺癌が進行するフレア現象が高率に起こります。和歌山県立医大の報告では、7例中5例におこり、1週間の休薬で

  1. 腫瘍熱
  2. 癌性疼痛(甲状腺癌による痛み)
  3. 血液検査で肝機能増悪、CRP(炎症反応)上昇

2週間の休薬で

  1. 血清サイログロブリン値の急な上昇(甲状腺癌細胞の急激な増殖)
  2. 胸水増大

が見られたそうです。(第114回 日本内科学会 449 進行期甲状腺におけるレンバチニブ中断時のフレア現象とその対策)

また、レンビマ®(レンバチニブ)の減量のみで、遠隔転移巣が、画像上、明らかに増大する事もあります。浜松医科大学の報告では、レンビマ®(レンバチニブ)24mg/日を手足症候群などの副作用により8mg/日 まで漸減すると、MRIで仙骨転移巣の増大を認めたそうです。(第60回 日本甲状腺学会 P2-8-6 甲状腺濾胞癌に対するレンバチニブ投与中に肺転移巣において未 分化転化が疑われた1例 

転移臓器別効果

分子標的治療薬の受容体型チロシンキナーゼ阻害薬[ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)]は、転移部位によって効果が異なるとされます。

一般的には、甲状腺がん肺やリンパ節転移に効き易い反面、骨転移には効き難いとされます。(第59回 日本甲状腺学会 P4-6-7 分子標的治療が奏功した放射性ヨウ素不応性甲状腺乳頭癌多発転移例における薬剤および併用療法よる転移部位別の効果の比較)

受容体型チロシンキナーゼ阻害薬(ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ))使用のトンデモナイ勘違い(間違った使い方)と正しい使い方

受容体型チロシンキナーゼ阻害薬[ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)]の間違った使われ方

受容体型チロシンキナーゼ阻害薬[ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)]使用のトンデモナイ勘違い(間違った使い方)が、全国で多々おこっているようです。「根治切除不能な分化型甲状腺癌で、放射線内照射に抵抗性の症例に保険適応が認められてる」を額面通りに取り、元々チロシンキナーゼ阻害薬が不必要な患者に投与し、上記の副作用のオンパレードを引き起こすのです。

放射線治療抵抗性の分化型甲状腺癌の疾患関連死亡率(要するに甲状腺癌で死ぬ確率)は、5年死亡率5%、10年死亡率30%です(Endocr J. 2014;61(12):1145-51.)。放射線治療が効かなくても、5年後95%、10年後70%は生きているのです。

よって、放射線治療抵抗性だからと言って、むやみに受容体型チロシンキナーゼ阻害薬を使用すると、長年にわたりトンデモナイ副作用のオンパレードに苦しめられることになります。また、それら副作用には、消化管出血,気道出血,脳出血、劇症肝炎、間質性肺炎、高血圧クリーゼ、心筋梗塞,うっ血性心不全など死につながる危険なものも多数含まれています。更には、受容体型チロシンキナーゼ阻害薬は、いくら保険が効くと言っても非常に高価で、高額医療費に長期間悩まされることにもなります。

放射線抵抗性甲状腺分化癌の生存率

どのような症例に受容体型チロシンキナーゼ阻害薬[ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)]を使用すべきか

以上より、命を脅かさない放射線治療抵抗性の分化型甲状腺癌に、トンデモナイ副作用のオンパレードをおこす受容体型チロシンキナーゼ阻害薬[ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)]を使用すべきでないのは明らかです。

では、どのような症例に使用すべきなのでしょうか?

  1. 転移巣が進行性である場合(画像診断で転移巣が増えている・大きくなっている、サイログロブリンが急上昇する、サイログロブリン ダブリングタイムが短い)
  2. 転移巣が大きい場合
  3. 転移巣が危険な場所にある(ただし、チロシンキナーゼ阻害薬は血管新生阻害による出血の副作用あるため、気管に浸潤した症例に、うかつに使用すると大出血おこし窒息の危険)
  4. 転移巣で症状が出る(脊椎骨転移による痛みや麻痺症状)
     
  5. 北光記念病院の報告ですが、放射性ヨウ素治療(RAI)抵抗性の肺転移で、FDG-PET/CT陽性(肝臓と同等以上の集積を示す)の場合は3年以上経過してから病勢が進行し始める傾向があるとの事です。逆にFDG-PET/CT陰性なら、それより進行が遅いとの結果です。「FDG-PET/CT陽性かどうかを、チロシンキナーゼ阻害薬使用の判断材料の1つにしてはどうか?」と言う提案です。(この発表は、筆者も素晴らしいと思います)
    (第60回 日本甲状腺学会 O7-3 RAI陰性甲状腺分化癌肺転移の予後推定におけるFDG-PET/CT の意義)

受容体型チロシンキナーゼ阻害薬[ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)]の正しい使い方

受容体型チロシンキナーゼ阻害薬[ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)]の正しい使い方は、

  1. 今まで有効性が確立された治療の前後・あるいは同時に行う事です。
  2. ただし、手術の前後・放射線外照射(131-Iを使うのでなく、外から放射線を当てる)期間中は、休薬が必要
  3. チロシンキナーゼ阻害薬は血管新生阻害による出血の副作用あるため、常に大出血おこす危険を考慮する

です。転移巣別では、

  1. 肺転移:最もチロシンキナーゼ阻害薬の適応になります。ただし、胸膜播種があれば、余命10ヶ月程なので、緩和ケアの方が優先される事多い(Endocr J 2015 Dec 10.)。
     
  2. 骨転移:可能であれば手術摘出が第一。無理なら、放射線外照射・デノスマブ・ビスフォスフェート使い、チロシンキナーゼ阻害薬を組み合わせる。
     
  3. 脳転移:そもそも、131-I放射線内照射自体が禁忌。可能であれば手術摘出が第一。無理なら、放射線外照射(ガンマナイフ・サイバーナイフ・全脳照射など)

ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)いずれを使うか?

[ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)]の効果を比較したデータは、今の所存在しません。ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマカプセルいずれを使うかは、高率に起こり得る副作用の種類を考慮して決めねばなりません。レンビマ®(レンバチニブ)はネクサバール錠®(ソラフェニブ)より血管新生阻害作用が強いため、高血圧・ネフローゼ症候群・出血・血栓症おこるとマズイ症例には使い難いです。

甲状腺髄様癌にバンデタニブ(カプレルサ錠®)

甲状腺髄様癌はRET遺伝子変異が高率に認められるため、

  1. 血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)
  2. 上皮増殖因子受容体(EGFR)
  3. RET受容体

などのチロシンキナーゼを阻害する分子標的薬(マルチキナーゼ阻害薬)バンデタニブ(カプレルサ錠®)が根治切除不能な甲状腺髄様癌患者に使用されます。

ほとんどの患者で甲状腺髄様癌が縮小するものの、ネクサバール錠®(ソラフェニブ)・レンビマ®(レンバチニブ)と同じく無増悪生存期間の延長が認められるのみで、甲状腺髄様癌を消滅させる事はできません。

副作用は全症例(100%)におこり、

  1. 発疹・ざ瘡などの皮膚症状(71.4%)
  2. 下痢(71.4%)、高血圧(64.3%)
  3. 角膜混濁(42.9%)
  4. 疲労(42.9%)
  5. 重大な副作用;間質性肺炎、QT間隔延長、心室性不整脈(Torsade de pointesを含む)など

で、これでは甲状腺髄様癌自体による癌死より、薬の副作用で命を落とすで・・・・・。日本人の甲状腺髄様癌の予後は、転移しまくっていても悪くないという報告が多いのに( 甲状腺髄様癌の予後 )。

ネクサバール®(ソラフェニブ)の副作用「手足症候群」に鰹節(かつおぶし)が有効?

ネクサバール®(ソラフェニブ)の副作用「手足症候群」に鰹節(かつおぶし)が有効との報告があります。手足症候群は血流障害が原因のため、血管拡張作用を持つアミノ酸;ヒスチジンを含む鰹節(かつおぶし)の摂取で、手足症候群の発症率が減少したそうです。(Cancer Manag Res. 2018 Apr 17;10:805-813. )

鰹節(かつおぶし)が嫌いな方には、味の素KKが販売している「毎朝ヒスチジン」がお勧めです。

ベストサポーティブケア(best supportive care;BSC)への移行

ネクサバール錠®(ソラフェニブ)とレンビマカプセル®(レンバチニブ)には、甲状腺癌を治癒させる効果は無く、病勢の改善と生存期間の延長のみです。

これらの薬が副作用で使用できなくなった時、効かずに甲状腺癌の病勢が進行(Progressive Disease;PD)した時、ベストサポーティブケア(best supportive care;BSC)、あるいは緩和ケア・終末医療への移行せざる得なくなります。

ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)とは、がん自体に対するの積極的な治療は行わず、症状(苦痛)などを和らげる治療に徹する事です。根本的に緩和ケアと同じ事を言葉の定義を替えて言っているだけです。

一般的にパフォーマンスステータス(Performance Status:PS)が3以上に増悪すれば、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)へ変更になります。甲状腺癌の報告でも、レンビマカプセル®(レンバチニブ)投与後、PS3以上となれば、生存期間は治療しても変わらないため、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)に移行すべきとされます(内分泌甲状腺外会誌 35(2):29-133,2018)。

※パフォーマンスステータス(PS);日常生活の制限の程度で
PS3:限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
PS4:まったく動けない。自分の身のまわりのことはまったくできない。完全にベッドか椅子で過ごす。

 

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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