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甲状腺と貧血   [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺と貧血

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌病態内科学教室で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編   内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等   をクリックください

長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。貧血自体の治療は行っておりません。

Summary

甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能亢進症/バセドウ病共に、あらゆるパターンの貧血を生じる。甲状腺機能低下症/橋本病は①エリスロポエチン産生低下で正球性貧血②過多月経の出血で鉄欠乏性低色素性小球性貧血③葉酸・ビタミンB12吸収・利用障害の大球性貧血。甲状腺機能亢進症/バセドウ病は①鉄消耗が増加、鉄欠乏性貧血(小球性貧血)②葉酸需要増大で葉酸欠乏の巨赤芽球性貧血(大球性貧血)③自己免疫性溶血性貧血(AIHA)合併(大球性貧血)④消化性潰瘍出血による鉄欠乏性貧血。サラセミアなど甲状腺に鉄沈着するヘモクロマトーシスで甲状腺機能低下症

Keywords

甲状腺,貧血,甲状腺癌,骨髄癌腫症,鉄欠乏性貧血,自己免疫性溶血性貧血,赤芽球癆,バセドウ病,橋本病,甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症に合併する貧血

甲状腺機能低下症/橋本病による貧血

甲状腺機能低下症患者の43%に貧血があるとされます(Endocr J. 2012;59: 213-20.)。

甲状腺機能低下症/橋本病に合併する貧血は、あらゆるパターンが考えられます(Pol Arch Intern Med. 2017 May 31;127(5):352-360.)。

  1. ①全身の代謝が低下。組織の酸素需要量が減り、血中酸素分圧が上昇→腎でのエリスロポエチン産生が低下
    ②甲状腺ホルモンが直接、骨髄の造血を刺激する作用が低下
    して正球性貧血(最も多い)(Pol Arch Intern Med. 2017 May 31;127(5):352-360.)(診断と治療.2006;94:2057-61.)
     
  2. ①甲状腺ホルモンによる消化管での鉄吸収低下(治療.2007;89: 2499-504.)
    ②過多月経による出血量増加(特に子宮筋腫を合併している場合)
    で鉄欠乏性低色素性小球性貧血:赤血球の原料の鉄が不足すると、できあがった赤血球は小さく、大小不同の粗悪品になります。
     
  3. 葉酸またはビタミンB12の吸収障害・利用障害に基づく大球性貧血(2番目に多い)(巨赤球性貧血 葉酸欠乏性貧血)
    主にビタミンB12欠乏が原因で、甲状腺機能低下症患者の約40%にビタミンB12欠乏があるとされます。
    ①経口摂取不良・腸管運動低下・腸管壁の浮腫による吸収障害 (J Pak Med Assoc. 2008;58:258-61.)
    ②全身の代謝が低下し、利用障害
    ③悪性貧血の合併(APS(多腺性自己免疫症候群)3B型);甲状腺機能低下症に伴う大球性貧血患者の3分の1で抗胃壁抗体が検出(Indian J Endocrinol Metab. 2012;6(Suppl 2):S361-3.)

    葉酸に関しては、甲状腺機能低下によるメチレン テトラヒドロ葉酸還元酵素の低下によるメチルテトラヒドロ葉酸の生成障害が報告されています (Metabolism. 1994;43:1575-8.)。
     
  4. 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の合併(大球性貧血)(自己免疫性溶血性貧血と甲状腺)

甲状腺機能低下症に合併する貧血の特徴

甲状腺機能低下症に合併する貧血の特徴は、甲状腺機能低下により循環血漿量が減少しているため、見かけ上、数値が良く出てしまいます(誤って貧血を過小評価してしまう)。甲状腺ホルモン剤を補充し、循環血漿量が増えると、本来の数値に戻り、あたかも貧血が悪化したように錯覚します。 

甲状腺機能亢進症/バセドウ病に合併する貧血

甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、約34% に貧血を合併するとされます。(Endocr J. 2012;59: 213-20.)(Pol Arch Intern Med. 2017 May 31;127(5):352-360.)。

  1. 鉄の代謝(消耗)が増加し、鉄欠乏性貧血(小球性貧血)になることが多いです(ほとんどこのパターンです)。
     
  2. 葉酸の需要増大による葉酸欠乏で巨赤芽球性貧血
    悪性貧血の合併(APS(多腺性自己免疫症候群)3B型があると汎血球減少症になり、再生不良性貧血との鑑別が必要になります。(甲状腺機能亢進症/バセドウ病の汎血球減少)(AACE Clin Case Rep. 2020 Jun 23;6(6):e282-e285.)(Mo Med. 1996 Jul;93(7):368-72.) 
    (大球性貧血)
     
  3. 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の合併(大球性貧血)(自己免疫性溶血性貧血と甲状腺)
     
  4. 消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)を起こし易く、出血による正球性貧血(甲状腺機能亢進症/バセドウ病と消化管潰瘍(胃十二指腸潰瘍)

があります。

甲状腺に合併する鉄欠乏性貧血

甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、鉄の代謝(消耗)が増加し、甲状腺機能低下症/橋本病では過多月経による出血量増加で鉄欠乏性貧血(小球性貧血)になります。甲状腺機能が改善すれば、鉄の消失も止まりますが、一旦減った鉄が再貯留されるのに時間が掛かります。

鉄欠乏性貧血の治療に鉄剤が投与されますが、鉄剤は、甲状腺機能低下症/橋本病の治療薬チラーヂンの吸収を妨げるため注意が必要。

また、ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染により、胃酸の酸性度が低くなると鉄剤・チラーヂン両方の吸収が悪くなります。同時にヘリコバクター・ピロリ(HP)が鉄を消費します。ヘリコバクター・ピロリ(HP)除菌により吸収が良くなります。(ヘリコバクター・ピロリと甲状腺

フェジン静注は、pH9.0-10.0のコロイド性鉄剤で、生理食塩液で希釈すると、電解質の影響でコロイド粒子が結合し沈殿します。10-20%のブドウ糖注射液で希釈。

鉄欠乏性貧血の身体所見は、

  1. 匙(さじ)状爪(スプーンネイル:spoon nail);爪の中央部分がスプーンのようにへこんで先が反りかえる状態。組織鉄の低下による。
  2. 舌乳頭萎縮;舌尖・舌縁部の糸状乳頭の萎縮による赤平舌(赤色平滑舌)。悪性貧血に伴うHunter舌炎3徴候の1つでもあります。
  3. 青色強膜;鉄欠乏によるコラーゲン合成障害。
    鉄欠乏性貧血以外でも見られます
    骨形成不全症②マルファン(Marfan)症候群③Ehlers-Danlos症候群④偽性偽性副甲状腺機能低下症でも見られます。

匙(さじ)状爪(スプーンネイル:spoon nail)

匙(さじ)状爪(スプーンネイル:spoon nail)

舌乳頭萎縮
舌乳頭萎縮
青色強膜

青色強膜(QJM. 2017 Dec 1;110(12):835-836.)

遺伝性球状赤血球症を伴う原発性甲状腺機能低下症

遺伝性球状赤血球症

甲状腺機能低下症に合併した遺伝性球状赤血球では、甲状腺機能の正常化とともに末梢血の球状赤血球数は減少、貧血は著明な改善を示したとの報告です。赤血球膜異常を補う何らかの機序が甲状腺ホルモン欠乏により低下する可能性が考えられます。[日本内科学会雑誌Vol. 71 (1982)  No. 7  P 985-989]

遺伝性球状赤血球症は先天性溶血性貧血の70%を占め、常染色体優性遺伝。

球状赤血球は10%程度で、有口赤血球も認めます。球状赤血球は変形能が乏しく、物理的に脾臓を通過できずに血管外溶血します。間接ビリルビンが増加し、黄疸や胆石を認めます。

遺伝性球状赤血球症の検査所見は溶血に伴う

  1. 網状赤血球増加
  2. 間接型ビリルビン上昇
  3. LDH上昇
  4. ハプトグロビン低下

赤血球の浸透圧脆弱性試験で診断。しかし、鉄欠乏性貧血が合併してると遺伝性球状赤血球はマスクされ、診断が難しくなります。

摘脾の絶対適応。

摘脾後は髄膜炎菌/肺炎球菌感染による副腎クリーゼ(急性副腎皮質不全)、副腎出血に注意が必要です。(髄膜炎菌/肺炎球菌で副腎クリーゼ(急性副腎皮質不全)、副腎出血

甲状腺癌の骨髄癌腫症(骨髄転移) ・骨髄線維症

骨髄癌腫症(癌の骨髄転移)は骨髄組織が腫瘍細胞に置換され、甲状腺癌でも稀に起きる。通常の痛み止めが効かない骨痛、貧血、免疫不全、出血、DIC合併。骨髄-血管関門破壊、髄外造血で幼若好中球(骨髄芽球,前骨髄球,骨髄球,後骨髄球)、赤芽球が末梢血に出現(白赤芽球症)。原発性骨髄線維症は造血幹細胞レベルのチロシンキナーゼJak2遺伝子の点突然変異で貧血、免疫不全、出血、白赤芽球症。巨大脾腫がある点、骨髄癌腫症と異なる。骨髄組織検体は、骨梁軽度肥厚、線維化により流線型配列、鍍銀染色で細網繊維増加。副甲状腺機能亢進症は二次性骨髄線維症。

骨髄癌腫症(癌の骨髄転移)

骨髄癌腫症(癌の骨髄転移)とは、癌細胞が骨髄(赤血球、白血球、血小板を作る場所)内の広範囲に転移、骨髄組織が腫瘍細胞に置換された状態(骨髄癆;こつずいろう)。骨髄転移をおこしやすいのは乳癌、前立腺癌、肺癌、胃癌(ほとんど低分化腺癌か印環細胞癌)、膵癌、大腸癌、甲状腺癌です。しかし、甲状腺癌の転移先として、骨髄は極めて頻度が低いです。

症状は、

  1. 頚部痛、腰背部痛(骨痛);通常の痛み止めが効かない
  2. 正常な血球が作られず、貧血、免疫不全、出血がおこります。
  3. DIC[播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群]の合併が多い

癌細胞により骨髄-血管関門が破壊されたり、骨髄以外で造血が起こり(髄外造血)、本来、骨髄にしか存在しない幼若好中球(骨髄芽球,前骨髄球,骨髄球,後骨髄球)、赤芽球が末梢血に出現(白赤芽球症)すれば、白血病か骨髄癌腫症(癌の骨髄転移)、骨髄線維症(次項)が疑われます。

白赤芽球症は、骨髄線維症、がん化学療法後の骨髄回復期、稀に溶血性貧血や大量出血により反応性に見られる事ある。1%程度の骨髄球(myelocyte)や後骨髄球(metamyelocyte)は、軽度の感染症(風邪など)で一過性に認められますが、数%以上は明らかに異常で、赤芽球は出現しない。1-2週間以上(3週間)しても骨髄球(myelocyte)や後骨髄球(metamyelocyte)が消えない場合、血液内科に任せるのが良いでしょう。

同じく白赤芽球症を認める骨髄線維症との鑑別は、骨髄癌腫症(癌の骨髄転移)では髄外造血による巨大脾腫を認めないことです。

骨髄癌腫症(癌の骨髄転移)では、LDH上昇、DIC所見を認め、乳が・前立腺癌の様な造骨性の骨転移はALPも高値になりなる。

甲状腺髄様癌で骨髄癌腫症を起こした報告があります。

  • D;クロモグラニンA染色
  • E;シナプトフィシン染色

(Blood. 2014 Apr 24;123(17):2603.)

甲状腺髄様癌による骨髄癌腫症

非甲状腺性の大細胞リンパ腫の精査中、骨髄生検して見つかった甲状腺濾胞癌の報告があります。(Am J Med Sci. 1992 Dec;304(6):360-2.)

骨髄線維症

原発性骨髄線維症と、二次性骨髄線維症があります。

原発性骨髄線維症は造血幹細胞レベルのチロシンキナーゼJak2遺伝子の点突然変異(V617F)を約半数に認めます。その他CALR、c-Mpl変異。

Jak2遺伝子変異は、原発性骨髄線維症以外に、真性多血症の95%、本態性血小板症の約半数に認めます。

骨髄線維症

原発性骨髄線維症は、骨髄増殖性疾患[真性多血症本態性血小板血症慢性骨髄性白血病(CML)]の仲間で線維芽細胞の反応性増殖をともないます。

原発性骨髄線維症は、

  1. 巨核球系・顆粒球系細胞が腫瘍性増殖→WBC(杆状核好中球、分葉核好中球増加)、LDH高値
  2. 線維芽細胞の反応性増殖による骨髄の広範な線維化を伴う
  3. 結果、
    ①正常な造血不全
    →貧血;胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音(機能性雑音)、貧血にもかかわらず網赤血球数は増加しない(正常-低下)
    、血小板減少
    ②髄外造血(骨髄以外での造血)が亢進
    →巨大脾腫(腹部膨満感、腹痛)
    →末梢血に未分化な骨髄系細胞や赤芽球が現れる白赤芽球症;骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、赤芽球、涙滴状赤血球、巨大血小板
骨髄線維症 組織生検
骨髄線維症

骨髄組織検体は、細胞密度は正形成-軽度過形成、骨梁は軽度肥厚、線維化により細胞配列は流線型配列、巨核球は増加し核クロマチンが増加。鍍銀染色で細網繊維が増加。

インターフェロンα治療前後の骨髄像の変化です。骨髄の過形成が改善し、巨核球、線維芽細胞が減少しています(Modern Pathology (2015) 28, 1315–1323)

原発性骨髄線維症と甲状腺

原発性骨髄線維症では、まれに甲状腺での髄外造血が起きる事があります。甲状腺での髄外造血は、通常の状態ではありません。髄外造血するのは肝臓、脾臓です。(甲状腺髄外造血)(J Formos Med Assoc. 2018 Dec;117(12):1108-1114.)(J Am Soc Cytopathol. 2016 May-Jun;5(3):133-138.)

自己免疫性骨髄線維症は、骨髄生検にて線維化のみならず反応性リンパ球浸潤を認めます。シェーグレン症候群橋本病(慢性甲状腺炎)の合併もあります。ステロイド治療で改善。‎(Leuk Lymphoma. 2004 Mar;45(3):561-6.)

続発性骨髄線維症

真性赤血球増加症や本態性血小板血症から移行した続発性骨髄線維症の場合もあります。

急性巨核芽球性白血病、副甲状腺機能亢進症などに伴う二次性骨髄線維症もあります。

甲状腺に鉄が沈着:ヘモクロマトーシス

甲状腺ヘモクロマトーシス

甲状腺ヘモクロマトーシス

ヘモクロマトーシスは、過度の鉄の蓄積が臓器障害を引き起こします。甲状腺副甲状腺下垂体精巣、卵巣などの内分泌障害も起こします(甲状腺機能低下症副甲状腺機能低下症下垂体機能低下症性腺機能低下症)。

遺伝性ヘモクロマトーシスと続発性ヘモクロマトーシスがあり、後者は大量輸血、鉄剤・食事鉄の過剰摂取、再生不良性貧血、肝疾患により引き起こされます。

甲状腺単純MRI Tl,T2強調画像
甲状腺ヘモクロマトーシスCT

ヘモクロマトーシスの甲状腺単純MRIはTl,T2強調画像ともに低信号を示しヘモクロマトーシスに特徴的とされます(Diagn Imaging Clin Med 54: 7-10, 1985)(J Comput Assist Tomogr. 1988 Jul-Aug;12(4):623-5.)。

(写真 甲状腺単純MRIはTl(左),T2(右)強調画像 日小血会誌15:192-196,2001)

甲状腺単純CTはヨード蓄積と鉄の沈着を区別できません(J Comput Assist Tomogr. 1988 Jul-Aug;12(4):623-5.)

(写真 甲状腺単純CT Endocrinol Metab (Seoul). 2014 Mar; 29(1): 91-5.)

輸血後鉄過剰症

鉄過剰症は血清フェリチン500ng/ml以上の状態で、輸血後鉄過剰症がほとんどですが遺伝性ヘモクロマトーシスも存在します。過剰鉄でフリーラジカルが産生され、

  1. 肝不全・肝臓がん
  2. 心不全・不整脈
  3. 内分泌異常(甲状腺副甲状腺下垂体機能低下症性機能低下症糖尿病
  4. 発育障害

を呈します。

鉄キレート剤:デスフェロキサミン連日注射・デフェラシロクス経口投与します。

遺伝性ヘモクロマトーシス

遺伝性ヘモクロマトーシスは、欧米では多いですが、アジアでは稀です。常染色体劣性遺伝性に鉄吸収阻害因子ヘプシジンが低下し、腸からの鉄吸収が増加。もちろん甲状腺など内分泌異常も

サラセミア (無効造血を伴う小球性貧血)

サラセミア

サラセミアは常染色体優性遺伝で、ヘモグロビンを構成するアミノ酸の鎖(グロビン鎖)が合成障害。正常な赤血球が生成されず、壊れやすくなるため、無効造血(骨髄・脾臓で血管外溶血)をきたします。本邦では稀とされましたが、軽症例β-サラセミアが多いことがわかってきました。

β-サラセミアの血液検査は、

  1. 小球性低色素性赤血球なので鉄欠乏性貧血と誤診されている事があります。総鉄結合能上昇するも、血清鉄・フェリチン正常な点が異なります。(甲状腺機能亢進症/バセドウ病と合併すると鉄の消耗が激しくなり、鉄欠乏性貧血が重なり、さらに小球性低色素性貧血になります)
  2. 赤血球大小不同
  3. 標的赤血球
  4. 巨大奇形赤血球
  5. ハインツ小体(赤血球封入体)
  6. ヘモグロビン分画検査(HbA2、HbF増加)

骨髄検査は、赤芽球系過形成、鉄芽球増加、貯蔵鉄の増多

などを認めます。

輸血後鉄過剰症と同じく、内分泌異常(甲状腺副甲状腺下垂体機能低下症性機能低下症糖尿病)を含むヘモクロマトーシスをおこします。

鉄芽球性貧血

鉄芽球性貧血

鉄芽球性貧血は

  1. 先天性(5-アミノレブリン酸合成酵素異常)
  2. 骨髄異形成症候群
  3. [2次性鉄芽球性貧血]抗癌薬、放射線治療、抗結核薬イソニアジド、鉛中毒、亜鉛過剰、銅欠乏など

の鉄利用障害性貧血です。赤血球分布幅の広い正球性正色素性貧血/小球性低色素性貧血の混在型で、血清鉄、フェリチンの増加、TIBC(総鉄合能)の低値を伴います。鉄がミトコンドリア中に蓄積し環状鉄芽球を形成。

輸血後鉄過剰症と同じく、内分泌異常(甲状腺副甲状腺下垂体機能低下症性機能低下症糖尿病)を含むヘモクロマトーシスをおこします。

ヘム合成時の5-アミノレブリン酸合成酵素の補酵素:ビタミンB6投与が有効

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と甲状腺

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が甲状腺機能亢進症/バセドウ病、橋本病に合併するとAPS(多腺性自己免疫症候群)3C型。血管内溶血[発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症、血栓性微小血管症(TMA)、AIHA(冷式)]ではヘモグロビン尿やヘモジデリン尿、血管外溶血では(-)。血管外溶血[AIHA(温式)など]では脾腫、血管内溶血では(-)。

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、赤血球膜の抗原に抗赤血球自己抗体が結合、脾臓で破壊/溶血をおこします。自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)いずれか、あるいは両方(Evans 症候群)が、自己免疫性甲状腺疾患 甲状腺機能亢進症/バセドウ病橋本病合併するとAPS(多腺性自己免疫症候群)3C型

末梢血は、

  1. 未熟で大きい赤血球が骨髄から動員され大球性貧血
  2. 網状赤血球が著増
  3. 溶血所見:血清総・間接ビリルビン上昇、LDH(I,II優位)上昇、血清ハプトグロビン低下
  4. 直接クームス試験で抗赤血球抗体の存在を確かめますが、10%がクームス陰性で、
    その理由として①IgG自己抗体が少ない②IgM/IgA抗体③低親和性抗体

治療は

  1. 副腎皮質ステロイド薬
  2. 免疫抑制薬
  3. 摘脾術が三本柱。
  4. 血管外溶血なので緊急時は赤血球輸血も可。

寒冷凝集素症

寒冷凝集素価(血液型のIi型に対するIgM型自己抗体)による溶血性貧血とレイノー現象など末梢循環障害。マイコプラズマ/EBウイルス感染後、特発性慢性型は自己免疫性甲状腺疾患 橋本病/バセドウ病に合併するクリオグロブリン血症によることもあります。

非自己免疫性溶血性貧血と甲状腺

非自己免疫性なので、自己免疫性甲状腺疾患(橋本病バセドウ病)との関連はありません。

発作性夜間ヘモグロビン尿症、発作性夜間血色素尿症(PNH)

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)機序

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)機序

ヘモグロビン尿

ヘモグロビン尿(血色素尿);コーラ色、褐色尿→ヘモジデリン尿

ヘモシデリン尿

ヘモシデリン尿;血管内溶血の特徴

発作性夜間ヘモグロビン尿症、発作性夜間血色素尿症(PNH)はPIG-A遺伝子異常による補体感受性の高い赤血球が原因です。補体第3成分(C3) 活性化を抑える膜蛋白質CD55・CD59を細胞膜に繋ぎ止めるGPI膜蛋白(アンカーの役割を果たす蛋白質:グリコシルフォスファチジルイノシトール)の合成障害です。

感染症を契機として、夜間の血管内溶血により、

  1. 早朝のヘモグロビン尿(コーラ色、褐色尿)→ヘモシデリン尿;血管内溶血の特徴
  2. 貧血症状;全身倦怠感、胸骨右縁第2 肋間に収縮期駆出性雑音(貧血による機能性雑音)
  3. 嚥下障害(甲状腺の病気と間違う)、男性機能不全、原因不明の腹痛;遊離ヘモグロビンがNitric Oxide(NO)を強力に吸着し阻害するため平滑筋が収縮
  4. 肝脾腫を認めない
  5. 血栓症;FDP、Dダイマー上昇。アンチトロンビン低下。PT-INR、APTT 延長。
  6. 骨髄不全
  7. 再生不良性貧血骨髄異形成症候群(MDS)の合併・相互移行があります。

血液検査は、

  1. 溶血性貧血
  2. GPI酵素蛋白の好中球アルカリフォスファターゼ(NALP)も欠如するため血清ALPも低下
  3. Coombs試験陰性
  4. Ham試験、砂糖水試験(sugar-water test)陽性
  5. フローサイトメトリー(FCM)でCD55とCD59が陰性の赤血球・顆粒球細胞数が1%以上
  6. GPIアンカー蛋白欠損赤血球

尿沈渣はプルシアンブルーでヘモシデリン陽性。

補体第5成分に対する抗体薬(エクリズマブ)が開発されました(C3は阻害しない)。

ハプトグロビンは 肝臓で作られるタンパクで、溶血で遊離したヘモグロビンと結合し、血中濃度が低下。肝臓障害時も、アルブミン・凝固因子とともに産生が低下します。

発作性寒冷ヘモグロビン尿症

発作性反復性の血管内溶血とヘモグロビン尿。Donath-Landsteiner抗体が原因とされるも測定できません。

グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症

グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症は、フィリピン人、黒人に多く男児にのみ発症するX連鎖性劣性遺伝による溶血性貧血です。ヘモグロビン中の2価鉄イオン(Fe2+)が酸化され、3価鉄イオン(Fe3+)になったメトヘモグロビンの還元能力が低下します。そのため、酸化ストレス(発熱、感染症、糖尿病性アシドーシス、アセトアミノフェンなど)が誘因でメトヘモグロビンが増え、血管内で崩壊(溶血)します。

酸素を充満させた自己血を体内に戻すオゾン療法と言う治療があるらしいですが、オゾン療法は甲状腺機能亢進症/バセドウ病、G6PD欠損症、妊娠女性には禁忌だそうです。

血管内溶血と血管外溶血の鑑別

血管内溶血[発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)など]ではヘモグロビン尿やヘモジデリン尿、血管外溶血では(-)。

血管外溶血[自己免疫性溶血性貧血(AIHA)(温式)など]では脾腫、血管内溶血では(-)。

血管内溶血は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)以外にも

  1. 血栓性微小血管症(TMA)
  2. 発作性寒冷ヘモグロビン尿症
  3. 自己免疫性溶血性貧血(冷式)
  4. G-6-PD欠損症

血管外溶血は、それ以外にも

  1. 遺伝性球状赤血球症
  2. サラセミア
  3. ピルビンキナーゼ欠損症

甲状腺癌/橋本病/シェーグレン症候群で成人急性貧血:赤芽球癆(せきがきゅうろう)

赤芽球 異型巨大赤芽球

赤芽球癆(せきがきゅうろう)は、赤血球だけが減少する再生不良性貧血の一種です。赤芽球癆の原因は

  1. 伝染性紅斑の原因で無痛性甲状腺炎橋本病の発症を誘発し、甲状腺癌と関連するヒトパルボウイルスB19(伝染性紅斑(リンゴ病)で無痛性甲状腺炎・橋本病発症
  2. 感染症・膠原病・自己免疫疾患など(甲状腺癌/バセドウ病/橋本病/シェーグレン症候群も含まれます)
  3. 薬剤性赤芽球癆の原因として,甲状腺機能低下症もおこす抗てんかん薬フェニトイン,糖尿病糖尿病性神経障害を悪化させる結核薬イソニアジド,エリスロポエチン(抗EPO抗体が出現するため)が有名。

成人急性貧血おこし、15%胸腺腫を合併。造血が妨げられるため、血清鉄、フェリチンは高値。骨髄では、異型巨大赤芽球が出現。

ヒトパルボウイルスB19による赤芽球癆(せきがきゅうろう)はほとんど自然軽快しますが、それ以外はシクロスポリン(寛解率95%)、副腎皮質ステロイド(有効率30-60%)使用します(Haematologica. 2008 Jan;93(1):27-33.)。

赤芽球癆(せきがきゅうろう)と胸腺腫

胸腺腫を合併した赤芽球癆に対する胸腺腫摘出術単独の貧血改善効果は0%(Blood98:483―485,2001.)。また、胸腺腫合併赤芽球癆41例中16例は胸腺腫摘出後に赤芽球癆を発症したとの報告もあります〔日内会誌 101:1937~1944,2012〕。

当然、抗胸腺細胞免疫グロブリンも無効です。

内分泌疾患と症候性貧血

甲状腺機能低下症下垂体機能低下症副腎皮質機能低下症の内分泌疾患では、基礎代謝低下にともない赤血球産生能低下し症候性貧血がおこります。

鉄欠乏性貧血の次に多い貧血で、高年齢ほど高頻度で、高齢者貧血の約20%を占めます。

症候性貧血は慢性炎症や慢性感染症、自己免疫疾患(橋本病バセドウ病に合併する膠原病など)、悪性腫瘍の症候性貧血(甲状腺癌末期)など、鉄を効率よく使えない鉄代謝障害です。

症候性貧血の検査所見は、

  1. MCV(平均赤血球容量)が80-100fLの正球性貧血が多いが、MCV<80fLの小球性貧血もあり
  2. 血清鉄(Fe)↓、総鉄結合能(TIBC)↓、フェリチン(貯蔵鉄)↑

症候性貧血治療は、

  1. 原因疾患の治療
  2. 貧血が強い場合、赤血球輸血
  3. 海外ではエリスロポエチン(日本では保険適用ない)

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)

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