婦人科・子宮内膜症・経口避妊薬・子宮筋腫・絨毛性腫瘍と甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。婦人科の病気の診療は行っておりません。
Summary
婦人科と甲状腺。経口避妊薬副作用は肝障害・血栓症・心血管/脳血管障害・乳ガン/子宮頚癌リスク増大、薬剤性甲状腺機能低下症。全胞状奇胎症状は不正出血、腹部腫瘤、TSH(甲状腺刺激ホルモン)様作用強いアシアロhCG産生し重症甲状腺機能亢進症、甲状腺クリーゼ。甲状腺機能低下症/橋本病では自己免疫と上昇したTSHにより、甲状腺機能亢進症/バセドウ病では自己免疫、バセドウ病抗体(TR-Ab)と上昇した甲状腺ホルモン(FT4,FT3)により子宮内膜症(生理痛・不妊)増悪。腸管子宮内膜症は生理周期と関連し腹痛。小腸子宮内膜症の腸閉塞は甲状腺腫瘍・甲状腺の既往多い。
Keywords
子宮内膜症,副作用,血栓症,甲状腺機能低下症,橋本病,バセドウ病,経口避妊薬,生理痛,甲状腺機能亢進症,甲状腺
経口避妊薬(ピル)の副作用・危険性
経口避妊薬(ピル)の効能は避妊ですが、副効果として、
- 生理痛(月経痛)と月経困難症の改善
- 子宮内膜症の増悪抑制
- 月経前症候群(月経前緊張症)の軽減化
があります。
経口避妊薬(ピル)の副作用・危険性は、
- 肝障害
- 血栓症3~4倍のリスク;特に肥満者や喫煙者でリスクが高い
- 血中コレステロール増加などの脂肪代謝異常
- 心血管障害2~5倍のリスク
- 脳血管障害2~3倍のリスク
- 乳ガン1.24倍のリスク
- 子宮頚癌1.3~2.1倍のリスク
- 薬剤性甲状腺機能低下症
また、経口避妊薬(ピル)服用中は、ホルモン結合タンパクの増加がおこり、総コルチゾール(副腎皮質ホルモン)の値が上昇しますが、遊離コルチゾールには影響ないとされます。
絶対的禁忌は以下の通り
- 35才以上で1日15本以上喫煙者(ヤーズ、ルナベルなど)
- 血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害症、冠動脈疾患
- 乳ガン、子宮頚癌の人
- 抗リン脂質抗体症候群
- 手術前4週間、手術後2週間
その他、注意事項として
- 経口避妊薬(ピル)を2日以上服用を忘れると排卵することがあるため、服用を中止する。1日の飲み忘れは中止しなくてよい。
- 授乳中の経口避妊薬(ピル)の服薬は、乳汁分泌を抑制し、乳汁中に薬剤が分泌されるため、強い必要性がある場合を除き服薬は不可。
薬剤性甲状腺機能低下症
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤[LEP(Low dose Estrogen Progestin]製剤)は、
- ノルエチステロン(黄体ホルモン)とエチニルエストラジオール(卵胞ホルモン)の作用により卵胞が発育せず、排卵が抑えられ、月経(生理)時の痛みが軽減。月経困難症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症の治療に。
- 避妊を目的にして用いる低用量ピルよりもエストロゲンが少なく、避妊目的には使用できません。
種類は
- ルナベル配合錠LD
- ルナベル配合錠ULD;LDよりもエチニルエストラジオールが低用量
- ヤーズ配合錠
- ヤーズフレックス配合錠は、ヤーズと同一の有効成分・剤型ですが、定期的な休薬期間がないため、休薬期間中の月経困難症が軽減されます。
副作用は、低用量ピル(経口避妊薬)と同じ。
- 保険適応とは無関係に、関節リウマチなどの自己免疫疾患、自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病)の自己免疫を抑える良い副効果があります。(IPPF Med Bull. 1979 Jun;13(3):1-2.)
- ホルモン結合タンパクの増加がおこり、薬剤性甲状腺機能低下症に。
全胞状奇胎は、異常妊娠の1つで、妊娠時、胎盤の元となる絨毛組織が嚢胞化して増殖する病気です。全胞状奇胎では大部分の絨毛が水腫状腫大し、胎児成分は存在しません。妊娠の0.1-0.2%に発症し、妊娠8週から10週以降に超音波検査で子宮内に嚢胞状構造が見つかります。
全胞状奇胎の症状は不正出血[生理(月経)周期以外の出血]、腹部腫瘤です。全胞状奇胎の10~20%は侵入奇胎(一部が子宮筋肉内に侵入。約30%は肺転移。)に進行します。
また、全胞状奇胎が産生する血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin : hCG)は、つわりの原因であると伴に、TSH(甲状腺刺激ホルモン)に構造が似ているため、甲状腺機能亢進症をおこします。この機序は、妊娠時一過性甲状腺機能亢進症 と同じですが、通常妊娠hCGの甲状腺刺激活性は、TSHの1/1000程度であるのに対し、胞状奇胎産生のhCGはアシアロhCG(アシアロ糖蛋白を持つ)で活性が強いとされます。そのため、甲状腺機能亢進症は重症で、甲状腺クリーゼおこす危険もあります。
治療は、ヨウ化カリウム、場合によってはメルカゾールも用いて甲状腺機能安定化させ、手術療法(単純子宮全摘出術)を施行します。通常の全胞状奇胎の治療は、子宮内容除去術です。遺残が疑われる場合は再掻爬。
全胞状奇胎を除去した後、血中hCG が順調に低下していけば経過良好です。正常hCG 値が3~6 か月持続すれば、次回の妊娠は可能。
絨毛性腫瘍が産生する血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin : hCG)は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)に構造が似ているため、甲状腺機能亢進症をおこします。(Onkologie. 2007 Jun;30(6):330-4.)(J Clin Endocrinol Metab. 1988 Jul;67(1):74-9.)
絨毛性腫瘍は、PD-L1(プログラムド デス リガンド1)を恒常的に発現しているため、多剤(抗がん剤)耐性患者に抗PD-1抗体薬のペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の有効性が報告されています。(J Clin Oncol. 2017 Sep 20;35(27):3172-3174.)(Gynecol Oncol Rep. 2020 Apr 23;32:100574.)(Gynecol Oncol Rep. 2020 Sep 1;34:100625.)
ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)は、
- 無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)を誘発する
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病を新規発症させる
ため、絨毛癌による甲状腺機能亢進症と重なると重症の甲状腺中毒症になります。
- バセドウ病に準じ、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)、ヨウ化カリウム等を投与
- 甲状腺全摘手術
せざる得ません。
橋本病(慢性甲状腺炎)と子宮筋腫との合併は多いとされます。(Zentralbl Gynakol. 1989;111(1):47-52.)
子宮筋腫でも、甲状腺機能低下症でも生理の出血量が増え(過多月経)、鉄欠乏性低色素性小球性貧血の原因となります(甲状腺と生理不順、甲状腺機能低下症/橋本病に合併する貧血)。当然、両者が合併していれば、どうなるか一目瞭然です。
甲状腺乳頭癌の子宮筋腫内への転移と言う、一生に一度お目に掛かれるかどうかの報告があります。(Eur Thyroid J. 2019 Oct;8(5):273-277.)
子宮筋腫を有する女性の
- 乳腺線維腺腫の頻度は65%(健常女性の対照群35%)
- 甲状腺結節(甲状腺腫瘤)の頻度は38.7%(健常女性の対照群20%)
です。(Thyroid. 2007 Dec;17(12):1257-9.)(乳腺線維腺腫と甲状腺)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区も近く。