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命の危険:甲状腺クリーゼ  [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪) ゆるキャラ 甲Joう君

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皆さん、覚えていますか?人気絶頂の某シンガーソングライターの女性が2009年、いきなりバセドウ病のため、音楽活動を休止したことを(お別れツアーも、お別れアルバムも無しで突然)!

バセドウ病は死ぬこともある病気なので治療に専念したい」との理由でした。この時、初めて「バセドウ病は死ぬこともある病気だったの!?」との衝撃が世間を駆け巡り(週刊誌や、お昼のワイドショーでも話題になり)、甲状腺の専門家たちは啓蒙活動に忙しかったのです。

また、医療ドラマ「コウノドリ2 第6話」では、バセドウ病の診断が遅れた妊婦甲状腺クリーゼを起こし死亡すると言う内容でした。

未治療のバセドウ病自体、

  1. 甲状腺クリーゼ(甲状腺緊急症)(下記)と言う命に係わる危険な状態に至る可能性
  2. 突然死(致死性不整脈、心筋症)の可能性 (甲状腺と心臓病(サイロイドハート) 甲状腺と不整脈
  3. 抗甲状腺薬開始後、数か月間は無顆粒球症・劇症肝炎など日本で年間数人の死人が出る副作用が起こり易い (命の危険:無顆粒球症 , 命の危険:劇症肝炎

など結構危険な状態なのです。

一般の人、一般医は、「甲状腺の病気は、軽症が多く、死ぬ事は少ない」と考えている方が多いです。しかし、甲状腺の薬を長期間自己中断、あるいは飲んだり飲まなかったりすれば、大変なことになる可能性あります。

甲状腺ホルモンが多くて生命に危険がおよぶ状態を、甲状腺クリーゼ(甲状腺緊急症)、足らなくて生命に危険がおよぶ状態を粘液水腫性昏睡と言います。いずれも発症すると死亡率は10%以上で、原因として甲状腺薬の自己中断が最も多いとされます。

甲状腺クリーゼ粘液水腫性昏睡はICU/CCUのある救急病院でしか対処できません。長崎甲状腺クリニック(大阪)では治療できません。速やかに救急病院を受診して下さい。

Summary

甲状腺クリーゼは甲状腺ホルモン過剰に対し生体の代償機構が破綻、多臓器不全に陥った状態。抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の自己中断/不規則な服薬が最も多い原因。未治療やコントロール不良甲状腺機能亢進症/バセドウ病感染症、外傷、手術、ストレスなどが誘因。症状は中枢神経症状/意識障害・38℃以上発熱・頻脈(脈が1分間130以上、心房頻脈(PAT)、心房細動(Af)問わず]・心不全/呼吸困難・嘔吐/下痢/黄疸など。橋本脳症と鑑別が必要。治療は抗甲状腺薬大量、ヨウ化カリウム、副腎皮質ステロイドなど。死亡率は約10%、死因は多臓器不全等。

Keywords

甲状腺クリーゼ,中枢神経症状,甲状腺,バセドウ病,死亡率,甲状腺機能亢進症,原因,症状,治療,予後

甲状腺クリーゼ

甲状腺クリーゼとは

甲状腺クリーゼ(甲状腺緊急症、サイロイドストームと言う表現もあり)は、甲状腺ホルモン過剰に対し生体の代償機構が破綻、多臓器不全に陥った状態です。

全国疫学調査で甲状腺クリーゼの発症率はかなり高く、日本の発症数は年間約150症例(Thyroid 22:661-679,2012)。

甲状腺クリーゼの原因

甲状腺クリーゼ;未治療(全体の20%)やコントロール不良の甲状腺機能亢進症/バセドウ病[無痛性甲状腺炎甲状腺機能性結節(甲状腺ホルモン産生腫瘍)の報告もあり](治療開始1年未満が45%)に、

  1. 抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の自己中断/不規則な服薬(最も多い原因で、約40-50%)
  2. 感染症(最も多い誘因で、肺炎・上気道炎が多数、インフルエンザ、尿路感染症も)、外傷、手術、ストレスなども誘因
  3. 高温に暴露(真夏日)
  4. 甲状腺手術、甲状腺アイソトープ治療など治療でおこることも
  5. 甲状腺ホルモンが不安定な状態で妊娠

など更なる甲状腺ホルモンの上昇や、種々のストレスが掛かり、代償されていた循環系や神経系機能が破たんし、ショック状態や昏睡になります。

甲状腺クリーゼの発症機序

ストレスと言うのは、上記の通り、感染症、外傷、手術、高温、甲状腺手術、甲状腺アイソトープ治療、妊娠などです。

(表;バーチャル臨床甲状腺カレッジより)

どのような状態が甲状腺クリーゼ

甲状腺クリーゼの診断基準

日本甲状腺学会の「甲状腺クリーゼ診療ガイドライン 2017」より

甲状腺ホルモンが過剰になりすぎる(必須項目甲状腺中毒症の存在)と、

  1. 中枢神経症状/意識障害
    意識がもうろうとする
    言動がおかしい(これは他人が気付く)
    幻覚(幻視・幻聴)・妄想:強迫性障害・妄想性障害と誤認される事あり
    強直性間代性けいれんの事も
    (高齢者では、認知症と間違えられることあり)
     
  2. 38℃以上の発熱
     
  3. 頻脈(脈が1分間130以上)[心房頻脈(PAT)でも、心房細動(Af)でも問わない]
     
  4. 心不全おこし、呼吸困難[肺水腫、肺野の50%以上の湿性ラ音(肺に水がたまった音)、心原性ショックなど重度な症状。]
    下腿浮腫や胸水のみは不可
     
  5. 嘔気・嘔吐、下痢、黄疸(血中総ビリルビン>3mg/dl)
    腹痛のみは不可

がおこり早急に対処しなければ死に至ります。

  1. 中枢神経症状と、1つ以上を満たす
  2. 中枢神経症状は認めないが、それ以外の3つを満たす

甲状腺クリーゼと診断できます。(ただし、甲状腺ホルモン値が判明するまで甲状腺クリーゼ疑い)

甲状腺ホルモン値が判明し、中枢神経症状は認めないが、それ以外の2つを満たす場合は、甲状腺クリーゼ疑い

各項目の頻度

各項目はどれ位の頻度か?全国疫学二次調査の解析結果では、(1)67.4%、(2)約66%、(3)67.9%、(4) 約40%、(5)68.3%で、心不全の割合が他項目よりも低い様です。

甲状腺クリーゼが更に進むと

甲状腺クリーゼが進行すると、血小板が減少し始めます。同時にDダイマーなども上昇し始め、危険なDIC(播種性血管内凝固症候群)・多臓器不全(死亡原因の1位)に移行します。

甲状腺クリーゼの甲状腺ホルモン値

甲状腺クリーゼが起きる甲状腺ホルモン値は、高い事がほとんどです。しかし、中枢神経障害、心房頻脈(PAT)・心房細動(Af)・心不全や、嘔気・嘔吐、下痢、黄疸起こしやすい条件があれば、甲状腺ホルモン値はそれほど高くなくても甲状腺クリーゼは起こります。

例えば、TSH測定感度以下、FT3 5.53pg/ml、FT4 3.60ng/dl と、せいぜいメルカゾール3錠程度で十分な軽度の甲状腺機能亢進症でも甲状腺クリーゼ起こし得ます(第57回 日本甲状腺学会 P2-036 甲状腺クリーゼをきたしたAutonomously functioning thyroid nodule(AFTN)の一例)。

また、甲状腺クリーゼが起きる究極の状態では、既に異化亢進(糖や脂肪だけでなく、筋肉などのタンパク質も分解される)が進んでおり、ノンサイロイダルイルネス、低T3症候群 により、FT3がFT4に比べて上昇が弱い事があります。

特に、重症の感染症やショック状態では、FT3低下し正常化、更にはFT4も正常化し、TSHのみ低値になる事あります。

高齢者の甲状腺クリーゼ

高齢者は、

  1. 高熱、多動など典型的クリーゼ症状を呈さない場合があります。
  2. 中枢神経症状/意識障害を認知症と間違えられることあり。第56回 日本甲状腺学会 P2-022 診断に苦慮した認知機能低下を伴う高齢者甲状腺クリーゼの一例)

甲状腺クリーゼの鑑別:橋本脳症

甲状腺クリーゼの鑑別として、橋本脳症があります。橋本脳症急性脳症型の38℃以上の発熱・意識障害に、甲状腺機能亢進症/バセドウ病を合併すると甲状腺ホルモン高値の条件が加わり、甲状腺クリーゼの診断基準を満たしてしまいます。本当の甲状腺クリーゼではないため、甲状腺クリーゼの治療しても意識障害は改善しません(最初だけのステロイド剤がわずかに効くかもしれません)。(第54回 日本甲状腺学会 P101 甲状腺クリーゼで発症した橋本脳症の一例)

 (橋本脳症・脳の病気/脳梗塞と甲状腺)

甲状腺クリーゼの治療

甲状腺クリーゼの治療はICU(集中治療室)・CCUに入院、冷却、ストレス与えない、脱水補正、心不全治療、抗生剤、胃薬、β1選択性βブロッカー[甲状腺クリーゼの死亡率を低下、半減期4分のランジオロール(オノアクト®)等)(気管支喘息などで使用できないならCa拮抗薬ジルチアゼム(ヘルベッサー®)、ベラパミル(ワソラン®))]、抗甲状腺薬MMI(メルカゾール)、PTU(プロパジール,チウラジール)、ヨウ化カリウム・ルゴール液、副腎皮質ステロイド(ヒドロコルチゾン等)。甲状腺ホルモンが下がらなければ、2重濾過血漿交換(DFPP), 持続濾過透析(CHDF)。それでも救命できない甲状腺クリーゼある。

甲状腺クリーゼ,治療,ICU,冷却,βブロッカー,メルカゾール,プロパジール,Ca拮抗薬,ヨウ化カリウム,副腎皮質ステロイド

甲状腺クリーゼの治療

甲状腺クリーゼ治療経過

※上記は甲状腺クリーゼ治療経過の一例です。今時、プロプラノロールは、ほとんど使用しません。

ICU(集中治療室)等に入院の上、

  1. 冷却:室温を20℃以下に空調を調節
    アルコールスポンジや氷のうで全身冷却
    解熱鎮痛剤アセトアミノフェン(他のNSAIDは要注意
     
  2. ストレスを与えない様、病室は薄暗く、静かに。精神興奮にはトランキライザー
     
  3. 脱水補正:電解質やビタミン剤の輸液
  4. 心不全:利尿剤フロセミドなど、トルバプタン(バソプレシン受容体拮抗薬)の使用例も報告されています(第56回 日本甲状腺学会 P2-018 甲状腺クリ-ゼによる心不全に対するトルバプタンの使用経験)
  5. 抗生剤(感染症が誘因になっている場合、心不全による肺炎など)
  6. 胃酸をおさえる薬・胃粘膜を保護する薬(甲状腺ホルモン過剰状態では消化管潰瘍ができやすい)
     
  7. βブロッカー(下記))、もしくはCa拮抗薬
      
  8. 抗甲状腺薬
    ①MMI(メルカゾール)3-4錠/6h x4= 12-16錠/日、注射剤もあり。メルカゾールの副作用は容量依存性で、無顆粒球症に要注意。
    ②PTU(プロパジール,チウラジール)4-5錠/6h x4= 16-20錠/日
     
  9. ヨウ化カリウム150mg、経口摂取不能な時はルゴール液30滴/日使用する事も
     
  10. 副腎皮質ステロイド:バセドウ病の自己免疫反応を抑制するため。また、甲状腺クリーゼでは、過剰な甲状腺ホルモンにより、副腎皮質ホルモンが分解され、副腎クリーゼ(急性副腎不全)を合併しています。投与量に決まりはありませんが、とりあえずヒドロコルチゾン300mg/日 x 3日

βブロッカー

βブロッカーは使い方を間違えると怖いです。

β1選択性βブロッカーが甲状腺クリーゼの死亡率を低下させます(Clin Endol ;doi 10.1111/cen. 12949)。

しかし、βブロッカーの過量静脈投与は心停止・心原性ショック・低血糖の危険があります。
少量のβブロッカーでも心停止・心原性ショックの危険あるため、血圧が保たれている心不全(NIHA II-III)では慎重に薬剤の種類、投与量考えるべきと思います。(第53回 日本甲状腺学会 P-180 心不全に対して人工呼吸管理・catecholamineと利尿薬の持続投与を要したGraves病クリーゼの2例)

β1選択性βブロッカーは、当然効きが悪く、効かないからと増量していると、心不全を増悪させる恐ろしい結果になります(今時、あまり使われないと思いますが、プロプラノロール注射剤)。

また、β1選択性βブロッカーでも、よく効く分、過量投与は怖いものです。長時間作用型が使いにくい場合、

  1. 半減期4分のランジオロール(オノアクト®)[心拍数抑制>血圧低下];おそらく、甲状腺クリーゼで最も多く使用されています。日本甲状腺学会の症例報告は、ほとんどランジオロール(オノアクト®)です。
  2. 半減期9分のエスモロール(ブレビブロック®)[血圧低下>心拍数抑制]/など超短時間作用型が有用]

心停止・心原性ショックおこれば、カテコールアミン製剤、利尿薬使用

βブロッカーが使用できないならCa拮抗薬

βブロッカーが使用できない状況もあります。気管支喘息合併している場合、βブロッカーは気管支喘息発作を誘発します。Ca拮抗薬なら大丈夫です。ベラパミル(ワソラン®)は心抑制効果強過ぎるので要注意、ジルチアゼム(ヘルベッサー®)はベラパミル(ワソラン®)より効果弱いですが筆者はお勧め。

Ca拮抗薬ベラパミル(ワソラン®)の(過量とは言えないわずか1.25mgでも)静脈投与:心抑制効果強過ぎ心停止した症例が報告されています(第57回 日本甲状腺学会 P1-041 救急外来でのベラパミル投与を契機に心停止となり、急性循環障害から肝・腎不全を来したと考えられる甲状腺クリーゼ疑いの1 例)

小児喘息の既往のある患者で、ベラパミル(ワソラン®)の効果乏しく、ランジオロール(オノアクト®)使用し頻脈改善した報告もあります(第59回 日本甲状腺学会 P4-7-5 小児喘息の既往のある甲状腺クリーぜ患者に短時間作用型β1選択的遮断薬ランジオロール塩酸塩を使用し改善した1症例) 

心停止・心原性ショックおこれば、カテコールアミン製剤、利尿薬使用

甲状腺クリーゼの禁忌

  1. アスピリン(バファリン®)投与(遊離型の甲状腺ホルモンを増やす)
    その他のNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、ロキソニン、ジクロフェナクなども消化性潰瘍おこす可能性あるので要注意
     
  2. 心不全/合併する心房粗動(AF)などに
    βブロッカーの過量静脈投与(慎重に 上記)
    Ca拮抗薬ベラパミル(ワソラン®)の静脈投与(慎重に 上記)
    心停止・心原性ショックおこれば、カテコールアミン製剤、利尿薬使用
     
  3. 気管支喘息合併患者に(特にβ1非選択性)βブロッカー投与:気管支収縮させ喘息悪化・重積化
    [代わりにベラパミル(ワソラン®)等のCa拮抗薬を使用、ただベラパミル(ワソラン®)は心抑制効果強過ぎるので筆者はジルチアゼム(ヘルベッサー®)がお勧め(上記)]
     
  4. ヨウ化カリウムを抗甲状腺薬MMI(メルカゾール)より先に投与すると甲状腺機能亢進症が増悪するケースもある(筆者は経験ありませんが)ので、必ず同時投与と言うのが教科書的です。

甲状腺クリーゼの時だけの荒技

2重濾過血漿交換(DFPP), 持続濾過透析(CHDF)

甲状腺クリーゼはICU(集中治療室), CCUに入院してしか治療できません。ICU(集中治療室), CCUならではの荒技があります。

甲状腺ホルモンが下がらなければ、

2重濾過血漿交換(DFPP), 持続濾過透析(CHDF):

  1. 甲状腺ホルモンとバセドウ病抗体(TRAb)両方を除去できる他
  2. 制御できない甲状腺クリーゼの肝障害・急性腎障害も改善
  3. 甲状腺クリーゼの時ならではの低拍出量性心不全も改善(通常の甲状腺機能亢進症/バセドウ病は高拍出量性心不全)
    (第54回 日本甲状腺学会 P209 著明な胆汁うっ滞型肝障害を伴ったバセドウ病の術前管理に血漿交換が有用であった1例)
    (第54回 日本甲状腺学会 P210 低拍出性心不全を伴う甲状腺クリーゼの術前管理を救命しえた2例)
    (第57回 日本甲状腺学会 P1-093 肝不全、腎不全を合併し血漿交換および持続血液濾過透析により救命しえた甲状腺クリーゼの一例)
  4. 血球貪食症候群で上昇するインターロイキン6(IL-6)やTNF-α は除去できないとの報告
    (第57回 日本甲状腺学会 P2-026 血漿交換と平温療法を行った甲状腺クリーゼの一例)

を必要に応じて数回おこない、甲状腺全摘手術になります。2重濾過血漿交換(DFPP), 持続濾過透析(CHDF)は、甲状腺全摘手術まで一時的に甲状腺クリーゼを解除するための最終手段と言えます。

40℃以上の高熱が下がらない

サーモガードシステム®

40℃以上の高熱が下がらない場合、体温コントロール目的に経静脈カテー テル(サーモガードシステム®)を挿入した症例が報告されています。(第60回 日本甲状腺学会 P1-5-9 集学的治療にて救命し得た甲状腺クリーゼの1例)

サーモガードシステム®は、 カテーテルを用い血管内で血液との熱交換を行う血管内冷却システムです。保険適応は急性重症脳障害、心停止・心拍再開後の体温管理のみです。甲状腺クリーゼによる低酸素性脳症は医学的には適応内と筆者は思うのですが、実際の保険審査で認められるか筆者には分かりません。

経皮的心肺補助法(PCPS)

経皮的心肺補助法(PCPS)

甲状腺クリーゼで心原性ショック、急性循環不全おこし、緊急でカテコラミン投与、大動脈内バルーンパンピング(IABP)開始したが、効果不十分で、経皮的心肺補助法(PCPS)を併用し救命しえた報告があります(J Cardiol Jpn Ed 2013; 8: 127–130)。

心筋壁運動が改善すれば経皮的心肺補助法(PCPS)から離脱できます。

(写真看護rooより)

それでも救命できない甲状腺クリーゼ

実際、血漿交換・持続濾過透析(CHDF)、経皮的心肺補助法(PCPS;人工心肺)・IABP(大動脈内バルーンパンピング)による補助循環を追加しても救命できない激烈なケースもあります。(第59回 日本甲状腺学会 P4-7-6 血漿交換および補助循環を用いても救命し得なかった甲状腺クリーゼの1 例)

この状況下で甲状腺全摘手術!?

抗甲状腺薬、ヨウ化カリウム、副腎皮質ステロイド、持続的血液濾過透析、体外式膜型循環装置、血漿交換を行ったが、甲状腺ホルモン高値が持続(TSH 0.003µIU/ml,FT3 50.22pg/ml,FT4 10.47ng/dl)。

保存的加療のみでの管理は困難と判断し、甲状腺全摘術施行、術後、甲状腺ホルモン値は低下、全身状態改善、意識回復し救命できた報告があります。(第61回 日本甲状腺学会 O7-3 甲状腺クリーゼに対して集学的治療後、甲状腺全摘術が施行され 改善した1例)

結果オーライ、めでたし、めでたしですが、驚くのは、よくこの状態で外科が手術してくれた事です。甲状腺の手術できる外科医は、おそらく外科の中でも最も数が少なく、予定外の緊急手術できる人的資源が無い。また、このような不安定な状態では手術自体のリスクが高く、手術中に患者が死亡した場合、例え落ち度が無くても遺族が訴えてくる事があります。ひどい場合、刑事告発され手術した医師が逮捕される可能性も大いにあります(悲しいですが医師の善意が踏みにじられる日本の社会です)。外科を志望する医学生が激減している大きな原因です。

甲状腺クリーゼの危険性(死亡原因と後遺症)

甲状腺クリーゼの死亡原因

甲状腺クリーゼの死亡率は10%程(10-20%)で、 死因は多臓器不全、心不全、呼吸不全、不整脈、DIC(播種性血管内凝固症候群)、消化管穿孔、低酸素脳症、敗血症の順です。(Thyroid. 2012 Jul;22(7):661-79.日本甲状腺学会の統計です)

意外と知られていませんが甲状腺クリーゼの死因の5%は消化管穿孔(胃腸が破けること、特に壁の薄い十二指腸穿孔)で、私なら治療開始時より胃酸を抑える薬・胃粘膜を保護する薬を使います。検査データで正球性貧血(赤血球の大きさが正常な貧血)認めれば、消化管出血の可能性を疑いましょう[ただし、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に合併する自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の事もあるので要注意!(第56回 日本甲状腺学会 P2-017 バセドウ病を基礎とした甲状腺クリーゼに、原発性胆汁性肝硬変と自己免疫性溶血性貧血を合併した一例)

中には、AST(GPT)9258U/l, T-bil 28mg/dlまで上昇する高度の肝不全おこし、血漿交換で救命した甲状腺クリーゼ症例も報告されています。(第209回 日本内科学会近畿地方会 演題14 高度の心不全・肝不全を認めるも救命し得た甲状腺クリーゼの1例)

稀な死亡原因として、低血糖後代謝性脳症があります。発症時より著明な低血糖と肝不全があり、血液持続濾過透析(CVVHDF)を中止できるほど肝不全も含めた全身状態改善するも、低血糖後代謝性脳症で脳死状態になり死亡した報告例もあります。(第53回 日本甲状腺学会 P-93 著明な低血糖と肝不全を呈した甲状腺クリーゼの一例)

甲状腺クリーゼの後遺症

甲状腺クリーゼの急性期は循環動態の治療(救命)が最優先です。たとえ救命できても、甲状腺クリーゼの後遺症として、低酸素性脳症(要するに酸素欠乏症)・廃用症候群・脳血管障害が残る事があります。

京都市立病院の報告では、治療開始後11日で、やっと意識レベルが改善した重症甲状腺クリーゼ症例は、経口摂取出来ないほどの嚥下障害が残り、第50病日(2か月弱)に胃瘻増設したそうです。 (第60回 日本甲状腺学会 P1-5-4 嚥下障害が遷延し胃瘻増設を行った甲状腺クリーゼの一例)

治療を放置した・自己中断した甲状腺機能亢進症/バセドウ病で(無計画)妊娠した場合

一般的に妊娠すれば、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の活動性は一端治まり、出産後に再発しやすいとされます。しかし、それは治療でコントロールされ、医師のゴーサインが出た後、計画的に妊娠した場合です。治療を放置した・自己中断した甲状腺機能亢進症/バセドウ病(無計画)妊娠した場合、甲状腺クリーゼが待っています。報告症例では妊娠25週で起きたそうです。(第56回 日本甲状腺学会 P2-020 切迫甲状腺クリーゼを来した巨大バセドウ病甲状腺腫合併妊娠の1 例)

甲状腺クリーゼの特殊な病態(一般的ではありません)

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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〒546-0014
大阪市東住吉区鷹合2-1-16

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  • 大阪メトロ 谷町線「駒川中野駅」
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