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命の危険:甲状腺クリーゼ  [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:最新・専門の検査/治療/知見①甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)でしかできない検査/治療・当院ホームページでしか得られない情報が満載です。これらは、院長が最新の海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪) ゆるキャラ 甲Joう君

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皆さん、覚えていますか?人気絶頂の某シンガーソングライターの女性が2009年、いきなりバセドウ病のため、音楽活動を休止したことを(お別れツアーも、お別れアルバムも無しで突然)!

バセドウ病は死ぬこともある病気なので治療に専念したい」との理由でした。この時、初めて「バセドウ病は死ぬこともある病気だったの!?」との衝撃が世間を駆け巡り(週刊誌や、お昼のワイドショーでも話題になり)、甲状腺の専門家たちは啓蒙活動に忙しかったのです。未治療のバセドウ病自体、

  1. 甲状腺クリーゼ(甲状腺緊急症)(下記)と言う命に係わる危険な状態に至る可能性
  2. 突然死(致死性不整脈、心筋症)の可能性 (甲状腺と心臓病(サイロイドハート) 甲状腺と不整脈
  3. 抗甲状腺薬開始後、数か月間は無顆粒球症・劇症肝炎など日本で年間数人の死人が出る副作用が起こり易い (命の危険:無顆粒球症/ 劇症肝炎

など結構危険な状態なのです。

一般の人、一般医は、「甲状腺の病気は、軽症が多く、死ぬ事は少ない」と考えている方が多いです。しかし、甲状腺の薬を長期間自己中断すれば、大変なことになる可能性あります。ちなみに、バセドウ病の危険性が解っている、まともな内科医は、甲状腺専門医へ紹介してくるので、我々は大忙しです。

甲状腺ホルモンが多くて生命に危険がおよぶ状態を、甲状腺クリーゼ(甲状腺緊急症)、足らなくて生命に危険がおよぶ状態を粘液水腫性昏睡と言います。いずれも発症すると死亡率は10%以上で、原因として甲状腺薬の自己中断が最も多いとされます。

Summary

甲状腺クリーゼの原因・症状・治療・予後を解説。未治療やコントロール不良甲状腺機能亢進症/バセドウ病により、中枢神経症状・38℃以上発熱・頻脈・心不全/呼吸困難・嘔吐/下痢/黄疸おこし、死亡率は約10%、死因は多臓器不全等です。

Keywords

甲状腺クリーゼ,中枢神経症状,甲状腺,バセドウ病,死亡率,甲状腺機能亢進症,原因,症状,治療,予後

甲状腺クリーゼ

甲状腺クリーゼとは

甲状腺クリーゼ(甲状腺緊急症)は、甲状腺ホルモン過剰に対し生体の代償機構が破綻、多臓器不全に陥った状態です。我が国での発症数は年間約150症例(Thyroid 22:661-679,2012)。

甲状腺クリーゼの原因

甲状腺クリーゼ;未治療(全体の20%)やコントロール不良の甲状腺機能亢進症/バセドウ病[無痛性甲状腺炎機能性結節(甲状腺ホルモン産生腫瘍)の報告もあり]で、

  1. 抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の自己中断/不規則な服薬(最も多い原因で、約40-50%)
  2. 感染症(最も多い誘因で、肺炎・上気道炎が多数、インフルエンザ、尿路感染症も)、外傷、手術、ストレスなども誘因
  3. 高温に暴露(真夏日)
  4. 甲状腺手術,甲状腺アイソトープ治療など治療でおこることも

が原因で、代償されていた循環系や神経系機能が破たんし、ショック状態や昏睡になります。

どのような状態が甲状腺クリーゼ

甲状腺クリーゼの診断基準

甲状腺ホルモンが過剰になりすぎる(必須項目甲状腺中毒症の存在)と、

  1. 中枢神経症状/意識障害
    意識がもうろうとする
    言動がおかしい(これは他人が気付く)
    幻覚(幻視・幻聴)・妄想:強迫性障害・妄想性障害と誤認される事あり
    強直性間代性けいれんの事も
    (高齢者では、認知症と間違えられることあり)
  2. 38℃以上の発熱
  3. 頻脈(脈が1分間130以上)[心房頻脈(PAT)でも、心房細動(Af)でも問わない]
  4. 心不全起こし、呼吸困難[肺水腫、肺野の50%以上の湿性ラ音(肺に水がたまった音)、心原性ショックなど重度な症状。]
  5. 嘔気・嘔吐、下痢、黄疸(血中総ビリルビン>3mg/dl)

がおこり早急に対処しなければ死に至ります。

  1. 中枢神経症状と、1つ以上を満たす
  2. 中枢神経症状以外の3つのを満たす

甲状腺クリーゼと診断できます。(ただし、甲状腺ホルモン値が判明するまで甲状腺クリーゼ疑い)

甲状腺クリーゼが更に進むと

甲状腺クリーゼが進行すると、血小板が減少し始めます。同時にDダイマーなども上昇し始め、危険なDIC(播種性血管内凝固症候群)・多臓器不全(死亡原因の1位)に移行します。

高齢者の甲状腺クリーゼ

高齢者は、

  1. 高熱、多動など典型的クリーゼ症状を呈さない場合があります。
  2. 中枢神経症状/意識障害を認知症と間違えられることあり。第56回 日本甲状腺学会 P2-022 診断に苦慮した認知機能低下を伴う高齢者甲状腺クリーゼの一例)

甲状腺クリーゼの鑑別:橋本脳症

甲状腺クリーゼの鑑別として、橋本脳症があります。橋本脳症急性脳症型の38℃以上の発熱・意識障害に、甲状腺機能亢進症/バセドウ病を合併すると甲状腺ホルモン高値の条件が加わり、甲状腺クリーゼの診断基準を満たしてしまいます。本当の甲状腺クリーゼではないため、甲状腺クリーゼの治療しても意識障害は改善しません(最初だけのステロイド剤がわずかに効くかもしれません)。(第54回 日本甲状腺学会 P101 甲状腺クリーゼで発症した橋本脳症の一例)

 (橋本脳症・脳の病気/脳梗塞と甲状腺)

甲状腺クリーゼの治療

甲状腺クリーゼの治療

甲状腺クリーゼ治療経過

ICU(集中治療室)等に入院の上、

  1. 冷却:室温を20℃以下に空調を調節
    アルコールスポンジや氷のうで全身冷却
    解熱鎮痛剤ジクロフェナク剤など
  2. 脱水補正:電解質やビタミン剤の輸液
  3. 心不全:利尿剤フロセミドなど、トルバプタン(バソプレシン受容体拮抗薬)の使用例も報告されています(第56回 日本甲状腺学会 P2-018 甲状腺クリ-ゼによる心不全に対するトルバプタンの使用経験)
  4. 抗生剤
  5. 胃酸をおさえる薬・胃粘膜を保護する薬(甲状腺ホルモン過剰状態では消化管潰瘍ができやすい)
  6. βブロッカー[β1選択性βブロッカーが死亡率を低下させます(Clin Endol ;doi 10.1111/cen. 12949)。長時間作用型が使いにくい場合、半減期4分のランジオロール(オノアクト®)[心拍数抑制>血圧低下]/9分のエスモロール(ブレビブロック®)[血圧低下>心拍数抑制]/など超短時間作用型が有用]
  7. 抗甲状腺薬
    ①MMI(メルカゾール)3-4錠/6h x4= 12-16錠/日、注射剤もあり
    ②PTU(プロパジール,チウラジール)4-5錠/6h x4= 16-20錠/日
  8. ヨウ化カリウム、経口摂取不能な時はルゴール液30滴/日使用する事も
  9. 副腎皮質ステロイド:バセドウ病の自己免疫反応を抑制するため。また、甲状腺クリーゼでは、過剰な甲状腺ホルモンにより、副腎皮質ホルモンが分解され、副腎クリーゼ(急性副腎不全)を合併しています。投与量に決まりはありませんが、とりあえずヒドロコルチゾン300mg/日 x 3日

甲状腺クリーゼの禁忌

  1. アスピリン(バファリン®)投与(遊離型の甲状腺ホルモンを増やす)
  2. 心不全/合併する心房粗動(AF)などに
    βブロッカーの過量静脈投与:心停止・低血糖の危険
    Ca拮抗薬ベラパミル(ワソラン®)の(過量とは言えないわずか1.25mgでも)静脈投与:心抑制効果強過ぎ心停止
    (第57回 日本甲状腺学会 P1-041 救急外来でのベラパミル投与を契機に心停止となり、急性循環障害から肝・腎不全を来したと考えられる甲状腺クリーゼ疑いの1 例)
  3. 気管支喘息合併患者に(特にβ1非選択性)βブロッカー投与:気管支収縮させ喘息悪化・重積化[代わりにベラパミル(ワソラン®)等のCa拮抗薬を使用、ただベラパミル(ワソラン®)は心抑制効果強過ぎるので筆者はジルチアゼム(ヘルベッサー®)がお勧め]
  4. ヨウ化カリウムを抗甲状腺薬MMI(メルカゾール)より先に投与:さもないと甲状腺内へのMMI(メルカゾール)取り込み悪くなる

甲状腺クリーゼの時だけの荒技

甲状腺クリーゼは当然ICU(集中治療室), CCUに入院していただきます(大阪府立急性期総合医療センターがおすすめ)。

甲状腺ホルモンが下がらなければ、

  1. リチウム剤(抗うつ剤;甲状腺内へのヨード取り込み阻害)
  2. 2重濾過血漿交換(DFPP), 持続濾過透析(CHDF):
    ①甲状腺ホルモンとバセドウ病抗体(TRAb)両方を除去できる他
    ②制御できない甲状腺クリーゼの肝障害も改善
    甲状腺クリーゼの時ならではの低拍出量性心不全も改善(通常の甲状腺機能亢進症/バセドウ病は高拍出量性心不全)
    (第54回 日本甲状腺学会 P209 著明な胆汁うっ滞型肝障害を伴ったバセドウ病の術前管理に血漿交換が有用であった1例)
    (第54回 日本甲状腺学会 P210 低拍出性心不全を伴う甲状腺クリーゼの術前管理を救命しえた2例)

おこない、甲状腺全摘手術になります。

甲状腺クリーゼの危険性

甲状腺クリーゼの死亡原因

甲状腺クリーゼの死亡率は10%程で、 死因は多臓器不全、心不全、腎不全、呼吸不全、不整脈の順です。

意外と知られていませんが甲状腺クリーゼの死因の8%は消化管穿孔(胃腸が破けること)で、私なら治療開始時より胃酸を抑える薬・胃粘膜を保護する薬を使います。検査データで正球性貧血(赤血球の大きさが正常な貧血)認めれば、消化管出血の可能性を疑いましょう[ただし、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に合併する自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の事もあるので要注意!(第56回 日本甲状腺学会 P2-017 バセドウ病を基礎とした甲状腺クリーゼに、原発性胆汁性肝硬変と自己免疫性溶血性貧血を合併した一例)]

中には、AST(GPT)9258U/l, T-bil 28mg/dlまで上昇する高度の肝不全おこし、血漿交換で救命した甲状腺クリーゼ症例も報告されています。(第209回 日本内科学会近畿地方会 演題14 高度の心不全・肝不全を認めるも救命し得た甲状腺クリーゼの1例)

甲状腺クリーゼの後遺症

たとえ救命できても、甲状腺クリーゼの後遺症として、低酸素性脳症(要するに酸素欠乏症)・廃用症候群・脳血管障害が残る事があります。

治療を放置した・自己中断した甲状腺機能亢進症/バセドウ病で(無計画)妊娠した場合

一般的に妊娠すれば、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の活動性は一端治まり、出産後に再発しやすいとされます。しかし、それは治療でコントロールされ、医師のゴーサインが出た後、計画的に妊娠した場合です。治療を放置した・自己中断した甲状腺機能亢進症/バセドウ病(無計画)妊娠した場合、甲状腺クリーゼが待っています。報告症例では妊娠25週で起きたそうです。(第56回 日本甲状腺学会 P2-020 切迫甲状腺クリーゼを来した巨大バセドウ病甲状腺腫合併妊娠の1 例)

甲状腺クリーゼの特殊な病態(一般的ではありません)

特殊な状況の甲状腺クリーゼをいくつか紹介します。あまり一般的な話ではありません。

血球貪食症候群(HPS)を合併

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)

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