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甲状腺癌全摘出後の再発予測/予測寿命・ホルモン補充療法[甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、甲状腺癌全摘出後のヨード131(131-I)アイソトープ(放射線)治療に対するセカンドオピニオンは、お断りしております。

131-Iアブレーション

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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Summary

甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)の全摘出後の再発予測に血中サイログロブリン値と抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)、予測寿命にサイログロブリンDT(ダブリングタイム)甲状腺髄様癌はカルシトニンDT。甲状腺全摘手術後の再発の確認①従来法:2週間前から甲状腺ホルモン剤を中止、TSHを上昇させる。甲状腺機能低下により心不全・うつ悪化、腎機能低下から被ばく増加。②rhTSH(タイロゲン®)法は甲状腺ホルモン剤の中止なく、131-I シンチグラフィー(その後のアブレーションも兼ねる)と血清サイログロブリン測定。手術後長期コントロール目標を高リスク群:TSH<0.1、低リスク群:TSH 0.5~2.0。

Keywords

甲状腺癌,全摘出,再発,サイログロブリン,抗サイログロブリン抗体,Tg-Ab,甲状腺乳頭癌,生存率,甲状腺,カルシトニン

甲状腺癌全摘出後の再発予測/予測寿命

血中サイログロブリン

甲状腺乳頭癌の約10%は再発します。

甲状腺分化癌細胞

サイログロブリンは甲状腺濾胞細胞にしか発現しないタンパクです。甲状腺全摘出した後は、体内に残る甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)にしか存在しません。よって、甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)が消滅すれば、サイログロブリンもなくなります。逆に、遠隔転移・あるいは切除し切れなかった甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)が増えれば、血中のサイログロブリンも上昇します。

甲状腺全摘出後は、血中サイログロブリン値を2ng/ml未満を保つよう、131-Iアブレーションをおこないます。外来で使用できる131-Iは30mCiが限界ですが、正直この程度の量では効果少ないです。

サイログロブリンDT(ダブリング タイム)

サイログロブリン甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)の再発の指標です。甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)で甲状腺全摘出した後の予測寿命を計算します。(但し、術前のサイログロブリン値、摘出した癌の重量が判っていて、かつサイログロブリン抗体が陰性である場合に限定)

※あくまで理論上の目安であり、術後治療の合併症や、免疫不全による感染症、甲状腺癌以外の病気は計算に入っておりません。

カルシトニンDT(ダブリング タイム)

甲状腺髄様癌で甲状腺摘出した後の予測寿命を計算します。(但し、術前のカルシトニン値、摘出した癌の重量が判っている場合に限定)

※あくまで理論上の目安であり、術後治療の合併症や、免疫不全による感染症、甲状腺髄様癌以外の病気は計算に入っておりません。

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)

元々、橋本病の自己抗体[自分の甲状腺を破壊する抗体;抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)]を持っている方では、サイログロブリンが絶対的なものではありません。しかも、甲状腺乳頭癌の30%は抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)が陽性です。このような方は抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)そのものが再発の指標になります(Arq Bras Endocrinol Metabol. 2004 Aug;48(4):487-92.)。

野口病院の報告では、抗サイログロブリン抗体陰性化を認めた症例でも、抗サイログロブリン抗体の再上昇がおこると再発病変がみつかったとの事です。(第56回 日本甲状腺学会 O5-4 ablation による抗サイログロブリン抗体陰性化についての検討)


  • 血液中のサイログロブリン濃度の測定は、発色剤や放射性同位元素(アイソトープ)で標識した人造抗サイログロブリン抗体を血液中のサイログロブリンと結合させ、吸光度や放射線量を測定して、サイログロブリン濃度を割り出すものです。
    元々の血液中にすでに抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)が存在している場合、人造抗サイログロブリン抗体は、サイログロブリンへの結合を競合阻害されます。
    よって、サイログロブリンと結合できる人造抗サイログロブリン抗体が少なくなるため、実際よりも低い測定結果になります。
  • では、なぜ抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)再発のマーカーになるのでしょうか?サイログロブリンは甲状腺濾胞細胞にしか発現しないタンパクなので、甲状腺全摘出した後は、体内に残っている甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)にしか存在しません。よって、甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)が消滅すれば、サイログロブリンも無くなり、連鎖的にサイログロブリンを抗原とする抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)も低下していくのです。

甲状腺全摘出後の甲状腺癌再発の診断

正攻法;画像診断[頚部超音波(エコー)検査、肺CT、脳MRI]

後述の131-Iシンチグラフィーは、その後のアブレーションも兼ねるため(放射線治療病室の確保も必要ですが、日本では数が少なく平均6か月待ち)甲状腺癌再発をある程度確信して行います。やはり、第一は簡便に行える頚部超音波(エコー)検査(局所再発・局所リンパ節再発)、肺CT(肺転移)、脳MRI(脳転移)、胸腰椎(あるいは転移が疑われる骨の)MRI(骨転移)です。

甲状腺乳頭癌のリンパ節再発

甲状腺乳頭癌のリンパ節再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌のリンパ節再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌のリンパ節再発 超音波ドプラー画像

甲状腺乳頭癌のリンパ節再発 超音波ドプラー画像

甲状腺乳頭癌リンパ節再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌のリンパ節再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌のリンパ節再発 超音波ドプラー画像

甲状腺乳頭癌のリンパ節再発 超音波ドプラー画像

甲状腺乳頭癌の同側(切除した側)と対側(切除していない側)のリンパ節再発を同時に認めた症例

甲状腺乳頭癌同側リンパ節再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌の同側(切除した側)のリンパ節再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌対側リンパ節再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌の対側(切除していない側)のリンパ節再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌対側リンパ節再発 ドプラー

甲状腺乳頭癌の対側(切除していない側)のリンパ節再発 ドプラー

甲状腺乳頭癌鎖骨窩リンパ節転移 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌鎖骨窩リンパ節転移 超音波(エコー)画像

鎖骨窩リンパ節転移は、全身への転移につながります。

甲状腺乳頭癌の局所再発

甲状腺乳頭癌局所再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌局所再発 超音波(エコー)画像

甲状腺乳頭癌局所再発 超音波(エコー)画像 拡大

甲状腺乳頭癌局所再発 超音波(エコー)画像 拡大

甲状腺乳頭癌の局所再発は、通常は原発巣付近の癌細胞を採り切れなかった場所に現れます。

甲状腺乳頭癌の局所再発も多様

甲状腺乳頭癌の局所再発も多様で、

  1. 皮下転移(かなり浅い場所)
  2. 顎下部(かなり上)
  3. 甲状軟骨側板(まさかこんな所に)
  4. 胸鎖乳突筋内(まさかこんな所に)

など頚部のどこにでも再発する可能性があります。(第57回 日本甲状腺学会 P1-067 再発を繰り返し治療に難渋している甲状腺乳頭癌の1 症例)

甲状腺濾胞癌局所再発(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺濾胞癌局所再発 超音波(エコー)画像

甲状腺濾胞癌局所再発 超音波(エコー)画像

甲状腺濾胞癌局所再発 細胞診

甲状腺濾胞癌局所再発 細胞診

甲状腺濾胞癌局所再発 病理組織

甲状腺濾胞癌局所再発 病理組織

甲状腺乳頭癌の肺転移

甲状腺乳頭癌の肺転移

甲状腺乳頭癌の肺転移は、肺野にびまん性の小粒状陰影を認めます。確定診断は、TBLB(経気管支肺生検)になります。

131-Iシンチグラフィー(その後のアブレーションも兼ねる)

甲状腺全摘手術後に甲状腺癌の再発の有無を確認するため、2週間前からヨード制限を行い、

  1. 従来法:2週間前から補充されている甲状腺ホルモン剤を中止し、下垂体からのTSHを上昇させます。甲状腺癌が残っていれば、TSHに反応して、サイログロブリン産生し、131-Iを取り込みます。甲状腺機能低下にともなって心不全・うつ悪化、腎機能低下によりが放射性ヨウ素の排泄遅延と被ばく量増加。甲状腺ホルモンを再開してもすぐには回復しません。
     
  2. rhTSH(タイロゲン®:一般名ヒトチロトロピンアルファ)法:遺伝子組み換えヒト甲状腺刺激ホルモン製剤(rhTSH)は、甲状腺ホルモン剤を中止することなく、131-I シンチグラフィーと血清サイログロブリン測定を行うことができます。

    48時間前、24時間前の2回、rhTSHの筋肉注射を行います。血清TSH濃度は200を超えます。

    I-131投与後48時間で、131-I シンチグラフィーと血清サイログロブリン測定します。

頚部再発が著明で、TSH刺激で増大が予想される場合は、従来法でもrhTSH法でも危険性は同じです。しかし、 rhTSH法には治療への保険適応がありません。

従来法

rhTSH(商品名:タイロゲン)法

小宇宙 3

rhTSHの実際の使用法:甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)で甲状腺全摘または準全摘術をされた後

  1. 残存甲状腺の131-Iによる破壊(アブレーション)補助
  2. 局所再発、遠隔転移の検出と、引き続き131-Iによる破壊(アブレーション)補助
  3. 遠隔転移の治療補助は日本で認められていません。
    (2012 年に遠隔転移のない分化型甲状腺癌における残存甲状腺組織のアブレーション治療の補助としての使用のみ認められています)

絶対的適応は、

  1. 甲状腺ホルモンの休止でTSHが上昇しない下垂体障害
  2. 心不全、精神疾患などが増悪する場合

rhTSH 投与による有害事象(副作用)

rhTSH 投与による有害事象(副作用)は、めまい・頭痛・嘔気/嘔吐・腎機能障害・全身倦怠感・発熱などで、症状強いと来院できずにI-131 投与が出来なくなる事もあり得ます。大阪府立急性期・総合医療センター 耳鼻咽喉・頭頸部外科の報告では、rhTSHの初回投与で17%に有害事象(副作用)を認めたが、複数回投与例では8%だったそうです。(第57回 日本甲状腺学会 P1-079 rhTSH を使用したI-131 アブレーションとシンチグラム時の有害事象に関する検討)

血中サイログロブリン値が高いのに、131-Iを取り込まない甲状腺癌の再発(TENIS症候群)

血中サイログロブリン値が高く、甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)の再発が強く疑われるのに、131-I シンチグラフィーで131-Iが取り込まれない状態をTENIS症候群(thyroglobulin-elevated negative iodine scintigraphy)と言います。

FDG-PET/CTが有用

TENIS症候群では、FDG-PET/CTで陽性に出る事多いため、FDG-PET/CTが有用です。

甲状腺分化癌はヨードシンポーター(sodium/iodide symporter;NIS)から131-Iを取り込み、グルコース トランスポーター(GLUT)からFDGを取り込みます。甲状腺癌ではNISの発現とGLUTの発現は相反し、GLUT優位なら131-I シンチグラフィーで集積性に乏しく、FDG-PET/CTで高集積を示すとされます。 (J Nucl Med 37 : 1468-1472, 1996) (Br J Radiol 76 : 690-695, 2003)

ただし、FDG-PET/CTは、甲状腺癌以外の他臓器の癌、サルコイドーシス、炎症部位でも陽性(偽陽性)になり、偽陰性(FDGも取り込まない甲状腺癌)も少なからずあるため、他の検査データも照合して判断しなければなりません。

rhTSH 注射に対する自覚症状

例え、131-I シンチグラフィーで取り込まれなくても、rhTSH 注射に反応して、骨転移部に疼痛・硬結・皮下腫脹を認める場合があります。TSHに反応している事で、間違いなく甲状腺癌と言えます。(第56回 日本甲状腺学会P2-089 甲状腺乳頭癌に肋骨転移を伴い、rhTSH 投与後に肋骨転移部の腫脹・疼痛が急激に出現した一例)

131-Iシンチグラフィーで予後は改善するか?

分化型甲状腺癌全摘出後、頚部超音波(エコー)検査、放射性ヨードシンチグラフィ(123-I、131-I)、FDG-PET検査で手術・アブレーション治療の実施率は上昇した。しかし、頚部超音波(エコー)検査、FDG-PET検査は疾患特異的生存率に影響しなかった。放射性ヨードシンチグラフィ(123-I、131-I)のみ生存率の改善と有意に関連したとの報告があります(BMJ. 2016 Jul 20;354:i3839. doi: 10.1136/bmj.i3839.)。

甲状腺乳頭癌の10年生存率を決めるものは?

一般的に、甲状腺乳頭癌全体の10年生存率は95%以上です。例外はありますが、他臓器の癌と異なり、高齢の方より若い人の方が進行が遅いのです(他臓器癌では、年寄りほど、ゆっくり進行すると言われますが・・・)。

周囲の線維組織・脂肪組織・甲状胸筋・顕微鏡的な反回神経への浸潤は生存率に無関係とされます。

肉眼的に甲状腺の外(気管・食道、反回神経)まで浸潤した場合、10年生存率は75%程といわれます。和歌山県立医科大学の報告では、気管・食道、反回神経まで浸潤したEx3は、局所再発・遠隔転移による死亡は早期に起こるとされます。(第56回 日本甲状腺学会 P2-098 甲状腺外浸潤よりみた甲状腺乳頭癌の予後予測)

甲状腺乳頭癌 気管浸潤

甲状腺癌全摘出後のホルモン補充療法

甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)は、正常甲状腺濾胞細胞と同じくTSH受容体を持ちTSH刺激で増殖。甲状腺癌全摘出後のホルモン補充療法は、脳下垂体のTSH分泌を抑制するよう、甲状腺ホルモン剤[チラーヂンS錠(一般名:レボチロキシン ナトリウム)]を通常より多く投与。アメリカ甲状腺学会のガイドラインでは、コントロール目標を高リスク群は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)<0.1、中リスク群:0.1~0.5、低リスク群:0.5~2.0。TSH0.03-0.3では血中FT3(甲状腺ホルモン:トリヨードサイロニン)と基礎代謝率は甲状腺癌全摘出前と同じ。閉経後の女性では、TSHを正常下限以下に抑制すると骨粗しょう症に。

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リスク別ホルモン補充目標

甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)細胞

甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)は、正常甲状腺濾胞細胞と同じくTSH受容体を持っており、TSH(甲状腺刺激ホルモン)によって刺激を受けます。

正常甲状腺濾胞細胞はTSH刺激でほとんど増殖しませんが、甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)は増殖します。よって、甲状腺癌全摘出後のホルモン補充療法は、脳下垂体のTSHの分泌を抑制するよう、甲状腺ホルモン剤[チラーヂンS錠(一般名:レボチロキシン ナトリウム)]を通常より多く投与します。

アメリカ甲状腺学会のガイドラインでは、手術後長期(6カ月~1年以降)のコントロール目標を

  1. 高リスク群(再発の危険性高い):TSH(甲状腺刺激ホルモン)<0.1
  2. 中リスク群(再発の危険性中くらい):TSH 0.1~0.5
  3. 低リスク群(再発の危険性低い):TSH 0.5~2.0
    (2015 American Thyroid Association Management Guidelines for Adult Patients with Thyroid Nodules and Differentiated Thyroid Cancer: The American Thyroid Association Guidelines Task Force on Thyroid Nodules and Differentiated Thyroid Cancer.Thyroid. 2016 Jan;26(1):1-133.)

になるよう推奨しています。TSHが残存する甲状腺癌細胞に増殖刺激を与えるのを防ぐためです。

  1. TSH0.03-0.3に軽度抑制しても、血中のFT3(甲状腺ホルモン:トリヨードサイロニン)と基礎代謝率は甲状腺癌全摘出前と同じであるとされます。
  2. さすがにTSH<0.03では、血中のFT3(甲状腺ホルモン:トリヨードサイロニン)と基礎代謝率は甲状腺癌全摘出前より高くなります。
    [Eur J Endocrinol. 2012 Sep;167(3):373-8.]
    (第58回 日本甲状腺学会 O-1-5 甲状腺癌全摘術後レボチロキシン服用患者の甲状腺機能と甲状腺関連代謝指標の関連についての検討)
    当然、心房細動などの不整脈が起こる確率が上がると考えられます。喘息、異型狭心症などが無ければ、心臓を保護するため、ベータブロッカーを血圧・脈が下がり過ぎない様に投与するのも良いでしょう。

閉経後の女性では、TSHを正常下限以下に抑制すると骨粗しょう症の危険度が増えるため、低リスク群(再発の危険性低い)ではTSHを必要以上に抑制すべきではないとされます。

しかし、最近の論文によると、225人の閉経後女性を対象とした前向き研究で、TSH抑制療法は、少なくとも2年間では、骨密度 (BMD) 減少に、ほとんど影響しなかったとされます(Onco Targets Ther. 2018 Oct 9;11:6687-6692.)。さらに、10年間の経過観察した別の研究でも骨折のリスクは上昇しなかった様です(Endocrine. 2018 Oct;62(1):166-173.)。その他、最近の論文のほとんどが、TSH抑制療法が閉経後女性の骨に影響しないとの結論を出しています。

また、甲状腺切除と同時に副甲状腺も切除し、甲状腺全摘出後副甲状腺機能低下症になり、低カルシウム血症おこします。ビタミンDとカルシウム剤投与が必要です。

甲状腺癌全摘出後のホルモン補充療法による骨密度減少

甲状腺癌全摘出後のTSH抑制療法による骨密度減少が問題になる場合があります。特にTSHを正常値以下(一般的に0.5未満)に抑制する場合、閉経後女性では、抑制1年後には明らかな骨密度減少が認められます。

40歳以下では、抑制5年後にも、有意な骨密度減少が認められなかったそうです。(第53回 日本甲状腺学会 O-2-2 甲状腺乳頭癌に対する TSH抑制療法(TST)の効果についてのランダム化比較試験(RCT)における腰椎骨量の経年的変化について)

甲状腺癌全摘出後のホルモン補充療法

甲状腺癌全摘出後のホルモン補充療法は、何を目安に甲状腺ホルモン剤[チラーヂンS錠(一般名:レボチロキシン ナトリウム)]の用量調節すれば良いのでしょうか?

当然、前項で述べたようにTSHと、これまでは、血中濃度の安定性からFT4(甲状腺ホルモン:サイロキシン)が測定されることが多かったです。しかし最近、TSHとFT3(甲状腺ホルモン:トリヨードサイロニン)を測った方が良いと言う意見も出ています。その根拠は、甲状腺ホルモン過剰状態であれ、不足状態であれ、FT3が身体症状を強く反映するためとされます。(第55回 日本甲状腺学会 O-03-02 甲状腺全摘出術後LT4服用患者の甲状腺機能と身体症状の関連についての検討)

甲状腺全摘出後 超音波(エコー)画像

甲状腺がなくなったため、

  1. 甲状腺から分泌されるFT3もゼロになり
  2. チラーヂンS錠(LT4)が脱ヨード化されて生じるFT3のみになります。

よって、LT4≒FT4が正常でも、FT3が低くなる可能性が高いのです。しかも、甲状腺ホルモン作用はT3の方がはるかに強く、T4はT3の前段階なので、FT3が身体症状を強く反映するのは当然と言えます。

甲状腺癌全摘出後リンパ節再発と紛らわしい異物肉芽腫

甲状腺癌全摘出後縫合糸が残り、甲状腺癌リンパ節再発と紛らわしい超音波(エコー)像に見えます。異物肉芽腫と言われるもので、もちろん穿刺針洗浄液のサイログロブリン(FNA-Tg)は低値です。細胞診では、縫合糸の周囲に多核巨細胞・組織球の浸潤による炎症が見られます。(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

異物肉芽腫 超音波(エコー)像
異物肉芽腫 細胞診

 

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)


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