甲状腺ホルモン偽高値/偽低値(本当のTSH,FT3,FT4は正常だが異常値になる)[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
TSH、FT3、FT4の偽高値/偽低値(本当は正常だが異常値と出る)の原因は①甲状腺ホルモン自己抗体(THAAbs)[抗ヒトT3自己抗体、抗ヒトT4自己抗体、抗ヒトTSH自己抗体]、異好抗体②家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症③エクルーシス試薬(ECLIA法)。正しい値は①2step測定法アーキテクト②PEG(ポリエチレングリコール)沈殿法(FT3、FT4近似値)で。甲状腺機能低下症症状がないのにTSH上昇する場合、抗TSH自己抗体を疑う。リウマチ因子によるサイログロブリン・カルシトニン偽高値、抗アイソタイプ抗体(ヒト抗動物抗体)の偽高値もある。
Keywords
TSH,FT3,FT4,偽高値,偽低値,甲状腺ホルモン自己抗体,異好抗体,抗ヒトT3自己抗体,抗ヒトT4自己抗体,抗ヒトTSH自己抗体
偽高値・偽低値(本当のTSH、FT3、FT4は正常だが、異常値に出てしまう)は、異好抗体の抗マウスグロブリン抗体(マウス抗体に対するヒト抗体;HAMA)や抗ヒトTSH自己抗体(マクロTSH血症 の場合もある)、抗ヒトT3自己抗体、抗ヒトT4自己抗体が血液中に存在するために起こります。
抗ヒトTSH自己抗体、抗ヒトT3自己抗体、抗ヒトT4自己抗体をまとめて、甲状腺ホルモン自己抗体(THAAbs)と称します。甲状腺ホルモン自己抗体(THAAbs)保有率は一般人口の1.8%、自己免疫性甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病)患者の7%で、特に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体),抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)強陽性患者に多いとされます。(Clin Chem 1990;36:470-473.)
※残念ながら2ステップ法であるアーキテクト®(アボットジャパン)の測定機械を持っている施設・検査センターは、ほとんどありません。長崎甲状腺クリニック(大阪)では、埼玉のBML研究所に航空便で検体を送り、測定を依頼しています。
株式会社 ビー・エム・エルBML総合研究所(〒350-1101 埼玉県川越市的場1361-1)は、キット間の比較を行う目的で甲状腺ホルモンの全測定キットを保有している特殊な企業ラボです。
最近は、富士レビオのルミパルス®(ルミパルスプレスト) も2ステップサンドイッチ法に基づいた化学発光酵素免疫測定法(CLEA法)を採用しています。現在、日本国内の主流は偽高値を生じるロシュ・ダイアグノスティックス社製の1ステップ測定キット[エクルーシス試薬、ECLIA法(電気化学発光免疫測定法)]ですが、果たして普及するでしょうか?
PEG(ポリエチレングリコール)沈殿法は、抗マウスグロブリン抗体(異好抗体HAMA)や抗ヒトTSH自己抗体、抗ヒトT3自己抗体、抗ヒトT4自己抗体を沈殿させて除去する方法です。
PEG(ポリエチレングリコール)沈殿法を用いると、FT3、FT4を本当の値に極めて近い近似値へ換算する事ができます。しかし、本当の値とは言えません。さらに、TSHの換算式は確立していないため、換算値を出せません。抗ヒトTSH自己抗体に影響されない2step測定法のアーキテクト®(アボットジャパン)には及びません。
どのような場合、抗TSH自己抗体の存在を疑えば良いでしょうか?
- 甲状腺機能低下症症状が全くないのに、TSH 50~100~200 μIU/mL 以上が持続。甲状腺超音波(エコー)検査でも、TSHの値に見合う変化がない(中枢性甲状腺機能低下症、萎縮性甲状腺炎、TSH受容体不活型変異の可能性は否定できませんが・・・)。筆者の経験上、FT4は正常範囲内の高値(例えば、1.4 ng/dL )が多く、そもそも甲状腺機能低下症ではない。
- 甲状腺機能正常~潜在性甲状腺機能低下症が持続していたのに、突然、TSH 上昇し、50~100~200 μIU/mL 以上が持続(突然、TSH 上昇する報告が多い)。
(第58回 日本甲状腺学会 P1-026 潜在性甲状腺機能低下症の経過観察中にTSH 異常高値となり抗TSH 自己抗体の存在が疑われた一例)
抗TSH自己抗体の確認
抗TSH自己抗体の存在を確認しようとすれば、患者血清をゲルろ過し、TSHと抗TSH自己抗体の複合体を見つける。ただし、これは保険適応もなく、学会・論文報告用に行われるのみです。[Clin Chem Lab Med. 2009;47(5):604-6.]
現実的には、2step測定法のアーキテクト®(アボットジャパン)で本当のTSH値を測定すれば、抗TSH自己抗体の存在を間接的に証明できます。(第53回 日本甲状腺学会 P-149 TSHが著明な高値を呈した一症例におけるTSH測定への患者血清の影響)
秋田大学が、興味深い報告をしています。家族性にFT4高値で、甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)を疑いTRβ遺伝子解析を実施しても第4~10エクソンに変異無し。当然、non-TR RTH[コファクター(転写共役因子)の異常]が疑われますが、2 ステップ測定法[アーキテクト®(アボットジャパン)]で測定するとFT4 は正常範囲内であり、家族性にFT4偽高値という結果でした。
- そもそも抗ヒトT4自己抗体は、遺伝性が強い自己免疫性甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病)の7%に存在するとされ、家族性に持っているケースもあります。[Nihon Naibunpi Gakkai Zasshi. 1982 Jan 20;58(1):9-23.]
- また、下記の家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症も可能性として考えられます。
(第56回 日本甲状腺学会 P1-027 家族性に不適切TSH 分泌症候群(SITSH)に合致する検査所見を示したが、2 ステップ測定法でSITSH が共に否定された親子例)
これまで報告されていたのは、ほとんどが単一のホルモンに対する偽高値/偽低値でした。抗アイソタイプ抗体(ヒト抗動物抗体)[Clin Chem. 1999 Jul;45(7):942-56.]は複数のホルモンで偽高値をおこします。信じられないことに、2step測定法のアーキテクト®(アボットジャパン)でTSH、ACTH、FSH、PTH、IGF-1、プロラクチン(PRL)、βヒト絨毛性ゴナドトロピン、およびカルシトニンの異常高値(偽高値)を示し、他のメーカーの測定キットでも高値~正常値とバラバラの値だったケースがあります。[J Clin Endocrinol Metab. 2015 Jun;100(6):2147-53.]
IgGのFc部分に対する自己抗体であるリウマチ因子(RF)は、異好抗体[抗マウスグロブリン抗体(マウス抗体に対するヒト抗体;HAMA)、ヒト抗動物抗体(HAAA)]と同じく、捕捉抗体と標識抗体を橋渡しすることで測定干渉を引き起こします。
リウマチ因子(RF)によるサイログロブリンおよびカルシトニンの偽高値が報告されています[Medicine (Baltimore). 2019 Feb;98(5):e14178.]。
家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症 (FDH)は、常染色体優性遺伝性に甲状腺ホルモン(T4とT3)と高い親和性を持つ異常アルブミンを有する病気。顕著なFT4偽高値と軽度のFT3偽高値を呈す。TSH不適切分泌症候群(SITSH)と鑑別要。本当のFT4・FT3値は2ステップ測定法アーキテクトで測定(反応液中のアルブミン・T4・FT4 複合体を除去)。家族性異常アルブミン性高トリヨードサイロニン血症(FDH-T3)も報告されている。診断はゲル濾過分析(アルブミン・T4・FT4 複合体の証明)、確定診断はアルブミンの遺伝子解析。
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家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症[familial dysalbuminemic hyperthyroxinemia (FDH)]は、常染色体優性遺伝性に甲状腺ホルモン(T4とT3)と高い親和性を持つ異常アルブミンを有する病態。
詳しい機序は不明だが、何らかの原因で、血液検査における高サイロキシン(T4)血症(FT4偽高値)とT4程ではないが高T3血症(FT3偽高値)を呈します。アルブミン遺伝子R218 部分の一塩基変異が多い[Clin Chem. 2009;55(5):1044-1046.]。 TSH不適切分泌症候群(SITSH)との鑑別が必要です。
見かけ上、free T4(FT4), free T3(FT3)がTSH抑制を伴わず高値を示し、特にFT4が測定限界を超える特徴的なTSH不適切分泌症候群(SITSH)パターンになるため、その不自然さから家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症 (FDH)を疑われます。異なる測定キットを使うと、正常なFT4、FT3値の結果になることがあります。
もちろん、実際のFT4、FT3は正常値につき、何の症状もありません。
千葉大学の報告によれば、HPLC を用いたゲル濾過法で、家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症 (FDH)患者血清のAlb分画を分離しT4・FT4 を測定すると、T4・FT4 がピークを示してFT4/T4 比は0.63。すなわち、アルブミンとT4・FT4 が通常よりも強く結合しており、FT4測定過程で添加されるバッファや抗体などにより遊離し、試験管内ではFT4 が偽高値を示すと推測されます。(第56回 日本甲状腺学会 O8-2 HPLC を用いたサイズ分画分離による家族性異常アルブミン性高サイロキシン血(FDH)患者血清におけるT4 結合の解析)
近年、 高T3血症(FT3偽高値)のみで、高T4血症(FT4偽高値)を伴わない家族性異常アルブミン性高トリヨードサイロニン血症(FDH-T3)も報告されています[Biochim Biophys Acta. 2016 Apr;1860(4):648-60.]。
家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症と診断するには、ゲル濾過分析してアルブミン(Alb)のT4 に対する親和性増加を証明すれば良いのですが、研究室でなければ不可能です(日常診療では無理)。
家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症の確定診断は、アルブミンの遺伝子検査(遺伝子解析)しかありませんが、簡単に行える施設はほとんどなく、しかも保険診療不可の高額な検査です。アルブミン遺伝子のR218部分が一塩基変異した(白人ではp.R242H、日本人ではp.R242P変異)報告例が多い[Clin Chem. 2009;55(5):1044-1046.][J Pediatr Endocrinol Metab. 2021 Jun 18;34(9):1201-1205.]。
家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症 (FDH)で本当のFT4値を知るには、どうすれば良いか?測定過程において、反応液中のアルブミン・T4・FT4 複合体を除去してしまえば良い事になります。ならば、2ステップ測定法[アーキテクト®(アボットジャパン)]で測定するのが1番です。
千葉大学の報告によると、アルブミンの影響を受けやすい1ステップ測定法のルミパルス®(富士レビオ)を用いたFT4値は1.86-2.35 ng/dL(基準値0.70-1.70)となってしまい、2ステップ測定法[アーキテクト®(アボットジャパン)]には及びません。(第59回 日本甲状腺学会 O2-3 家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症(FDH)患者の異なる測定系によるFT4 値の比較)
以下は家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症 (FDH)患者のFT4・FT3値を、1ステップおよび2ステップ測定法の異なるイムノアッセイ法で測定した結果です。やはり、2ステップ測定法[アーキテクト®(アボットジャパン)]が優れています。[Eur J Endocrinol. 2020 Jun;182(6):533-538.]
従来の甲状腺ホルモン測定法であるECLIA/ELISA と統計的な違いがないとの結果ですが、偽高値・偽低値が無くなるか否か不明です(Anal Bioanal Chem. 2019 May;411(13):2839-2853.)
そもそもイオン化した物質を測定する技術で、除タンパク、液液抽出や固相抽出法等で夾雑成分を除去した血清を測定対象としますが、偽高値・偽低値の原因となる抗体を除去できるでしょうか?。
できたとしても、コストを考えれば臨床の場に普及するのは難しいと思います。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。





