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甲状腺と不整脈          [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波(エコー)検査の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:最新・専門の検査/治療/知見①甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)でしかできない検査/治療・当院ホームページでしか得られない情報が満載です。これらは、院長が最新の海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等  糖尿病編 をクリックください

甲状腺と心臓

  1. 心筋細胞は甲状腺ホルモン受容体(TR)が多く、甲状腺ホルモンが受容体を介し作用
  2. 甲状腺ホルモンが直接心筋細胞膜に作用
  3. 甲状腺ホルモンが交感神経の活動性を高める

ため、循環器系は他の臓器より甲状腺ホルモンの影響を受けやすいです。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、甲状腺の初診の方は、心電図も録らせていただきますので、足首の出る服装でお越しください。

甲状腺と不整脈

Summary

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の心房細動(Af)・心房粗動(AF)・WPW症候群・発作性上室頻拍(PSVT)・甲状腺機能正常化した後の心室性期外収縮を解説。甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症と二次性QT延長症候群・致死性心室頻拍・徐脈性不整脈・右脚ブロック・J波症候群も説明。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の心房細動(Af)

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の心房細動(Af)合併率

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の最も有名な不整脈は心房細動(Af)です。甲状腺機能亢進症/バセドウ病の心房細動(Af)合併率は5~15%と報告は様々ですが、一般人口の有病率0.4~1% に比べ約10倍高いことが知られます。心房細動(Af)合併率は年齢とともに上昇、70歳以上の約10%になります。また男性に多いです。

  1. 心不全:心房収縮が消失するため心拍出量が10~15%低下
  2. 脳梗塞(脳血栓塞栓:Mrジャイアンツ長嶋茂雄さんがなった):甲状腺機能亢進症/バセドウ病の約4%で起こるとされます。左房血栓が形成され、脳へ飛びます。

抗甲状腺剤等で甲状腺ホルモンが低下してくると約70%は自然に心房細動は消えます。高齢者、甲状腺ホルモンに長い年月心臓がさらされていると, 甲状腺ホルモンが正常化しても心房細動は消えません。

治療は抗甲状腺剤以外は

抗不整脈薬/除細動

抗不整脈薬

抗不整脈薬を用います。高齢者は抗不整脈薬の効き過ぎに注意。ベータブロッカーのビソプロロール(メインテート®), ピラジカイニド(サンリズム®)は腎排泄型で、腎機能が悪い方は要注意。心拍数が下がり過ぎ(50回/分以下)て心不全おこす危険あります。

ベータブロッカーで内因性交感神経刺激作用(ISA)のないものは心不全の予後を改善。狭心症薬で唯一、狭心症発作予防と心筋梗塞発症抑制があります。

ベータブロッカーのアテノロール(テノーミン®)は強力過ぎて、完全房室ブロックなどペースメーカー埋め込みになる症例も報告されており、長崎甲状腺クリニック(大阪)では余程の場合のみ使用します。

心房細動(Af)の治療は、

  1. 心房細動(Af)のまま、脈拍数を下げるレートコントロール治療
  2. 心房細動(Af)を完全に消すリズムコントロール治療

があります。予後に差がないためレートコントロール療法が主流です。

除細動

甲状腺ホルモン正常化後3~4ヶ月を過ぎても心房細動(Af)が持続する場合、積極的に電気的除細動治療の適応になります。甲状腺機能亢進症による心房細動(Af)例は、他の原因による心房細動(Af)と異なり、除細動後の洞調律の維持率が著しく良好です。

近年、カテーテル治療(アブレーション)で、心房細動(Af)の根治治療が可能になりました。

長崎甲状腺クリニック(大阪)と提携している循環器科のある高次病院へ紹介します。

カテーテルアブレーション目的に入院した症例における甲状腺機能異常の頻度と関連性

小倉記念病院の報告では、カテーテルアブレーション目的に入院した症例245例(男性174人、女性71人)中、甲状腺機能亢進症8例(3.5%)、甲状腺機能低下症17 例(6.9%)で。甲状腺機能亢進症群では正常群に比べ年齢が若い傾向、甲状腺機能低下症群では高齢の傾向がみられたとの事です。(第55回 日本甲状腺学会 YIA-7 心房細動と甲状腺機能の関連性についての検討)

抗凝固剤

ワーファリン

心房内血栓を防ぐため、抗凝固剤(ワーファリン)を用います。特に高齢者、CHADS2(心房細動での、心原性脳塞栓発症リスク)高いと脳塞栓の危険大。効き過ぎると血が止まりにくくなり、胃十二指腸潰瘍、大腸憩室から出血したりします。
何らかの理由でワーファリンを中止すると(ワーファリン中止後脳梗塞)、多発性脳梗塞の危険性大。椎骨動脈系(小脳・延髄外側)におこると、症状不明瞭で見逃される危険あります。

ワーファリンはビタミンK類似構造(クマリン誘導体)で、ビタミンKに拮抗し、肝臓の凝固因子[第II因子(プロトロンビン)、第VII因子、第IX因子、第X因子]合成を阻害。甲状腺機能亢進症では凝固因子の分解が亢進しており、ワーファリンが効き過ぎる可能性あり。金地病院の報告では、ワーファリン初期量は1-1.5mgが適切であるとされます。(第54回 日本甲状腺学会 P057 バセドウ病患者での甲状腺機能亢進時における心房細動に対するワーファリン初期投与量についての検討)

長崎甲状腺クリニック(大阪)の経験では、2mgでスタートするのが最適です。

PIVKA-ⅡはビタミンK欠乏時、肝細胞で作られる異常プロトロンビンで、ワーファリン効果の指標よりも肝臓がんの腫瘍マーカーとして使われます。

  • ワーファリンの作用を増強するもの
  1. 甲状腺ホルモン
  2. 糖尿病薬SU剤
  3. コレステロール降下剤ロスバスタチン
  4. 痛風治療薬アロプリノール
  5. 胃酸抑えるオメプラゾール

などです。


第Xa因子阻害剤リバーロキサバン(イグザレルト®)・アピキサバン(エリキュース®)

第Xa因子阻害剤リバーロキサバン(イグザレルト®)・アピキサバン(エリキュース®)は「非弁膜症性心房細動における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」に適応があり、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の心房細動で使用できます。AT-3と結合し、第Xa因子(肝臓で合成され、プロトロンビンからトロンビンへの変換を促進)の活性を阻害するためプロトロンビン時間(PT-INR)に影響しません。

高度腎不全(eGFR15mL/min未満)では投与できませんが、eGFR30mL/minでも投与可能な点、ダビガトラン(プラザキサ®)より優れています。

ダビガトラン(プラザキサ®)

トロンビン直接阻害薬ですが、eGFR30mL/min以下の腎不全で投与できません。

一般的に、非弁膜症性心房細動(Af)の抗凝固療法は、リバーロキサバン(イグザレルト®)・アピキサバン(エリキュース®)・ダビガトラン(プラザキサ®)など非ワーファリン性抗凝固薬(NOAC)に変わりつつあります。効果はワーファリンと同じで、効き過ぎによる脳出血がおこり難いからです。甲状腺機能亢進症/バセドウ病による心房細動(Af)でどうかは、未知です。

降圧薬

降圧薬の中で、心房細動(Af)の予防にはARB/ACE阻害薬が推奨されます。ARB/ACE阻害薬は狭心症・頻脈以外、全ての高血圧に推奨されます。

利尿薬

vanishing tumor

心房細動(Af)では、ごく軽度のものも含め慢性心不全状態にあると言えます。慢性心不全が悪化すると肺に腫瘍のような水たまり(vanishing tumor)が生じ、肺癌・甲状腺癌の肺転移のように見えます。利尿薬に反応して消失します。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の心房粗動(atrial flutter; AF)

心房粗動(atrial flutter; AF)

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の不整脈は心房細動(Af)でなく、心房粗動(atrial flutter; AF)のことがあります。心房粗動は、「のこぎり状」の規則的な心房の振れ(粗動波・F波)が250~350回/分で出現し、2:1や4:1の割合で心室へ伝えられます。1:1で全て伝導されると、Adams-Stokes発作⇒心原性ショックになります。直ちにジゴキシンあるいはベラパミル(ワソラン®)投与、電気的除細動後、カテーテル手術になります。下記のアミオダロンは再発予防効果がありますが、甲状腺を含む副作用が多くて、甲状腺の病気がある方には危険過ぎます。

院長の執筆

  • ワンポイントアドバイス:見逃されやすい甲状腺疾患2 心血管系の異常---甲状腺機能亢進症編、見逃されやすい甲状腺疾患3 心血管系の異常---甲状腺機能低下症編 (文光堂 メディカルプラクティス)

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WPW症候群

心房細動(Af)合併

心房細動(Af)合併WPW症候群

WPW症候群は、本来存在しない心房-心室直結の副伝導路(Kent束)を持つ先天異常で、心電図上の特徴的なδ波で容易に診断できます。

WPW症候群は、300人に1人認められ無症状な事が多いですが、半数が頻脈性不整脈おこし突然死の危険があります。甲状腺機能亢進症/バセドウ病無痛性甲状腺炎にも同割合で存在すると考えられ、心房細動(Af)おこすとKent束から直接心室へ伝わり(偽性心室頻拍)、致死的な心室細動(VF)へ移行する危険があります。すぐにプロカインアミド投与か、直流電気的除細動を行う必要あります。(第55回 日本甲状腺学会 P1-08-07 心室細動にて搬入された無痛性甲状腺炎を併発したWolff-Parkinson-White 症候群の一例)

ベータブロッカー(甲状腺ホルモン値が高いと使いたくなるのですが禁)、Ca拮抗薬、ジギタリスは正常な房室伝導を抑制し、逆に心室細動おこしやすくするため禁。
Kent束が隠れた心房細動/心房粗動に、それらの薬を使うと偽性心室頻拍になります。

甲状腺ホルモン値を早急に正常化させる必要がありますので、ヨウ化カリウム(KI)、副腎皮質ステロイド投与が必要(少なくともカテーテルアブレーションでKent束を切断、心電図のδ 波の消失が確認されるまで)

房室回帰性リエントリー

房室回帰性リエントリーは、副伝導路を逆行するリエントリーによる頻拍です。P波はQRSの後ろにあります。発作時は、ATP(アデホスL コーワ注®)の急速静注やカルシウム拮抗薬ベラパミル(ワソラン®)の静脈注射が一般的です

WPW症候群 房室回帰性リエントリー
WPW症候群 房室リエントリー

発作性上室頻拍(PSVT)

甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能亢進症に伴う拡張型心筋症では発作性上室頻拍(PSVT)がおこることがあります。心拍数が1分間に160~220回になる頻脈性・致死性不整脈で、

  1. 心臓が空打ちし心不全[脳虚血のため失神・めまい(メニエールの「回る感じで」なく、「引きずり込まれる」「目の前が暗くなる・白くなる」症状)]
  2. 心筋に過剰な電気信号を送り続け狭心症誘発する

危険な不整脈です。発作時は

  1. ATP静注、Ca拮抗薬静注(拡張型心筋症のように心機能低下があると使い難い)を第一
  2. 血圧が80以下に低下・心不全・狭心症の場合、電気的除細動・高頻度ペーシングを行います。

甲状腺機能正常化した後も心室性期外収縮

甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能正常化した後も心室性期外収縮おこる場合

  1. 症状のみ強い場合:Ib群抗不整脈薬メキシレチン(心抑制なし、糖尿病性感覚神経障害にも有効)
  2. 運動/感情で症状増悪:Ⅱ群ベータブロッカー
  3. 心筋梗塞/心不全がある場合:心室性期外収縮は心室頻拍/心室細動の引き金になるので、
    ①心機能保たれている場合、心不全の予後を改善、狭心症薬で唯一、狭心症発作予防と心筋梗塞発症抑制があるⅡ群ベータブロッカー
    ②心機能低下ている場合、心収縮抑制なく不整脈を強力に抑えるⅢ群アミオダロン(あまりの甲状腺機能障害のため甲状腺専門医としては使って欲しくない)

二次性QT延長症候群

QT延長症候群は、心電図上 QT間隔延長し、トルサード・ド・ポアンツ型の心室頻拍⇒心室細動⇒突然死にいたる重篤不整脈。

  1. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病低カリウム血症甲状腺機能低下症低体温
  2. 副甲状腺機能低下症による低カルシウム血症、低Mg血症
  3. 副腎皮質機能低下症の70%
  4. 心筋障害:心筋梗塞、心筋虚血、心筋炎、僧帽弁逸脱症
  5. 徐脈性不整脈:房室ブロック,洞不全症候群
  6. Ⅰ群薬:プロカインアミド、ジソピラミド、Ⅲ群薬:アミオダロン、ソタロール、ニフェカラント、Ⅳ群薬(Ca拮抗薬):ペプリジル(Ca・Na・Kマルチチャンネルブロッカー)
  7. くも膜下出血、頭部外傷、脳血管障害、脳手術後

遺伝子異常による先天性QT延長症候群;植え込み型除細動器の適応

特に危険な致死性心室頻拍

  1. 多形性心室頻拍
  2. 器質的心疾患(甲状腺心臓(サイロイドハート))にともなう持続性単形性心室頻拍
  3. R-R間隔の短い非持続性心室頻拍

は心室細動⇒心停止に移行し危険です。

徐脈性不整脈

甲状腺機能低下症による徐脈

甲状腺ホルモンは心臓を刺激し、心拍出量(心臓が血液を押し出す力)、心拍数(心臓が1分間に打つ回数)を高めます。甲状腺機能低下症では、それらの作用が低下し徐脈(遅い脈)になります。

甲状腺機能低下症による徐脈で心筋梗塞様症状

筆者も時々遭遇しますが、甲状腺機能低下症による徐脈を胸部圧迫感と感じることがあります。その際、、甲状腺機能低下症による筋酵素CK(CPK)の上昇があると、急性冠症候群(心筋梗塞・不安定狭心症)との鑑別が問題になります。もちろん、心電図で急性冠症候群(心筋梗塞・不安定狭心症)の変化なく、筋酵素CK(CPK)も心筋由来のCK-MBではありません。[例え、骨格筋由来のCK(CPK)上昇でも、連鎖的にCK-MBの割合も正常範囲をやや超えるため、長崎甲状腺クリニック(大阪)はは心筋トロポニンT or 心筋トロポニンIを測定するようにしています。]

(第56回 日本甲状腺学会 1-076 胸部圧迫感とCK 上昇を機に診断された橋本病の1 例)

甲状腺ホルモンを正常に戻しても徐脈

甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症を正常ホルモンレベルに戻しても

  1. 洞不全症候群:失神の既往があり①脈拍30台 ②QT時間0.5秒以上(心室頻拍へ移行の危険)
  2. 完全房室ブロック
  3. 徐脈頻脈症候群:洞不全症候群に頻脈性不整脈[発作性心房細動(Af)、心房粗動(AF)、心房頻拍(PAT)、発作性上室性頻拍(PSVT)]が合併したもので、抗不整脈薬を投与すると徐脈が重篤化

が改善しないと恒久的ペースメーカー適応。

甲状腺未分化癌で高度徐脈・高度房室ブロック

甲状腺未分化癌が縦隔浸潤あるいは転移し、心臓にまで転移すると、高度徐脈・高度房室ブロックおこし、癌死の原因になります。(第58回 日本甲状腺学会 P1-6-1 高度房室ブロックを呈した甲状腺未分化癌心臓転移の1例)

本当は怖い右脚ブロック:たまたま甲状腺と併発

右脚ブロックは、健康人の1%、60代以上の5%でみつかる心電図異常です。多くは問題なく、日常生活に影響ありません。しかし、

  • 右脚ブロックにST上昇とくれば,突然死の可能性が高いBrugada症候群。
  • 先天性心臓病・甲状腺疾患でおこる心筋障害(心筋梗塞/心筋症)、肺性心によることあります。

J波症候群

J波症候群

J波症候群は、早期再分極による心室細動・心停止に至る危険な状態です。心電図では徐脈、J波(Osborn波)が特徴です。原因は、

  1. 低体温症甲状腺機能低下症粘液水腫性昏睡以外、内分泌疾患(下垂体機能低下症副腎皮質機能低下症)、低血糖、低栄養などでおこります。
  2. Brugada症候群
  3. 甲状腺中毒症の交感神経刺激(第58回 日本甲状腺学会 P2-7-6 破壊性甲状腺炎による甲状腺中毒症とJ波症候群を伴った心肺停止の1例)
  4. 交感神経破壊を伴う頸部根治手術後(頚部に広範囲に浸潤した甲状腺癌の手術)

不整脈治療薬 アミオダロン(アンカロン®)が引きおこす甲状腺機能異常

アミオダロン(アンカロン®)と副作用

アミオダロン(アンカロン®:Ⅲ群カリウムチャンネル遮断薬)

アミオダロン(アンカロン®:Ⅲ群カリウムチャンネル遮断薬)は心収縮抑制なく不整脈を強力に抑え、心室細動など重篤不整脈のICD埋め込み後や、低心機能の心房細動などに使われます。

元々、

  1. 間質性肺炎・びまん性肺胞障害 (DAD)・肺線維症(間質性肺炎の線維化が強いもの)
  2. ミトコンドリア毒性による非アルコール性脂肪肝炎
  3. QT延長症(多形性心室頻拍)

など副作用が多く、様々な甲状腺機能障害を引きおこす厄介な薬です(甲状腺専門医としては使って欲しくない)。

アミオダロン(アンカロン®)が引きおこす甲状腺機能異常

アミオダロン(アンカロン®)は肝臓・脂肪組織・甲状腺に蓄積され長く留まるため、一度副作用がおこると、なかなか終息しません(1年間は血中アミオダロン濃度を測定しながらステロイド投与)。田尻クリニックの報告では、4年でも終息しない大きな多結節性甲状腺腫があります。

  1. 1錠100 mg中に37 mgと多量のヨードを含有し、ヨード摂取量の多い日本人にヨード過剰摂取をおこさせます
  2. サイロキシン(T4)からトリヨードサイロニン(T3)への変換を阻害します

それにより、

  1. 最も多いのが、アミオダロン関連甲状腺機能低下症です。これは、単に甲状腺ホルモンを補充すれば解決しますので、さほど問題はありません。
  2. アミオダロン誘発性甲状腺中毒症(amiodarone-induced thyrotoxicosis; AIT)は、約10%におこり、I型II型があります。
    I型バセドウ病型で日本人には少なく
    Ⅱ型破壊型無痛性甲状腺炎)で日本人に多くヨードの過剰摂取の関連が原因とされ、血中IL-6(インターロイキン6)が上昇するとされる報告が約半数ありますます。
    発症するとアミオダロンを投与する原因になった不整脈が悪化。
アミオダロン誘導性甲状腺中毒症Ⅱ型

アミオダロン誘導性甲状腺中毒症Ⅱ型破壊型(無痛性甲状腺炎)で日本人に多く、ヨードの過剰摂取の関連が原因とされます。

  1. 順天堂大学の報告では、アミオダロン誘導性甲状腺中毒症Ⅱ型は、アミオダロン投与患者(224例中)5.8%に起こったそうです。(第56回 日本甲状腺学会 P2-071 アミオダロン誘導性甲状腺機能亢進症2 型の特徴に関する検討)
  2. アミオダロン誘導性甲状腺中毒症Ⅱ型が起こるまでのアミオダロン(アンカロン®)投与期間は、どの報告でも大体2-3年です。

アミオダロン誘導性甲状腺中毒症Ⅱ型の治療は

  1. ステロイド(プレドニゾロン;PSL)を高容量(外来で使用できる限界値は20mgですが、初期量30mgが一般的で入院して行う必要あり)
  2. プレドニゾロン初期投与量には良好な反応を示します
  3. アミオダロン中止後も長期間服用せねばならず(甲状腺のアミオダロンが消えるのに長期間必要)、ステロイド減量中に50%が再燃します(特に糖尿病の方で再燃しやすいと言われます)。(第54回 日本甲状腺学会 P013 アミオダロン誘導性甲状腺機能亢進2型の特徴に関する検討(第2報))
  4. アミオダロン(アンカロン®)中止すれば、ステロイド(プレドニゾロン)投与期間は、どの報告でも大体6カ月前後です。
ステロイド(プレドニゾロン)減量の指標

鳥取大学の報告では、単純CTが、肝臓・甲状腺のアミオダロン蓄積量を反映し、高濃度(high intensity)に描出され、ステロイド減量の指標になるとされます。(第56回 日本甲状腺学会 P2-072 甲状腺中毒症の寛解予測に単純CT の前後比較が有用であったアミオダロン誘発性甲状腺中毒症II 型の一例)

アミオダロン(アンカロン®)中止できるのか?

アミオダロン(アンカロン®)中止したとしても、数年間アミオダロン誘発性甲状腺中毒症Ⅱ型(破壊型)は、延々と終息しないのですから、他剤へ変更していただく他、手はありません。

かと言って、アミオダロン(アンカロン®)の代用品が少ないのも事実です。実際他剤へ変更した症例も報告されています。(第55回 日本甲状腺学会 P1-08-02 アミオダロン内服中に甲状腺中毒症を発症し診断に苦慮した一例)

アミオダロン誘発性甲状腺中毒症Ⅱ型で甲状腺クリーゼ

アミオダロン誘発性甲状腺中毒症Ⅱ型甲状腺クリーゼ起こした症例も報告されています。拡張型心筋症、僧帽弁閉鎖不全症に、心房細動と心室頻拍(short run)を認めたためアミオダロン投与、状態悪化のため左室形成術(バチスタ手術+乳頭筋間縫縮術)、僧帽弁輪形成術、三尖弁輪形成術、メイズ手術、左房縫縮術の大手術を施行。術直後より甲状腺クリーゼ起こしたとの事です。アミオダロン服用中で、心臓血管外科手術になる場合、術直後の甲状腺クリーゼも注意しなければなりません。(第56回 日本甲状腺学会P2-015 心臓手術後に甲状腺クリーゼを発症したアミオダロン誘発性甲状腺中毒症2 型の一例)

循環器救急

甲状腺機能低下症動脈硬化と長崎甲状腺クリニック(大阪)が得意とする病気のほとんどは心筋梗塞の危険因子です。心筋梗塞で心筋壊死を最小限に抑えれるのは発症後6時間以内です。直ちに大阪府立急性期総合医療センター 心臓血管センター他提携先の専門施設へ救急受診していただきます。

 

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)

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