甲状腺とアレルギー性鼻炎・花粉症・アトピー性皮膚炎・好酸球増多症 [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) をクリックください
長崎甲状腺クリニック(大阪) ゆるキャラ 甲Joう君
(動脈硬化した血管に甲状腺が! バセドウ病の甲状腺がモデル)
本ページで扱うアレルギーはI型(即時型)アレルギーで、花粉症・アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギーはI型(即時型)アレルギーです。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。アレルギー自体の診療を行っておりません。
Summary
アレルギー性鼻咽頭炎、アレルギー性結膜炎(花粉症)と甲状腺機能亢進症/バセドウ病はTh2細胞による共通免疫で、アレルギーがバセドウ病の発症・再発を誘発。シックハウス(ホルマリンアレルギー)・ゴキブリ/蛾/ユスリカアレルギー、口腔アレルギー(パウダーフルーツ・ラテックスフルーツ症候群)も同様。アレルギー性結膜炎に甲状腺眼症(バセドウ病眼症)合併していると見逃される。甲状腺機能亢進症と副腎皮質機能低下症の合併、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)に対するアレルギー反応で好酸球増加。甲状腺未分化癌に好酸球増加症を伴うと予後不良。
Keywords
甲状腺,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,好酸球,花粉症,バセドウ病,再発,甲状腺機能亢進症,アレルギー,シックハウス
- 花粉症と甲状腺機能亢進症/バセドウ病発症・再発
- シックハウス(ホルマリンアレルギー)・ゴキブリ/蛾/ユスリカ アレルギーでも甲状腺機能亢進症/バセドウ病悪化
- 加湿器をガンガン炊いて黒カビ、クラドスポリウムが繁殖
- 口腔アレルギー症候群(パウダーフルーツ症候群・ラテックスフルーツ症候群)
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と好酸球増加症
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病を悪化させる可能性のある好酸球性副鼻腔炎
- 自己免疫性甲状腺疾患由来血管浮腫
- 好酸球性血管性浮腫
- アレルギーで眼がかゆい、アレルギー性結膜炎、春季カタル
- スギ花粉は実は年中飛んでいる
- 甲状腺未分化癌に好酸球増加症をともなう場合
以下、抗アレルギー薬、アレルギー治療と甲状腺

スギ、ヒノキの花粉によるアレルギー性鼻咽頭炎、アレルギー性結膜炎(花粉症)の時期は甲状腺機能亢進症/バセドウ病の発症・再発が多くなります。アレルギー反応と甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、Th2細胞[抗体を介する免疫をおこなう2型ヘルパーT細胞]による共通の免疫反応のためと考えられます。
すなわち、アレルギーが甲状腺機能亢進症/バセドウ病の発症・再発を誘発するのです。(Thyroid. 1996 Aug;6(4):349-51.)(J Clin Endocrinol Metab. 1993 Dec;77(6):1667-70.)
同時に3-4月は人事異動、就職、新学年、新入学、転居など、過剰なストレスにより甲状腺機能亢進症/バセドウ病の活動性が高くなる時期でもあります(甲状腺機能亢進症/バセドウ病と精神的ストレス )。
以上より、3-4月に花粉症・ストレスで発症・再発した甲状腺機能亢進症/バセドウ病が、6月にピークとなり、暑くなる7-8月以降に、たまりかねて医療機関を受診するパターンが多くなります(甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症 )。
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、何らかのアレルギー素因(アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息など)のある方には、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の活動性を低下させるため、抗アレルギー剤を処方します。
アレルゲン(アレルギーの原因物質)を調べるアレルゲン検査は長崎甲状腺クリニック(大阪)では行っておりません。専門のアレルギー科、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科で調べてもらって下さい。アレルゲン除去すると、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の活動性が低下すると考えられます。[Med Clin North Am. 2012 May;96(3):635-54, xi.]
夏-秋の花粉症にも要注意
花粉症は春先だけではありません。夏-秋にはイネ科の花粉、秋はブタクサやヨモギなどキク科の花粉による花粉症があります。風邪でもないのに、眼や喉のかゆみ・違和感、鼻みず・鼻づまり、くしゃみなどの症状があれば花粉症を疑うべきです。夏-秋の花粉症をキチンと治療しないと、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が再発するかもしれません。
新築のマンション・家は、壁紙に低濃度ホルマリン(ホルムアルデヒド)を使用しています。ホルマリン自体の刺激とアレルギー性炎症のダブルパンチで眼・のどが痛くなります。ホルマリン(ホルムアルデヒド)除去対策と同時にアレルギー治療しないと甲状腺機能亢進症/バセドウ病が発症・再発する可能性があります。
知らぬ間にゴキブリアレルギーになる人は多くいます。ゴキブリを一匹見かけたら10倍以上は隠れています。ゴキブリ駆除と同時にアレルギー治療しないと甲状腺機能亢進症/バセドウ病が発症・再発する可能性があります。
また、蛾はモスラの形だけでなく、小さい羽蟻(あり)のような成虫・衣類/カーテンに穴をあける幼虫も含まれ、そのフンなどが室内アレルギーの原因になります。ユスリカは蚊(か)に似ていますが、吸血しません。しかし、電球に群がりその死骸が室内アレルギーの原因になります。
ホルマリン(ホルムアルデヒド)・ゴキブリ/蛾/ユスリカ アレルギーはアレルゲン(アレルギーの原因物質)検査で分かる場合があります(ただ感度が100%では無いため、偽陰性になる場合もあり)。
院長の論文
Significance of thyroid blood flow as a predictor of methimazole sensitivity in untreated hyperthyroid patients with Graves' disease.(Biomedicine & Pharmacotherapy)
バセドウ病患者では、アレルギーの抗体(IgE)が高く、甲状腺へ流入する下甲状腺動脈の血流(ITA-PSV)とIgEが相関する事を報告。
黒カビ、正式名クラドスポリウムは湿気の多い室内で繁殖する代表的なカビのひとつです。浴室、洗面室に限らず、湿度70%以上になるまで加湿器をガンガン炊いている通気性の悪い部屋(マンションの一室など)に黒カビは生えます。カビアレルギーのある甲状腺機能亢進症/バセドウ病患者、バセドウ病でなくてもカビアレルギーのあるアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息患者には地獄の環境になってしまいます。いわゆるカビ臭い部屋・家なら疑い濃厚ですが、住んでいる当人は臭いに気付き難いものです。友人など第三者にカビ臭いかどうか確認してもらうのが良いでしょう。
クラドスポリウムアレルギーがあるか否かは、一般内科でもアレルギーの血液検査(RAST)で簡単に分かります。
[J Allergy Clin Immunol. 2015 Jan;135(1):110-22.][Clin Exp Allergy. 2015 Jan;45(1):154-63.]
また、こまめな洗浄を怠った加湿器が原因でレジオネラ肺炎が発症する危険もあります。
シラカンバ花粉症の約50%が、果物を食べると唇・口の中・のどがかゆくなっり、腫れる口腔アレルギー症候群(パウダーフルーツ症候群・ラテックスフルーツ症候群)をおこします。
口腔アレルギー症候群(パウダーフルーツ症候群・ラテックスフルーツ症候群)の原因食物は、バラ科の果実(リンゴ、ナシ、モモ、サクランボ)、プラム、メロン、スイカ、アンズ、バナナ、キウイ、ビワ、アボガド、マンゴの果物、クリ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、クルミ、ピーナッツなどナッツ類、セロリー、ナス、ニンジン、ジャガイモ、キュウリ、トマトなど野菜のこともあります。
大人の食物アレルギーの半数は果物・野菜で、口腔アレルギー症候群(パウダーフルーツ症候群・ラテックスフルーツ症候群)に至る場合が多いです。2番目に多い小麦は食物依存性運動誘発アナフィラキシーをおこす場合があります。3番目に多いエビやカニなどの甲殻類は口腔アレルギー、食物依存性運動誘発アナフィラキシーいずれの場合もあります。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、これら口腔アレルギー症候群(パウダーフルーツ症候群・ラテックスフルーツ症候群)が原因で活動性が上がるため、注意が必要です。これら果物・野菜の多くは加熱処理により、蛋白の3次構造が変わり、抗原性を失い安全になりますが、クリ(栗)の抗原性は失われません。
即時型食物アレルギー(1型食物アレルギー)の検査は、
- 抗原特異的IgE 検査;採血で簡単に測定できる。血液中の食物アレルゲン特異的IgE 抗体を検出。偽陰性が多く、陰性であっても1型アレルギーを否定できないのが難点。
- ヒスタミン遊離試験;抗原特異的IgE 検査の普及で廃れてしまい、現在は行えない。全血から好塩基球を分離→食物アレルゲンを添加→遊離したヒスタミンを測定。
- プリックテス;アレルゲン液を皮膚に滴下→針を斜めに刺して少し持ち上げる(出血させない)→15 分待ち、発赤・膨疹など皮膚アレルギー反応が出るか確認。アナフィラキシーショックがおきる可能性もあるため、救急対応可能な状況で行うのが好ましい。
- 食物経口負荷試験;かなりの危険を伴い、アナフィラキシーショックがおこるのを前提とし救急対応可能な状況で行う。症状が出ていない時に、原因食物を少量から食べさせて症状の発現を見る。症状が出た時点で中止。
パッチテスはIV型(遅延型)アレルギーの検査で、金属アレルギーや薬物アレルギー[甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)の薬剤性肝障害(アレルギー性肝障害)]が該当する。48 時間後に判定。
好酸球数1500/μL以上の状態が長期継続すると、
- 中枢神経障害(J Neurol Sci. 2014 Dec 15;347(1-2):281-7.)
- 心房内血栓、多発性脳塞栓、多臓器障害(J Clin Diagn Res. 2013 Oct;7(10):2316-8.)
を起こす危険性があります。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病と好酸球増加症
- 甲状腺機能亢進症に副腎皮質機能低下症を合併し好酸球(アレルギー白血球)増加[APS(多腺性自己免疫症候群)2型]。
- 抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)に対するアレルギー反応で好酸球が増加。
薬剤誘発性過敏症(薬剤性過敏症症候群)をおこすこともあります。 - A群溶連菌感染症でも好酸球増加をおこします:甲状腺機能亢進症/バセドウ病再発の原因でもあります。
- その他大抵の自己免疫疾患・感染症・悪性腫瘍の合併
薬剤誘発性過敏症(薬剤性過敏症症候群)
薬剤誘発性過敏症 を御覧ください。
薬剤熱
薬剤熱 を御覧ください。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、経口の抗アレルギー薬と重複が無く、安全性と有効性が高いクロモグリク酸ナトリウム点眼液を処方しています。また、長崎甲状腺クリニック(大阪)の近くの院外薬局では、ソフトコンタクトレンズ用の添加物の入っていないクロモグリク酸ナトリウム点眼液も処方してくれます。
共通免疫であるアレルギー性結膜炎とバセドウ病は合併している率が高いのですが、よく眼科で甲状腺眼症(バセドウ病眼症)による瞼(まぶた)の腫れや結膜炎をアレルギー性結膜炎と勘違いして延々と抗アレルギー点眼薬のみを処方しているケースがあります[Allergy Asthma Proc. 2005 Nov-Dec;26(6):440-4.]。
眼科では、せいぜい網膜までしか調べませんが、甲状腺眼症(バセドウ病眼症)は眼の奥の眼筋(眼を動かす筋肉)や脂肪組織の炎症なので、MRIを撮らねば分かりません。
春性角結膜炎(春季カタル)
春性角結膜炎(春季カタル)の症状は、
- 激しい痒み
- 角膜に炎症がおよぶと異物感、眼痛、羞明(光がまぶしい)、角膜が濁る(角膜混濁)と視力低下
春性角結膜炎(春季カタル)患児の家族の28%に橋本病(慢性甲状腺炎)、14%にI型糖尿病、14%に乾癬が認められました。また、患児の35%が抗核抗体(ANA)陽性でした[Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2013 May;17(10):1419-23.]。
春性角結膜炎(春季カタル)は、バセドウ病の主体であるTh2細胞に類似したCD4+ T細胞の結膜への集積が見られます[J Immunol. 1991 Feb 15;146(4):1169-74.]。
甲状腺未分化癌に好酸球増加症をともなう場合、骨髄内で好酸球の産生を促す顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte/Macrophage-Colony Stimulating Factor:GM-CSF)により、甲状腺未分化癌細胞増殖も活発であると考えられています。
ステロイド抵抗性の好酸球増加症は、抗癌剤に対するアレルギー反応により生じた可能性が高く、抗癌剤の変更も考慮すべきかもしれません。
[Intern Med. 2015;54(6):611-6.](第58回 日本甲状腺学会 P2-6-3 亜急性甲状腺炎様の臨床徴候を呈した好酸球増加症を伴う甲状腺未分化癌の一例)
異所性甲状腺に甲状腺未分化癌が発生した報告では、抗癌剤を使用していないのに好酸球増加症を認めています[BMJ Case Rep. 2010 Aug 31;2010:2823.]。
現在までに報告されている甲状腺未分化癌に好酸球増加症をともなう症例は、初診時から3-5カ月で死亡しており、甲状腺未分化癌の平均生存期間の6カ月より短いです。
好酸球増加症を伴う甲状腺硬化性粘膜表皮癌(sclerosing mucoepidermoid carcinoma)または甲状腺粘表皮癌は、悪性度の低い甲状腺癌で非常に稀です。甲状腺未分化癌との合併した報告例では、術後の1年3ヶ月しても合併症、局所再発、転移は認められなかったそうです[Medicine (Baltimore). 2020 Oct 16;99(42):e22783.]。ただ、好酸球増加症を伴う理由については不明で、甲状腺粘表皮癌で好酸球が増加した報告はありますが、常にそうなる訳ではありません。
甲状腺未分化癌だけでなく、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が高値で、好中球増加症および好酸球増加症を認めた甲状腺乳頭癌の報告もあります[Hormones (Athens). 2006 Oct-Dec;5(4):303-9.]。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。