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甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など)  糖尿病編 をクリックください。 

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。熱中症自体の診療を行っておりません

Summary

甲状腺機能亢進症/バセドウ病は気温上昇する夏に、急激に悪化し熱中症に。過剰な甲状腺ホルモンが糖・脂肪・筋肉を燃焼し熱を発生、汗をかいた分、水分を補充しないと、熱が体にこもり体温が異常上昇。元々、甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、低カリウム血症になりやすく、汗にカリウムが過剰に失われれば筋の脱力、横紋筋融解症や致死性不整脈の危険。補給する水分はカリウムを含んだミネラルウォーター、茶、スポーツ飲料水。元々、甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、凝固活性が亢進、深部静脈血栓・脳横静脈洞血栓の危険あり、脱水状態が加わると血液が粘稠になり危険が増す。

Keywords

甲状腺機能亢進症,バセドウ病,熱中症,甲状腺ホルモン,低カリウム血症,汗,血栓,脱水,水分補給,甲状腺

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人は他人事でない熱中症

熱中症は、暑いところで過剰な汗をかき、体内の水分・塩分およびミネラル分が失われ、体温が上がり過ぎると起こります。

  1. 初め(I度熱中症)は、めまい(フワフワした感じ)や立ち眩み、生あくびが出る
  2. 次第(II度熱中症)に頭痛・吐き気がおこり、頭がボーとして集中力や判断力の低下
  3. ひどくなる(III度熱中症)と意識がもうろうとして、けいれん発作などがおき、最悪、命にかかわります

毎年、夏になると「熱中症で何人死亡した」というNEWSをよく目にします。

以下に通り、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人は熱中症を起こし易く、重症化して命に係わる事を肝に銘じねばなりません。[Int J Clin Pract Suppl. 2005 Apr;(147):31-3.]

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人は他人事ではない熱中症

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で熱中症がおこりやすい

甲Joう君 アレルギーでバセドウ病が悪化

アレルギーで甲状腺機能亢進症/バセドウ病が発症・悪化・再発

甲Joう君 甲状腺機能亢進症/バセドウ病で熱中症に

甲状腺機能亢進症/バセドウ病熱中症

梅雨明けからお盆までの間は、熱中症が最も好発する時期とされます。甲状腺機能亢進症/バセドウ病が最も発症/再発しやすいのは、花粉症・人事異動が重なる3-4月です。(花粉症と甲状腺機能亢進症/バセドウ病発症・再発 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と精神的ストレス 参照)

そして、気温が上昇する夏に、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の症状は急激に悪化し、同時に熱中症をおこす危険も増します。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で甲状腺ホルモンが正常化していない方は、熱中症になる危険性が高いです。甲状腺ホルモンが過剰な状態では、体の糖や脂肪(筋肉までも)がドンドン燃焼され過剰な熱を発生します。

人間の体は、汗をかく事により体内の過剰な熱を捨て、体温の異常上昇を防ぐ機能があります。しかし、汗をかいた分、水分を補充しなければ、汗が出なくなり(脱水)、熱が体にこもり体温が異常上昇、臓器障害がおこります(熱中症)。

甲状腺ホルモンが高い状態の方は、普通の人より多くの水分を摂取しなければ、たちまち熱中症になってしまいます。

抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール/チウラジール)で、甲状腺機能を正常にコントロールできている方は、普通の人と同じ条件です(甲状腺関係ない人でも熱中症でバタバタ倒れていますが・・)。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で甲状腺ホルモンが正常化していない方は、熱中症や脱水の予防のため、

  1. 身体を冷やす(炎天下に長時間いない、冷房下にいる)
  2. ミネラルを含んだ水分を補給する(ミネラルウォーター、茶、スポーツ飲料水、OS-1)

必要が、普通の人より多くあります。

頭痛と全身倦怠感は熱中症の危険信号

頭部全体が締め付けられるような頭痛と全身倦怠感を自覚してきたら、熱中症の危険信号かもしれません。

  1. すぐに風通しのよい日陰、できればクーラーが効いている室内に避難
  2. 衣服を脱ぐ(ただし、公然わいせつと間違えられないよう注意)
  3. 冷えた飲料水(ミネラルウォーター、茶、スポーツ飲料水、OS-1)を飲む

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で熱中症と同時に低カリウム血症

元々、甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、低カリウム血症になりやすく、筋の脱力や低カリウム性不整脈を起こします。それに加え、汗にカリウムが失われれば、さらに低カリウム血症が進み、横紋筋融解症や致死性不整脈などの重篤な状態に陥る危険があります。(甲状腺の低カリウム血症

故に補給する水分はカリウムなどのミネラルを含んだミネラルウォーター、茶、スポーツ飲料水、OS-1でなければなりません。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で熱中症と同時に血栓形成

元々、甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、凝固活性が亢進し、深部静脈血栓・脳横静脈洞血栓の危険があります(甲状腺と血栓症-深部静脈血栓)。更に、脱水状態が加わると血液が粘稠になり、血栓形成の危険が増します。

最悪の事態、甲状腺機能亢進症/バセドウ病で熱中症になり甲状腺クリーゼ

最悪の事態、甲状腺機能亢進症/バセドウ病で熱中症になり甲状腺クリーゼ

想定される最悪の事態として、甲状腺機能亢進症/バセドウ病熱中症になり、致死率10%以上の甲状腺クリーゼ命の危険:甲状腺クリーゼ)に進展します。

甲状腺クリーゼの診断基準に照らすと、甲状腺ホルモン過剰に加え

  1. 中枢神経症状/意識障害;意識がもうろうとする、言動がおかしい(これは他人が気付く)
  2. 38℃以上の発熱
  3. 頻脈(脈が1分間130以上)[心房頻脈(PAT)でも、心房細動(Af)でも問わない];脱水と甲状腺ホルモンの心臓刺激作用による
  4. さらに進行して心不全
  5. 嘔気・嘔吐、黄疸(血中総ビリルビン>3mg/dl)

の項目で

  1. 中枢神経症状と、1つ以上を満たす
  2. 中枢神経症状は認めないが、それ以外の3つを満たす

を満たせば、いとも簡単に甲状腺クリーゼ確定診断になります。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人の正しい水分の補給方法

甲状腺機能亢進症/バセドウ病では本人が気付かない内に隠れ脱水になっています。隠れ脱水から熱中症に移行しないために、普通の人よりも水分の補給に気を付けねばなりません。

簡単な隠れ脱水のチェック法;手の甲の皮膚を摘まみ上げてすぐに放します。摘まんだ跡が消えるのに3秒以上掛かれば、隠れ脱水の可能性があります。自分だけでなく、様子がおかしい他の人もチェックできます。

簡単な隠れ脱水のチェック法

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人の正しい水分の補給方法

  1. こまめな水分補給が必要です。一度に大量に飲んでも、一気に汗に出るため、効果は少ないです。
  2. こまめな水分補給は大切な事ですが、それだけでは不十分です。少ない量10-50ml程を10回飲んでも、1000mlにも届きません。一日合計で2-3L以上の飲水が必要です。
     
  3. 汗に出たミネラルの補給も兼ねて、ミネラルを含む、茶(茶葉からミネラルが出てくる)、ミネラルウォーター、イオン飲料、スポーツ飲料、OS-1を飲む。大阪・関西地区の水道水、白湯(さゆ)は、琵琶湖の水を濾過しただけで、ミネラルを含まないのでダメ(浸透圧が低く、血管内に留まらない、それどころか血中のミネラル濃度を薄めて低下させ、低ナトリウム血症低カリウム血症を悪化させる)。
     
  4. 脱水では血液が粘稠になり、血栓形成の危険があるので、ビタミンC含有の茶、スポーツ飲料、OS-1が良い。
     
  5. 頭がボーとして、ふらふらする、だるいなど熱中症と思しき症状が出てら、直ちにOS-1を自販機で買う。(自販機があるとは限らないので、予め1本、携帯しておくのが一番です)
オーエスワン 塩分量

オーエスワン 塩分量

オーエスワン カリウム量

オーエスワン カリウム量

OS-1(オーエスワン);学童~成人~高齢者で500~1000mL/日(50-100kcal、炭水化物 12.5-25g、食塩相当量 1.46-2.92g(ナトリウム0.575-1.15g)、カリウム 390-780mg、ブドウ糖 9-18g)

それでも熱中症になってしまたら、

それでも熱中症になってしまたら、

  1. 風通しのよい日陰、できればクーラーが効いている室内に避難
     
  2. 衣服を脱がせる。ベルトやネクタイ、下着を緩め、熱を逃がす。 (ただし、相手が異性の場合、性犯罪と間違えられる可能性があるので注意)
     
  3. 緊急冷却にはあらゆる手段を併用し、外からも、内からも体を冷やす;微温湯(室温水)の噴射・扇風機による蒸泄法。5点クーリングできれば良し[首の付け根(前頚部、甲状腺の位置)、両脇(腋下)、足の付け根(鼠径部)]
     
  4. 40℃以上・意識を失う程(Ⅲ度)の熱中症は、医療機関の救急外来の仕事
    まず深部体温を再測定し
    ①積極的に体温を冷却[38℃(中心部体温39℃)までの緊急冷却が必須];微温湯(室温水)噴霧→扇風機による蒸泄法、冷却ブランケット、体腔冷却(胃、膀胱内への冷水注入)、体外循環(透析、人工心肺)、サーモガードシステム™。38℃まで下降したら冷却を中止し、自然に平温になるのを待つ。
    ②冷却した細胞外液補充液[乳酸リンゲル液(ラクテック®など)]大量投与、または生理食塩水500mLの急速輸液(1200~2400mL/時:20~40mL/kg/時)→排尿が起こり、かつ体温39度以下になれば維持液に。
      
    ※入院後も熱が①下がらない場合は、
    ①甲状腺ホルモンが正常化していない甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、代謝が異常亢進して平熱が37度台なので、熱が下がりにくい
    ②すでに甲状腺クリーゼに進展している。
    ③感染症を合併している
    などの可能性があります。

熱中症の予後

予後は高体温の持続時間に依存します(いかに緊急冷却するかが大事)。後遺症は中枢神経障害が多く、高次脳機能障害、脳症症状、四肢麻痺が残存する事があります。

甲状腺機能低下症/橋本病でも熱中症?

たとえ、甲状腺ホルモンが低下したままの甲状腺機能低下症/橋本病でも熱中症にならない訳ではありません。熱中症になりにくいかもしれませんが、悪条件がそろえばその限りではありません。[Int J Clin Pract Suppl. 2005 Apr;(147):31-3.][J Forensic Sci. 1998 Nov;43(6):1237-40.]

甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を服薬して甲状腺ホルモンが正常化している甲状腺機能低下症/橋本病患者での熱中症リスクは普通の人と同じです。

服薬している甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)が多すぎて、血中の甲状腺ホルモンが上がり過ぎた甲状腺機能低下症/橋本病患者人工的な甲状腺機能亢進症/バセドウ病状態です。よって、熱中症のリスクは甲状腺機能亢進症/バセドウ病患者と同じです(非常に危険)。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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