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甲状腺:専門の検査/治療/知見①      [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

ようこそ令和

長崎甲状腺クリニック(大阪)ゆるキャラ Jo君 動脈硬化した血管に甲状腺が!バセドウ病の甲状腺がモデル

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編   内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等   糖尿病編 をクリックください

(目次) 

長崎甲状腺クリニック(大阪)の代表的な甲状腺検査・治療

  1. バセドウ病再発・抗甲状腺薬の効き易さ予測
  2. エラストグラフィー(甲状腺癌を瞬時に診断)
  3. プレミアム超音波診断装置(超高解像度・甲状腺の微細血流他)
  4. グレースケール解析(甲状腺内部の新たな評価法)
  5. 甲状腺の腫れ具合の評価 首の腫瘤・しこり・腫れ、甲状腺と思っても実は
  6. 長崎甲状腺クリニック(大阪)でオリジナルの亜急性甲状腺炎の治療プロトコル     甲状腺の痛み
  7. 橋本病(慢性甲状腺炎)合併シェーグレン症候群(ドライアイ,口内乾燥)            甲状腺と膠原病
  8. 甲状腺と動脈硬化  甲状腺と高コレステロール血症  甲状腺と低HDLコレステロール血症/中性脂肪
  9. バセドウ病萎縮性甲状腺炎の特殊抗体
  10. 橋本病の抗体 橋本病(慢性甲状腺炎)破壊の程度の評価     橋本病から甲状腺癌が発生

橋本病とバセドウ病

  1. 橋本病バセドウ病は入れ替わる---元は同じ自己免疫性甲状腺疾患    人間ドックと甲状腺オプション
  2. 命の危険:甲状腺クリーゼ                               命の危険:粘液水腫性昏睡
  3. 命の危険:無顆粒球症  命の危険:劇症肝炎    バセドウ病の突然死
  4. 高齢者バセドウ病
  5. バセドウ病と腫瘍・癌 ,バセドウ病は良くなっても隠れていた病気が・・・
  6. 甲状腺の低カリウム血症 甲状腺低ナトリウム血症
  7. 甲状腺眼症:バセドウ病眼症橋本病眼症    バセドウ病眼症とは限らない眼の病気
  8. バセドウ病の抗体が陰性の甲状腺機能亢進症
  9. 潜在性甲状腺機能亢進症を治療すべきか?
  10. 難治性T3優位型バセドウ病    難治性バセドウ病、突然、甲状腺機能低下症に移行
  11. 潜在性甲状腺機能低下は治療すべきです

甲状腺癌

  1. 甲状腺癌の腫瘍マーカー
  2. 甲状腺癌全摘出後の再発予測・ホルモン補充療法   甲状腺癌131-I放射線治療と再発・合併症・2次発癌
  3. 甲状腺微小乳頭癌に対する長崎甲状腺クリニック(大阪)の考え方
  4. 甲状腺微小乳頭癌は超音波(エコー)検査でどう見えるか?
  5. 甲状腺と悪性リンパ腫  成人T細胞白血病と甲状腺  白血病・白血病治療薬と甲状腺
  6. 「放射線治療無効な甲状腺癌」にネクサバール・レンビマ   甲状腺癌の肺転移     甲状腺癌骨転移
  7. 転移性甲状腺癌(他臓器の癌から甲状腺への転移)
  8. 癌と確定できない、または癌ではない甲状腺腫瘍の手術適応 石灰化した甲状腺腫瘍  甲状腺内の石灰化 or 甲状腺腫瘍? 橋本病の甲状腺内に広範な、びまん性砂粒状石灰化 石灰化被膜の中の腫瘍
  9. 甲状腺の病気にCT、MRIは有用でない FDG-PET/CTと甲状腺腫瘍・橋本病(慢性甲状腺炎)

甲状腺と代謝(糖尿病・骨・痛風・肥満・むくみ・低血糖、高体温・低体温、高カルシウム血症・低カルシウム血症)

  1. 甲状腺と糖尿病
  2. 甲状腺と
  3. 甲状腺と尿酸/痛風偽痛風・薬剤性間質性腎炎
  4. 内分泌肥満(甲状腺と肥満
  5. 甲状腺とむくみ(浮腫)
  6. 甲状腺と低血糖高体温低体温   甲状腺と高カルシウム血症低カルシウム血症

心臓血管・血圧・血栓

  1. 甲状腺と心臓病(サイロイドハート)
  2. 甲状腺と頻脈性不整脈  徐脈性不整脈
  3. 甲状腺の血圧管理・高血圧
  4. 甲状腺から動脈硬化心臓病・急性大動脈解離
  5. 甲状腺で脳梗塞や心原性脳塞栓
  6. 甲状腺と血栓症-深部静脈血栓

甲状腺と皮膚・アレルギー・貧血・免疫

  1. 甲状腺と皮膚の異常・脱毛
  2. 甲状腺とアレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・好酸球増多症・アナフィラキシー
  3. 甲状腺と貧血
  4. 甲状腺と白血球減少・汎血球減少    免疫チェックポイント阻害薬による甲状腺機能障害
  5. 甲状腺と免疫力低下, インフルエンザ  肺炎球菌   インターロイキン6(IL-6)/IL-2

甲状腺と腎臓/肝臓/胃腸食道

  1. 甲状腺と腎臓
  2. 甲状腺と肝障害(自己免疫性肝炎,原発性胆汁性肝硬変)・胆石・薬剤性肝障害・肝血管腫
  3. C型肝炎治療で甲状腺に異常が・甲状腺癌も発生!? 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と甲状腺
  4. ピロリ菌他 と甲状腺     食道と甲状腺     小腸・大腸と甲状腺  

女性

  1. 妊娠/出産/授乳バセドウ病 妊娠時一過性甲状腺機能亢進    妊娠/出産/授乳橋本病/甲状腺機能低下症
  2. 不妊症/習慣性流産と甲状腺 抗リン脂質抗体症候群
  3. 甲状腺と生理不順・月経前症候群(月経前緊張症)

小児

  1. 小児甲状腺超音波(エコー)検査・小児甲状腺癌
  2. 小児クレチン症/発育障害    新生児マススクリーニング
  3. 小児バセドウ病・乳幼児バセドウ病 小児橋本病・小児無痛性甲状腺炎

甲状腺と肺・睡眠障害・耳鼻咽喉

  1. 甲状腺と 甲状腺と気管支喘息
  2. 甲状腺癌の肺転移・合併・鑑別を要する肺の病気、肺癌・悪性中皮腫の甲状腺転移、甲状腺がんと乳び胸水
  3. 甲状腺と睡眠障害閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)・睡眠後退症候群・甲状腺癌発生、慢性肺胞低換気
  4. 甲状腺と口内病変、耳鼻咽喉科・頭頚部外科

下垂体と甲状腺

  1. 先端巨大症(成長ホルモン)プロラクチンと甲状腺
  2. 脳下垂体と甲状腺--中枢性甲状腺機能低下症
  3. 脳下垂体と甲状腺--TSH産生下垂体腺腫

SITSH(TSH不適切分泌症候群)

  1. 意外と多いSITSH難病甲状腺ホルモン不応症  甲状腺ホルモンが本当の値でない

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)再発・抗甲状腺薬の効き易さの予測

下甲状腺動脈血流(ITA-PSV)測定

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の再発予測は、甲状腺専門医でも難しいと言われます。しかしそれは、TSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)などの自己抗体を予測の指標にしているところに問題があります。TR-Abの高い方は、低い方に比べ再発しやすいのは事実ですが、TR-Abが上昇するのは再発した後なのです。

院長が、大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究では、甲状腺へ流入する下甲状腺動脈の血流速度(ITA-PSV)を測定し、

甲状腺機能亢進症/バセドウ病が再発する可能性
抗甲状腺薬が効きやすい甲状腺機能亢進症/バセドウ病か否かを予測できます。


下甲状腺動脈血流速度測定

下甲状腺動脈の血流(ITA-PSV)

院長の論文

院長が共同研究した論文

下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV)測定の欠点

心房細動合併バセドウ病 ITA-PSV

下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV)測定にも欠点があります。

  1. 心房細動合併の甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、脈がバラバラなため、血流速度もバラバラになり測定不能です。
  2. 潜在性甲状腺機能亢進症(TSHは軽度抑制されるが、FT3,FT4は正常の状態、要するに軽微な甲状腺機能亢進症)では、下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV)は正常値です。
  3. 発作性心頻脈(PAT)など心臓が有効に血液を押し出せない状態では、本来の下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV)より低値に出ます。

下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV)の最高値

下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV) 最高記録

長崎甲状腺クリニック(大阪)での甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV) 最高記録は、計測限界を突破しています。写真の如く、170cm/sを超えていて、それ以上測れません。難治性T3優位型バセドウ病で、治療抵抗性です。

甲状腺重量(容積)推定

甲状腺が大きいほど抗甲状腺薬が効きにくく、再発しやすいです[The significance of thyroid blood flow at the inferior thyroid artery as a predictor for early Graves' disease relapse.(Clinical Endocrinology)]。

甲状腺の正常重量は、男性 15~35g, 女性 10~25gです。

推定甲状腺重量(容積)が60(g,ml)以上の男性は、現在の日本の甘い抗甲状腺薬中止基準(3年で90%以上再発するような)ですら、中止は不可能との報告があります(上條甲状腺クリニックのデータ)

甲状腺容積(ml)=0.479×縦(cm)×横(cm)×深さ(cm)

バセドウ病眼症による眼球突出度

バセドウ病眼症による眼球突出度

バセドウ病眼症による眼球突出を伴う甲状腺機能亢進症は、眼球突出が17mm以上では抗甲状腺薬で寛解した後の再発率が高いと言われます。

Siglec

Siglecは、バセドウ病や自己免疫疾患の難治性を推測するマーカーとして研究が進んでいるようです。治療の影響をうけることなく、変わることのない元々のバセドウ病/甲状腺機能亢進症の治療抵抗性を反映します。(第57回日本甲状腺学会 シンポジウムⅠ ヒトにおける自己免疫性甲状腺疾患の発症因子と病態規定因子) 

Siglecは、シアル酸結合免疫タンパク様受容体(sialic acid-binding immunoglobulin-like receptors)で、免疫細胞機能の調節をおこなう重要な物質です。[Nature Reviews Immunology  14, 653–666 (2014) ]

エラストグラフィ-(甲状腺癌を瞬時に診断)

ARIETTA 850 SE(甲状腺特化型)

甲状腺診療に特化したプレミアム超音波診断装置ARIETTA 850 SE(甲状腺特化型)」、22MHZの超高解像度プローブ使用により最大限に能力を発揮します。

「甲状腺専門医にとってエコーは聴診器と同じ」なのです。

「甲状腺専門医にとってエコーは聴診器と同じ」
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甲状腺腫瘍の良悪性(甲状腺癌・甲状腺良性腫瘍)を見分けるエラストグラフィー

大阪市立大学附属病院 超音波エコー検査室より2年早く長崎甲状腺クリニック(大阪)が導入した先進医療。甲状腺穿刺細胞診で甲状腺癌の85%は診断可能ですが、残り15%は診断不能と言われます。しかし、エラストグラフィーを用いて以下のような結果になれば、甲状腺癌を疑う有力な証拠になります。甲状腺腫瘍の90%はエラストグラフィーで良悪性の判別ができると言われています(感度82% 特異度96%)。筋肉をゼロポイントとしたstrain ratioを計算すると、1.87以上で感度95.6%, 特異度92.8%とされます。

 

エラストグラフィー (甲状腺腫瘍)

左のに見える良性腫瘍は良性濾胞腺腫、右に見える青い甲状腺癌甲状腺濾胞癌(広範浸潤型)です(写真:MEDIX Vol.53 p4-7)。

※現在の甲状腺癌の診断基準に、エラストグラフィーは含まれません。また、良悪性の判別ができたとしても、甲状腺癌の組織型の確定診断(甲状腺乳頭癌など)は、穿刺細胞診・穿刺組織診・摘出標本病理診断でしか判りません。

JTEC エラストグラフィーパターン

JTEC エラストグラフィーパターン

  • パターン1;腺腫様甲状腺腫良性濾胞腺腫微小浸潤型濾胞癌悪性リンパ腫
  • パターン2;広範浸潤型濾胞癌
  • パターン3;乳頭癌
  • パターン4;乳頭癌広範浸潤型濾胞癌低分化癌未分化癌・転移性甲状腺癌(他臓器からの転移)

パターン2、3は特徴的なので、一目でわかります。パターン4は、少なくとも悪性であるのは一目瞭然です。しかし、パターン1は、必ずしも良性とは限りません。微小浸潤型濾胞癌甲状腺原発悪性リンパ腫の事があります。

甲状腺良性濾胞腺腫腺腫様結節エラストグラフィー

エラストグラフィー (甲状腺良性濾胞腺腫)

甲状腺良性濾胞腺腫エラストグラフィー甲状腺良性濾胞腺腫は、軟らかいために見えます。

腺腫様結節 エラストグラフィー

腺腫様結節エラストグラフィー腺腫様結節は、軟らかいために見えます。

甲状腺乳頭癌濾胞癌エラストグラフィー

甲状腺乳頭癌濾胞癌は特徴的なパターンで青くなります。

甲状腺濾胞癌は、穿刺細胞診で診断がほぼ不可能です(良性濾胞腺腫腺腫様結節と同じくクラス3にしかなりません)。甲状腺超音波(エコー)検査で良性濾胞腺腫と区別は非常に困難ですが、甲状腺濾胞癌は、

  1. 内部エコーが低エコーレベル:良性濾胞腺腫でもあり得ます。
  2. 境界性状が粗雑(被膜浸潤の可能性):良性濾胞腺腫でもあり得ます。
  3. 内部血流豊富:良性濾胞腺腫でもあり得ます。
  4. 4cm以上なら20-50%は甲状腺濾胞癌
  5. 血清サイログロブリン値1000ng/ml以上なら50%は甲状腺濾胞癌
  6. エラストグラフィーで腫瘍周囲が青くなる(下左)か、腫瘍全体が青くなります

などの条件があります。
被膜浸潤、脈管侵襲、転移(肺骨脳)のいずれか一つが確認されれば甲状腺濾胞癌と診断できますが、超音波(エコー)上、甲状腺濾胞癌の被膜浸潤、脈管侵襲は診断が難しいのが現状です。

甲状腺乳頭癌エラストグラフィーで腫瘍内部がのモザイク(下右)か、腫瘍全体が青くなります。また、甲状腺乳頭癌転移リンパ節になります。

エラストグラフィー (甲状腺癌)

(下)5mmに満たない甲状腺微小乳頭癌

エラストグラフィー (甲状腺微小乳頭癌)

典型的な甲状腺乳頭癌

エラストグラフィー (甲状腺乳頭癌)

エラストグラフィーはこのような方にお勧めです

  1. 血をサラサラにする薬(抗凝固剤)やステロイド・免疫抑制剤を常用し、休薬できないため甲状腺穿刺細胞診(皮膚の上から針を刺し、細胞を採る検査)のできない方。
  2. 甲状腺腫瘍の穿刺細胞診でクラスⅢ(良悪性の境界:グレイゾーン)が出て不安な方。(甲状腺穿刺細胞診で甲状腺癌の85%は診断可能ですが、残り15%は診断不能と言われます)

エラストグラフィーで診断不能な甲状腺腫瘍

微小な甲状腺濾胞癌甲状腺乳頭癌

約5mm の小さな甲状腺濾胞癌は、エラストグラフィーで診断不能だったと報告されています。(第56回 日本甲状腺学会 P1-036 結節性甲状腺腫にて外科切除された42 結節の病理組織像と超音波エラストグラフィー像との対比)

筆者の経験では、同様の大きさの甲状腺乳頭癌も診断不能(良性・で軟らかい)でした。

微小浸潤型濾胞癌

逆に、3cm台の比較的大きな濾胞性腫瘍で微小浸潤型濾胞癌も診断不能(良性・で軟らかい)だったことがあります。

被膜が石灰化した腫瘍

被膜が石灰化した腫瘍は、プローブによる用手圧迫の歪が石灰化被膜で打ち消されるためエラストグラフィーは無効です。

新たな試み;バセドウ病橋本病(慢性甲状腺炎)を採血前にエラストグラフィーで判別

バセドウ病橋本病(慢性甲状腺炎)を採血前にエラストグラフィーで判別しようとする試みがあります。[Assessment of Diffuse Thyroid Disease by Strain Ratio in Ultrasound Elastography. Ultrasound Med Biol. 2015 Nov;41(11):2884-9.]

しかし、実際、バセドウ病の80%程は橋本病(慢性甲状腺炎)の自己抗体を持っていて、橋本病(慢性甲状腺炎)からバセドウ病に移行する場合、バセドウ病から橋本病(慢性甲状腺炎)に移行する場合もあるため、単純には行きません。(橋本病バセドウ病は入れ替わる---元は同じ自己免疫性甲状腺疾患)

亜急性甲状腺炎は、特徴的な臨床症状と白黒画像(Bモード画像)で、簡単に診断できるため、エラストグラフィーは地固め的な意味を持ちます(炎症起こしている低エコー領域は、癌より癌らしい硬さのため、エラストグラフィー青くなります)。(亜急性甲状腺炎

IgG4関連甲状腺炎は、線維化が著明な白黒画像(Bモード画像)に加え、エラストグラフィーによる硬さの評価が役に立ちます。

エラストグラフィー (正常甲状腺)

正常な甲状腺。軟らかいために見えます。

エラストグラフィー (橋本病)

橋本病(慢性甲状腺炎):線維化が進んで硬くに見えます

エラストグラフィー (亜急性甲状腺炎)

亜急性甲状腺炎:炎症部は硬くに見えます

エラストグラフィー IgG4関連甲状腺炎)

IgG4関連甲状腺炎:線維化が進んで硬くに見えます

エラストグラフィー (バセドウ病,橋本病,亜急性甲状腺炎)

(上)バセドウ病:全体的に  (中)橋本病(慢性甲状腺炎):全体的に (下)亜急性甲状腺炎炎症部が・正常部が

デジタルハイビジョン超音波(超高解像度・甲状腺の微細血流他)

ARIETTA 850 SE(甲状腺特化型)
22MHZの超高解像度プローブ

22MHZの超高解像度プローブ

ARIETTA 850 SE(甲状腺特化型)

Pure Image 日立独自のテクノロジーを駆使、高精細な画像。

甲状腺・血管診療に特化

甲状腺診療に特化

ARIETTA 850 SE(甲状腺特化型)

超高解像度:なんと2mm未満の腫瘍もみつかる!?

Unbelievable! 超高解像度のため、2mm未満の腫瘍もみつかります。小さすぎて、穿刺細胞診も不可能、エラストグラフィ-も無効です。

2mm未満の甲状腺腫瘍 超音波(エコー)画像

2mm未満(1.5x1.8x1.5mm)の甲状腺腫瘍 超音波(エコー)画像:通常倍率では、甲状腺のう胞か甲状腺腫瘍か判別できません。しかし、以下のように拡大すると

2mm未満の甲状腺腫瘍(拡大) 超音波(エコー)画像

2mm未満の甲状腺腫瘍(拡大) 超音波(エコー)画像:拡大しても甲状腺のう胞か甲状腺腫瘍かはっきりしませんが、ドプラー[eFlow(イー フロー)]で内部血流が確認できるため甲状腺腫瘍である事が判ります。

eFlow(イー フロー;甲状腺の微細血流)

高精細なカラー表示機能「eFlow(イー フロー)」を搭載。通常のカラー表示よりも、血管からのはみ出しが少なく、甲状腺内の微細血流が鮮明に見えます。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病

甲状腺機能亢進症/バセドウ病 eFlow(イー フロー)

(左) eFlow(イー フロー);甲状腺内の血管が鮮明に判ります
(右) 通常ドプラー;甲状腺内の血流のため、血管と周辺の甲状腺組織までが隠れてしまいます

eFlow(イー フロー)

eFlow(イー フロー)と通常ドプラーの比較
(左)eFlow(イー フロー);甲状腺内の血管が鮮明に判ります
(右) 通常ドプラー;甲状腺内の血流のため、血管と周辺の甲状腺組織までが隠れてしまいます

eFlow(イー フロー)

eFlow(イー フロー)と組織ドプラーの比較
(左) eFlow(イー フロー);甲状腺内の血管が鮮明に判ります
(右) パワードプラー;甲状腺内の血流のため、血管と周辺の甲状腺組織までが隠れてしまいます

甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍 eFlow(イー フロー)

甲状腺腫瘍[濾胞性腫瘍](拡大)
(左)通常ドプラー
(右) eFlow(イー フロー);腫瘍血管が鮮明に

甲状腺腫瘍[濾胞性腫瘍]eFlow(イー フロー)

甲状腺腫瘍[濾胞性腫瘍]
(左)通常ドプラー
(右) eFlow(イー フロー);腫瘍血管が鮮明に

腺腫様結節  eFlow(イー フロー)

腺腫様結節

のう胞型腺腫様結節  eFlow(イー フロー)

のう胞型腺腫様結節

甲状腺内の血流評価 [%vascuralityまたはvascular index(血流指数)または血管密度]

甲状腺内の血流を定量評価[%vascuralityまたはvascular index(血流指数)または血管密度]

現在、有用性を検証中です。甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症無痛性甲状腺炎の回復期でも甲状腺内血流は増加し、少なくとも甲状腺ホルモンが正常範囲を外れているのを瞬時に予測できます。

甲状腺機能低下症の報告では感度65%特異度67%で、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)に正の相関、FT3に負の相関を認めます。

無痛性甲状腺炎甲状腺機能亢進症/バセドウ病との見分け方

無痛性甲状腺炎と甲状腺機能亢進症/バセドウ病 vascular index

%vascularityまたはvascular index(血流指数)または血管密度:甲状腺内の血流を測定
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、著明な血管増殖のため甲状腺内の血流が増加します。
無痛性甲状腺炎の急性期では、逆に甲状腺内の血流は低下します。

(しかし、甲状腺機能亢進症バセドウ病でも血流低下、無痛性甲状腺炎の急性期・回復期でも血流が増加する場合もあり、絶対的なものではありません)

甲状腺機能低下症/橋本病の甲状腺内血流増加

甲状腺機能低下症/橋本病でも甲状腺内血流の増加が起こります。橋本病における甲状腺内の血流は、甲状腺機能低下の程度、特に甲状腺刺激ホルモン(TSH)の上昇度と相関します。TSHが血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を増加させることが原因と考えられます。甲状腺機能亢進症/バセドウ病のカラードプラ所見に似ていますが、症状が真逆なので鑑別は容易です。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺濾胞細胞の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の合成を促進(J Clin Invest. 1995 Sep;96(3):1295-302.)
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)→甲状腺内の血管新生・甲状腺濾胞細胞のヨードとチミジン取り込み促進 (J Endocrinol. 1998;157:5–12.)

血中のVEGF濃度は、甲状腺内の血管面積に相関します(J Clin Endocrinol Metab. 1998 Nov;83(11):3908-12.)
VEGF受容体(VEGFR)を阻害すると、甲状腺濾胞細胞のヨード取り込み減少(Mol Cell Endocrinol. 2012 Apr 4;351(2):199-207.)

甲状腺内血流の増加が、より正確に甲状腺機能低下の度合いを反映する可能性があると考えています。

甲状腺機能低下症(橋本病)超音波(エコー)画像

甲状腺機能低下症(橋本病)甲状腺機能低下症(橋本病)超音波(エコー)画像

甲状腺機能低下症(橋本病)ドプラー

甲状腺機能低下症(橋本病)ドプラー:甲状腺内血流増加

グレースケール解析(甲状腺内部の新たな評価法)

橋本病(慢性甲状腺炎)では、超音波(エコー)検査で評価した甲状腺のエコー輝度(白さと黒さの度合い)は、甲状腺内部の炎症と破壊の程度、ホルモン産生能を総合的に反映します。特に甲状腺機能低下症において、甲状腺ホルモン(FT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)と有意に相関します。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、超音波(エコー)検査で評価した甲状腺のエコー輝度(白さと黒さの度合い)は、バセドウ病の活動性を反映します。バセドウ抗体(TR-Ab)高値な程、TSH抑制されている程、甲状腺のエコー輝度は低くなります。(European Journal of Endocrinology (1999) 141 332–336)。

グレースケール解析
甲状腺機能低下症 正常人
甲状腺のエコー輝度(GWE) 61·9 ± 8·3 71·9 ± 3·1
甲Joう君 グレースケール解析
バセドウ病 正常人
甲状腺のエコー輝度(GWE) 21.3 ± 3.3 25.6 ± 2.0

甲状腺のエコー輝度(GWE)は、超音波(エコー)機械によってかなりばらつきがあります。超音波(エコー)機械毎の正常値の設定が必要になります。

甲状腺の腫れ具合の評価

甲状腺の腫れ具合の評価は、甲状腺超音波(エコー)検査で甲状腺の縦・横・深さを計測し、

甲状腺容積(ml)=0.479×縦(cm)×横(cm)×深さ(cm)

の換算式を用います。

正常な甲状腺 超音波(エコー)画像

正常な甲状腺容積は、成人女性で15-18g(日本乳腺甲状腺超音波医学会が公式採用)とされますが、伊藤病院の報告では実際には、5.88-19.03(中央値11.26)mlです。(第58回 日本甲状腺学会 P1-13-1 成人女性における甲状腺超音波検査での正常甲状腺容の検討)

  バセドウ病萎縮性甲状腺炎の特殊抗体

バセドウ病は、TSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)が甲状腺を無制御に刺激するためおこります。TR-Abには以下の

  1. 刺激型のTS-Ab
  2. ブロック(阻害)型のTSB-Ab
  3. 刺激も阻害もしない不活性型(neutral)TR-Ab[長崎甲状腺クリニック(大阪)の自験例では、TR-Ab25.9IU/l(カットオフ値2.0未満)の強陽性の不活性型TR-Abの症例があります]
    上條甲状腺クリニックの上條先生は、無痛性甲状腺炎(痛みを伴わない甲状腺の亜急性破壊)で出現するTRAbは、刺激も阻害もしない不活性型(neutral)TR-Abと考えおられます。私も同意見です。
    ※但し、第3世代のECLIA法でTR-Abを測定した場合、偽高値があるため、第2世代のRIA法での再測定が必要です。

3種類が含まれます。通常のバセドウ病のTSHレセプター抗体(TR-Ab)は刺激型のTS-Abです。

TSAB・TSBAb・neutral TRAb

1、TR-Ab(TSHレセプター抗体[一般型])

バセドウ病は、TSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)が甲状腺を無制御に刺激するためおこります。通常のバセドウ病のTSHレセプター抗体(TR-Ab)は刺激型のTS-Abですが、TS-Ab測定は甲状腺細胞が産生するcAMPを測るため時間も、費用も掛かり、特殊な場合を除き最初から測りません。TSHレセプター抗体(TR-Ab)=TS-Abと言う前提のもとに、TSHレセプター抗体(TR-Ab)を測定します。

TRAbの測定法

バセドウ病抗体

現在のTRAbの主流は第3世代TRAb(ECLIA)ですが、後述のような特徴、問題点があります。

第2世代TRAbは、精密ですが、測定に日数を要するため、第3世代TRAb(ECLIA)の偽高値が疑われる時、測定します。

バセドウ病と診断できるTRAbの値

現在のTRAbの主流は第3世代TRAb(ECLIA)と呼ばれるもので、バセドウ病と診断できるTRAbの値(カットオフ値)は、2.0IU/lとなっています。あくまでバセドウ病バセドウ病でないヒトを区別できる最も確かな値(カットオフ値)であり、正常値(正常な健康人の値)でない点が重要です。つまり、正常値は1.0IU/l未満で、1.0~2.0IU/lはグレーゾーン(境界域)です。

TRAbはバセドウ病の活動性と必ずしも一致しない

TRAbはバセドウ病の活動性と必ずしも一致しません。確かに、TRAbが異常高値なら、甲状腺ホルモンも異常高値なのは異論の無い事です。しかし、逆は言えないのです。甲状腺ホルモン異常高値でも、必ずしもTRAbが高いとは言えません。また、甲状腺ホルモン軽度高値でも、TRAb異常高値の事もあります。バセドウ病の活動性は、後述のTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型])の方が良く反映します。

バセドウ病以外のTSHレセプター抗体(TR-Ab)上昇

教科書的にはTRAbは、バセドウ病では陽性、無痛性甲状腺炎亜急性甲状腺炎など、バセドウ病以外の甲状腺中毒症では原則的には陰性とされています。しかし、無痛性甲状腺炎(痛みを伴わない甲状腺の亜急性破壊)亜急性甲状腺炎などで弱陽性になることもあり、鑑別を難しくします。長崎甲状腺クリニック(大阪)ではTRAb3.7IU/l(バセドウ病カットオフ値<2.0)の無痛性甲状腺炎がありました。よって、TRAb陽性だからと言って、即バセドウ病無痛性甲状腺炎診断するのは危険です。

上條甲状腺クリニックの上條先生は、無痛性甲状腺炎で出現するTRAbは、刺激も阻害もしない不活性型(neutral)TR-Abと考えおられます。筆者も同意見です。

TRAb(ECLIA)のカットオフ値2.0IU/l以上なら、無痛性甲状腺炎でなく甲状腺機能亢進症/バセドウ病と診断できるか?

上條甲状腺クリニックの報告によると、明らかな甲状腺中毒症で、TRAb(ECLIA)のカットオフ値を(2.0でなく)3.0IU/lにすれば、99%以上の確率で甲状腺機能亢進症/バセドウ病と診断できますが、1%以下の確率で無痛性甲状腺炎のことがあります。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病におけるTRAb(ECLIA)の下限値を0.8IU/lにすれば、0.8IU/l以下は100%無痛性甲状腺炎です。

TRAb0.8~3.0IU/lは甲状腺機能亢進症/バセドウ病無痛性甲状腺炎いずれもあり得る(確率的に半々)グレーゾーン(境界域)です。(Endocrine Journal Vol. 57 (2010)  No. 10  P 895-910.)

TRAb陰性甲状腺機能亢進症/バセドウ病

現在、日本で測定されるTRAb は、第3世代TRAb(ECLIA法で測定)がほとんどで、わずか20-30分で迅速に測定できるため広く普及しました。しかし、簡易に測定できるだけに落とし穴も多くあります。

TRAb(ECLIA)は感度98.3%、特異度99.2% とされます(Nat Rev Endocrinol. 2013 Dec;9(12):724-34.)。しかし、

  1. 軽度の甲状腺機能亢進症/バセドウ病(特に潜在性甲状腺機能亢進症/バセドウ病)あるいは初期の甲状腺機能亢進症/バセドウ病ではTRAb陰性のことも多く、無痛性甲状腺炎と区別し難いこともあります。
    (甲状腺ホルモン値が低い、甲状腺が小さいなど)
     
  2. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病の96-97%はTRAb陽性ですが、3-4%TRAb陰性です。
    TRAb陰性甲状腺機能亢進症/バセドウ病のほぼ全例でTS-Ab(EIA)[ヤマサ](下記)が陽性になります。
    TRAb陰性甲状腺機能亢進症/バセドウ病の80%は、遅れてTRAb陽性になります。
     
  3. 発症したての甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、下記の再発時と同様、遅れてTRAb陽性になる事あります。高松内科クリニックの報告では、発症時TRAb陰性で遅れて出現した12例は、全て1~3カ月後にTRAb陽性化したそうです。(第60回 日本甲状腺学会 O1-6 血中TSHレセプター抗体がバセドウ病発症時に検出されず、後日 に陽性化した12例の分析 ―― 本抗体は甲状腺機能亢進症の原因蛋白質か ――)

それでもTRAb陰性なら、遺伝子変異(非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症)か甲状腺ホルモン産生腫瘍プランマー病中毒性多結節性甲状腺腫)です。(バセドウ病の抗体が陰性の甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症/バセドウ病再発時

抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)中止後、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が再発した時、

  1. 15%はTRAb陰性
  2. TRAb陰性でも89%でTS-Ab(EIA)[ヤマサ](下記)が陽性になります。
  3. 37%は、遅れてTRAb陽性になります。

TRAb(ECLIA)の偽高値

現在、最も一般的に測定される第3世代TR-Ab(M22抗体を用いた測定法)、すなはちTRAb(ECLIA)には偽高値になるものが報告されています。

M22抗体は、人工的に作られたモノクローナルTR-Abを、発色剤ルテニウムで標識されたものです。標識M22抗体に、患者血清中の何らかの物質(おそらく抗ルテニウム抗体)が影響して、発色が小さくなると、TR-Abは実際より高値に出てしまいます。

M22抗体でなく、TSHを使用する第2世代TR-Abで再測定すれば本当の値になります。(第58回 日本甲状腺学会 P2-8-6 第三世代TRAbが偽陽性持続高値を示した、第二世代TRAb human陰性、TSAb陰性の甲状腺機能正常例)

例外的にTRAbが、TS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]; TSH刺激性レセプター抗体) に先行する事も

通常、TS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]; TSH刺激性レセプター抗体) は、バセドウ病の活動性を反映し、TRAbが上昇する前に陽性化します。例外的に、(一過性でない)潜在性甲状腺機能亢進症で、TRAb 26.3IU/L(測定法不明なのでカットオフ値<2 IU/L、or 正常値<1 IU/L)、TSAb 80%(正常値<120%)と、TRAbが先行する症例が報告されています。

確かに、TRAbは、バセドウ病の活動性を必ずしも反映しないため、潜在性甲状腺機能亢進症(極軽い機能亢進状態)で、TS-Abが活動性を反映し陰性でも、理屈の上であり得ます。

この症例は、後日、顕在性甲状腺機能亢進症となり、TSAb 160%に上昇、TRAb 26.34IU/Lと高値のままだったそうです。同時に、TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型]) 0.0%で、TRAbは阻害型抗体も反映しておらず。

TRAb の測定法が不明ですが、TRAb(ECLIA)なら偽高値の可能性が残ります(前項)。

(第60回 日本甲状腺学会 P1-7-2 TSH受容体抗体高値を呈し、2年後にはTSAb陽性とともに顕性 化したバセドウ病の1例)

筆者の経験でも、潜在性甲状腺機能亢進症なのにTRAb 高値の事が時々あります。ほとんどは、数か月-数年後に顕在性甲状腺機能亢進症に移行します。

2、TS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]; TSH刺激性レセプター抗体)  

甲Joう君 active

バセドウ病の病因はTSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)が甲状腺を無制御に刺激することです。よって、バセドウ病のTR-Abは刺激型のTS-Ab(TSH刺激性レセプター抗体, thyroid stimulating antibody)です。時にTR-Abが検出されないバセドウ病がありますが、TS-Abが陽性であればバセドウ病と診断できます。上條甲状腺クリニックの上條桂一先生によると、M-22TR-Ab陰性バセドウ病のほぼ全例でTS-Ab(EIA)[ヤマサ]が陽性とのことです。

しかし、中にはTR-Ab・TS-Ab両方が陰性の甲状腺機能亢進症が存在します。この場合、遺伝子変異(非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症)か甲状腺ホルモン産生腫瘍プランマー病中毒性多結節性甲状腺腫)です。(バセドウ病の抗体が陰性の甲状腺機能亢進症

また、バセドウ眼症バセドウ病前脛骨粘液水腫バセドウ病バチ指/バセドウ病関節症はTR-AbよりもTS-Abが活動性を強く反映します。

TS-Ab(EIA)[ヤマサ]の測定原理

TS-Ab(EIA)[ヤマサ]の測定原理は、バセドウ病抗体の甲状腺刺激機能のみを調べる生物学的測定法です。ブタの甲状腺細胞に、患者血清を反応させ、生成されるcAMP(サイクリックAMP)量から、TS-Abを計算する測定法です。旧第一世代のTS-Abは不安定で、役に立たない事多かったですが、改良型の第二世代TS-Ab(EIA)[ヤマサ]は臨床データを見ても、信じられない位良くなっています。

TR-AbとTS-Abの違い

上記のTRAbの章で述べましたが、

  1. TRAb陰性甲状腺機能亢進症/バセドウ病のほぼ100%でTS-Ab陽性になります。
  2. TRAbは甲状腺機能亢進症/バセドウ病の発症・再発後に陽性化する事多いため、発症・再発したての時は、TS-Abの方が陽性化している確率が高い。(J Clin Endocrinol Metab. 2012 Jul;97(7):E1080-7.)
  3. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病の寛解(全治とまで言えないが、病状が治まり無投薬で甲状腺ホルモン正常を維持できる状態)の判定にはTRAbよりTS-Abが優れている。(J Clin Endocrinol Metab. 2012 Jul;97(7):E1080-7.)

TS-Abによる無痛性甲状腺炎甲状腺機能亢進症/バセドウ病の見分け方

TSAbによる無痛性甲状腺炎との鑑別

TS-Ab未治療バセドウ病での陽性率は97.7%ですが、無痛性甲状腺炎で陽性率は5.2%です。

未治療バセドウ病TS-Ab抗体価は、カットオフ値の120%を超える場合がほとんどですが、無痛性甲状腺炎では一部の例外を除き120%前後です。

抗甲状腺薬中止後の甲状腺機能亢進症/バセドウ病の再発時、通常のバセドウ病抗体(TR-Ab)は陰性の事が多いですが、TS-Ab抗体価は、ほとんどがカットオフ値の120%以上です。

TS-Ab(EIA)も万能ではない

TS-Ab(EIA)も100%確実ではありません。潜在性甲状腺機能亢進症/バセドウ病、軽度の甲状腺機能亢進症/バセドウ病では陰性の事があります。しかし、そのような場合でも、筆者の経験ではTS-Ab 110~119%と120%に僅かに届かない症例が全てでした。

逆に、潜在性甲状腺機能亢進症/バセドウ病、軽度の甲状腺機能亢進症/バセドウ病でもTS-Ab>120%と陽性で診断できた症例も数多くあります。

Aequorin TSAb(イクオリンTSAb)

新しく開発されたAequorin TSAb(イクオリンTSAb)(Otsuka Pharmaceutical Co.Japan)は、現時点でテスト段階の様です。第59回 日本甲状腺学会 シンポジウムⅠ 甲状腺眼症では、甲状腺機能正常/バセドウ病眼症でのAequorin TSAb(イクオリンTSAb)陽性率は 19人/22人(86%)と、TSAb(Yamasa)9人/22人(41%)に比較して、有意に高率だったそうです。

3、TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])  保険適応外

TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型]);正常値 31.7%以下、測定法 Bioassay EIA、保険適応外

バセドウ病

甲Joう君 TSBAb

バセドウ病の病因はTSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)が甲状腺を無制御に刺激する事です。しかし、その抗体が、刺激する事なくTSHレセプターに結合し、TSHの結合を阻害するだけのブロック抗体(TSH Stimulation Blocking Antibody:TSB-Ab)に変化する事があります。

もし甲状腺機能亢進症/バセドウ病の経過で、急に抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)が効き過ぎて甲状腺機能低下症になった場合、

  1. TSB-Abが新たに発生
  2. 元々、TSB-Abは持っていたが、量が増え

し、TS-Abより優位になった可能性があり、治療を見直す必要があります。

同一患者でTS-AbとTSB-Abの比率が、めまぐるしく変化

同一患者でTS-AbTSB-Abの比率が、めまぐるしく数カ月単位で変化し、甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症を繰り返す症例が報告されています。

妊娠出産が誘因となり、このような変動がおこり得ます。甲状腺全摘出するしかありません。(第58回 日本甲状腺学会 P1-8-5 甲状腺全摘術が有用であったTSB-Ab陽性バセドウ病の1例)

あるいは、遺伝性が非常に強い(両親がバセドウ病:めったにないパターンですが)場合も、このような変動がおこる事あるようです。(第54回 日本甲状腺学会 P054 刺激型、阻害型抗TSH受容体抗体価の変動により亢進症から低下症へ移行し再び亢進症をきたしたバセドウ病の1例)

IgG4でも同じような経過

バセドウ病IgG4高値の方は、同じように抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)が効き過ぎて甲状腺機能低下になりやすいとされ、TSB-Abによる場合との鑑別必要です。ただし、IgG4値のバセドウ病では、甲状腺腫が急速増大する点が異なります。[Endocrine. 2014 ;45(2):236-43.]

萎縮性甲状腺炎

最初からTSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])しか存在しないと、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺に結合できず、甲状腺機能低下症になり、萎縮性甲状腺炎と言われる。橋本病の破壊性抗体の合併なければ、超音波(エコー)画像で、甲状腺内部は正常そのもの、サイズだけ萎縮。萎縮性甲状腺炎はTSB-Ab変動により病勢変化、TSB-Ab陰性化し甲状腺機能正常化、TSB-Ab値高いほど甲状腺機能低下、TSB-Ab値低下すると甲状腺機能は改善。TRAb(ECLIA)、TSAb陰性でもTSB-Abのみ単独陽性ある。TSH受容体の不活性型変異、先天的な甲状腺低形成と鑑別。

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萎縮性甲状腺炎とは

最初からTSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])しか存在しない場合、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺に結合できず、甲状腺機能低下症になっている事があり、萎縮性甲状腺炎と言われます。

思春期後に発症した萎縮性甲状腺炎患者の約60%に、TSB-Abが陽性だったとされます(Clin Endocrinol. 1995;43:465-71.)。筆者の推測では、TSB-Ab測定キットの感度の問題、TSH受容体の不活性型変異や先天的な甲状腺低形成が混ざっている可能性を考えます。

橋本病の破壊性抗体の合併がなければ、超音波(エコー)画像で、甲状腺内部は正常そのもの、サイズだけが萎縮。

(左)萎縮性甲状腺炎  (右)正常甲状腺炎 

萎縮性甲状腺炎 超音波(エコー)画像
TSB-Abの変動

萎縮性甲状腺炎では、TSB-Abの変動により病勢が変化します

  1. TSB-Abが陰性化し甲状腺機能が正常化する例も報告されている(J Thyroid Res. 2012;2012:182176.)
  2. TSB-Ab値が高いほど甲状腺機能は低下し、TSB-Ab値が低下すると甲状腺機能は改善する(Clin Exp Immunol. 2017;189:304-9.)
TRAb(ECLIA)、TSAb陰性でもTSB-Abのみ単独で陽性

TRAb(ECLIA)、TSAb陰性でもTSB-Abのみ単独で陽性になる事があります。TRAb(ECLIA)がTSB-Abの代用にならないなら、TSB-Ab自体を測定しない事には診断できません(保険適応外で、患者本人への治療法が変わる訳ではありませんが)。

TRAb(ECLIA)、TSAb陰性でもTSB-Abのみ単独で陽性の妊婦出産したら

TRAb(ECLIA)、TSAb陰性でもTSB-Abのみ単独で陽性の妊婦出産したら、新生児の体内には、母体のTSB-Abが残っています。母体から来たTSB-Abが新生児の甲状腺をブロックするため、新生児甲状腺機能低下症おこし、クレチン症と間違われる事あります。しかし、TSB-Abは消滅し、新生児甲状腺機能は正常化するため、一過性新生児甲状腺機能低下症だった事になります。ここで初めて、TSB-Abの存在が疑われ、萎縮性甲状腺炎だった事が分かります。

甲状腺機能低下症妊婦から、一過性新生児甲状腺機能低下症の子が生まれたら、萎縮性甲状腺炎を疑いましょう!

ただ、妊娠中は母体の免疫寛容によりTSB-Abは低下するので、一過性新生児甲状腺機能低下症に至らない場合も多いと考えられます。
(第53回 日本甲状腺学会 P21 TRAb 陰性にもかかわらずTSBAb 陽性となった甲状腺機能低下症の2例)

萎縮性甲状腺炎から甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行

同一患者でTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]; TSH刺激性レセプター抗体)TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])両方持っていると、その比率により、甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症のどちらに傾くか、あるいは入れ替わるか決まります。( TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])  保険適応外 参照)

最初はTSB-Abだけ、あるいはTSB-AbTS-Abより優位で萎縮性甲状腺炎の状態でも、後からTS-Abが発生、あるいは増加し、TSB-Abより優位になると、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行します。

防衛医科大学の報告では、最初、TSBAb 91.1%・TSAb 415%(萎縮性甲状腺炎)→TSBAb 1%・TSAb 1014%(甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行)。 
(第60回 日本甲状腺学会 P1-7-5 甲状腺機能低下時にTSAb・TSBAbが共に強陽性を示し、短期間 で機能亢進に移行した一例)

萎縮性甲状腺炎の鑑別診断

エコー上、萎縮のみで破壊性変化の無い甲状腺機能低下症を見つけたら、

  1. 萎縮性甲状腺炎
  2. TSH受容体不活型変異
  3. 先天的な甲状腺低形成(甲状腺形成障害

のいずれかです。TSB-Ab自体を測定するしか、鑑別診断できません(保険適応外で、患者本人への治療法が変わる訳ではありませんが)。

橋本病(慢性甲状腺炎)における高度の破壊による萎縮とは異なる
橋本病(慢性甲状腺炎)末期の萎縮した甲状腺

成書でも良く間違えられていますが、橋本病(慢性甲状腺炎)で高度に破壊され、最後は萎縮した甲状腺は、萎縮性甲状腺炎とは言いません(それは、ただの萎縮した甲状腺)。

写真は、正にその橋本病(慢性甲状腺炎)末期の萎縮した甲状腺

橋本病(慢性甲状腺炎)を合併していると萎縮性甲状腺炎がマスクされる

橋本病(慢性甲状腺炎)の自己免疫抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)を同時に持っていると、橋本病(慢性甲状腺炎)による破壊で甲状腺機能低下症なのか、萎縮性甲状腺炎による甲状腺機能低下症なのか判別が難しいことがあります。

甲状腺超音波(エコー)検査で、機能低下の割に破壊の程度が軽ければ、萎縮性甲状腺炎が疑われます。

TSB-Ab偽陽性

刺激型抗体TS-Abが 3,000% (正常値<120%)を超えるような時は、TSB-Abが偽陽性になる可 能性が高いとされます。(医学と薬学.2016; 73:595-602.) 

4、IgG4

免疫グロブリンの一つであるIgGの3~4%程度を占めるIgG4。和歌山医大の報告では、バセドウ病IgG4高値(IgG4-RD 包括診断基準で血清IgG4≧135mg/dL)の方は、

  1. バセドウ病の6.4%を占め、高年齢[53(49-68)歳 vs. IgG4正常群42(13-79)歳、P=0.026]
  2. 甲状腺超音波(エコー)検査で有意に低エコー領域が増大
  3. 抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の反応性が良く、効き過ぎて甲状腺機能低下になりやすい
    (Thyroid. 2014 Apr;24(4):736-43.)
  4. TSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)とTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型])が、急上昇するにも関わらず、甲状腺腫が急速増大・甲状腺機能低下が急進行します。[Endocrine. 2014 ;45(2):236-43.]
    この際、
    TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])による萎縮性甲状腺炎の鑑別が問題になりますが、IgG4高値のバセドウ病では、甲状腺腫が急速増大する点が異なります。
    甲状腺原発悪性リンパ腫との鑑別が問題になりますが、
    sIL2-R (可溶性インターロイキン2受容体)正常(MALTリンパ腫では正常の事も多いですが)
    ・ガリウムシンチグラフィーは陰性です。
  5. 甲状腺組織は著しく繊維化しており、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)中止後も、TSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)とTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型])が陽性であるにも関わらず、永続性甲状腺機能低下症になります。

また、IgG4関連疾患の合併は認めないとされますが、甲状腺機能亢進症/バセドウ病、糖尿病とIgG4関連自己免疫膵炎の合併例は報告されています

高年齢で、甲状腺低エコー領域の増大した甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、IgG4高値の可能性があります。

IgG・血中蛋白分画測定にて高ガンマグロブリン血症を検査

IgG4を直接測定(保険適応にならない場合があります)

5、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)

橋本病(慢性甲状腺炎)の自己免疫抗体、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)のいずれか甲状腺機能亢進症/バセドウ病79%で陽性です。

上條甲状腺クリニックの統計では、甲状腺機能亢進症/バセドウ病

  1. 60%で抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性
  2. 67%で抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)陽性

バセドウ病抗体と橋本病抗体が同時に存在したとき、バセドウ病抗体が圧倒的に強いため、甲状腺機能亢進症に傾きます。ただし、超音波(エコー)検査では、橋本病抗体による破壊性変化が、バセドウ病性変化と同時に存在するのが確認できます。

一見矛盾しているように見えますが、恩師 稲葉雅章 大阪市立大学 代謝内分泌内科教授の抗体併存説では、矛盾なく説明可能です。すなはち、橋本病バセドウ病はコインの裏表で、

  1. 何かのきっかけバセドウ病抗体が現れれば橋本病でもバセドウ病に傾き
  2. バセドウ病抗体が消えれば、橋本病抗体だけが残り橋本病になります。

橋本病バセドウ病は入れ替わる可能性あるということです。橋本病バセドウ病は入れ替わる---元は同じ自己免疫性甲状腺疾患

高齢者バセドウ病

高齢者甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、若年性バセドウ病中年性バセドウ病と異なる症状を示します[Arch Intern Med. 1988 Mar;148(3):626-31.]。

  1. 甲状腺が腫れにくい(甲状腺が小さい)ため、甲状腺の病気が見逃され易い[バセドウ抗体(TR-Ab)に対する反応性低下]。
  2. 体重減少(るいそう)を起こし易い[胃腸が弱くなっているため、新陳代謝(糖・脂肪・タンパクの分解)を上回る量の食事を摂れない] 。ガンによる体重減少と思い込む方もおられます。
  3. 体の異常な代謝亢進に耐えられず、抑うつ傾向になります。
  4. 代謝亢進症状に乏しく、発汗・暑がり・頻脈/動悸は少ない(老化のため体が反応を起こしにくい)。
  5. 眼球突出の程度は小さい(老化のため体が反応を起こしにくい)が、眼筋炎による複視の頻度が高い。
  6. 心房細動合併率は年齢とともに上昇、70歳以上の約10%になります。また男性に多いです。(甲状腺機能亢進症/バセドウ病の心房細動
高齢者バセドウ病 超音波(エコー)画像

高齢者バセドウ病 超音波(エコー)画像

高齢者バセドウ病 超音波(エコー)画像 ITA-PSV

高齢者バセドウ病 超音波(エコー)画像 ITA-PSV(下甲状腺動脈の血流速度)

難治性バセドウ病、突然、甲状腺機能低下症に移行

難治性バセドウ病で、容易に再発し、バセドウ眼症、粘液水腫も合併する症例でも、長期間治療していると永続性甲状腺機能低下症移行する稀なケースがあります。

東邦大学大森病院の報告では、バセドウ病の0.71%(1410 例中 10 例、男 1:女 9)と、1000人に7人の割合です。全例に甲状腺眼症を認め、永続性甲状腺機能低下症移行時には甲状腺腫は縮小。治療開始年齢は12-67歳(平均34.9歳)、治療期間は4-18年(平均7.4年)

甲状腺眼症を認め、コントロール難しい若年バセドウ病の中には、数年治療続けると、甲状腺縮小し、永続性甲状腺機能低下症移行する」場合があります。

なぜ、このような事になるのでしょうか?筆者の推察ですが、

  1. TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])が激増し、TS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]; TSH刺激性レセプター抗体) が激減した。(筆者の経験上、この可能性が最も高い)
  2. 抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)により、甲状腺ホルモン産生細胞(甲状腺濾胞細胞)が破壊され尽くした。
  3. 血清IgG4高値になり、甲状腺ホルモン産生細胞(甲状腺濾胞細胞)が高度に破壊された。むしろ高齢者に多く、甲状腺腫が急速増大する点が異なります。

などの可能性が挙げられます。

勘違いしてはならないのは、これらは、あくまで少数であり、「甲状腺眼症を認め、コントロール難しい若年バセドウ病」の大半はコントロール悪いままで、永続性甲状腺機能低下症に移行しないと言う事です。

甲状腺の病気にCT、MRIは有用でない

甲状腺専門医でなくとも、甲状腺の診療行う医師・看護師・臨床検査技師、あるいは放射線科専門医の常識として、CT、MRIは甲状腺の画像診断に有用ではありません。特に、甲状腺内部の状態・腫瘍の有無の評価、質的診断(良悪性の鑑別、のう胞・腫瘍の鑑別)にCT、MRIを用いてはなりません。

甲状腺超音波(エコー)検査は、甲状腺の画像診断の第一選択かつ最終診断です。しかし、甲状腺超音波診断は熟練した技術を用するため、できない医師がほとんどです。そこで総合病院では、臨床検査技師に甲状腺超音波検査を委ねますが、最終診断を医師でない者に任せると言う、ある意味、危険な事です。

CT、MRIは、

  1. 精密でも5mm、通常10mmスライスで撮影するため、解像度が悪く、5-10mm以内の病変が写らない確率が高い。[甲状腺超音波(エコー)検査は、2mm大の甲状腺癌でも見つかります。また、甲状腺乳頭癌の特徴である微細な砂粒状石灰化(psammoma body)は5mm未満ですので、CT、MRIで写りません。]
     
  2. 甲状腺のう胞は粘調な液体なので、腫瘍組織とCT値・MRI信号強度がほぼ同じで、甲状腺腫瘍鑑別難です。
     
  3. 甲状腺超音波(エコー)検査ではドプラーモードで、甲状腺内血流・甲状腺腫瘍内血流が、簡単に、反復して判ります。しかし、CT、MRIでは造影剤使用し1回だけ、甲状腺腫瘍が、あるいは甲状腺の特定の部分が造影されるかのみ診断できます。当然、甲状腺内の血管径は5mm未満ですので、CT、MRIでは写りませんが、甲状腺超音波(エコー)検査では1本1本、個別の血管まで見えます。
     
    さらに、CT、MRIで使用する水溶性ヨード造影剤は、一時的に甲状腺ホルモン合成・分泌を抑制し、その影響は1か月程続きます。甲状腺機能が正常化していない、未治療あるいは治療途中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病[無痛性甲状腺炎機能性結節(甲状腺ホルモン産生腫瘍)の事もあり]で、ヨード造影剤は甲状腺クリーゼを引き起こす可能性があるので、禁忌とされます。
    ヨード造影剤は、腎不全の方、気管支喘息発作を2年以内に起こしている方、ヨードアレルギーのある方、褐色細胞腫を持っている方には、おこなえません。
     
  4. CTでは1回の撮影につき1mCiの放射線被曝するため、短期間に何回もできません。MRIはペースメーカーの方には原則おこなえません(厳格な条件と煩雑な手続でやっと行えます。)
甲状腺 CT画像1

甲状腺 CT画像1:甲状腺と周囲の境界すら判りにくい。

甲状腺 CT画像2:さすがに、これだけ巨大な腫瘍ならCTでも判ります。

甲状腺 CT画像2

唯一CT、MRIが甲状腺超音波(エコー)検査より優れている点は、

  1. 超音波が届かない“死角”の評価に有用。例えば。縦隔内、広範囲な石灰化の下(超音波は石灰化を通過できない)。
  2. 甲状腺癌の被膜浸潤・周囲組織/臓器への浸潤の評価に有用。[甲状腺超音波(エコー)検査は解像度が高過ぎ、逆に評価しにくい]
  3. 甲状腺癌の遠隔転移(肺・骨・脳など)(要するに甲状腺以外の場所)
甲状腺内石灰化 CT画像

甲状腺内石灰化のCT画像です。被膜が石灰化した腫瘍でなく、完全な石灰化である事が分かります。

①石灰化した甲状腺腫瘍は、石灰化していない甲状腺腫瘍よりも悪性である確率が高いため、注意が必要。石灰化した甲状腺腫瘍が全て甲状腺癌と言う訳でなく、石灰化しない甲状腺癌も珍しくない。甲状腺原発悪性リンパ腫は石灰化しない。②甲状腺内部の石灰化は、甲状腺腫瘍内部の石灰化か、橋本病(慢性甲状腺炎)の炎症に伴う甲状腺本体の石灰化か鑑別要。③橋本病の甲状腺内の広範な、びまん性砂粒状石灰化は、甲状腺びまん性硬化型乳頭癌と鑑別要。④被膜が石灰化した腫瘍は、良悪性いずれも可能性あり、いかなる組織型もあり、超音波(エコー)検査上は区別できない。

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石灰化した甲状腺腫瘍

石灰化した甲状腺腫瘍は、石灰化していない甲状腺腫瘍よりも悪性である確率が高いため、注意が必要です。

もちろん、石灰化した甲状腺腫瘍が全て甲状腺癌と言う訳ではありません。また、石灰化しない甲状腺癌も珍しくありません。

甲状腺原発悪性リンパ腫は、悪性ですが、石灰化する事はありません。

甲状腺内の石灰化、それとも甲状腺腫瘍?

甲状腺超音波(エコー)検査で、甲状腺内部に石灰化が見つかった時、それが甲状腺腫瘍内部の石灰化なのか、橋本病(慢性甲状腺炎)の炎症に伴う甲状腺組織(甲状腺本体)の石灰化なのか鑑別しなければなりません。

甲状腺腫瘍内部の石灰化なら、石灰化した甲状腺腫瘍は、石灰化していない甲状腺腫瘍よりも悪性である確率が高いからです(石灰化した甲状腺腫瘍が全て甲状腺癌と言う訳ではありません)。

下の超音波(エコー)画像は、一見、単なる甲状腺組織の石灰化に見えますが、拡大してみると石灰化の周囲が低エコーになっていて、甲状腺腫瘍内部の石灰化なのが分かります。

石灰化した腫瘍 超音波(エコー)画像

石灰化した甲状腺腫瘍 超音波(エコー)画像

石灰化した腫瘍 超音波(エコー)画像 拡大

石灰化した甲状腺腫瘍 超音波(エコー)画像 拡大

甲状腺内石灰化 超音波(エコー)画像

これは、石灰化した甲状腺腫瘍でなく、石灰化した甲状腺本体の超音波(エコー)画像です、

橋本病の甲状腺内に広範な、びまん性砂粒状石灰化

橋本病の甲状腺内に広範な、びまん性砂粒状石灰化を認める事があります。

甲状腺びまん性硬化型乳頭癌 の様にも見えますが、年期の入った線維化の強い甲状腺に多く、若年成人女性に多い甲状腺びまん性硬化型乳頭癌 とは異なります。

また、乳癌の甲状腺転移の約半数は、びまん浸潤型で橋本病(慢性甲状腺炎)と誤診される危険性があります(Cancer 15: 557-565, 1962)。(パジェット病(Paget病)と甲状腺

穿刺細胞診すれば容易に診断できるので、鑑別診断に困りません。

橋本病のびまん性砂粒状石灰化

橋本病のびまん性砂粒状石灰化;内部に細かい粒々の石灰化(白い点状のもの)が見えます。

橋本病のびまん性砂粒状石灰化(拡大)

橋本病のびまん性砂粒状石灰化(拡大);内部に細かい粒々の石灰化(白い点状のもの)が見えます。

橋本病のびまん性石灰化 超音波(エコー)画像

橋本病のびまん性砂粒状石灰化 超音波(エコー)画像;内部に細かい粒々の石灰化(白い点状のもの)が見えます。

橋本病のびまん性石灰化 超音波(エコー)画像

橋本病のびまん性砂粒状石灰化 超音波(エコー)画像;内部に細かい粒々の石灰化(白い点状のもの)が見えます。

何でもあり石灰化被膜の中の腫瘍

被膜が石灰化した腫瘍は、良悪性いずれも可能性あり、いかなる組織型もあり得ます。

  1. 腺腫様甲状腺腫
  2. 良性濾胞腺腫
  3. 甲状腺濾胞癌
  4. 甲状腺乳頭癌
  5. 甲状腺低分化がん

どれであっても超音波(エコー)検査上の見え方は区別できません。

鑑別できるとすれば、石灰化被膜の外側へ内部の低エコー領域が染み出すように広がっているなら、それは甲状腺癌が石灰化被膜を越えて周囲に浸潤しているのです。

しかも、

  1. 穿刺細胞診しようにも、針が石灰化被膜を通り抜けれない事あります。
  2. プローブによる用手圧迫の歪が石灰化被膜で打ち消されるためエラストグラフィーは無効です。
被膜石灰化した腫瘍 超音波(エコー)画像

被膜石灰化した腫瘍 超音波(エコー)画像

被膜石灰化した腫瘍 超音波(エコー)画像ドプラー

被膜石灰化した腫瘍 超音波(エコー)画像ドプラー

Summary

甲状腺専門医の長崎甲状腺クリニック(大阪)が、甲状腺機能亢進症/バセドウ病,甲状腺機能低下症/橋本病,無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎,甲状腺腫瘍,甲状腺乳頭癌,濾胞癌,甲状腺エコー検査など専門の検査/治療/知見を解説。甲状腺専門医の長崎甲状腺クリニック(大阪)ならではの高解像度超音波(エコー)を用いた下甲状腺動脈血流測定によるバセドウ病再発予測、甲状腺癌を瞬時に診断するエラストグラフィ-、甲状腺の微細血流まで分るeFlow(イー フロー)、バセドウ病・萎縮性甲状腺炎の特殊抗体;TS-Ab(TSH刺激性レセプター抗体)、TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])。

Keywords

甲状腺,バセドウ病,甲状腺機能亢進症,甲状腺癌,甲状腺腫瘍,橋本病,亜急性甲状腺炎,甲状腺機能低下症,エコー,甲状腺ホルモン,無痛性甲状腺炎,専門医

 

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