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大腸と甲状腺      [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 甲状腺機能低下症 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

潰瘍性大腸炎 内視鏡写真

甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編   甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など)  糖尿病編 をクリックください。

長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。小腸・大腸の病気の診療は行っておりません。

Summary

甲状腺機能低下症は過敏性腸症候群(IBS)の便秘型、甲状腺機能亢進症は下痢型と類似症状。橋本病(慢性甲状腺炎)バセドウ病の発症に腸内細菌叢(腸内フローラ)が関与。潰瘍性大腸炎(UC)は甲状腺機能亢進症/バセドウ病と合併して症状が重複。膠原線維性大腸炎はバセドウ病/橋本病に起こり易い。Clostridium difficileによる偽膜性大腸炎で亜急性甲状腺炎の報告。甲状腺クリーゼで大腸穿孔もある。大腸憩室は甲状腺機能低下症の便秘で憩室炎・憩室穿孔おこす事も。大腸内視鏡の抗コリン剤注射は甲状腺機能亢進症活動性甲状腺眼症緑内障発作の危険)には禁忌。

Keywords

甲状腺機能低下症,橋本病,過敏性腸症候群,便秘,甲状腺機能亢進症,下痢,潰瘍性大腸炎,大腸憩室,膠原線維性大腸炎,バセドウ病

甲状腺ホルモンと便秘・下痢

ブリストルスケール

便の性状で腸の健康状態をみるブリストルスケール

青枠は甲状腺機能低下症、赤枠は甲状腺機能亢進症/バセドウ病の便の状態です。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病と下痢

甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、腸管運動が活発になり過ぎて、吐き気・下痢をおこします。胃腸の弱い方

  1. 元々、胃腸が過敏な人
  2. 慢性萎縮性胃炎を持っている消化能力の低い高齢者

は嘔吐(吐いてしまう)・腹痛おこす事もあります。(J Fam Pract. 2017 Feb;66(2):E1-E2.)(Br Med J. 1976 Jul 24; 2(6029): 209–211.)

胃腸に問題ない人で嘔吐する場合、生命に危険が及ぶ甲状腺クリーゼの可能性があります。

下痢がひどくて、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に薬が効かない

下痢がひどくて、抗甲状腺薬のMMI(メルカゾール)が吸収されず、メルカゾール12錠/日+プレドニン(ステロイド)10mg/日飲んでも、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が全く改善しない症例も報告されています。メルカゾール注射薬(投与量は6錠分に相当する30mg/日)で、驚くほど改善し、無事に手術で甲状腺全摘できたそうです。(第58回 日本甲状腺学会 P1-10-1 甲状腺機能正常化が困難なバセドウ病の術前管理におけるチアマゾール(MMI)の有用性)

甲状腺機能低下症と便秘

甲状腺機能低下症では、腸管運動が低下して、便秘気味になります。

右は手塚治虫のブラックジャックに登場した「ウンコのしかた」、新刊「ウンコとトイレの関係」の著者、徳川先生。

まさかこの人が考えたのではないでしょうが、太腿と上半身の角度を35度にすると、直腸と肛門が直線になり、便が出やすいそうです。

ウンコとトイレの関係
「ウンコのしかた」、新刊「ウンコとトイレの関係」の著者、徳川先生

漏出性便失禁と甲状腺機能

加齢による肛門括約筋のゆるみで漏出性便失禁

漏出性便失禁(便意を伴わず、知らないうちに便が漏れる)の原因は、

  1. 加齢による肛門括約筋のゆるみ
  2. 直腸がんや直腸の神経障害[ヒルシュスプルング病(Hirschprung病))]で便が溜まっている信号が伝わらず、排便指令が来ない

などです。

ヒルシュスプルング病(Hirschprung病)は腸が動かず慢性便秘と、腸が便で満タンになった後は漏出性便失禁をおこします。ヒルシュスプルング病(Hirschprung病)

  1. ダウン症の合併多く、甲状腺機能低下症もダウン症の合併多いため(ダウン症候群と甲状腺の病気)、3疾患が合併する事があります(J Pediatr Endocrinol Metab 11: 241―246,1998)(Am J Dis Child 140: 479―483, 1986)
  2. 多発性内分泌腺腫症2B型(MEN 2B)で甲状腺髄様癌を合併

腸内細菌叢(腸内フローラ)と甲状腺

ヒトの腸管には善玉菌・悪玉菌・日和見菌から成る「腸内細菌叢(腸内フローラ;お花畑の様に見えるため)」が存在し、善玉菌の減少と悪玉菌の増加で、

  1. 大腸がん、乳がん
  2. 動脈硬化、肥満、糖尿病(Diabetes Care. 2014;37:2343-50.)
  3. アトピー性皮膚炎

などの発症、増悪がおきます。腸管でのバリア機能の低下により、腸内細菌とその生成物が血中へ入ると、免疫反応→サイトカインの増加と慢性炎症が惹起されると考えられています(Diabetes Care. 2014;37:2343-50.)。

腸内フローラと甲状腺

橋本病(慢性甲状腺炎)甲状腺機能亢進症/バセドウ病の発症にも同様の理由で腸内細菌叢(腸内フローラ)が関与している可能性があります(Clin Immunol. 2017 Oct;183:63-74.)(Clin Exp Immunol. 1988;72:288-92.)

エルシニア食中毒の原因菌、Yersinia enterocoliticaが甲状腺機能亢進症/バセドウ病を誘発する可能性は有名です(エルシニア食中毒)。

橋本病(慢性甲状腺炎)甲状腺機能亢進症/バセドウ病の後天的な発症要因であるストレス・喫煙などは腸内細菌叢(腸内フローラ)に悪影響との報告があります(Clin Immunol. 2017 Oct;183:63-74.)。

橋本病(慢性甲状腺)と共通の免疫機序を持つセリアック病は、小麦・大麦・ライ麦などに含まれるグルテンという蛋白質に免疫反応が起こり、小腸粘膜損傷し下痢、消化吸収不良になります(パンや麦製品を食べると下痢、セリアック病と橋本病は密に関係)。セリアック病でも、腸管バリア機能低下により、腸内細菌とその生成物が血中へ入り免疫反応を引き起こすと考えられます。

逆に

  1. 橋本病(慢性甲状腺炎)患者の約50%に小腸内悪玉細菌の過繁殖を認め、健常コントロール群が5%なので、10倍と言う事になります。
  2. 橋本病(慢性甲状腺炎)患者の腸上皮粘膜にリンパ球浸潤とバリア機能の低下を認めます(J Clin Gastroenterol. 2002;34:237-9.)。
  3. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病患者でも小腸内悪玉細菌の過繁殖を認める(Curr Microbiol. 2014;69:675-80.)。

腸内細菌叢(腸内フローラ)は神経伝達物質のセロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリン・アセチルコリンなどを産生するため、甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症/橋本病の精神症状に部分的に影響する可能性があります(Clin Immunol. 2017 Oct;183:63-74.)。(甲状腺機能亢進症精神神経病 甲状腺機能低下症精神神経病 )

過敏性腸症候群(IBSirritable bowel syndrome)

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)は腸に器質的異常(腫瘍、潰瘍、炎症性腸疾患など)が無いのに、腸が正常に機能しない状態です。過敏性腸症候群(IBS)は、3ヶ月間、月に3日以上、腹部不快感あるいは腹痛が繰り返し起こります。

過敏性腸症候群(IBS)は文明病と呼ばれ、ストレスが主な原因で脳から腸を動かす指令が出過ぎるのが原因です。

過敏性腸症候群(IBS)の増悪因子は、

  1. 偏食(アルコール、高脂肪食、インスタント食品、レトルトパウチ、冷菓、香辛料などの過剰摂取)、一日の食事量のアンバランス、夜食の摂り過ぎ、タバコ
  2. 感染性胃腸炎

です。

過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)には

  1. 便秘型
  2. 下痢型
  3. 混合型

があり、甲状腺機能低下症は過敏性腸症候群(IBS)の便秘型、甲状腺機能亢進症は過敏性腸症候群(IBS)の下痢型と同様の症状です。

胃の機能性障害である機能性ディスペプシアを合併することが多く、食物繊維の少ない食事は、便秘と胃腸運動促進を増悪させます。

過敏性腸症候群(IBS)で治療されていても実は別の病気

過敏性腸症候群(IBS)で治療されていても、後から別の病気[大腸癌、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎クローン病)、セリアック病、甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症)]だった事が判る確率は約1%です。特に、重症の場合に間違えやすいとされます。(J Clin Gastroenterol. 2017 May/Jun;51(5):421-425.)

過敏性腸症候群(IBS)の治療

過敏性腸症候群(IBS)で治療薬は、

  1. ポリカルボフィルカルシウム(コロネル錠®、ポリフル錠®);ポリアクリル樹脂。便秘型と下痢型の両方に適応。線維性の薬物で、かつカルシウム塩なので、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の吸収障害を起こす可能性を考えてしまうが、報告では影響ないそうです(Thyroid. 1998 Aug;8(8):667-71.)。
     
  2. ラモセトロン塩酸塩(イリボー錠®)(下記)

    筆者の個人的な意見ですが、そのような使い方は反対です。①甲状腺の病気は女性に多く、②術後に甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)補充が必要になる場合、補充量が足らないと便秘になるためです。
     
  3. リナクロチド(リンゼス錠®);腸管上皮細胞表面のグアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体を刺激し、腸管内への水分分泌を促進するため、便秘型の過敏性腸症候群(IBS)に適応。食後に服用すると腸管への水分分泌が増強され過ぎ下痢になるため食前投与。現在、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の吸収障害を起こした報告はありませんが、理論的にはあり得ると筆者は考えます。
    また、第Ⅱ期の臨床治験で内分泌障害として自己免疫性甲状腺炎1例(0.6%)の副作用報告がありますが、偶然の合併と考えられます。

ラモセトロン塩酸塩(イリボー錠®)

過敏性腸症候群(IBS)で治療薬のラモセトロン塩酸塩(イリボー錠®)は、腸運動を亢進させる神経伝達物質のセロトニン(5‐HT3)をブロックする5-HT3受容体拮抗薬のため、下痢型の過敏性腸症候群(IBS)に適応。

使用用量は男性5μg/日、女性2.5μg/日と女性は半分の量だが、それでも硬便・便秘の副作用が多いので、女性にはあまり使いたくない薬です。

甲状腺切除後の術後悪心・嘔吐にラモセトロン単独、あるいはデキサメタゾン併用が有効(lin Ther. 2002 May;24(5):766-72.)(J Anesth. 2013 Feb;27(1):29-34.)。

甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)に対する放射性ヨード内用療法(RI 治療;131-Iアブレーション)後の悪心・嘔吐(131-Iアブレーション(アジュバント)治療)には効かなかった(Endocrine. 2014 May;46(1):131-7.)。

筆者の個人的な意見ですが、そのような使い方は反対です。①甲状腺の病気は女性に多く、②術後に甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)補充が必要になる場合、補充量が足らないと便秘になるためです。

小児の過敏性腸症候群(IBS)

小児の過敏性腸症候群(IBS)は、

  1. 小学生高学年以前は腹痛のみで便秘・下痢なし
  2. 小学生高学年以降で便秘型か下痢型に分かれる(甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能亢進症/バセドウ病と鑑別要)
  3. 思春期以降は便秘と下痢を交互に繰り返す(交替型)

が主になります。小児の過敏性腸症候群(IBS)治療の基本は食事療法と規則正しい睡眠が主で、整腸薬、止瀉薬、緩下薬などを併用する。

膠原線維性大腸炎

膠原線維性大腸炎

慢性の水様性下痢の原因として膠原線維性大腸炎が増えています。原因で圧倒的に多いのは、

  1. 胃酸を抑える薬ランソプラゾール(商品名タケプロンなど)
  2. アスピリンやロキソニン®など消炎鎮痛剤
  3. 血をサラサラにする薬チクロピジン(商品名パナルジン)

です。膠原線維性大腸炎は、甲状腺疾患(バセドウ病/橋本病)関節リウマチにおこりやすいとされます。顆粒状粘膜、縦走潰瘍などの内視鏡的異常が75%に認められます。

  1. 最大の合併症は慢性的水様性下痢による生活障害
  2. セリアック病(橋本病も合併多い)
  3. 中毒性巨大結腸
  4. 腹膜炎
  5. 大腸癌、神経内分泌腫瘍(NET)

を合併することあり(Can J Gastroenterol. 2012 Sep;26(9):627-30.)

胃酸を抑える胃薬/消炎鎮痛剤の組み合わせは薬剤性間質性腎炎もおこします。

自己免疫性甲状腺疾患に合併する潰瘍性大腸炎(UC)

以前、日本人には少なく、欧米人に多いと言われていた炎症性腸疾患[クローン病と潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitiss:UC)]。実は日本人にも多く、潰瘍性大腸炎(UC)22万人以上(厚生労働省指定の難病で最多)クローン病7万人以上と推定されます。

潰瘍性大腸炎(UC)は大腸の炎症、クローン病は小腸と大腸の炎症です。

いずれも10-30歳代の若年者に多く、甲状腺の病気に合併し、症状が増悪したり、マスクされたりします。

炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎(UC)は自己免疫性疾患らしからぬ自己免疫性疾患で、男女比は1:1、比較的喫煙者が少ない。クローン病で有効な成分栄養剤エレンタール®は有効でないとされます。潰瘍性大腸炎の長期的な予後は良好で健常人と変わりませんが、10年以上で大腸癌の発生率高くなります。

潰瘍性大腸炎(UC)は抗大腸抗体・抗ムチン抗体・抗好中球細胞質抗体(ANCA)などの自己免疫抗体による大腸粘膜障害が報告され(外科 66;754―758:2004)、バセドウ病と同じく抗体産生中心のTh2優位の病態です (Curr Opin Gastroenterol. 1999 Jul;15(4):291-7.)。

潰瘍性大腸炎(UC)における甲状腺疾患の合併率は、健常人の2-4倍とされますが(Q J Med. 1989 Sep;72(269):835-40.)、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の合併率は高いとする報告と否定的な報告の両方があります(Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2016;20(4):685-8.)。

  1. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病による甲状腺クリーゼ  が潰瘍性大腸炎を誘発した可能性があるケース(Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2016;20(4):685-8.)
  2. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病の消化管運動亢進による下痢が、潰瘍性大腸炎を悪化させていた可能性があるケース(第53回 日本甲状腺学会 P-92 バセドウ病と同時期に大腸炎を発症し、放射線治療後に大腸炎の改善を認めたと思われる1例)

が報告されています。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病患者で、甲状腺ホルモンが安定しても軟便・下痢が続く場合は潰瘍性大腸炎の合併を、潰瘍性大腸炎患者で下痢・頻脈・体重減少が強い場合、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の合併を疑うべきです。

潰瘍性大腸炎の治療薬メサラジン製剤はペンタサ®とアサコール®:5-アミノサリチル酸(5-ASA)があります。ペンタサ®は徐放製剤で小腸から大腸にかけて広く分布するため、小腸病変が主体のクローン病にも適応があります。アサコール®はアルカリ性環境の大腸でのみ薬が溶出する仕様で、潰瘍性大腸炎に特化した薬です。

メサラジン製剤は内服で副作用なくても、注腸でアレルギーおこすことがあります。

また、メサラジン製剤は甲状腺機能亢進症/バセドウ病の治療薬、抗甲状腺薬MMI(メルカゾール)、PTU(プロパジール、チウラジール)と同じく無顆粒球再生不良性貧血、白血球減少症を起こす事があります。

副腎皮質ステロイド剤のブデソニドは、泡状で液漏れが少なく、局所作用に優れ、全身副作用が少ないのが特徴。軽症-中等度の直腸型、S状結腸型に有効。

潰瘍性大腸炎(UC)と妊娠

潰瘍性大腸炎(UC)妊娠可能年齢の女性が多く、病勢がコントロールされ、大腸内視鏡でも炎症所見が消えていれば、胎盤移行性が少なく胎児に影響はに少ないプレドニゾロンや5-アミノサリチル酸(5-ASA)を服薬しながら妊娠可能(プレドニゾロンで自己免疫性甲状腺疾患の活動性も抑えられる)。

潰瘍性大腸炎(UC)は、妊娠し難い訳でなく(バセドウ病と同じ)、流早産しやすい事もないが、妊娠中は病勢が悪化する危険性があるので安易な減薬はできない。

高齢発症潰瘍性大腸炎

高齢発症潰瘍性大腸炎は、非高齢発症潰瘍性大腸炎に比べて

  1. 活動度が高く
  2. 元々、高齢で免疫能が低下しているため、免疫抑制薬で重篤な感染症おこし易い

サイトメガロウイルス腸炎、腸潰瘍

潰瘍性大腸炎でステロイド剤治療中に、サイトメガロウイルス再活性化による大腸炎、大腸潰瘍おこる事があります。血管内皮細胞でサイトメガロウイルスが増殖し、炎症により血管が狭窄、腸粘膜が虚血状態になり潰瘍が生じます。潰瘍性大腸炎自体の悪化と紛らわしい。

B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化

潰瘍性大腸炎で抗TNF-α抗体製剤治療中に、B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化による急性肝機能障害を起こす可能性があります。HBs抗原陽性者の20~50%、HBs抗原陰性でHBc抗体 or HBs抗体陽性者の数%で起こります。

エンタイビオ®(ベドリズマブ)で結核、ゼルヤンツ®(トファシチニブ)で帯状疱疹を発症・再発

エンタイビオ®(ベドリズマブ)は、抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体製剤で、潰瘍性大腸炎とクローン病に適応があります。投与期間中に結核を発症・再発する危険性があるため、結核の既往歴を有する場合は、慎重投与。

JAK阻害薬のゼルヤンツ®(トファシチニブ)は、特にアジア人で帯状疱疹の発生頻度が高く注意を要します。

甲状腺癌手術後に発症した偽膜性大腸炎の例

甲状腺癌手術後、抗生物質による菌交代症で偽膜性大腸炎がおこる事があります(耳鼻37:766~770,1991.)。また、分娩後たった3日間のセフェム系抗菌薬内服でも起こり得ます。

偽膜性大腸炎の起炎菌は、

  1. 毒素を出すグラム陽性桿菌Clostridium difficile;健常人の3%が保菌、入院患者の15%が保菌者。toxin A(腸管毒素)とtoxin B(細胞毒素)が腸粘膜を障害
     
  2. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のことも
偽膜性大腸炎

偽膜性大腸炎の原因となる抗生剤は

  1. かつてはリンコマイシン(Lincomycin)やクリンダマイシン(Clindamycin)でしたが
  2. 最近は使用頻度の高いセファロスポリン系抗生物質が多いです。

抗生剤投与中、投与中止後1-2週間後~2カ月以内に発熱、腹痛、下痢で発症します。

すべてが偽膜性大腸炎にならず、非特異的結腸炎のこともあります。重症例では腸穿孔・中毒性巨大結腸をおこし、甲状腺外科から消化器外科に転院になります。

偽膜性大腸炎の画像診断は、直腸から連続的に大腸、更には小腸まで病変が及び、

  1. CTでは壁肥厚が著明;症状の割に重篤感がある
  2. 大腸ファイバーでは偽膜形成

偽膜性大腸炎の確定診断は、糞便検査で

  1. Clostridium difficile トキシン陽性
  2. Clostridium difficile を検出

偽膜性大腸炎の治療は、

  1. 原因となった抗生物質中止
  2. バンコマイシン散剤内服(静脈用にあらず)・メトロニダゾール(フラジール®;アメーバなど寄生虫,ピロリ菌の薬)に切り替えます。

Clostridium difficile は芽胞を形成するためアルコール消毒できず、アルデヒド(グルタラール,フタラール)、過酢酸、次亜塩素酸を使用せねばなりません。芽胞は環境中に長期間存在するため、医療従事者は徹底した接触予防が求められます。芽胞を拡散しない様、流水と石鹸で手洗い必要。

偽膜性大腸炎 CT画像

甲状腺機能低下症による粘液水腫巨大結腸に、Clostridium difficile が起因菌の偽膜性大腸炎を合併した報告があります(Mayo Clin Proc. 1992 Apr;67(4):369-72.)。

Clostridium difficile が起因菌の偽膜性大腸炎で、亜急性甲状腺炎を発症した報告があります(BMJ Case Rep. 2018 Dec 18;11(1):e226711.)

糞便微生物移植

腸内細菌は健康を維持する上で重要です。腸内細菌により小腸のブドウ糖吸収が促進、食物繊維の嫌気性発酵でできる短鎖脂肪酸が吸収されエネルギーになります。腸内細菌叢は安定していますが年齢とともにビフィズス菌が減少。

健康人の腸内細菌を病人に移植する糞便微生物移植の安全性は、ほぼ確立されており、再発性偽膜性大腸炎(クロストリジウム腸炎)の80-90%に有効です。

メトロニダゾール脳症

メトロニダゾール脳症 MRI画像

メトロニダゾール(フラジール®)は血液脳関門を通過しやすく、長期投与でメトロニダゾール脳症をおこします。メトロニダゾール使用量が2g/日を超えるとメトロニダゾール脳症や末梢神経障害が起こりやすくなります。

メトロニダゾール脳症の症状は小脳失調症状。画像は、MRIで左右対称性にT2延長が、血流支配域に一致せず、小脳歯状核(85%)、脳幹(前庭神経核・上オリーブ核・延髄背側)、脳梁膨大部に認められます。

メトロニダゾールを中止すると、症状、画像所見は消失します。

(Radiopaediaより)

大腸憩室

大腸憩室

大腸憩室は、高齢化、食生活の欧米化により増加しています。大腸憩室は、アジアでは右側結腸に多く、若年にみられます。腸間膜の反対側(大網ひも、自由ひも側)に好発(空腸憩室は腸間膜付着側、結腸憩室は結腸ひもに接して)。

大腸憩室は、甲状腺機能低下症の便秘で憩室炎・憩室穿孔をおこす危険があります。

大腸憩室炎による大腸穿孔

大腸穿孔は大腸癌と大腸憩室炎がほとんどで、大腸憩室炎の穿孔はS状結腸に多いです(甲状腺クリーゼの大腸穿孔もあり)。

大腸穿孔により

  1. 腹膜炎
  2. 後腹膜では、腹膜炎にならず後腹膜膿瘍を形成。穿刺ドレナージが必要。

(大腸憩室炎の後腹膜穿孔 造影CT)

大腸憩室炎の後腹膜穿孔 造影CT

大腸憩室炎の穿孔から多発性内分泌腺腫症(MEN)2B型が見つかる事があります。腸神経節腫がアウエルバッハ神経叢へ浸潤し、S状結腸過長症、多発性結腸憩室症、巨大結腸症をおこすためと考えられます。(Hinyokika Kiyo. 2021 Aug;67(8):363-366.)(日臨外会誌60(2),364-370,1999)

大腸憩室出血

大腸憩室出血は、腹痛を伴わない突然の下血です。自然止血が多いですが、再出血します。高齢、男性、痛み止め(NSAID)・血をサラサラにする薬(抗凝固薬)の服薬でリスクが増大。

下血した血の色は、

  1. 鮮紅色なら直腸付近
  2. やや黒みがかっていれば上行結腸付近
    ※胃十二指腸の出血なら黒いタール便

造影CT、大腸内視鏡検査で出血源を特定。内視鏡的止血術が第一選択。しかし、緊急内視鏡なので、便や血液・血腫のためカメラの視野は極端に悪くなります。

止血困難なら血管塞栓術(IVR)、大腸切除手術。

(Am Fam Physician. 2009 Nov 1;80(9):977-983.)

大腸憩室出血
上行結腸憩室出血 単純CT

上行結腸憩室出血 単純CT

上行結腸憩室出血 造影CT 動脈相

上行結腸憩室出血 造影CT 動脈相

上行結腸憩室出血 造影CT 遅延相

上行結腸憩室出血 造影CT 遅延相

甲状腺クリーゼの大腸穿孔

甲状腺クリーゼの大腸穿孔は稀です。大腸なので、交感神経活動性亢進による胃腸粘膜保護因子の低下が原因とは考え難いです。急激な甲状腺ホルモン上昇による激しい消化管運動亢進が、大腸内圧を上昇させるなら説明可能です。元々、便秘があり大腸内圧上昇しやすい状態なら、大腸粘膜が破けるくらい内圧上昇してもおかしくありません。

木沢記念病院の報告では、パーキンソン病による便秘症が元にあり、甲状腺クリーゼ発症後、大腸穿孔を起こしたそうです。(第59回 日本甲状腺学会 P1-4-7 アイソトープ治療後甲状腺クリーゼに発症した大腸穿孔の1例)

大腸内視鏡の抗コリン剤注射は甲状腺機能亢進症、甲状腺眼症(緑内障発作の危険)には禁忌

大腸内視鏡検査、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、ポリペクトミーの前処置に行われる抗コリン剤注射は、

  1. 甲状腺機能が正常化していない甲状腺機能亢進症/バセドウ病には禁忌です。
  2. 長期間、活動性のある甲状腺眼症(バセドウ眼症)のみ緑内障発作の危険があります。ただし、活動の停止した甲状腺眼症(バセドウ眼症)は、緑内障との因果関係ありません。(Ophthalmology. 1997 Jun;104(6):914-7.)
  3. 活動性中の甲状腺眼症(バセドウ眼症)で、ステロイド剤の治療受けているなら、ステロイド緑内障の危険性はあると考えます。

抗コリン剤は、副交感神経をブロックし、相対的に交感神経を優位にするため、甲状腺ホルモンの作用を増強させ、甲状腺機能亢進症/バセドウ病を悪化させます。

授乳中の女性の直腸周囲膿瘍にヨードホルムガーゼを使うと

授乳中の女性の直腸周囲膿瘍に対してヨードホルムガーゼを使用し、生後2週間の母乳育児で一過性甲状腺機能低下症が誘発された報告があります。母親がパッキングヨードホルムガーゼを中止し、乳児に甲状腺ホルモン剤を投与して解決。(J Pediatr Endocrinol Metab. 2004 Apr;17(4):665-7.)

虫垂炎と甲状腺

虫垂炎は

  1. 虫垂へ便塊・食物残渣などが詰まる
  2. 腫瘍やリンパ節などが虫垂を圧排する

等の原因で起きるとされます。

虫垂炎

虫垂炎

虫垂炎 超音波(エコー)画像

虫垂炎 超音波(エコー)画像;腫れた虫垂を認めます。

甲状腺クリーゼ は甲状腺機能亢進症が重症化した危険な状態です。コントロール不良、未治療、再発で甲状腺機能が正常化していないバセドウ病では、虫垂炎そのもの、虫垂炎の緊急手術でも甲状腺クリーをおこす事があります。

虫垂炎では

  1. 最初に心窩部または臍周囲の痛み
  2. 数時間して嘔気/嘔吐
  3. その後右下腹部に痛みが移動
  4. 最後に発熱

が一般的です。嘔気/嘔吐が心窩部または臍周囲の痛み先行する場合、虫垂炎は否定的です。甲状腺機能亢進症/バセドウ病の腸管運動亢進による吐き気と鑑別要です。

マックバーニー点とランツ点
虫垂炎 ダグラス窩

教科書には書いていませんが、時に虫垂が定位置になく、ダグラス窩に入り込んでいる場合があります(医療ドラマ 医龍、第2話)

Rovsing徴候は重要な腹膜刺激症状の一つで、急性虫垂炎で壁側腹膜へ炎症が波及すると、仰臥位の左下腹部圧迫で右下腹部痛が増強する所見です。

Alvaradoスコア(アルバラドスコア)

アルバラド・スコア

Alvaradoスコア(アルバラドスコア)は、問診・採血による生化学検査に基づく急性虫垂炎の補助診断です(確定診断にはなりません)。

Alvaradoスコア(アルバラドスコア)の6点をカットオフ値にした場合、感度75%、特異度41.6%。

Alvaradoスコア(アルバラドスコア)は、

  1. 急性虫垂炎の重症度と無関係
  2. 急性虫垂炎の確定診断にはならないため、追加の検査が必要
Alvaradoスコア(アルバラドスコア)

Alvaradoスコア(アルバラドスコア)が

  1. 低い程、感度は高いが、特異度は低い。よって、急性虫垂炎以外の疾患を除外するのに有用です。(Rev Gastroenterol Mex (Engl Ed). 2018 Apr-Jun;83(2):112-116.)
  2. 高い程、感度は低いが、特異度は高い。

急性虫垂炎の鑑別

急性虫垂炎の鑑別を要するのは、

  1. 虫垂癌
  2. 大腸憩室炎(特に盲腸憩室炎)
  3. クローン病(Crohn病)
  4. 悪性リンパ腫
  5. カルチノイド腫瘍
  6. 尿路結石
  7. 卵巣茎捻転
  8. 腸管ベーチェット病(Behçet病)

などです。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療  長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)は

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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