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遺伝性大腸ポリープ/大腸がんと甲状腺癌      [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病  甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見②甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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甲状腺乳頭癌モルラ型 超音波(エコー)像

甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。

甲状腺乳頭癌モルラ型 超音波(エコー)像(隈病院 第9,10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

遺伝性甲状腺腫瘍

遺伝性に大腸ポリープ/大腸がんが多発する病気[家族性大腸腺腫症、ガードナー症候群、コーデン(Cowden)病]と甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌の関連が知られます。

Summary

常染色体優性遺伝性に若年者で大腸ポリープ/大腸がんが多発する家族性大腸ポリポーシス(FAP)(癌抑制遺伝子APC変異)、ガードナー症候群は、篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌と関連あり。篩型甲状腺乳頭癌腺腫様甲状腺腫のような多結節病変、悪性度が高く高細胞、通常の甲状腺乳頭癌と異なり、すりガラス状の核なし、細胞質もβ-カテニンで染まり、サイログロブリン陰性・エストロゲン受容体・プロゲストロン受容体(ER/PgR)陽性。コーデン(Cowden)症候群も常染色体優性遺伝(PTEN遺伝子変異)で腺腫様甲状腺腫・良性濾胞腺腫・甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌発生。

Keywords

遺伝,大腸ポリープ,大腸がん,家族性大腸ポリポーシス,ガードナー症候群,コーデン病,ふるい型乳頭,モルラ型乳頭癌,甲状腺,ポイツ・ジェガーズ症候群

近親者・御自分が大腸ポリープ/大腸がんの方は、甲状腺超音波(エコー)検査が必要です。
また、近親者・御自分が甲状腺癌なら、大腸検査が必要です。

  1. 家族性大腸ポリポーシス(familial adenomatous polyposis;FAP):常染色体優性遺伝による癌抑制遺伝子APC(adenomatous polyposis coli)変異で若年者で大腸癌に。甲状腺、子宮、卵巣でもAPC遺伝子が存在します。60歳頃までに、ほぼ100%大腸癌が発症するため、予防的大腸切除が推奨されます。同時に、多発性胃ポリープから胃がん、十二指腸がん発生する危険あります。
     
  2. ガードナー(Gardner)症候群:常染色体優性遺伝で骨腫と軟部腫瘍を併発、40歳までに100%癌化
     
  3. 遺伝性非ポリポーシス大腸がん(リンチ症候群)は全大腸がんの数パーセントで、ミスマッチ修復遺伝子異常です。子宮体がん、卵巣がん、胃がん、小腸がんの合併ありますが、甲状腺癌との因果関係は現在のところありません。

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌(cribriform-morular variant)

家族性大腸ポリポーシス(familial adenomatous polyposis;FAP)、ガードナー症候群に関連する甲状腺乳頭癌篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌です。家族性大腸ポリポーシス(FAP)の0.3–1.2%に甲状腺乳頭癌が発生し、篩型乳頭癌がほぼ100%を占めます(Histopathology. 1994 Dec;25(6):549-61.)。

もちろん、FAPと無関係の散発性篩型乳頭癌も存在しますが、甲状腺乳頭癌の0.1%に過ぎません。篩型乳頭癌は、ほとんど30歳以下の女性(男女比≒1:10)に発症し、常染色体優性遺伝形式を示しません。(APC遺伝子異常による家族性大腸ポリポーシスは常染色体優性遺伝ですが)

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌は、APC遺伝子異常により、腺腫様甲状腺腫濾胞性腫瘍のような多結節病変を形成します。通常の甲状腺乳頭癌とは異なり、甲状腺髄様癌に似た紡錘型細胞が特徴で、紡錘型細胞が篩(ふるい)・モルラ(渦巻状の小結節)構造を形成します(papillary carcinoma, cribriform-morular variant;CMPTC)。

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌は、甲状腺乳頭癌高細胞型と同じく、悪性度が高い点が、通常型甲状腺乳頭癌と異なります。家族性大腸ポリポーシス(FAP)に合併する篩型乳頭癌の約10%が、転移もしくは甲状腺癌死したそうです(Histopathology. 1994 Dec;25(6):549-61.)。

(写真:隈病院 第9,10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

モルラ型甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)像

モルラ型甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)像①

甲状腺乳頭癌モルラ型 超音波(エコー)像

モルラ型甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)像②

甲状腺乳頭癌モルラ型 病理組織[篩(ふるい)型構造]

モルラ型甲状腺乳頭癌
篩(ふるい)型構造:濾胞の内腔にコロイドがない;弱拡大

甲状腺乳頭癌モルラ型 病理組織モルラ(高細胞)

モルラ型甲状腺乳頭癌:高細胞

甲状腺乳頭癌モルラ型 病理組織モルラ(渦巻状構造)

モルラ型甲状腺乳頭癌:モルラ(渦巻状の小結節)構造

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の細胞診

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の細胞診は、

  1. 高細胞・多発空胞・硝子球・peculiar nuclear clearing[充実性領域の細胞を主体に核が明るく抜ける像]など特徴的
  2. あるいは結合性に富み重積性を示す紡錘形細胞集塊のこともあり[甲状腺髄様癌胸腺様分化を伴う紡錘形細胞腫瘍(SETTLE)と鑑別]

通常の甲状腺乳頭癌のようなすりガラス状の核はありません。

甲状腺乳頭癌モルラ型 細胞診

通常型甲状腺乳頭癌と異なり、サイログロブリン陰性で、乳癌と同じくエストロゲン受容体・プロゲストロン受容体(ER/PgR)を持ち、免疫染色で区別できます。通常型甲状腺乳頭癌と同じくTTF-1は陽性です。

また、通常型甲状腺乳頭癌では核のみβカテニン染色で染まりますが、篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌は細胞質も染まります。
※β-カテニンはAPC蛋白の下流の物質

モルラ型甲状腺乳頭癌:多発空胞

モルラ型甲状腺乳頭癌:硝子球

モルラ型甲状腺乳頭癌:peculiar nuclear clearing

家族性大腸ポリポーシスの遺伝子診断

家族性大腸ポリポーシス[家族性腺腫性ポリポーシス、familial adenomatous polyposis;FAP]の原因遺伝子、APC遺伝子を持っていると100%大腸がんになります。APC遺伝子診断を行い、APC遺伝子変異陽性者は予防的大腸切除術が必要になります。

コーデン(Cowden)症候群

コーデン(Cowden)症候群

コーデン(Cowden)症候群:常染色体優性遺伝で、PTEN遺伝子変異による過誤腫・過形成・癌腫を空間的・時間的に多発する疾患です。

  1. 大腸ポリープ
  2. 顔面多発丘疹、Cowden 皮疹、四肢の角化性皮疹、多発性毛根腫、口腔内乳頭腫症を多発
  3. 甲状腺良性疾患70%(腺腫様甲状腺腫良性濾胞腺腫)・甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)3-10%
  4. 副甲状腺腫(稀)
  5. 副腎過形成
  6. 乳癌25~50%
  7. 子宮内膜癌5~10%

(写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺微小乳頭癌の合併を認めた10歳の男児症例も報告されています。(第56回 日本甲状腺学会 O2-6 PTEN 遺伝子に異常を認めたCowden 症候群に対して甲状腺全摘を施行した小児症例)

コーデン(Cowden)症候群による腺腫様甲状腺腫を認めた場合、甲状腺分化癌甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)が発生する、あるいは既に合併している可能性があるため、甲状腺全摘出します。事前に多発する腺腫様結節のどれが、どの部分が癌化しているか同定するのは困難で、全ての甲状腺細胞がPTEN遺伝子変異を持っている限り、いつか、どれかが癌化する危険があるためです。

ポイツ・ジェガーズ症候群

小宇宙2

ポイツ・ジェガーズ症候群は、癌抑制遺伝子STK11の機能喪失型変異で、

  1. 口唇・眼瞼・頬・四肢末端皮膚の色素沈着で、幼少期より出現し、成人で自然消失
  2. 小腸ポリポーシス(過誤腫ポリープ)(慢性的な腸出血、再燃性腸閉塞・腸重積)
  3. 消化器癌が最多(60%)
    女性は乳癌(40-50%)、性索腫瘍、卵巣癌、子宮頸部悪性腺腫
    男性は石灰型精巣セルトリ細胞種(エストロゲン分泌し、女性化乳房)を合併。

「胃癌および甲状腺癌を合併したpeutz-jeghers症候群の1剖検例」(第93 回日本病理学会総会)
(第55回 日本甲状腺学会 P2-04-01 Peutz-Jegers 型大腸ポリープおよび直腸癌を重複した甲状腺癌の一症例)
などの報告がありますが、甲状腺との遺伝子的な関係は証明されていません。

「栄養状態並びに甲状腺機能を16年間観察したPeutz-Jeghers症候群の1例」(日本臨床外科学会雑誌 Vol. 76 (2015)  No. 5  p. 1053-1058):ポリープの再発に伴い低栄養,サルコペニア,低T3低T4症候群をきたし、ポリープ摘出術で改善する病態を繰り返すそうです。

分子標的薬アービタックス®(セツキシマブ)

分子標的薬アービタックス®(セツキシマブ)は、上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害し、癌細胞の増殖を抑えます。大腸がん・頭頸部がんが保険適応ですが、EGFR受容体陽性の甲状腺未分化癌副甲状腺癌にも有効との報告が出ています(第57回 日本甲状腺学会 P2-067 甲状腺未分化癌に対しセツキシマブが有効であった一例)。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


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