バセドウ病は良くなっても隠れていた病気が・・[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください。
バセドウ病で長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方への注意
バセドウ病の治療開始(再開)後は、頻回の副作用チェックが必要なため①大阪市と隣接市の方に限定②来院できず薬を自己中断する方をお受けできません。
Summary
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、ケガの功名で甲状腺ホルモンが他の病気を抑えていて、甲状腺ホルモンが正常化すると、その病気が現れる。甲状腺ホルモンの交感神経刺激作用で拡張していた気管支が元に戻るため、気管支喘息・非アトピー型喘息・COPD(慢性気管支炎、肺気腫)の出現/再発/増悪が起こる。成人喘息の寛解率10%未満なので、治癒したと思っていても、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が治療されると、再出現。過剰な甲状腺ホルモンによる脂肪分解亢進が正常化するため、血中コレステロール(問題は悪玉コレステロールのLDLコレステロール)、中性脂肪(トリグリセリド)が上昇。
Keywords
甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺ホルモン,気管支喘息,非アトピー型喘息,COPD,慢性気管支炎,肺気腫,コレステロール,中性脂肪
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の甲状腺ホルモン過剰状態では、ケガの功名で色々な病気がマスクされ(甲状腺ホルモンが他の病気を抑えていた)、甲状腺ホルモンが正常化すると現れることがあります。
甲状腺ホルモンの交感神経刺激作用で拡張していた気管支が元に戻るため、気管支喘息の出現/再発/増悪が起こります(甲状腺機能亢進症と気管支喘息)。
成人喘息の寛解率10%未満なので、治癒したと思っていても、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が治療されると、再出現します。症状改善しても吸入ステロイド剤継続要。ベータ2刺激薬・徐放性テオフィリン薬は交感神経刺激しサイロイドハート(甲状腺による心臓障害)を誘発する危険あり、ベータ2刺激薬単独は死亡率が上昇します。ロイコトリエン拮抗薬はアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎合併に有用で、アレルギー反応を抑える事により甲状腺機能亢進症/バセドウ病の活動性を下げます。
非アトピー型喘息はアレルゲン抗体反応がないのに気道に好酸球やリンパ球が浸潤する喘息です。風邪、タバコの煙、大気汚染、気温/湿度の変化、過度のストレスが影響。甲状腺ホルモンの交感神経刺激作用で拡張していた気管支が元に戻るため非アトピー型喘息の出現/再発/増悪が起こります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は慢性気管支炎や肺気腫の総称、タバコ等の有害物質を長期間吸入で起こる。COPD患者は特に女性で甲状腺の病気が多い。中枢性甲状腺機能低下症は特に多く重症COPDほど合併率が高い。甲状腺機能亢進症/バセドウ病では甲状腺ホルモンの交感神経刺激作用で気管支拡張しCOPDがマスクされ、治療後、元に戻りCOPD出現/再発/増悪。逆の報告として甲状腺ホルモンの異化亢進により呼吸筋力低下、呼吸機能が悪化。COPDが重症な程、低酸素症も重篤(重症)で異化亢進を抑える低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス)の頻度が高い。
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)は、慢性気管支炎や肺気腫の総称です。タバコ等の有害物質を長期間吸入すると、
- 気管支の炎症(慢性気管支炎)
- 酸素交換の場である肺胞が破壊(肺気腫)
はおこります。90%以上はタバコが原因で、タバコによる肺の生活習慣病(別名「タバコ病」)です。
40歳以上の10人に1人は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の疑いがあるとされ、めずらしい病気ではありません。世界の死亡原因の第4位を占め、放置すると命にかかわります。
COPDの症状は
- 気道炎症によるせき・たん
- 気管が細くなる→ぜんそくの様な喘鳴
- 酸素の取り込み、二酸化炭素の排出が低下→呼吸困難
- 口すぼめ呼吸;呼気時に気道内圧を高めて気道の虚脱を防ぐ呼吸
で、喘息と同じです。しかし、慢性気管支炎はベータ2刺激薬吸入により一秒率が改善し難い点で喘息と鑑別できます。COPDは治療によって症状が多少改善しても、破壊された肺胞は元に戻りません。
肺気腫ではCO肺拡散能(DLco)低下、肺がのび切ったゴムのようになり(肺コンプライアンス上昇)、速く息を吐けなくなります。
COPD患者に甲状腺超音波(エコー)検査を行うと、胸鎖乳突筋の肥大を認めます。
COPDの予防かつ最も重要な治療は、タバコを吸わない、タバコをやめる、タバコの煙を避けることに尽きます。COPD患者の呼吸リハビリテーションおよび禁煙指導は、肺機能悪化や疾患死を予防するための三次予防です。
COPD患者は気道感染をおこしやすく、重症化する危険性は高いため、予防接種(23価肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン)が推奨されます。
吸入型長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは吸入型長時間作用性β2刺激薬(LABA)が第一選択(COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5 版])。効果不十分ならLABA/LAMA合剤。
COPDの人は低酸素状態に慣れているので、高濃度酸素を大量に吸うと、脳が「これ以上、呼吸しなくて良いと」誤認し、呼吸抑制、最悪、呼吸停止に至ります。結果、二酸化炭素(CO2)が体内に蓄積し、意識障害が出現します(CO2ナルコーシス)。
COPD 急性増悪の治療は、ABC アプローチを行う
- A:Antibiotics(抗菌薬)
- B :Bronchodilators(気管支拡張薬)→ 吸入型短時間作用性β2刺激薬(SABA)+抗コリン薬
- C :Corticosteroids(ステロイド)
ハイフローセラピー(高流量鼻カニュラ、ネーザルハイフロー)も追加。
COPDが増悪し呼吸不全になった時(pH<7.35 もしくは PaCO2>45 mmHg)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)による人工呼吸器依存を防ぐため、第一にNPPV(非侵襲的陽圧換気)が推奨されます。ただし、
- 顔・鼻マスクが装着可能
- 循態循環動態が安定している
- 意識があり、自力で喀痰排出が可能
であることが条件。不可能なら、気管挿管による人工呼吸管理。
COPD患者は、特に女性では甲状腺の病気(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症両方)を合併している確率が高いです。COPD患者の炎症、低酸素症、副腎皮質ステロイド薬の使用、喫煙などが、甲状腺機能障害の発症を誘発します。
COPD患者の中枢性甲状腺機能低下症は特に多く、重症のCOPDほど合併率が高いとされます(Int J Contemp Med Res 2016;3:1239-42.)。
- 副腎皮質ステロイド薬;甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌抑制、甲状腺ホルモンT4→T3への変換障害(Eur Respir J 2009;34:975-96.)
- 炎症性サイトカイン(IL-6[インターロイキン(Interleukin)-6]、IL-1、TNF-a);甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌抑制、T4→T3への変換障害(Eur Respir J 2009;34:975-96.)
- 低酸素症;甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌抑制
- 高齢;甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌抑制(Thorax 1987;42:520-5.)
が原因です。
逆に甲状腺機能低下症では、
- 呼吸筋の機能が低下
- 横隔神経の神経筋接合部における神経伝達の減少
によりCOPDが悪化します(負のスパイラル)(Eur Respir J 2009;34:975-96.)(Respiratory Medicine 2013;8:64.)。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の甲状腺ホルモン過剰状態では、甲状腺ホルモンの交感神経刺激作用で気管支は拡張し、COPD(慢性気管支炎、肺気腫)がマスクされます。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病を治療し、甲状腺ホルモンが正常化すると、拡張していた気管支が元に戻るためCOPD(慢性気管支炎、肺気腫)の出現/再発/増悪が起こります。
逆の報告もあり。甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、甲状腺ホルモンの異化亢進(蛋白分解)により呼吸筋力が低下し、呼吸機能が悪化。治療により甲状腺ホルモンが正常化すると回復します。(Am Rev Respir Dis 1992;146:1025-9.)(Adv Respir Med 2017;85:28-34.)
COPDの治療は、長時間作用型ベータ2刺激薬・長時間作用型抗コリン薬(第一選択)・徐放性テオフィリン薬等を重症度に応じて併用。甲状腺機能亢進症/バセドウ病が隠れていたり、治療中でも甲状腺ホルモンが正常化していないと、交感神経が刺激され
を誘発する危険があります。急性増悪繰り返す場合、吸入ステロイド剤も併用します。これらは進行を抑制できませんが呼吸困難・運動耐容能は改善します。
禁煙は絶対:肺機能を改善しませんが、進行速度を低下させます。禁煙しないと甲状腺機能亢進症/バセドウ病自体も再発しやすくなります。
呼吸リハビリは低酸素を改善しませんが呼吸困難・運動耐容能は改善します。COPDでは、肺の構造が壊れてコンプライアンスが異常上昇(ゆるゆるの状態)しているため、末梢気道が呼気時に閉塞します。口をすぼめて息を吐くと、気道内圧が上がり、末梢気道の閉塞を防げるので、、口をすぼめ呼吸を指導します。
- 安定期(落ち着いている)COPDの14-20%
- 増悪期COPDの70%
に認められます(Eur Respir J 2009;34:975-96.)。
COPDが重症な程、低酸素症は重篤(重症)になり、異化亢進を抑える低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス)の頻度が高くなります。(Int J Clin Exp Med 2015;8:10114-21.)
COPDは好中球が主体の気道炎症、気管支喘息は好酸球が主体の炎症ですが、全くの別物ではなく混在していることが多いのです[喘息-COPD オーバーラップ症候群、asthma-COPD overlap syndrome(ACOS)]。
喘息-COPD オーバーラップ症候群は、喘息とCOPD 両方の特徴を併せ持つ。
喘息、COPD 単独の場合と同じように喘息-COPD オーバーラップ症候群も、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の改善に伴って悪化し、逆に甲状腺機能亢進症/バセドウ病が悪化している時ほど軽快します。
COPDの約25%がACOS、喘息患者の約25%もACOS、特に65歳以上の喘息患者は60%以上がACOSとされます。ACOSは喘息、COPD 単独と比較し、重篤(重症)な急性増悪をおこしやすく予後不良です。
喘息-COPD オーバーラップ症候群の治療は、吸入ステロイド+長時間作用性β2 刺激薬+長時間作用型抗コリン薬。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の頻脈で洞不全症候群がマスクされている事があります。治療して甲状腺ホルモンが正常化すると、本来の洞不全症候群に戻ります。怪我の功名で過剰な甲状腺ホルモンがペースメーカー的な役割をしていたのです。
また、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の甲状腺全摘術後に、洞不全症候群を伴う先天性QT延長症候群が見つかった報告があります(臨床雑誌内科 2013;112(1):192-197.)。
過剰な甲状腺ホルモンによる脂肪分解亢進(甲状腺と低HDLコレステロール血症/中性脂肪)が正常化するため、血中コレステロール(問題は悪玉コレステロールのLDLコレステロール)、中性脂肪(トリグリセリド)が上昇します。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、腸管運動が活発になり過ぎて、軟便・下痢気味、快便過ぎる状態になります。甲状腺機能亢進症/バセドウ病を治療し、甲状腺ホルモンが正常化すると、腸管運動が本来の状態に戻り、元々、便秘気味の人は便秘になります。(甲状腺ホルモンと便秘・下痢)
便秘になったのを、患者が抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の副作用と勘違いし、自己中断すれば、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が再発します。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、過剰な甲状腺ホルモンが、ドンドン脂肪、筋肉、骨などを分解するため、食べても食べても痩せる事が多いです。
治療により甲状腺ホルモンが低下し、それらの分解が低下すれば、食べた量に応じて体重が増え、本来の体重に戻っていきます。そもそも、人間は食べた分だけ太る生き物なのです。
また、脳の食欲中枢は、甲状腺機能が改善しても、すぐにはリセットされないので、必要以上に食べて肥満になります。
体重増加を抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の副作用と勘違いし、自己中断すれば、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が再発します。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、新陳代謝が活発過ぎて、多汗になります。常に皮膚が湿っているので、元々の乾燥肌がマスクされている事があります。
治療により甲状腺ホルモンが低下し、発汗が低下すれば、本来の乾燥肌に戻っていきます。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市も近く。