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甲状腺と胃がん、KIT(CD117)陽性消化管間質腫瘍[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

胃粘膜下組織

甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。胃の病気の診療をは行っておりません。

Summary

NK1(ニューロキニン)受容体拮抗薬アプレピタントは抗癌剤投与に伴う悪心嘔吐に有効。動物実験では甲状腺濾胞細胞腺腫が発生。消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)が3型脱ヨード酵素(D3)を過剰発現すると、血中の甲状腺ホルモン濃度が低下(消費性甲状腺機能低下症)。KIT陽性消化管間質腫瘍治療薬スチバーガ®(レゴラフェニブは、スーテントカプセル®(スニチニブ)は50%で甲状腺機能低下症破壊性甲状腺炎。胃癌の甲状腺転移(転移性甲状腺がん)は、他臓器からの転移性甲状腺がんに比べ稀(約4%)。

Keywords

アプレピタント,甲状腺,消化管間質腫瘍,GIST,ジスト,甲状腺機能低下症,レゴラフェニブ,スーテントカプセル,胃癌,転移

NK1(ニューロキニン)受容体拮抗薬アプレピタンで甲状腺腫瘍

NK1(ニューロキニン)受容体拮抗薬アプレピタントは抗癌剤投与、特に高度催吐性抗癌剤シスプラチン(CDDP)に伴う悪心嘔吐に有効です[Mol Clin Oncol. 2016 Mar;4(3):393-398.]。ラットの動物実験では甲状腺濾胞細胞腺腫が発生しています。

抗癌剤の制吐療法には、NK1(ニューロキニン)受容体拮抗薬、5-HT3受容体拮抗剤(パロノセトロンなど)、デキサメサゾンの3者併用療法が推奨されます。パロノセトロン、デキサメサゾンは糖尿病悪化の可能性あり。

甲状腺未分化癌の抗癌剤治療に伴う悪心嘔吐に有用。

日本では適応外使用になりますが、インドの報告では、アプレピタントは術後悪心・嘔吐が多い乳房・甲状腺手術でオンダンセトロン注射と同等の効果があるとされます[Indian J Anaesth. 2019 Apr;63(4):289-294.]。

KIT(CD117)陽性消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)

GIST(消化管間質腫瘍)

消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)は年間10万人に1人の頻度で、胃腸の壁の中(粘膜の下)にできる悪性腫瘍(肉腫)です。普通の胃がんや大腸がんは粘膜から発生するので、性質が異なります。

消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)の60-70%は胃壁に発生します。

GIST(消化管間質腫瘍)は、

  1. 粘膜下にあるため、早期では無症状で、胃カメラで偶然発見される事が多い
  2. 粘膜腫瘍ではないため、リンパ節転移しないが、血行性転移はあり

(表;NPO法人GISTERSより)

消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)

消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)が甲状腺ホルモン(T4)を脱ヨード化し、ホルモン活性を持たないrT3(リバースT3;reverse T3)に分解する3型脱ヨード酵素(D3)を過剰発現すると、血中の甲状腺ホルモン濃度が低下します。(消費性甲状腺機能低下症;consumptive hypothyroidism)。(Int J Clin Exp Med. 2015 Oct 15;8(10):18413-9.)

消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)の転移は肝、腹膜に多く、皮下、分化型甲状腺癌(乳頭癌濾胞癌)と同じく肺・骨にも見られます。

消費性甲状腺機能低下症

消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)は局所切除可能です。しかし、噴門部(胃の入口)にできた場合、胃を動かす迷走神経を同時切除せねばならず、残った胃は動かなくなり、様々な合併症が起きるため胃全摘になります。

切除不能、切除後再発のKIT陽性消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)にはKIT受容体チロシンキナーゼを阻害するグリベック®(成分:イマチニブ)、抵抗性ある場合はスーテントカプセル®(成分:スニチニブ)が使用されます。スニチニブは50%で高率に甲状腺機能低下症破壊性甲状腺炎をおこします。イマチニブも甲状腺機能障害をおこす可能性があります。

スチバーガ®(レゴラフェニブ)は、スーテントカプセル®(スニチニブ)と同じくマルチキナーゼ阻害薬で、KIT受容体チロシンキナーゼだけでなく、VEGFR(血管内皮細胞増殖因子受容体、TIE2、PDGFR-β(血小板由来増殖因子受容体)のチロシンキナーゼを阻害します。

レゴラフェニブは約50%で急激な甲状腺機能低下症を引き起こし、その一部は甲状腺に対する自己免疫が原因です。[Eur J Endocrinol. 2017 Jul;177(1):85-92.]

KIT(CD117)陽性消化管間質腫瘍(GIST;ジスト)

胃癌の甲状腺転移(転移性甲状腺がん)

胃がんは症状が無いため、定期検診しか早期発見の方法がありません。胃がんの早期発見には、1年に一度の胃内視鏡検査が必要とされます。

胃癌の甲状腺転移(転移性甲状腺がん)は、他臓器からの転移性甲状腺がんに比べ稀(約4%)です(Diagnostic Pathology and Molecular Genetics of the Thyroid, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2009, p348-356)。

一般的に、胃がんの遠隔転移に化学療法(抗がん剤治療)を行った場合、生存期間中央値は1年強です。化学療法を行わなかった場合は半年から1年が目安でしょう。

胃癌
胃印環細胞癌の甲状腺転移 超音波(エコー)画像

胃印環細胞癌甲状腺転移 超音波(エコー)画像。さすがに印環細胞癌ほど悪性度が高い胃がんでない限り、甲状腺まで来れません。(日臨外会誌 74(11),2974―2979,2013)

下、胃印環細胞癌 びまん性甲状腺転移。超音波(エコー)検査では、甲状腺全体がびまん性に腫大し、内部は低エコーまたは等エコーで不均一。低エコー線(樹枝状低rコー)を伴い網状パターン(癌性リンパ管炎)。[J Med Ultrason (2001). 2017 Jan;44(1):133-139.]

胃印環細胞癌 びまん性甲状腺転移
びまん性甲状腺転移 胃印環細胞癌 細胞診

びまん性甲状腺転移 胃印環細胞癌 細胞診 ;(黄→)印環細胞(シグネット リング細胞)、(黒矢頭)低分化細胞

印環細胞癌(胃がん)甲状腺転移 細胞診

印環細胞癌(胃がん)甲状腺転移 細胞診;印環細胞(シグネット リング細胞)を認めます。

潰瘍型早期胃癌(陥凹型早期胃癌)

潰瘍型早期胃癌(陥凹型早期胃癌)は無症状が多いものの、胃潰瘍と同じように胃角部に発生し、心窩部痛をおこす場合があります。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で両者は似ており鑑別困難なことも多いため、生検での鑑別を要します。潰瘍型早期胃癌(陥凹型早期胃癌)は、辺縁が隆起し、かつ不整ですが、これだけで良性潰瘍との鑑別にはなりません。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は、甲状腺診療における超音波エコー検査と同じくらい重要です。

潰瘍型早期胃癌

胃カメラ・大腸カメラ

かわさき消化器内科クリニック

胃カメラ・大腸カメラは、かわさき消化器内科クリニック(大阪市平野区瓜破)にお願いしています。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療  長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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