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ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と甲状腺[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院(現、大阪公立大学附属病院) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

ヘリコバクター・ピロリ菌と甲状腺

甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。胃の病気の診療を行っておりません。

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と甲状腺

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌を行っていません。

Summary

ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の産生するアンモニアが胃酸を中和し、胃液の酸性度が低下すると、甲状腺機能低下症治療薬のチラーヂンS(甲状腺ホルモン剤)吸収障害がおきる。除菌後は吸収が増加し甲状腺中毒症に。ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)陽性の胃腸障害患者では橋本病(慢性甲状腺炎)の頻度が高い。ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は、胃粘膜悪性リンパ腫(MALT)、自己免疫性甲状腺疾患(橋本病バセドウ病)に合併する免疫性血小板減少性紫斑病・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)をおこす可能性。胃と甲状腺同時性MALTリンパ腫がある。

Keywords

ヘリコバクター・ピロリ,ピロリ菌,甲状腺機能低下症,チラーヂンS,除菌,甲状腺,胃粘膜悪性リンパ腫,MALT,橋本病,甲状腺ホルモン

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と甲状腺の病気

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃の中に住む細菌です。通常の細菌は胃酸で溶けてしまいますが、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)はアンモニアを作り、胃酸を中和して身を守ります。5歳までにピロリ菌に感染すると、ほぼ一生感染が続きますが、大人になってからは感染しにくいとされます。日本では、衛生状態が悪かったころに感染した人が多く、60歳以上の8割が感染しています。

ヘリコバクター・ピロリと甲状腺の病気
  • ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)のウレアーゼ酵素が、胃内の尿素を分解しアンモニアが作られます。アンモニアが胃酸を中和すると、胃液の酸性度が低下し、甲状腺機能低下症治療薬のチラーヂンS(甲状腺ホルモン剤)吸収障害がおこります。同時に鉄吸収障害から鉄欠乏性貧血もおこります。胃酸が中和されるので逆流性食道炎はおこりにくくなります。(N Engl J Med. 2006 Apr 27;354(17):1787-95.)


  • 逆にヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を除菌すると、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の吸収が急によくなり、甲状腺ホルモンの血中濃度が急上昇し甲状腺中毒症になる危険があります。(チラーヂンSを減量する必要あり)[Helicobacter. 2011 Apr;16(2):124-30.]
     
  • ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)陽性の胃腸障害患者では、陰性患者に比べて橋本病(慢性甲状腺炎)の頻度が高いとされますEndocr Res. 2015;40(4):211-4.

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と胃の病気

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃粘膜に潜り込み、機能性胃腸症、慢性胃炎・鳥肌胃炎(未分化型胃がんの危険因子)・胃潰瘍/十二指腸潰瘍[ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌療法の普及で減少中]・胃がん・胃過形成ポリ-プ(除菌で縮小・消失)・巨大すう壁症(除菌で改善)に関与します。

また、早期胃がん切除術後にヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌を行うと、新しい胃がん(異時性胃がん)の発症リスクが下げるとされます「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2009改訂版」。

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌治療により、消化性潰瘍の再発率は著明に低下、胃癌発生率も低下します。ただし、初めからピロリ菌陰性の場合と比べると、胃癌発生率は高く、定期的な上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査が必要。
[要するに、たとえヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を除菌しても、すでに遺伝子レベルで発癌の引き金が引かれている可能性がある。過信せずにヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌後も、定期的に胃カメラを受けましょう。]

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による萎縮性胃炎

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による胃粘膜の炎症が長期に及ぶと、胃の粘膜が萎縮し萎縮性胃炎に至ります。萎縮の程度が強いほど、萎縮の範囲が広いほど胃がんの頻度が高くなります。[Digestion. 2015;91(1):30-6.]。

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による胃過形成ポリ-プ

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による胃過形成ポリ-プは、表面がイチゴのように赤く顆粒状で光沢があります。また、出血やびらんも多く、貧血をおこす事もあります。

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌で縮小・消失しますが、

  1. 2cm以上で増大傾向
  2. 癌化の可能性
  3. 出血・貧血

がある場合、手術適応になります。

胃過形成ポリ-プ

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による胃腺腫、早期胃がん、除菌後多発性扁平隆起病変

胃腺腫
早期胃がん

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と萎縮性胃炎による

  1. 胃腺腫(アデノーマ);前がん病変で数%に癌化がみられるため、切除対象。ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌で消失しないが、異時多発がんの予防目的で除菌を行う。
     
  2. 早期胃がん;Ⅱc型が多いが、Ⅱa型もある。切除対象。ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌で消失しないが、異時多発がんの予防目的で除菌を行う。。
多発性扁平隆起病変

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌後の多発性扁平隆起病変では除菌しない。一般人口の10%未満にみられ、萎縮性胃炎、女性、高齢者、胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプ阻害薬)が危険因子。ほとんど胃がんに進展しない。

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と無関係の胃底腺ポリープ

胃底腺ポリープは、

  1. 若年・中年女性に多い
  2. ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)とも萎縮性胃炎とも無関係で、正常な胃粘膜を背景として発生
  3. 逆流性食道炎にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を長期使用した場合や、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌後の萎縮性粘膜に発生することもある
  4. 胃穹窿部・胃体部(胃底腺領域のみ)に発生
  5. 5mm大以下、無茎性ポリープ、多発傾向、胃粘膜と同色調
  6. 組織的には腺窩上皮の嚢胞状拡張が特徴
  7. 胃癌へ進展する危険性は無く、病的意義は無い
胃底腺ポリープ

胃底腺ポリープ

胃底腺ポリープ

胃底腺ポリープ

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が100%陽性の鳥肌胃炎

鳥肌胃炎

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が100%陽性の鳥肌胃炎は、未分化型胃癌が高率に発生します。

(Trop Gastroenterol. 2012 Jan-Mar;33(1):55-61.)

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による胃外病変

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は、

  1. 胃粘膜悪性リンパ腫(MALT)
  2. 自己免疫性甲状腺疾患(橋本病バセドウ病に合併する免疫性血小板減少性紫斑病・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
  3. 狭心症や心筋梗塞
  4. 慢性蕁麻疹

をおこす可能性が報告されます。

胃MALTリンパ腫

胃MALTリンパ腫 内視鏡画像

胃粘膜悪性リンパ腫(MALT) 内視鏡画像;顆粒状、びらん性、Ⅱc型早期胃癌に類似するが浅い潰瘍性病変、襞の肥厚など多彩

胃MALTリンパ腫 病理組織

胃粘膜悪性リンパ腫(MALT) 病理組織;大型の異型リンパ球がびまん性に増殖

胃粘膜悪性リンパ腫(MALT):90%にヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染があり、除菌するとMALTの80%が消失・縮小するとされます。

筆者が経験した症例には、胃・甲状腺同時性MALTリンパ腫がありました(胃が先に見つかった)。どちらも、おとなしいはずですが、甲状腺のMALTリンパ腫は浸潤性が高く、とても甲状腺原発の悪性リンパ腫(MALT)とは思えませんでした。

フランスでは、最初に甲状腺(橋本病を伴う)、次にMALTリンパ腫が見つかった報告があります(J Chir (Paris). 1997;134(9-10):438-41.)。筆者の経験例と異なり、浸潤性は高くなかったようです。

その他、肺・胃同時性MALTリンパ腫の1手術例などの報告もあります。ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌で胃のMALTリンパ腫は消失したが、肺MALTリンパ腫は消失しなかったそうです。(第53回 日本肺癌学会総会 2012年)

表在拡張型胃MALTリンパ腫

胃粘膜の平坦な褐色域は、表在拡張型胃MALTリンパ腫か、表在型胃がんのどちらかです。内視鏡検査で慢性胃炎と間違えないようにしましょう。(Vojnosanit Pregl 2015; 72(5): 431–436.)

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌方法・保険適応

ピロリ菌除菌
  1. ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による慢性胃炎(ただし内視鏡で確認されたもののみ)も除菌治療が保険適用になります。
       
  2. 除菌2~4 週間前から乳酸菌「LG21」を含むヨーグルトを継続して食べると除菌成功率が上がるとされます。
      
  3. 一次除菌治療として胃酸分泌抑制薬と抗生物質(アモキシシリン、クラリスロマイシン)。
    クラリスロマイシン耐性菌は35%にまで増加。除菌の副作用として、軟便下痢(30%)、口内炎/舌炎(10%)がおこります。
       
  4. 効果ない場合、クラリスロマイシンを、原虫治療薬メトロニダゾールに変更し二次除菌。
    効果判定は4W後以降に(8Wでも可)迅速ウレアーゼ試験で。
    除菌成功率は70~80%です。
        
  5. 除菌成功後であっても、他のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染者の唾液などから再感染が1-2%あります。

「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を除菌すれば胃がんにならない」は少し間違った考え

「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を除菌すれば胃がんにならない」訳では無い。そもそも胃がんの原因はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)だけではなく、

  1. 長期間にわたる塩分の過剰摂取
  2. 喫煙
  3. ニトロソアミンなどの発がん物質の長期間にわたる過剰摂取

など多岐に渡り、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染は、その一つに過ぎません。

また、除菌前、既に発がんを起こす遺伝子変異の引き金が引かれていれば、除菌しても手遅れです。過信せずにヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌後も、定期的に胃カメラを受けましょう。

胃カメラ・大腸カメラ

かわさき消化器内科クリニック

胃カメラ・大腸カメラは、かわさき消化器内科クリニック(大阪市平野区瓜破)にお願いしています。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療  長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

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長崎甲状腺クリニック(大阪)


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