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甲状腺と悪性リンパ腫   [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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甲状腺原発悪性リンパ腫 細胞診

Summary

橋本病バセドウ病の甲状腺に発生する甲状腺原発悪性リンパ腫は、MALTリンパ腫, びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL), 両者混合型が3割ずつ。90%は急速に大きくなり、気道閉塞の危険も。IL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)が高値になります。甲状腺超音波(エコー)検査(網目状の低エコー領域)、甲状腺の穿刺細胞診(MALTリンパ腫は診断できない事がほとんど)・組織生検、ガリウムシンチグラフィーで診断。橋本病リンパ球浸潤と鑑別要する。非ホジキンリンパ腫の化学療法はリツキシマブを含むR-CHOP療法。PET-FDGで病気分類と治療効果判定。

Keywords

橋本病,バセドウ病,甲状腺,悪性リンパ腫,MALTリンパ腫,びまん性大細胞型Bリンパ腫,sIL2-R,R-CHOP,PET,リツキシマブ

甲状腺と悪性リンパ腫

甲状腺原発悪性リンパ腫の頻度

甲状腺原発悪性リンパ腫は、

  1. 甲状腺悪性腫瘍(甲状腺癌)の2~3%
  2. 全悪性リンパ腫の約3%
  3. (リンパ)節外悪性リンパ腫の5%

を占めます

甲状腺原発悪性リンパ腫の頻度

甲状腺原発悪性リンパ腫の種類

甲状腺原発悪性リンパ腫のほとんどは、非ホジキン型のB-細胞性リンパ腫で、一般のリンパ腫に比べ予後良好です。

甲状腺原発悪性リンパ腫はMALTリンパ腫びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL), 両者混合型が3割ずつです。甲状腺原発悪性リンパ腫甲状腺外悪性リンパ腫に比べて生存率が高いです。

1/3を占めるで甲状腺MALTリンパ腫(節外性濾胞辺縁帯性リンパ腫)

甲状腺原発悪性リンパ腫の1/3を占めるで甲状腺MALTリンパ腫(節外性濾胞辺縁帯性リンパ腫)は、最も悪性度が低く、比較的緩やかな増大速度で長く留まるため、頚部超音波(エコー)検査、CT/MRI、PETなどで偶然見つかる事が多いです。

そして、診断に苦慮する甲状腺腫瘍の1つです(診断つかない甲状腺MALTリンパ腫)。

悪性度の高い甲状腺原発MALTリンパ腫

例外的に、悪性度高く、初診時から多発肺転移を認めた甲状腺原発MALTリンパ腫の症例も報告されています。関節リウマチ橋本病が基礎にあり、関節リウマチ自体と、治療薬の免疫抑制剤が、腫瘍に対する免疫監視機能を低下させ、本来、悪性度の低い甲状腺原発MALTリンパ腫を多発肺転移させた可能性が考えられます。(第59回 日本甲状腺学会 P3-4-5 初診時から多発の肺転移を認めた甲状腺原発MALTlymphoma の1 例)

甲状腺原発T細胞性悪性リンパ腫

甲状腺原発T細胞性悪性リンパ腫は稀です。B細胞系と同じく、橋本病を基礎として発生し、sIL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)が上昇します。免疫染色では、T細胞マーカーの「CD30」が陽性に染まります。報告例が少なく、治療法は確定していませんが、外科摘出の報告が多いです。予後も不明ですが、予後不良の末梢血Tリンパ腫と異なり、予後良好の報告が多いです。(Pathol Int. 2005 Jul;55(7):425-30.)(World J Surg Oncol. 2012 Apr 19;10:58.)

非常に珍しい甲状腺原発のバーキット様リンパ腫

非常に珍しいですが、甲状腺原発のバーキット様リンパ腫の症例も報告されています。(第55回 日本甲状腺学会 P2-05-03 甲状腺悪性リンパ腫(Burkitt-like lymphoma)の稀な一例)

甲状腺原発悪性リンパ腫の超音波(エコー)画像

甲状腺エコー上は、↑写真のような低エコー領域です(甲状腺原発MALTリンパ腫)。

  1. 元々、リンパ球浸潤は低エコーに見えますが、増殖したリンパ腫細胞はエコーを反射しないため極めて低エコーに見えます
     
  2. まだら状(虫食い状とも表現されます)で、一見、橋本病の炎症によるのう胞変性の集簇に見えますが、極めて低エコーの部分は内部血流が存在し、拡大してみると、リンパ節の病理組織のような網目状構造が認められます。下部閉塞によるリンパ管拡張で網目状に見えます(偽のう胞とも言います)。
     
  3. 石灰化しないのが特徴。
甲状腺原発悪性リンパ腫 超音波(エコー)画像:通常モード

甲状腺原発悪性リンパ腫 超音波(エコー)画像:通常モード、網目状構造がはっきり分かります。

甲状腺原発悪性リンパ腫 超音波(エコー)画像:血流

甲状腺原発悪性リンパ腫 超音波(エコー)画像:血流は、ほどほどにあります。

甲状腺原発悪性リンパ腫 超音波(エコー)画像:エラストグラフィー

甲状腺原発悪性リンパ腫 超音波(エコー)画像:エラストグラフィー、意外と軟らかい事が多いです。

小さな宇宙 甲状腺

小さな宇宙 甲状腺

甲状腺原発悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)の超音波検査(エコー)画像

甲状腺原発悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)の超音波検査(エコー)画像(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)、よく見ると網目状構造ですが、腺腫様結節、橋本病結節と区別が難しい。

甲状腺原発悪性リンパ腫[びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)]の超音波検査(エコー)画像

甲状腺原発悪性リンパ腫[びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)]の超音波検査(エコー)画像(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)網目状構造は分らず、橋本病の破壊性変化と区別が難しい。

橋本病/バセドウ病に発生する悪性リンパ腫(甲状腺原発悪性リンパ腫)

橋本病(慢性甲状腺炎)に発生する甲状腺原発悪性リンパ腫

バセドウ病に発生する悪性リンパ腫(甲状腺原発悪性リンパ腫)

バセドウ病に発生する悪性リンパ腫(甲状腺原発悪性リンパ腫)は見つけにくいですが、123-Iシンチグラフィーの取り込み不良な領域(cold spot)で見つかる事あります。また、131-I 内用療法後、甲状腺全体は縮小するのに、甲状腺原発悪性リンパ腫の部位のみ縮小しないため見つかる事あります。(第55回 日本甲状腺学会 P2-05-01 バセドウ病の131-I 内用療法後に診断された甲状腺MALT リンパ腫の1 例)

甲状腺原発悪性リンパ腫の症状

甲状腺原発悪性リンパ腫90%は3か月程で急速に、10%はゆっくり甲状腺が大きくなる」とされます。確かに、橋本病で甲状腺が大きくなってきた時は甲状腺原発悪性リンパ腫の合併を疑い甲状腺超音波(エコー)検査、甲状腺の穿刺細胞診、甲状腺組織生検、ガリウムシンチグラフィーが必要。

教科書的には以上の様になっていますが、現実は異なります。長崎甲状腺クリニック(大阪)で、橋本病(慢性甲状腺炎)破壊の程度の評価 のため、甲状腺超音波(エコー)検査を行うと、急速に増大しだす前の甲状腺原発悪性リンパ腫が多く見つかります。「90%は3か月程で急速に、10%はゆっくり甲状腺が大きくなり」は、裏を返せば、急速に甲状腺が大きくならないと甲状腺超音波(エコー)検査をしない医療機関が多かったと言う事です。

さらに、最近の画像診断装置の普及と進歩により、無症状で早期発見される甲状腺原発悪性リンパ腫が急増しています。

特に、甲状腺MALTリンパ腫は、限局性に長期間留まるため、甲状腺超音波(エコー)検査、肺・頚椎のCT/MRI、頸動脈エコーなどで偶発的に発見される事がほとんどです。

早期発見されず、甲状腺原発悪性リンパ腫が急速に大きくなると、気道閉塞をおこす可能性があり、注意が必要です。

  1. 気道閉塞症状が現れたら、速やかに気管内挿管し、ステロイドパルス療法が必要。(第58回 日本甲状腺学会 P1-13-6 急速に気道閉塞症状を来たした悪性リンパ腫を合併した橋本病の一例)
    急速な気道閉塞でなければ、生検後、プレドニゾロン内服を次項の化学療法に先行して行うだけでも甲状腺原発悪性リンパ腫は早急に縮小する場合があります。(第57回 日本甲状腺学会 P2-069 ステロイド投与で気流制限が改善した甲状腺悪性リンパ腫の一例)
     
  2. 甲状腺未分化癌との速やかな鑑別必要。甲状腺原発悪性リンパ腫ならCHOP療法などの化学療法行えば、速やかな腫瘍縮小と気道閉塞解除が期待できます。しかし、甲状腺未分化癌との鑑別が、意外と難しい事あります。微細~破片状石灰化などを伴う典型的な甲状腺乳頭癌成分が存在していれば、超音波(エコー)所見だけでも甲状腺未分化癌と判ります。そうでない場合、甲状腺の穿刺細胞診しても、
    甲状腺原発悪性リンパ腫細胞は異型性が少なく病理診断が難しい
    甲状腺未分化癌は壊死組織が多く、その部分を採取しても細胞が採れない。
    次に、甲状腺針生検(組織診)か、血液内科の力を借りて穿刺細胞診材料でフローサイトメトリー(リンパ球の細胞表面抗原を特定)行うかですが、
    ①針生検(組織診)は侵襲大きいため、気道閉塞し掛けた状態では行い難い。
    ②フローサイトメトリーは頼めば迅速に動いてくれる血液内科が必要

(第54回 日本甲状腺学会 P245 甲状腺未分化癌との鑑別に苦慮した甲状腺悪性リンパ腫の一例)
(第54回 日本甲状腺学会 P248 細胞診による迅速診断と化学療法で窒息を回避できた甲状腺悪性リンパ腫の一例)

甲状腺原発悪性リンパ腫を気管支喘息と間違われる場合も

甲状腺原発悪性リンパ腫を気管支喘息と間違われる場合もあります。甲状腺原発悪性リンパ腫が急速に大きくなり気道狭窄すると、気管支喘息のような喘鳴(ヒーヒーした呼吸)おこります。聴診しても、気管支の狭窄音が聞こえ、気管支喘息の治療目的でステロイド点滴すると、甲状腺原発悪性リンパ腫も縮小して気道狭窄が改善するため、甲状腺の腫大に気付かぬ限り、見逃される可能性があります。

甲状腺原発悪性リンパ腫の血液検査・遺伝子検査

sIL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)

悪性リンパ腫ではsIL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)が産生され高値になります。

  1. sIL2-R甲状腺機能亢進症/バセドウ病無痛性甲状腺炎でも、甲状腺ホルモンがリンパ球を刺激する事により高値になります。(第55回 日本甲状腺学会 P1-03-11 可溶性インターロイキン2受容体(IL2-R)異常高値を示した肝不全、DIC合併の甲状腺クリーゼ(TS)の1例)
     
  2. 実際の所、甲状腺原発悪性リンパ腫(MALT)は、病勢の弱いものが多く、sIL2-Rはリンパ腫の大きさの割に低い(と言うより正常の)症例が多いです。
    甲状腺原発悪性リンパ腫(DLBCL)でリンパ節転移までしたものは著明に上昇します。
     
  3. sIL2-R成人T細胞白血病/リンパ腫、リンパ性白血病、サルコイドーシス/膠原病、結核・肝炎/伝染性単核球症などのウイルス感染症、血球貪食症候群、肺癌など悪性腫瘍でも上昇します。

LDH(乳酸脱水素酵素)

また、LDH(乳酸脱水素酵素)は、悪性リンパ腫の国際予後因子です。しかしながら、甲状腺原発悪性リンパ腫(MALT)は、病勢の弱いものが多く、LDHはリンパ腫の大きさの割に低い(と言うより正常の)症例が多いです。

β2-マイクログロブリン

β2-マイクログロブリンはHLA抗原クラスⅠのL鎖で悪性リンパ腫の他、多発性骨髄腫・慢性リンパ性白血病、慢性腎不全、自己免疫性疾患でも上昇し、ほとんど診断価値はありません。

サイ ログロブリン

甲状腺良性腫瘍、甲状腺分化癌()、甲状腺などで産生されるサイ ログロブリンでなく、急激な甲状腺組織の破壊が起きると上昇します。

BCL2遺伝子

B細胞系リンパ腫の瀘胞性リンパ腫(FL)やびまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)はBCL2遺伝子[アポトーシス抑制遺伝子, t(14;18)(q32;q21) 転座]が特徴的に認められます。

MYC 転座

MYC 転座は、全びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)の5~15%に認められ、R-CHOP療法に治療抵抗性で予後不良とされます。しかし、MYC 転座陽性甲状腺びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)は、R-CHOP療法に良く反応したと言う報告があります。(第59回 日本甲状腺学会 P3-4-4 破壊性甲状腺炎をともなったMYC 転座陽性甲状腺悪性リンパ腫の1 例)

甲状腺原発悪性リンパ腫の穿刺細胞診

甲状腺原発悪性リンパ腫の穿刺細胞診

甲状腺原発悪性リンパ腫は、甲状腺濾胞癌とは逆に、中心部程密度が高く、中心部(右の円の中)から細胞を採ると以下のようになります。甲状腺原発悪性リンパ腫の細胞像は、

  1. 単一な腫瘍細胞が多数
  2. 孤立性散在性、細胞集団を形成しません
  3. 核はMALTリンパ腫(中型)、びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)(大型)、ともにN/C比(核/細胞質比)が大で細胞質が乏しい
  4. びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)では、クロマチンは淡く染まり、核小体は明瞭・非腫瘍性の小型リンパ球とtwo cell patternになります
  5. 背景は汚く、貪食細胞が出現することも
甲状腺原発悪性リンパ腫細胞診

甲状腺原発悪性リンパ腫の診断

甲状腺原発悪性リンパ腫は、腫瘍マーカーであるsIL2-Rも正常で、穿刺細胞診でも診断不可能なこと多々あります(特にMALTリンパ腫)。このような場合、ガリウムシンチグラフィーが有用です。強い集積あれば、甲状腺原発悪性リンパ腫の疑い濃厚で、甲状腺組織生検で確定診断します。

MALTリンパ腫, びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)の穿刺細胞診の詳細は、 前項 を御覧ください。

ガリウムシンチグラフィ(Ga シンチグラフィ)

ガリウムシンチグラフィは甲状腺原発悪性リンパ腫の診断に非常に有用です。

  1. 甲状腺乳頭癌濾胞癌にはほとんど集積しない
  2. 甲状腺原発悪性リンパ腫甲状腺未分化癌に強く集積する
  3. 同時に、甲状腺原発悪性リンパ腫甲状腺未分化癌の全身転移の検索(病期判定)に有効

PET-FDG

PET-FDGは甲状腺原発悪性リンパ腫

  1. 診断に有用でありません。
    背景にある橋本病(慢性甲状腺)の約30%は結節状(nodular)に取り込み甲状腺原発悪性リンパ腫と区別できません。
    同時に、アイソトープ(FDG)の最大集積値(SUVmax)も甲状腺原発悪性リンパ腫橋本病(慢性甲状腺)で有意差なく、背景にある橋本病(慢性甲状腺)の、びまん性集積が甲状腺原発悪性リンパ腫をマスクする可能性があります。
    (第53回 日本甲状腺学会 P-128 甲状腺悪性リンパ腫の病期診断における FDG PET の意義)
     
  2. 確定診断が付いた後は、悪性リンパ腫病期(進行度)分類[Ann Arbor分類]行うのに必要です。
    その際、耳下腺炎、大腸腺腫、原発性肺がんなどでPET-FDGが陽性になり、病期(進行度)分類を間違える可能性があります。

診断つかない甲状腺MALTリンパ腫

異型性の少ない(癌細胞らしくない)MALTリンパ腫は、橋本病(慢性甲状腺炎)の慢性炎症細胞(リンパ球、形質細胞)と区別が難しく、

  1. 穿刺細胞診では診断できない事がほとんどです(ほとんどがグレ-ゾーンのクラス3になり、明らかに癌と診断できるクラス4,5になる事は稀です)。
     
  2. 甲状腺原発悪性リンパ腫の腫瘍マーカーsIL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)も正常な事が多く、例え上昇しても軽度です。
     
  3. ガリウムシンチグラフィーで陽性に出る確率高いので、陽性なら甲状腺原発悪性リンパ腫の確信が得られます。確定診断のため、内分泌外科に以下を依頼します。ただ、超音波(エコー)検査で、明らかな甲状腺原発悪性リンパ腫であれば、ガリウムシンチグラフィーは省略できます。
     
  4. 穿刺細胞診より一段階上の組織診(コア生検)を内分泌外科に依頼しますが、それでも確定診断できず、麻酔下にopen biopsy(オープン バイオプシー;切開して組織を一部取り出す)を施行すれば確定診断できます。しかし、明らかな甲状腺原発悪性リンパ腫か、あるいは明らかに切除しなければならない状態(周囲組織へ浸潤、気管等圧排)であれば、(open biopsyはせずに)甲状腺を手術で摘出し、手術標本の病理診断で確定する事がよくあります。(第55回 日本甲状腺学会 P2-05-02 バセドウ病に甲状腺原発悪性リンパ腫を合併した1 例)
     
    (右)MALTリンパ腫の組織像。紫の点が悪性リンパ腫細胞の核です。甲状腺濾胞に浸潤しているのが解ります。

頚部リンパ節に悪性リンパ腫

頚部リンパ節に悪性リンパ腫が発生し、橋本病バセドウ病を持っている場合甲状腺原発甲状腺外か区別しにくいことが多々あります。

EBウイルス(ヘルペスウイルスの一種で伝染性単核球症の原因)はB細胞由来の悪性リンパ腫バーキットリンパ腫・ホジキンリンパ腫に深く関連しています。新しく診断されたホジキンリンパ腫の75%は治癒可能です。

頚部リンパ節原発のホジキンリンパ腫が、甲状腺に浸潤した症例が報告されています。(第54回 日本甲状腺学会 P246 急速なびまん性甲状腺腫大の1例-Hodgkinリンパ腫の甲状腺病変)

瀘胞性リンパ腫(FL)

甲状腺外 頚部悪性リンパ腫:びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)

甲状腺外 頚部悪性リンパ腫

甲状腺原発悪性リンパ腫の鑑別診断

反応性リンパ球浸潤

反応性リンパ球浸潤の甲状腺超音波(エコー)検査の所見は、甲状腺原発悪性リンパ腫と全く同じです(下記の橋本病リンパ球浸潤とも同じ)。数カ月で増大するため、甲状腺原発悪性リンパ腫を疑います。

  1. sIL2-R (可溶性インターロイキン2受容体)高値で
  2. 穿刺細胞診でも幼若リンパ球を認めます(悪性リンパ腫の疑いと判定される事あり)。

しかし、

  1. Ga(ガリウム)シンチグラフィー陰性で取り込みなく
  2. 病理組織検査の免疫染色で甲状腺原発悪性リンパ腫と断定できず
  3. 縮小増大を繰り返し自然消退もあり得る

点が異なります。(第58回 日本甲状腺学会 P1-12-6 当初甲状腺原発悪性リンパ腫が疑われたが、縮小増大を繰り返し自然消退した反応性リンパ球浸潤の一例)(第59回 日本甲状腺学会 P4-4-2 悪性リンパ腫が疑われた低エコー領域が自然縮小した慢性甲状腺炎の2 例)

橋本病リンパ球浸潤

橋本病リンパ球浸潤は甲状腺超音波(エコー)画像で低エコー領域に見え、甲状腺原発悪性リンパ腫との鑑別難です。Bモードの全体的なエコーゲインを上げると、低エコー領域の構造がはっきりし、単なる炎症像(リンパ球浸潤)であるのが分かります。

悪性リンパ腫の様に見えるが・・

橋本病リンパ球浸潤 超音波(エコー)画像;(左)低エコー領域の内部構造は不明瞭、(右)エコーゲインを上げると低エコー領域は白くなり、内部構造がはっきりします。

悪性リンパ腫の様に見えるが・・2

橋本病リンパ球浸潤 超音波(エコー)画像;(左)エコーゲインを上げると低エコー領域は白くなり、内部構造がはっきりします、(右)低エコー領域の内部構造は不明瞭。

甲状腺原発悪性リンパ腫の治療と予後

甲状腺原発悪性リンパ腫の治療と予後。MLATリンパ腫は低悪性度で、放射性感受性が高い。甲状腺外に進展するMALT リンパ腫は化学療法と放射線療法併用する集学的治療が必要。MALTリンパ腫再発は約10%で遺残甲状腺に多い。びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)はMALTリンパ腫と比べ予後は悪く、限局期びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)の治療は3コースのR-CHOP 療法と限局照射30~36Gyの併用が標準的。MALT・びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)混合型は更に予後不良。甲状腺原発悪性リンパ腫の治療効果判定にFDG-PET。日本の10年無再発生存率92%、10年粗生存率86%。

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甲状腺原発悪性リンパ腫の放射線療法

甲状腺MALTリンパ腫は、放射性感受性が高い。

甲状腺原発悪性リンパ腫の化学療法

非ホジキンリンパ腫の化学療法はR-CHOP(リツキシマブ-シクロフォスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,プレドニゾン)が一般的、ホジキンリンパ腫はABVD療法。

リツキシマブは抗CD20ヒト・マウスキメラ抗体で、発熱・発疹・喘息おこすため抗ヒスタミン剤・解熱鎮痛剤の予防投与が必要です。

悪性リンパ腫などの免疫抑制・化学療法によりB型肝炎ウイルスが再活性化されます。de novoB型肝炎といわれ劇症化の危険性あります。

  1. HBs 抗原(+)
  2. HBc 抗体(+)and/orHBs 抗体(+)で、HBV-DNA定量(+)

なら核酸アナログ投与します。

甲状腺内限局MALTリンパ腫の治療と予後

MLATリンパ腫は低悪性度で、放射性感受性が高い。伊藤病院によると、甲状腺内限局MALTリンパ腫107例を後ろ向きに見ると、初期治療は

  1. 放射線治療単独:58例の10年全生存率91%、疾患特異的10年生存率99%
  2. 化学療法と放射線治療 併用:48例10年全生存率84%、疾患特異的10年生存率99%
  3. 化学療法単独:1例

と極めて良好だったそうです。化学療法に由来する有害事象、好中球減少症、神経障害、便秘、肺炎が起こるため、甲状腺内限局期MALTリンパ腫は、手術の選択肢を除外すれば、甲状腺内限期MALTリンパ腫は放射線治療単独が良いとの事です。(第60回 日本甲状腺学会 O4-2 甲状腺原発MALTリンパ腫の長期予後)

大阪市立大学 内分泌外科では、甲状腺全摘手術していただけるので、筆者には放射線治療、化学療法は逆になじみが薄いです。

甲状腺外に進展するMALT リンパ腫

甲状腺外に進展するMALT リンパ腫は化学療法と放射線療法併用する集学的治療が必要(World J Surg 2007 ; 31 : 978-986.)。

MALT リンパ腫再発

野口病院の報告では、MALTリンパ腫134症例(病期IE 108例、IIE 26例)治療後、84(13-190)ヶ月で、再発例は約10%の14例(病期IE(甲状腺内限局) 10例、IIE 4例)だったそうです。 再発部位は遺残甲状腺が9例、その他の部位が5例(顎下部 リンパ節2例、うち1例はびまん性大細胞型へ形質転換、腸管1例、鼻腔粘膜1例、 扁桃1例)

MLATリンパ腫は、遺残甲状腺があると、放射線治療を行っても遺残甲状腺に再発する可能性があるため、病期IE(甲状腺内限局)であれば甲状腺全摘術が好ましい様です。(第60回 日本甲状腺学会 O4-3 甲状腺原発MALTリンパ腫の再発様式)

大阪市立大学 内分泌外科では、甲状腺全摘手術していただけるので、安心です。

びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)の治療と予後

びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)は緩徐に進行するMALTリンパ腫と比べ予後は悪く、治療方針を別にする必要があります。

限局期びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)の治療は3コースのR-CHOP 療法と限局照射30~36Gyの併用が標準的です(血液診療エキスパート悪性リンパ腫. 中外医学社; 2010: 89-98.)。

MALT・びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)混合型

MALT・びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)混合型はびまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)に比べ予後不良であるとの報告があります(Histopathology 2000 ; 37 : 10-18.)。

甲状腺原発悪性リンパ腫の治療効果判定

甲状腺原発悪性リンパ腫の治療効果判定にFDG-PETを用います。甲状腺原発悪性リンパ腫に合併する橋本病(慢性甲状腺炎)もFDG-PETで集積を認める事が多く、約30%は結節状(nodular)、約70%はびまん性(diffuse)集積のため、正確な効果判定が難しくなります。

治療前の甲状腺原発悪性リンパ腫のFDG集積が

  1. 結節状(nodular)なら、FDG集積の消失は放射線ないし化学療法の効果の指標となります
  2. びまん性(diffuse)なら、実際の治療効果とは関係なく、FDG集積は治療後も持続します(橋本病による集積が重なるためと考えられます)
    (第56回 日本甲状腺学会 O2-5 甲状腺原発悪性リンパ腫の治療効果判定にFDG-PET は有用か?)
     
  3. びまん性(diffuse)なら、
    放射線療法後3-6ヶ月で、約38%の患者で集積度SUVmaxが治療前の10-40%上昇し(フレア現象)
    その後15-24ヶ月で、87%以上の患者で集積度SUVmaxが治療前より低下する
    (第61回 日本甲状腺学会 O17-4 甲状腺原発悪性リンパ腫の放射線治療後にFDG-PET/CTで観察 されるフレア現象について)

甲状腺原発悪性リンパ腫全体の予後

アメリカNational Cancer Institute (NCI)データベースの1408症例(DLBCLとMALTリンパ腫両方含む)での5年粗生存率は66%、疾患特異的生存率は79%です(Surgery 2009 ; 146 : 1105―1115.)。

日本の報告では、10年無再発生存率92%、10年粗生存率86%(経過観 察期間中央値46カ月)とアメリカと比べ遥かに予後が良いようです。(Nippon Jibiinkoka Gakkai Kaiho(Tokyo)114 : 855-863, 2011)

単クローン性ガンマグロブリン血症を伴うMALT甲状腺リンパ腫

MALT甲状腺悪性リンパ腫で本態性M蛋白血症[単クローン性ガンマグロブリン(M蛋白)血症]をおこすことがあります(髄外性甲状腺単クローン性ガンマグロブリン血症)。血液中M蛋白<3.0g/dl, 骨髄中の形質細胞3%以下の状態で、一部が多発性骨髄腫・マクログロブリン血症などに進展します。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療     長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪市東住吉区鷹合2-1-16

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