橋本病(慢性甲状腺炎)破壊の程度を評価[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪) ゆるキャラ 甲Joう君(動脈硬化した血管に甲状腺が! バセドウ病の甲状腺がモデル)
プレミアム超音波(エコー)診断装置を用いて、橋本病(慢性甲状腺炎)における破壊の程度を評価します。(evaluation of the heterogeneous appearance of the thyroid gland, reflecting inflammation and destruction in Hashimoto’s thyroiditis)
筆者らが論文報告するまで、甲状腺組織の炎症と破壊の評価に対する超音波(エコー)検査の有用性を示した研究はほとんど存在しませんでした。(Few studies have reported the use of US to estimate inflammationand destruction of thyroid parenchymal tissue.)
Summary
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、高解像度のプレミアム超音波(エコー)診断装置を用い、橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の程度を評価。超音波強度低下前の甲状腺機能正常橋本病で内部の破壊、炎症の程度を評価できる。橋本病(慢性甲状腺炎)の女性が妊娠すると、既に破壊され予備力の低下した母体の甲状腺は、胎児の発育に必要な量の甲状腺ホルモンを作れない可能性ある。妊娠希望女性では妊娠週数進んだ時の甲状腺予備力の有無を診断。橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の程度は、超音波(エコー)強度の不均質性で評価できる。その不均質性は抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)に相関する。
Keywords
橋本病,慢性甲状腺炎,甲状腺,破壊,長崎甲状腺クリニック,大阪,超音波,エコー,甲状腺機能,TPO抗体
高解像度の超音波(エコー)診断装置だからこそ、橋本病(慢性甲状腺炎)における破壊の程度の評価が可能です。安価な超音波装置では、解像度が荒く、甲状腺内部の粗雑さ・不均一さを評価できません。
これまで橋本病(慢性甲状腺炎)における破壊の程度を評価しようと思えば、穿刺細胞診より1段階上(リスクは遥かに上)の組織生検を行い、画像処理ソフトWinRoofに組織標本を掛けて、リンパ球浸潤面積を計算するなどの観血的手段しかありませんでした。
プレミアム超音波(エコー)診断装置を用いれば、安全・迅速に橋本病(慢性甲状腺炎)における破壊の程度を評価可能です。
胎児は十分な甲状腺ホルモンを作れないため、母体の甲状腺ホルモンが頼りです。妊娠週数が進み、胎児が大きくなるにつれ、母体はより多くの甲状腺ホルモンを作らねばなりません。(妊娠と橋本病/甲状腺機能低下症)
橋本病(慢性甲状腺炎)女性が妊娠すると、既に破壊されて予備力の低下した母体甲状腺は、胎児発育に必要な量の甲状腺ホルモンを作れない可能性があります。
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、プレミアム超音波(エコー)診断装置を用いて、妊娠希望橋本病(慢性甲状腺炎)女性における甲状腺の破壊の程度を評価します。それによって、妊娠週数が進んだ時のホルモン産生予備力を診断致します。
自分の甲状腺を破壊する自己免疫抗体、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)は、必ずしも血液検査で陽性になるとは限りません。
- 自己免疫抗体陰性橋本病(慢性甲状腺炎)が存在します。
- また、これらの自己免疫抗体は年齢とともに上昇し、女性では女性ホルモンが低下する50歳前後に初めて基準値を超え、橋本病(慢性甲状腺炎)と診断される事が多いです。
長崎甲状腺クリニック(大阪)のプレミアム超音波(エコー)診断装置で、
- 自己免疫抗体陰性橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の程度を評価
- 自己免疫抗体が基準値を超える前の橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の程度を評価
します。
人間の体は、外見・臓器ともに左右対称ではありません。甲状腺も同じで、左右の大きさが違うように破壊の程度も異なります。写真を見ると、甲状腺右葉の破壊は中等度ですが左葉は高度です。なぜ橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊に左右差が生じるか原因は不明です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)で行われている橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の程度の評価は、以下のheterogeneity index (HI) (不均質係数)で行った研究の経験に基ずいています。
heterogeneity index (HI) (不均質係数)とは
筆者らは、甲状腺組織の炎症と破壊を評価する超音波(エコー)の指標としてheterogeneity index (HI) (不均質係数)=(超音波強度のCV)を開発し発表しました。
(a)は甲状腺機能正常橋本病患者のheterogeneity index (HI) (不均質係数)と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)の相関を示すグラフです。P=0.034、R=0.396と有意な正の相関を示しています。
(b)は同じく抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)との相関を示すグラフです。抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)とは有意な相関が認められませんでした。
(b)は甲状腺刺激ホルモン(TSH)との相関を示すグラフです。甲状腺刺激ホルモン(TSH)との間にも有意な相関を認めませんでした。
なぜ抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)と相関して、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)と相関しないか?
甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)は甲状腺濾胞細胞の甲状腺ホルモン合成酵素で、cell-mediated cytetoxiety (細胞障害性免疫)に関与します。よって、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)はリンパ球浸潤の程度、結果、炎症・破壊の程度に相関します(J Endocrinol Invest 2003, 26: 1208–1212.)。だから、heterogeneity index (HI) (不均質係数)と相関するのは当然と言えます。
一方、ヨード化されたサイログロブリンは、多様な抗原性を有しますが、濾胞腔内に存在し、濾胞細胞自体の免疫反応に直接関与しません。そのため、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)はリンパ球浸潤の程度、結果、炎症・破壊の程度を表すheterogeneity index (HI) (不均質係数)に相関しません。(J Endocrinol Invest 2003, 26: 1208–1212.)
heterogeneity index (HI) (不均質係数)測定の実際
heterogeneity index (HI) (不均質係数)測定の実際。詳細は、省略しますが、上記のように測定。
heterogeneity index (HI) (不均質係数)の利点
従来のグレースケール解析が甲状腺機能低下した橋本病で超音波強度の低さ(hypoechogenicity)を評価するのに対し、本研究で新たに提唱したHIは、超音波強度低下前の甲状腺機能正常橋本病で内部の破壊、炎症の程度を評価できる点が異なります。
海外の研究者からの質問・コメント
From Dr Jennifer Sipos,
Associate Professor of Medicine, Division of Endocrinology and Metabolism, The Ohio State University
(オハイオ大学准教授の先生です)
While the findings of these authors are thought-provoking, further study is needed in a larger group of patients, including the evaluation of those with various stages of Hashimoto’s. Moreover, it is important to establish the reproducibility of findings when any new technology is introduced. Finally, it would be interesting to examine whether serial measurements of the HI correlates with the progression of inflammation and onset of hypothyroidism. Such information might be beneficial for predicting the need for levothyroxine replacement therapy before patients become symptomatic from hypothyroidism.(Thyroid heterogeneity related to antithyroid antibodies in Hashimoto's ...)
要点は
①「次なる段階として、もっと大規模に、様々な橋本病の段階でHIの評価を行い、再現性も確認して下さい。」
②「HIの経時的変化を見て、甲状腺機能低下症になる時のHIの値を調べてはどうでしょうか?甲状腺ホルモン剤補充の必要性を予測できるかもしれません。」
ですが、実は、下記の如く、イタリアをはじめ海外の他の研究者達が、他の橋本病の段階でHI評価を行い、その結果、再現性も確認されています。
広がるheterogeneity index (HI) (不均質係数)の応用
このheterogeneity index (HI) (不均質係数)は、海外の研究者達の間でも使用され、様々な研究成果が発表されています。
大規模人数での再現性
1334名の大規模な前向き研究で再現性が確認されました(J Int Med Res. 2015 Jun;43(3):412-23.)。これだけの大人数なので抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体) に有意な正の相関が強く出る(p<0.001)のみならず、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)にも弱い相関が認められました(p=0.023)。
甲状腺機能低下症橋本病でのheterogeneity index (HI) (不均質係数)
興味深いことに、甲状腺機能低下症においてもheterogeneity index (HI) (不均質係数)は甲状腺ホルモン(FT4,FT3)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)に相関せず、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体) にのみ有意な正の相関を示しました(オッズ比19.69; 3.69–105.23) [Medicine (Baltimore). 2015 Jul; 94(27): e1129.]。
甲状腺結節においてheterogeneity index (HI) (不均質係数)は良悪性の鑑別にも有用
更に、甲状腺結節においてheterogeneity index (HI) (不均質係数)は良悪性の鑑別にも有用で、
- 甲状腺癌 vs 甲状腺良性結節=(0.73 vs 0.63; P = 0.03)
- 0.60をカットオフ値にすれば感度76.7% (57.7–90.1%)、特異度46.8% (42.3–51.4%)で良悪性の鑑別が可能
[Medicine (Baltimore). 2015 Jul; 94(27): e1129.]
同じように甲状腺結節の良悪性の鑑別に関するheterogeneity index (HI) (不均質係数)の論文は台湾の研究者も出しています[Ultrasound Med Biol. 2014 Nov;40(11):2581-9.]。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区も近く。