甲状腺と睡眠障害:閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)・睡眠後退症候群, 甲状腺腫瘍で慢性肺胞低換気[橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院(現、大阪公立大学附属病院) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)ゆるキャラ 甲Joう君 (動脈硬化した血管に甲状腺が!バセドウ病の甲状腺がモデル
日本では、3月18日と9月3日を「睡眠の日」と定めていますが、ほとんど知られていません(意味ねーな)。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。睡眠時無呼吸症候群、不眠症自体の治療をおこなっておりません。
Summary
甲状腺による睡眠障害。甲状腺機能低下症の気道粘膜浮腫・巨大舌(甲状腺ホルモン補充で改善)、先端巨大症、橋本病などの巨大甲状腺腫、腺腫様甲状腺腫(甲状腺全摘出で改善)で閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS) 。受診動機は家族が、いびき・無呼吸に気づく。治療抵抗性高血圧肥満、糖尿病、狭心症や心筋梗塞をおこす。中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は心不全の低酸素脳症による。甲状腺機能亢進症/バセドウ病で睡眠時間がずれ、最終的に昼夜逆転する睡眠後退症候群。睡眠障害で甲状腺癌発生。甲状腺腫瘍・甲状腺癌・巨大甲状腺腫で慢性肺胞低換気。
Keywords
甲状腺,甲状腺機能低下症,睡眠時無呼吸症候群,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,睡眠後退症候群,甲状腺癌,中枢型睡眠時無呼吸症候群,OSAS,閉塞性睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)の原因は
- 上気道閉塞(70%);肥満、アデノイド・口蓋扁桃(主に小児、若年者)、顎が小さい骨格(小顎症)
- 非肥満者(30%);
甲状腺機能低下症ではムコ多糖類の蓄積による気道粘膜浮腫・巨大舌(Chest. 1992 Dec;102(6):1663-7.)・甲状腺機能低下性ミオパチーで咽頭開大筋の筋力低下[Am J Med. 1988 Dec;85(6):775-9.]
先端巨大症(成長ホルモン産生下垂体腺腫)
などです。
受診動機は家族が、いびき・無呼吸に気づくのが最も多く(子供はイビキをかかない)
肥満者の睡眠時無呼吸症候群は減量により改善します。
甲状腺機能低下症が原因の睡眠時無呼吸症候群は、甲状腺ホルモン補充で改善します(Chest. 1992 Dec;102(6):1663-7.)。
先端巨大症による睡眠時無呼吸症候群は、骨格の変形も一因であるためn-CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)、持続的陽圧呼吸療法(CPAP)が必要なことがあります。
軽症の睡眠時無呼吸症候群は、
- 枕を低くする
- 頭部後屈位(気道確保ポジション)で就寝
- 側臥位で就寝(側臥位枕も市販されています)
で改善する場合もあります。
巨大甲状腺腫(重度の甲状腺自体の腫れ)、腺腫様甲状腺腫でも閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
橋本病などの巨大甲状腺腫(重度の甲状腺自体の腫れ)、腺腫様甲状腺腫([腺腫様結節(腫瘍もどき)の集まり]でも閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を起こすとの論文が出ています。(World J Surg. 2014 Aug;38(8):1990-4.)
腺腫様甲状腺腫
腺腫様甲状腺腫でも咽喉頭圧排と浮腫により、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を起こします。甲状腺全摘出で改善(J Laryngol Otol. 2012 Feb;126(2):190-5.)。
バセドウ病を基盤とする腺腫様甲状腺腫で閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS) 超音波(エコー)画像;抗甲状腺薬 メルカゾールで甲状腺機能は安定していても甲状腺全摘手術になります。
濾胞性腫瘍
のう胞型濾胞腺腫(のう胞腺腫)気管圧排 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
のう胞型濾胞腺腫(のう胞腺腫)気管圧排 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS);穿刺排液しても再貯留を繰り返すなら手術切除
橋本病などの巨大甲状腺腫
海外では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療のために、肥満者あるいは非肥満者の巨大甲状腺腫を摘出して改善したとする論文があります(Monaldi Arch Chest Dis. 2006 Mar;65(1):52-5.)(World J Surg. 2014 Aug;38(8):1990-4.)。しかし、日本では、腫瘍もない甲状腺を閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療のために全摘出するのは難しいと思います。(甲状腺外科が納得しないでしょう)
異所性甲状腺(舌甲状腺腫)で閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
異所性甲状腺の1つ、舌甲状腺腫で閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を起こした報告があります(Pediatr Pulmonol. 2009 Jan;44(1):93-5.)。
睡眠時無呼吸症候群の合併症
睡眠時の慢性的低酸素血症により、交感神経系の亢進→全身血管抵抗増大とレニン-アルドステロン系の活性化がおこります。
睡眠時無呼吸症候群を治療しないと、
- 肥満、高血圧、糖尿病
- 数年後には
狭心症や心筋梗塞などの心血管障害、不整脈→突然死
心不全→突然死
低酸素脳症による中枢性睡眠時無呼吸症候群(中枢性 SAS)を合併
- 脳卒中(脳血管障害)→突然死
などを起こしやすくなります。[Nutrients. 2022 Nov 24;14(23):4989.][J Diabetes Investig. 2018 Sep;9(5):991-997.][Curr Diab Rep. 2021 Dec 13;21(12):64.]
睡眠時無呼吸症候群で高血圧
「ウィスコンシン睡眠コホート研究」等で、
- 睡眠時無呼吸症候群と高血圧は明確に関連がある
- 睡眠時無呼吸症候群における高血圧は健常人の約1.4~2.9倍
- 特に治療抵抗性高血圧を高率に合併する
とされます(Hypertension 2001:19:2271-2277)。
更に、夜間高血圧(家庭血圧では早朝高血圧)となることが多い。
睡眠時の慢性的低酸素血症は、交感神経系の亢進→全身血管抵抗増大とレニン-アルドステロン系の活性化→2次性高血圧症をおこします。
逆に、内分泌高血圧のほとんどを占める原発性アルドステロン症では、本態性高血圧や他の高血圧と比べ睡眠時無呼吸症の頻度が高いとされます。
中枢型睡眠時無呼吸症候群は、2次性高血圧の原因になりません。
中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は心不全(20~40%に合併、低酸素脳症を起こす)、脳卒中で比較的多く認められる無呼吸パターンです。
で呼吸中枢が障害され呼吸運動が低下。
中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は、2次性高血圧の原因になりません。しかし、中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に比べて生命に危険が及ぶ可能性がす。
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に持続的陽圧呼吸療法(CPAP)は有用ですが、中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)を逆に顕著化させる報告が増えています。うっ血性心不全による中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)にはAdaptive servo-ventilation(ASV;適応補助換気)の有用性が報告されます。
若い人の睡眠相後退症候群が増えています。睡眠相後退症候群は睡眠時間が段々ずれ、最終的には昼夜逆転します。うつ状態・神経症が多く、甲状腺機能亢進症/バセドウ病でもおこります。朝もしくは午後なら、普通か普通以上によく眠るのが特徴。
睡眠障害は、癌を含む多くの健康への悪影響と関連しています。ウエストバージニア大学医学部のJuhua Luoらは、「睡眠障害を持つ閉経後の女性、特に非肥満女性では、甲状腺がんのリスクが上昇する」と、報告しています。[Am J Epidemiol. 2013 Jan 1;177(1):42-9.]
覚醒障害(睡眠時遊行症)(いわゆる夢遊病)は、疲れていたり、昼間に猛烈なストレスを受けて興奮状態のまま眠りに就いた時などに現れます。[Int J Psychiatry Med. 1975;6(1-2):43-62.]
覚醒障害(睡眠時遊行症)を起こした甲状腺機能亢進症/バセドウ病の小児例が報告されています。12 歳男児で、就寝2時間後に突然、リビングまで歩いて叫び出し、床に唾を吐くなど不穏状態になった後、すぐに意識清明となるも発作時の記憶は無し。同様の睡眠時異常行動を月2回程繰り返し、終夜脳波検査(ポリグラフ)で覚醒障害(睡眠時遊行症)の診断に至ったとの事です。同時期に見つかった甲状腺機能亢進症/バセドウ病を治療し、甲状腺ホルモン正常化に伴い睡眠時遊行症は消失。(第56回日本甲状腺学会 P1-009 睡眠時遊行症が受診のきっかけとなったBasedow 病の一例)
甲状腺機能亢進症/バセドウ病に伴う覚醒障害(睡眠時遊行症)は、ノンレム睡眠の延長とそれに伴う疲労の組み合わせにより発症すると考えられます。[Endocr Pract. 2005 Jan-Feb;11(1):5-10.]
36歳男性のケースも、甲状腺機能正常化に伴い睡眠時遊行症は消失。下はビデオ睡眠ポリグラフ検査(VPSG)の結果。
慢性肺胞低換気は睡眠中に呼吸が苦しくなり、着替えが必要なほど寝汗をかき、朝から頭痛がする。睡眠時無呼吸症候群と間違われることが多く、放置すると日中も人工呼吸器が必要になるほど悪化します。
- 甲状腺腫瘍・甲状腺癌・巨大甲状腺腫による上気道閉塞、気管狭窄
- 喘息
- 肥満低換気[死の危険のある肥満:肥満低換気症候群(ピックウイック症候群)]
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病に間違えられる筋萎縮性側索硬化症(ALS)、甲状腺機能低下症に間違えられる重症筋無力症
などが原因です。REM睡眠中、脳は活動し呼吸量も増えても呼吸筋(外肋間筋)は寝ているので、換気能力が低いと肺胞低換気が生じます。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,浪速区,生野区も近く。