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妊娠/出産/授乳と甲状腺機能亢進症/バセドウ病        [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

妊娠/出産/授乳と甲状腺の病気

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長崎甲状腺クリニック(大阪)では、十分コントロールされ、安定した甲状腺機能亢進症/バセドウ病妊婦の管理は引き受けます。

しかし、妊娠してから発症した、判明した甲状腺機能亢進症/バセドウ病、および投薬自己中断などコントローされていない甲状腺機能亢進症/バセドウ病妊婦の治療は、お断りしております。それらはハイリスク妊娠になるため、産科と内分泌科の両方ある総合病院でしか診れないからです。

Summary

バセドウ病/甲状腺機能亢進症は計画妊娠が必要不可欠、コントロール不十分で甲状腺ホルモンが不安定だと流産・死産・早産が増える。メルカゾールからプロパジール変更の副作用は、妊娠前よりも妊娠してから切り替えた方が重篤。抗甲状腺薬が副作用で使用できなくなった時、抗甲状腺薬+ヨウ化カリウム(KI)でもコントロールできない時、妊娠2期(中期)以降に甲状腺全摘手術。母体の甲状腺機能は安定するがTSHレセプター抗体(TR-Ab)は急に下がらず胎児バセドウ病に。ヨード131アイソトープ治療後TR-Abが増加、胎児/新生児バセドウ病の危険。最もバセドウ病抗体が低下するのが甲状腺全摘出手術。

Keywords

妊娠,計画妊娠,甲状腺全摘手術,甲状腺,バセドウ病,甲状腺機能亢進症,メルカゾール,プロパジール,アイソトープ,胎児バセドウ病

 

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バセドウ病/甲状腺機能亢進症妊娠

バセドウ病/甲状腺機能亢進症計画妊娠が必要不可欠

バセドウ病/甲状腺機能亢進症計画妊娠が必要不可欠です。

  1. コントロール不十分で甲状腺ホルモンが不安定だと、流産・死産・早産、胎盤早期剥離が増えます(次項)
     
  2. 抗甲状腺薬メルカゾールは有効性と副作用から、日本甲状腺学会のバセドウ病治療ガイドラインの第1選択薬に推奨されています。しかし、メルカゾール奇形症候群が報告され(抗甲状腺薬メルカゾールによる胎児奇形)、妊娠6週から15週まではプロパジールか無機ヨウ素(KI)に変更するのが好ましいとされますが
    妊娠15週を過ぎてから妊娠に気付いても遅い。
    ②プロパジールが原因の重篤な副作用の危険が生じます(無顆粒球症、劇症肝炎など)。妊娠早期に、このような副作用が生じると妊娠の継続が困難になります。
    妊娠前バセドウ病/甲状腺機能亢進症を安定させた後、メルカゾールからプロパジールに予め変更する必要があります。

メルカゾールからプロパジールに変更した事による副作用

メルカゾールからプロパジールに変更した事による副作用を金地病院が報告しています。妊娠前175人・妊娠早期49人にメルカゾールからプロパジールに変更した際、プロパジールを中止せねばならないほどの副作用は、

肝障害 薬疹 好中球減少(1000/μl未満)
妊娠前 2.3% 2.9% 0%
妊娠早期 8.2% 2.0% 2.0%

妊娠前よりも、いざ妊娠してから切り替えた方が、重篤な副作用が起きやすいため、計画妊娠の重要性が判ります。

さらには、プロパジールはメルカゾールより薬効弱いため、バセドウ病/甲状腺機能亢進症を抑え切れず、メルカゾールにもどした方が1.8%あり、妊娠中の悪化は母体・胎児共に危険なため、計画妊娠の重要性が判ります。(第55回 日本甲状腺学会 O-09-02 当院において妊娠に際しthiamazoleを他剤へ変更した症例の検討)

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、計画妊娠を予定している、あるいは甲状腺ホルモンが安定しているバセドウ病/甲状腺機能亢進症女性の診療はいたします。

しかし、以下の方は、ハイリスク妊娠ですので内分泌内科と婦人科が同一施設内にある高次機能病院(大学病院・国公立病院)でしか対応できません。

  1. 治療開始後、まだ甲状腺ホルモンが正常化していないのに妊娠した
  2. 投薬自己中断し、再発した状態で妊娠した
  3. 妊娠後甲状腺機能亢進症/バセドウ病が発覚した

など、甲状腺ホルモンが不安定な状態のもの。これらは、流産の危険性高く、死亡率10数%の甲状腺クリーゼおこす危険もあります。

バセドウ病/甲状腺機能亢進症妊娠の管理

妊娠期間中は抗甲状腺薬の用量、種類を変更することが多く、甲状腺専門医による厳格な管理が必要です。

  1. コントロール不十分だと、流産・死産・早産、胎盤早期剥離妊娠高血圧症候群や心不全・甲状腺クリーゼ(死亡率10数%、コウノドリ2 第6話参照)、胎児・新生児甲状腺機能亢進症の危険が高くなります。
    また、周産期予後として、バセドウ合併妊娠はLFD/SFD(体重が小さい)・NICU(新生児集中治療室)入室数が多いと言う愛媛県立中央病院の報告があります。(第56回日本甲状腺学会 P2-064 当院におけるバセドウ病合併妊娠の周産期予後)
     
  2. その一方で、妊娠後半に、甲状腺ホルモンを下げ過ぎると、胎児の甲状腺機能低下症がおこるため、バセドウ病治療ガイドライン2011では「FT4(甲状腺ホルモン:遊離サイロキシン)が、非妊娠時の正常上限か、正常上限よりやや高めになるようにする」と書いています。

    しかし、いくら妊娠後半バセドウ病の活動性が低下するといえ、これでは妊娠中甲状腺機能亢進症/バセドウ病再発という最悪の事態(1.のコントロール不十分状態)と紙一重です。(何考えてんねん!机上の空論やんか)
    また、甲状腺の病気と無関係の正常妊婦でも、妊娠中甲状腺ホルモンが非妊娠時より低下する(妊娠中の甲状腺ホルモン)ので、この基準は明らかにおかしいと考えます。

    妊娠高血圧症候群、糖代謝異常(妊娠糖尿病、糖尿病合併妊娠)、切迫早産がある場合は、母体の安全を優先し、FT4, FT3を正常範囲内にします。

妊娠中、抗甲状腺薬+ヨウ化カリウム(KI)でもコントロールできない時

妊娠中、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)+ヨウ化カリウム(KI)でもバセドウ病/甲状腺機能亢進症をコントロールできない時は、もはや妊娠2期(中期)以降に甲状腺全摘手術になります。母体の甲状腺機能は安定しますが、TSHレセプター抗体(TR-Ab)は急に下がらないため、胎児の甲状腺を刺激して胎児バセドウ病は免れません。

妊娠中、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)が副作用で使用できなくなった時

妊娠中、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)が副作用で使用できなくなった時は、妊娠2期(中期)に甲状腺全摘手術になります。妊娠1期(前期)で使用できなくなった時は、2期(中期)までヨウ化カリウム(KI)で持たせます。妊娠3期(後期)で使用できなくなった時は、出産後までヨウ化カリウム(KI)で持たせます。(第54回 日本甲状腺学会 P199  抗甲状腺薬の副作用のため手術療法を行い出産に至ったバセドウ病合併妊娠の一例)

妊娠2期(中期)妊娠22週無顆粒球症スレスレ(好中球500台)おこし、本来、手術になる所、出産後までヨウ化カリウム(KI)で持たせ、出産後にエスケープ現象でヨウ化カリウム(KI)効かなくなり、放射線治療(131-I アイソトープ治療)行った症例も報告されています。しかし、これは危険な賭け(バクチ)と思います。筆者なら絶対しないでしょう。妊娠2期(中期)に手術しなかった理由は、甲状腺が小さく、TR-Abも減少傾向だったとの事ですが、もしヨウ化カリウム(KI)効かなくなるのが妊娠中なら、放射線は使用できないため、コントロールが悪化したリスクの高い状態での甲状腺全摘手術になります。(結果オーライと言えばそれまでですが・・)
(第5✖回 日本甲状腺学会 P-◎△3  顆粒球減少----バセドウ病合併妊娠の1例)

アイソトープ治療後妊娠

ヨード131によるアイソトープ治療を受けた場合、6か月間は胎児への影響から、避妊しなければなりません。その後さらに6か月間は甲状腺ホルモンの変動が激しく、まともに妊娠出産できません。

また、急激な甲状腺の破壊により、甲状腺に対する自己免疫が活性化され、TSHレセプター抗体(TR-Ab)がアイソトープ治療前より増加。2年以内に妊娠すると胎児・新生児バセドウ病の確率が高くなります。上條甲状腺クリニックの公表データでも、TR-Abがアイソトープ治療前のレベルに低下するのに2年以上を必要としています(上條甲状腺クリニックの甲状腺疾患Q&A)。

3年以降でも、TSHレセプター抗体(TR-Ab)が高い方は胎児・新生児バセドウ病起こす可能性があります。

5年以上して、母体が甲状腺機能低下症になっても、TR-Abが高い場合、胎児・新生児バセドウ病おこす可能性あります。

甲状腺を全摘出すればTSHレセプター抗体が低下するとの報告もありますが、アイソトープ治療を受けた後の甲状腺を全摘出すべきか否か一定の見解はありません(しない方が一般的ですが、妊娠を前提とするなら、最初からアイソトープ治療でなく、手術をする方が理にかなっています)。ただし、甲状腺全摘出してもバセドウ病抗体が消えずに胎児バセドウ病を起こすこともあります。

バセドウ病抗体、TSHレセプター抗体(TR-Ab)がアイソトープ治療後、10未満に低下するまでの期間

胎児バセドウ病は、妊娠20週以降のTR-Ab≧10でおこりやすく、TR-Ab<7.0で危険性下がるとされます。(TESガイドライン2012  J Clin Endocrinol Metab 97:2543-2565, 2012)

TR-Abが10未満に低下するまでの期間を調べた報告があります。アイソトープ治療後の136名の内、TR-Abが上昇しなかったのは15名(約11%)で、121名(約89%)は上昇。

TR-Abが10未満に低下するまでの期間は、

  1. 甲状腺重量30g未満では407日で、30-60gでは515日で50%の人がTR-Ab10未満に低下、≧60gでは55%の人が最終観察時点でTR-Ab≧10のまま
    →甲状腺が小さい程TR-Abが低下しやすい
  2. 治療前のTRAb10IU/L未満では402で、10-20IU/Lでは466日で50%の人がTR-Ab10未満に低下、≧20IU/L では62%の人が最終観察時点でTR-Ab≧10のまま
    →治療前のTRAbが低い程TR-Abが低下しやすい
  3. アイソトープ治療後、1年以内に甲状腺ホルモン剤(チラーヂン)が必要になった人では408で50%の人がTR-Ab10未満に低下、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)を中止できなかった66%の人が最終観察時点でTR-Ab≧10のまま
    →完全に甲状腺組織を破壊し、甲状腺機能低下症にすればTR-Abが低下しやすい

    (第53回 日本甲状腺学会 P-151  バセドウ病131I 内用療法後、TRAb低下までの期間)

結論として、甲状腺が大きい、治療前のTRAbが高い妊娠希望バセドウ病女性は、アイソトープ治療でなく、甲状腺全摘手術を考えた方が良い。

もし、アイソトープ治療を選択するならば、甲状腺組織を完全に壊すだけの131I投与量が必要

前述の3. を裏付けるデータを福岡の、やました甲状腺病院が出しています。バセドウ病の放射性ヨウ素内用療法後のTSAb上昇は、甲状腺単位重量あたりの131I投与量が多いと抑えられる可能性があるそうです。要するに、中途半端な131I投与量では、かえってTSAbが上昇する結果になるようです。(第60回 日本甲状腺学会 O1-3 バセドウ病患者における放射性ヨウ素内用療法後のTSAb上昇に 関する検討)

但し、バセドウ病抗体(TRAb,TSAb)が最も低下するのは、甲状腺全摘手術である事に変わりありません。

胎児・新生児バセドウ病/新生児一過性甲状腺機能低下症

抗甲状腺薬メルカゾールによる胎児奇形

妊娠希望バセドウ病女性の新たな選択肢:手術療法

米国食品薬品局(FDA)と米国甲状腺学会合同の、「メルカゾール胎児奇形とプロパジール肝障害に関する会議」が2009年に開催されました。メルカゾール胎児奇形・プロパジール肝障害とも危険なため、近い将来妊娠を希望する女性は、事前にアイソトープ治療か甲状腺手術(甲状腺摘出)をしておく事が提案されました。

アイソトープ治療は前述の通り、甲状腺手術に比べ胎児・新生児バセドウ病おこす危険が高いため、長崎甲状腺クリニック(大阪)ではバセドウ病抗体が最も下がる甲状腺全摘出手術の方を勧めています。

最も、バセドウ病抗体が低下するのが甲状腺全摘出手術です。ただし、甲状腺全摘出してもバセドウ病抗体が消えずに胎児バセドウ病を起こすこともあります。(第56回日本甲状腺学会P2-066 胎児・新生児バセドウ病を生じたバセドウ病術後甲状腺機能低下症の1 例)

バセドウ病じゃないよ、妊娠時一過性甲状腺機能亢進症

抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)肝障害・バセドウ病再発と区別が必要、急性妊娠脂肪肝、HELLP 症候群(ヘルプ症候群)

甲状腺機能亢進症/バセドウ病妊娠中の場合、

  1. 抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)肝障害
  2. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病の再発(甲状腺ホルモンによる肝毒性)

急性妊娠脂肪肝、HELLP 症候群(ヘルプ症候群)の区別が必要です。

妊娠出産分娩と内分泌障害(甲状腺以外)

 を御覧ください。

動悸でのβブロッカー使用

甲状腺ホルモンが過剰になり、抗甲状腺薬やKI(ヨウ化カリウム)の効果が出るまで、動悸を抑える場合にβブロッカーが必要になります。

αβブロッカーのラベタロールは、日本高血圧ガイドライン2009では使用可能で、添付文書にも「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」となっています。元々、降圧薬なので血圧降下には注意が必要です。

妊娠中のバセドウ病眼症

非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症妊娠

非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症は、常染色体優性遺伝による(先天的な)TSH受容体、または刺激伝達経路のGsα(刺激性Gタンパク)の活性型変異[つまり甲状腺刺激ホルモン(TSH)がTSH受容体に結合しなくても、勝手に甲状腺ホルモン(T4, T3)を作る信号が無制限に出る]が原因です。(バセドウ病の抗体が陰性の甲状腺機能亢進症---非自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症

妊娠を契機に増悪する事が多く、変異したTSH受容体(TSHR)がhCGに過剰反応する事が一因と報告されています(家族性妊娠時甲状腺機能亢進症;familial gestational hyperthyroidismと言われます)(Activating mutations of TSH receptor. Ann Endocrinol (Paris). 2003 Feb;64(1):12-6. Review.)。hCG値と類似の変動パターンになります。

JA北海道厚生連 帯広厚生病院が報告している自己免疫性家族性甲状腺機能亢進症具体例は、非妊娠時、TSH低値が常態の潜在性甲状腺機能亢進症で、母親もTSH 低値が持続。妊娠32週以降にFT3、FT4 が上昇、無機ヨード投与するも妊娠37週に血中甲状腺ホルモンは頂値に。
最もバセドウ病が発症し難い妊娠後期に発症している点が特記すべき所です。
(第57回 日本甲状腺学会 P1-014 妊娠期間中に甲状腺中毒症が顕性化した非自己免疫性甲状腺機能亢進症における機能獲得型TSH 受容体遺伝子変異)

同病院の別の症例

TSHは常に低値、非妊娠時FT3 FT4は基準値内で推移、潜在性甲状腺機能亢進症の状態。FT3 FT4は第1子妊娠30週より上昇、KI 13mg/日の投与するも妊娠35週まで上昇が続く。やはり、妊娠後期に発症しています。

第2子妊娠時は、妊娠15週でFT3 FT4上昇、KI 50mg/日投与後FT3 FT4は速やかに低下。KI 50mg隔日投与を出産まで継続し、FT3 FT4は基準値内で推移、血中hCGと類似の変動パターンを示したそうです。 (第60回 日本甲状腺学会 P1-2-6 妊娠期間中の甲状腺中毒症に対し無機ヨードの投与を行った機能 獲得型TSH受容体遺伝子変異の1例 

出産後バセドウ病再発

出産後に女性ホルモンが急激に低下すると反動(リバウンド)でバセドウ病の活動性が高まり増悪・再発。バセドウ病抗体TRAbは再上昇。抗甲状腺薬の再開、増量が必要。出産後に抗甲状腺薬のPTU(プロパジール、チウラジール)肝障害現れる事ある。メルカゾールは一日2錠まで、プロパジール、チウラジールは一日6錠まで授乳に問題なし。メルカゾール1回3錠以上でも、服薬後6~8時間あければ授乳に問題なし。搾乳も有効。補助薬は授乳L2指定のβ(ベータ)ブロッカー、セロケン®(メトプロロール)、ラベタロール(αβブロッカー)、授乳L1指定の抗アレルギー剤、クラリチン®(ロラタジン)。

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出産後バセドウ病再発とは

出産後バセドウ病が悪化します。妊娠中は女性ホルモンの免疫抑制作用で、バセドウ病の活動性が沈静化しますが、出産後に女性ホルモンが急激に低下すると反動(リバウンド)でバセドウ病増悪・再発します。

バセドウ病抗体TRAbは妊娠中減少し、バセドウ病増悪・再発した後、再上昇します。

出産後は抗甲状腺薬の再開、増量が必要です。

筆者の経験では、出産後バセドウ病再発は、強烈な再発になる場合が多いです。特に妊娠中に抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール/チウラジール)を完全に中止できなかった人に多いため、出産後すぐに、妊娠前の量に戻すようにしています。

同時に、強烈な再発では、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール/チウラジール)を授乳が難しい量まで増量するため、最初から、必ず人工乳を混ぜるよう指示しています。

中には、いくら説明しても、母乳単独の授乳を譲らない方もおられますが、長崎甲状腺クリニック(大阪)では治療に責任が持てないため、他医に転院を勧めます。

妊娠及び出産後のTRAbの変動(バーチャル臨床甲状腺カレッジより)

妊娠及び出産後のTRAbの変動

出産後バセドウ病再発を予測

バセドウ病出産後再発

院長が、大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究では、出産後バセドウ病が再発する時は、甲状腺へ流入する下甲状腺動脈の血流速度(ITA-PSV)がまず最初に上昇し、続けて甲状腺ホルモンが上昇。バセドウ病抗体のTSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)上昇は、再発した後になります。

甲状腺動脈の血流速度(ITA-PSV)は、出産後再発の一か月前に上昇する事が多いです。

院長の論文

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の出産後再発を、下甲状腺動脈の血流測定により、再発する一か月前に予測可能な事を世界で初めて証明。

出産後、TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])の比率が高くなり甲状腺機能低下症

妊娠出産が誘因となりTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型])TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])の比率が、めまぐるしく数カ月単位で変化し、甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症を繰り返す症例が報告されています。

出産後再発せずに、TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])の比率が高くなり、甲状腺機能低下症になる場合もあります。
(第53回 日本甲状腺学会 P-143 出産後に甲状腺機能低下症を認めたバセドウ病の一例)

出産後PTU(プロパジール、チウラジール)肝障害

甲状腺機能亢進症/バセドウ病に投与する抗甲状腺薬のPTU(プロパジール、チウラジール)肝障害が、出産後に現れる事あります。PTU(プロパジール、チウラジール)肝障害は、いつおこっても不思議はないのですが、出産後の急激なホルモンバランスの変化が原因の可能性あります。(第58回 日本甲状腺学会 P1-12-4 出産後に甲状腺機能亢進の悪化と肝障害を来したPTU投与中バセドウ病合併妊娠の1例)

 授乳と抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール/チウラジール)

抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール/チウラジール)

甲状腺機能亢進症/バセドウ病に投与する抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)のうち、

  1. PTU(プロパジール、チウラジール)の乳汁移行はMMI(メルカゾール)の約1/10と低く
  2. メルカゾールなら一日2錠まで、プロパジール、チウラジールなら一日6錠まで問題ありません
  3. 抗甲状腺薬を服用後、6時間以上経過すると母乳中の濃度はかなり低くなります。メルカゾールを1回3錠以上飲む場合も、服薬後6~8時間あければ授乳に問題ありません。
    また、搾乳し母乳を保存するのも有効な方法です(当然、保存限界期間は守るべし。)

    大阪母子医療センターでは、メルカゾール一日6錠まで授乳可で、一日4錠以上は、母乳終了まで児の甲状腺ホルモンをチェックもするそうです。服薬後6~8時間あけれない場合、こうするしかないでしょう。
搾乳機

搾乳機、写真のような簡易なものなら、マタニティー関連のお店や、ネット通販で簡単に買えます。

過去に一例だけ、一日2錠のメルカゾール服薬で、授乳中の児に全身発赤が出た症例が報告されています。ただし、メルカゾールとの因果関係は不明で、偶然時期が重なっただけかもしれません。(第53回 日本甲状腺学会 P-99 母親の methimazole 内服が原因と思われる授乳後乳児皮疹の一例)

授乳中甲状腺機能亢進症/バセドウ病の補助薬

抗アレルギー剤

アレルギー性鼻咽頭炎、アレルギー性結膜炎(花粉症)は甲状腺機能亢進症/バセドウ病の活動性を上げます。アレルギー体質の人が授乳中に、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の発症・再発・増悪あれば、抗アレルギー剤も必要になります。乳汁に移行しない授乳L1の指定のある唯一の抗アレルギー剤、クラリチン®(ロラタジン)を使用します。

授乳L1:最も安全(safest)。多くの授乳婦が使用するが、児への有害報告なし。対照試験でも児に対するリスクは示されず、乳児に害を与える可能性はほとんどない。又は、経口摂取しても吸収されない。

β(ベータ)ブロッカー

(ベータ)ブロッカーは本来、高血圧・頻脈性不整脈・心不全・狭心症の薬です。甲状腺ホルモンが正常化していないバセドウ病/甲状腺機能亢進症の状態では、高血圧・頻脈性不整脈・心不全・狭心症が起こりやすく、致死性不整脈、急性心不全、狭心症/心筋梗塞、たこつぼ型心筋症による突然死や命にかかわる甲状腺クリーゼを防ぐ目的で使用されます。

残念ながら、授乳L1指定のβ(ベータ)ブロッカーは存在しません。ただし、授乳L2指定のセロケン®(メトプロロール酒石酸塩)か、ラベタロール(αβブロッカー)を使用します。

授乳L2:比較的安全(safer)。少数例の研究に限られるが、乳児への有害報告なし。リスクの可能性がある根拠はほとんどない。

ヨウ化カリウム(KI)

ヨウ化カリウム(KI)は、乳汁中に分泌され、乳児の甲状腺を抑制、潜在性甲状腺機能低下症をおこすことあります。

田尻クリニックによると、ヨウ化カリウム(KI)11-76mg(1錠50mg)を服用している授乳中のバセドウ病女性の母乳中には大量のヨードが分泌され、児にも母乳を介して大量のヨードが移行します。結果、児の甲状腺機能は10 例中8 例は正常ながら2例で潜在性甲状腺低下症[TSH7.1と5.3μU/L(0.5-5.0)]がみられたそうです。(第56回 日本甲状腺学会 P2-056 ヨウ化カリウムを服用しているバセドウ病授乳婦の母乳中ヨード濃度と乳児甲状腺機能の関係)

田尻クリニックの前年の報告では、潜在性甲状腺機能低下症がおこるのはヨウ化カリウム(KI)投与後1-2カ月。特に、ヨウ化カリウム(KI)内服量と、児のTSHに相関なしとの事です。(第55回 日本甲状腺学会 O-09-01  バセドウ病授乳婦のKI内服による乳幼児甲状腺機能への影響)

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)


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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
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〒546-0014
大阪市東住吉区鷹合2-1-16

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  • 大阪メトロ 谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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