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甲状腺眼症:バセドウ病眼症・橋本病眼症        [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、甲状腺眼症バセドウ病眼症橋本病眼症の検査・治療は行っておりません。これらは眼科で行うものです。

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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「バセドウ病悪性眼球突出症」と言う物騒な呼び方をされる事もありますが、命に係わらないので、”悪性”を付けるのはどうかと思います。バセドウ病橋本病の両方で起るので、最近は甲状腺眼症とも言われます。

主に眼筋、目の奥の脂肪組織、瞼(まぶた)などの自己免疫による炎症が本態です。

Summary

甲状腺眼症(バセドウ病眼症橋本病眼症)の甲状腺機能は亢進しているとは限らず。眼筋炎、球後脂肪織炎、眼瞼炎が主体。症状は、眼瞼腫脹、複視、眼球突出、眼痛、涙腺炎、眼内圧上昇で視力低下。眼窩MRIで活動性を診断。Clinical Activity Score(CAS)は客観性に欠ける。TS-Ab(甲状腺刺激抗体)はTR-Ab(TSHレセプター抗体)よりバセドウ病眼症の活動性を強く反映。バセドウ病眼症の発症・増悪の誘因は、タバコ、131-Iアイソトープ治療後TSAb増加。眼症先行型バセドウ病眼症は、甲状腺機能正常バセドウ病眼症より活動性高い。高齢者の甲状腺眼症は、眼球突出は小さいが、眼筋炎の複視は多い。

Keywords

甲状腺,眼症,バセドウ病眼症,橋本病眼症,眼球突出,バセドウ病,甲状腺機能亢進症,TS-Ab,治療,眼窩MRI

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)とは

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)は、バセドウ病の25-60%(橋本病の2%)に合併する眼と眼の周囲組織におこる自己免疫異常です。MRIで評価すると、軽いバセドウ病眼症を含め75%に認めるとされます(実際、治療適応になるのは少数)。

バセドウ病の前後3か月-1年で発症する事が多く、バセドウ病と同様に女性に多いものの、重症例の男女比はほぼ1対1です。 発症年齢は女性では出産前後閉経前後の2峰性。5-7年でほぼ固まり安定期(固定期と言った方が適切)になる。

バセドウ病眼症
バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の機序

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)が起きるメカニズムは、大まかに分けて2つあります。

1つは眼を動かす筋肉(眼筋)の炎症、もう1つは眼球の後方の眼窩(くぼみの脂肪組織の中に眼神経、眼筋、血管などが埋もれている)の脂肪組織の炎症です。

もちろん両方が同時に起きるのですが、どちらか一方が強く起きる事もあります。

(図;「上條甲状腺クリニックの甲状腺疾患Q&A」より)
甲状腺眼症の病因と病態

(以下は医師以外では難しい話ですが)バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の病態は、外眼筋、後眼窩の眼窩脂肪織、涙腺に

  1. リンパ球浸潤し、外眼筋・後眼窩部結合織線維芽細胞が活性化され、グルコサミノグルカン(ムコ多糖体)産生が亢進。これらの線維細胞、線維芽細胞はTSH受容体やIGF-1受容体を両方持っていて、刺激伝達経路が相互作用していると考えられ、IGF-1受容体をブロックすれば、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の活動性が低下するとの研究があります(Endocr Rev. 2018 Sep 11.)。
     
  2. 後眼窩組織ではTSH受容体やIGF-1受容体、PPARγ遺伝子、secreted frizzled related protein-1(sFRP-1)[後眼窩脂肪組織由来線維芽細胞の成熟脂肪細胞への分化、TSH受容体の発現誘導する]が多く発現。IL-6 [インターロイキン(Interleukin)-6]遺伝子も強発現。
    (第55回 日本甲状腺学会 O-05-02 バセドウ病眼症におけるIGF-1受容体系の役割:眼症病変部織線維芽細胞における検討)

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の症状

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の症状

(図;バーチャル臨床甲状腺カレッジより改変)

上記の機序により、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の症状は

  1. 上眼瞼(まぶた)の炎症(眼瞼腫脹);上眼瞼挙筋の炎症
    眼瞼後退;甲状腺ホルモンがまぶたを上げる平滑筋を収縮させ、まぶたが完全に閉じなくなる(兎眼)→ドライアイに
     
  2. 眼を動かす筋肉の炎症(眼筋炎):複視、眼球突出(眼筋の伸展障害なので収縮は可能)
     
  3. 眼窩内球後(眼球の後の)脂肪組織の炎症と増生(球後脂肪織炎):眼球突出
     
  4. 角膜・結膜・光彩・毛様体炎:眼を動かすと痛みなど
    眼瞼後退でまぶたが完全には閉じなくなるため、角膜や結膜が乾燥し傷つきやすくなります
      
  5. 涙腺炎:涙液分泌低下 橋本病(慢性甲状腺炎)合併シェーグレン症候群(ドライアイ,口内乾燥)と同じ症状)
     
  6. 眼内圧上昇で視力低下

がおこります(図;バーチャル臨床甲状腺カレッジ)。

外眼筋炎 MRI画像

外眼筋炎 MRI画像。右上直筋と内直筋に特に炎症が強いため、これらの伸展障害により下方視が困難になります。

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の分類

  1. 良性眼症:甲状腺機能亢進症による交感神経の緊張でまぶたを吊り上げるミュラー筋が異常収縮、上眼瞼後退をおこします。
  2. 悪性眼球突出症(いわゆるバセドウ病眼症):TSH受容体や外眼筋抗原に対する自己免疫により、眼筋や球後組織に炎症をおこします。

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の甲状腺機能は亢進しているとは限らず

  1. 甲状腺機能亢進症(80%)(hyperthyroid Graves’disease)
  2. 残りは甲状腺機能正常(euthyroid Graves’disease)
  3. または甲状腺機能低下症(hypothyroid Graves’disease)
    バセドウ抗体(TRAb,TSAb)が存在するので眼症は起こりますが、併存する慢性甲状腺炎(橋本病)による破壊が優位なため甲状腺機能低下症になります。TSH高値が増悪因子のため、甲状腺ホルモン補充して甲状腺機能を正常化する必要があります。
    TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型]) が原因でないとされます(Acta Med Indones. 2012 Apr;44(2):114-21.)。

の3種類です。

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の発症・増悪の誘因

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の発症・増悪には遺伝因子と環境因子が関与しています。

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の発症・増悪の誘因(環境因子)として良く知られるものは、

  1. タバコ(タバコは甲状腺の病気に悪影響・受動喫煙の恐怖;甲状腺に忍び寄る副流煙
     
  2. アイソトープ(放射性ヨウ素; 131-I)治療後の甲状腺刺激抗体(TSAb)増加;伊藤病院の報告では4%にバセドウ病眼症の発症・増悪がおこり、1 年以内が半数・5 年以内が9 割だったとの事です。(第56回 日本甲状腺学会 O1-2 バセドウ病に対する131-I 内用療法後のバセドウ病眼症の発症および増悪についての長期観察研究)
    さらに、無バセドウ病眼症・非活動性眼症に15mgの低用量プレドニゾロン(PSL)予防投与しても、予防効果なかったそうです。(第57回 日本甲状腺学会 O5-1 バセドウ病(GD)131-I 内用療法後(RIT)のバセドウ病眼症(GO)悪化に関する前向き研究-経口低用量ステロイド薬投与による予防効果を含めて-)
     
  3. 甲状腺手術後:
    ①特に甲状腺ホルモンが不安定な状態でおこなう甲状腺全摘術(第55回 日本甲状腺学会 P1-04-04 甲状腺全摘後に増悪したバセドウ病眼症の1例)
    ②甲状腺ホルモンが安定した状態でも、腫瘍などの甲状腺半切除(第55回 日本甲状腺学会 P1-04-03 甲状腺左葉切除術を契機に顕在化した甲状腺関連眼症の一例)

写真;アイソトープ治療後バセドウ病眼症 MRI画像

アイソトープ治療後バセドウ病眼症

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の診断

ヘルテル眼球突出計
  1. ヘルテル眼球突出計: バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の眼球突出が何ミリか測定(18mm以上は中等~重症)
     
  2. TS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]):一般的なTR-Ab(TSHレセプター抗体)よりもTS-Abの方がバセドウ病眼症の活動性を強く反映します(Acta Med Indones. 2012 Apr;44(2):114-21.)。
 

3. 眼窩MRI: バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の診断・鑑別に必要です。東住吉森本病院の放射線科等に依頼します。
眼窩MRIで、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)には2つのタイプがみられます。
①外眼筋腫大型;外眼筋のT2緩和時間やSTIR画像での信号強度や信号パターン(均一性)]を評価。外眼筋ではTNFα遺伝子発現が増加
②脂肪増殖型;後眼窩組織ではIL-6遺伝子発現が増し、IL-4やIL-10は減少

(図;バーチャル臨床甲状腺カレッジ)

甲状腺眼症のMRI病型
MRIによるバセドウ病眼症(甲状腺眼症)評価

さらに、日本では診断だけでなく、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の客観的な活動性の指標としてもMRIが使われます。

腫大した外眼筋のT2緩和時間や、STIR画像(脂肪抑制T2強調画像;炎症の範囲が分かりやすい)での信号強度や信号パターン(均一性)を客観的に評価します。信号強度によりステロイドパルス療法の治療効果を予測することも可能。

4. しかしながら、TS-Ab・TR-Abともに陰性で、眼窩MRIでもほとんど変化のないバセドウ病眼症(甲状腺眼症)です。このような場合、決め手になるのはバセドウ病眼症(甲状腺眼症)に精通した熟練眼科医の判断です(実際ほとんどいないのが現状です)。

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の活動性の評価

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)活動性の評価には

  1. Clinical Activity Score(CAS);客観性に欠けるが簡便
  2. MRI(前項);客観的。「バセドウ病悪性眼球突出症(甲状腺眼症)の診断基準と治療指針2018」では、MRIによる重症度や活動性の評価を推奨しています。

Clinical Activity Score(CAS)

Clinical Activity Score(CAS)は、以下のチェック項目

□ 後眼窩の自発痛や違和感   □ 上方視、下方視時の痛み    □ 眼瞼の発赤       □ 眼瞼の腫脹     □ 結膜の充血         □ 結膜の浮腫       □ 涙丘の発赤・腫脹 

1項目を1点として、3点以上は活動性のバセドウ病眼症(甲状腺眼症とされますが、日本人では1~2点でもMRIで炎症所見を認める場合があります。

特殊なバセドウ病眼症

片眼甲状腺眼症はステロイド減量で反対側も誘発。眼症先行型バセドウ病眼症は、甲状腺機能正常バセドウ病眼症より活動性高い。甲状腺機能亢進症後に起きる遅延型バセドウ病眼症もあり得る。甲状腺機能低下バセドウ病眼症TS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]とTSH刺激性レセプター抗体)TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])の比率が原因の可能性高齢者の甲状腺眼症は、眼球突出は小さいが、眼筋炎の複視は多い。甲状腺機能低下症甲状腺機能正常/橋本病で自己抗体(Tg-AbTPO-Ab)高い人は橋本病眼症に。妊娠中甲状腺眼症悪化の原因は不明。

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片眼甲状腺眼症

片方の眼だけに起きる片側性甲状腺眼症は比較的稀です。

片眼甲状腺眼症を治療する時は要注意です。病眼はステロイドパルス療法後改善しますが、数カ月で対側眼に甲状腺眼症が発症します。原因は定かではありませんが、ステロイド減量時のリバウンドにより、反対側の甲状腺眼症が誘発される事が考えられます。(第56回日本甲状腺学会 P2-027 右眼主体の甲状腺眼症に対するステロイドパルス療法後1年以内に左眼甲状腺眼症が増悪した1 例)

また、下記の甲状腺機能正常バセドウ病眼症片眼甲状腺眼症でさへも、同様な事が起きた報告があります。片眼のわずか一眼筋のみ病変のみで、プレドニン40mgの大量投与(充分な量)から開始し、1年かけて慎重に5mgまで減量したのに、両眼甲状腺機能正常バセドウ病眼症に進行したそうです。(第53回日本甲状腺学会 P-119 外眼筋炎と診断されプレドニゾロンが投与されるも増悪したeuthyroid Graves' diseaseの1 例)

筆者の持論ですが、「そもそも片眼甲状腺眼症両眼バセドウ病眼症に至る途中の段階で、ステロイドが減れば、確実に両眼性への道を進み始める」のではないでしょうか?

甲状腺機能正常バセドウ病眼症

甲状腺ホルモンが正常なのに進行するバセドウ病眼症があります(甲状腺機能正常バセドウ病眼症)。甲状腺機能正常バセドウ病眼症は、

  1. 片眼性が多いとされるも、両眼性のことも
  2. 活動性は低いとされるも、高活動性のことも
  3. TS-Ab弱陽性とされ、TS-Abが正常上限値(120%以下が正常で、115-119%)の事も多いが、強陽性のことも
  4. TR-Ab(通常のバセドウ病抗体)は陰性
  5. 甲状腺腫は認めない事が多いも、甲状腺機能正常バセドウ病眼症の40%は、甲状腺に99mTc(テクネチウム)シンチグラフィーの取り込みがあり、甲状腺ホルモンが正常なのにバセドウ病は活動しています。99mTc(テクネチウム)シンチグラフィーの取り込みがある場合、バセドウ病眼症は軽度ではありません。
甲状腺機能正常バセドウ病眼症 MRI画像
甲状腺機能正常バセドウ病眼症 超音波(エコー)画像

甲状腺機能正常バセドウ病眼症 超音波(エコー)画像;血管増殖なく、バセドウ病性の変化を認めない。

甲状腺機能正常バセドウ病眼症 超音波(エコー)ドプラー

甲状腺機能正常バセドウ病眼症 超音波(エコー)ドプラー;バセドウ病性の血流増加を認めない。

甲状腺機能正常バセドウ病眼症 下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV)

甲状腺機能正常バセドウ病眼症 下甲状腺動脈血流速度(ITA-PSV)は低値

甲状腺機能正常バセドウ病眼症は、眼症先行型バセドウ病眼症とは、異なります。伊藤病院の報告では眼症発症後3年以上甲状腺機能正常なものを甲状腺機能正常バセドウ病眼症、3 年以内に甲状腺機能亢進症に移行したものを眼症先行型バセドウ病眼症と定義すると、手術治療(眼筋、眼瞼)まで行う症例が、

  1. 甲状腺機能正常バセドウ病眼症5.7%(2/35例)
  2. 眼症先行型バセドウ病眼症60%(3/5例)と

と眼症の活動性に明確な差があったそうです。(第57回 日本甲状腺学会 P1-016 眼症先行型バセドウ病(PGD)とEuthyroid Graves’ Disease(EGD)の眼所見についての検討)

眼症先行型バセドウ病眼症

バセドウ病の約20%は、甲状腺ホルモンが高くなる前に眼症が先行します(眼症先行型バセドウ病眼症)。眼症先行型バセドウ病眼症は、甲状腺機能正常バセドウ病眼症より活動性が高いとされます。

眼症腺先行型バセドウ病眼症 ドプラー

眼症腺先行型バセドウ病眼症 超音波(エコー)ドプラー;甲状腺機能正常バセドウ病眼症と比べ血流増加が明らか。

眼症腺先行型バセドウ病眼症 下甲状腺動脈の血流速度(ITA-PSV)

眼症腺先行型バセドウ病眼症 下甲状腺動脈の血流速度(ITA-PSV);甲状腺機能正常バセドウ病眼症と比べ血流増加が明らか。

遅延型バセドウ病眼症

遅延型バセドウ病眼症は、バセドウ病発症後に、遅れて現れるものです。伊藤病院の統計では、初発バセドウ病で非活動性バセドウ病眼症またはバセドウ病眼症がない患者の9%に、1年以内に遅延型バセドウ病眼症が現れたとされます(眼科治療になったのは全体の4%)。(第58回 日本甲状腺学会 P1-2-1 初発バセドウ病(GD)におけるバセドウ病眼症(GO)悪化の予測)

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、メルカゾール0.5T/日の投与で数年間、甲状腺機能が正常を維持している安定したバセドウ病患者にいきなり遅延型バセドウ病眼症が起こりました。そのMRI画像がこれです。

遅延型バセドウ病眼症 MRI画像

遅延型バセドウ病眼症 MRI画像

遅延型バセドウ病眼症 MRI画像

遅延型バセドウ病眼症 MRI画像

甲状腺機能低下バセドウ病眼症

甲状腺機能低下バセドウ病眼症橋本病眼症とは異なります。同一患者でTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]; TSH刺激性レセプター抗体)TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])両方持っていると、その比率により、甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症のどちらに傾くか、あるいは入れ替わるか決まります。( TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])  保険適応外 参照)

TSB-Ab優位で甲状腺機能低下症の状態でも、TS-Abが存在するため、TS-Abと、機能低下で上昇したTSHの刺激により、バセドウ病眼症は起こり得ます。

(第60回 日本甲状腺学会 P1-7-3 TSBAb陽性により甲状腺機能低下症を生じ甲状腺眼症を発症し た1例)

まれな内眼筋障害

バセドウ病眼症では外眼筋障害に加えて、まれに内眼筋障害(毛様体筋・瞳孔括約筋)おこし、レンズ調節障害(ピントが合わない)・瞳孔散大することあります。自他覚症状は、

  1. 近くが見えにくい、眼痛時、視力低下
  2. 対光反射やや遅く、眼痛時、瞳孔不同
    (第57回 日本甲状腺学会 P2-027 内眼筋障害を伴ったバセドウ病)

橋本病眼症

甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能正常の橋本病でも自己抗体[自分の甲状腺を破壊する抗体;抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO-Ab)]が高い人はバセドウ病眼症になる事があります(橋本病眼症)。

ゆえに、バセドウ病眼症橋本病眼症まとめて、甲状腺眼症と言います。

バセドウ病眼症をおこす自己抗体は、甲状腺を刺激するバセドウ抗体(TRAb, TSAb)だけではないと考えられています。抗眼筋抗体などと呼ばれますが、未だ見つかっていません。

橋本病眼症MRI画像

橋本病眼症MRI画像:眼窩内脂肪組織の増生を認めます。

橋本病眼症 MRI画像

橋本病眼症 MRI画像:眼窩内脂肪組織の増生を認めます。

小児バセドウ病眼症(小児甲状腺眼症)

小児バセドウ病眼症(小児甲状腺眼症) はこちらをご覧ください

高齢者の甲状腺眼症

高齢者の甲状腺眼症は、眼球突出の程度は小さい(老化のため体が反応を起こしにくい)が、眼筋炎による複視の頻度が高いです。高齢者の活動性甲状腺眼症は、ステロイド全身投与が適応となり、視力低下など視神経症状がある場合は眼窩減圧術の適応となりますが、本人が希望しない・全身状態から判断して治療できない事が多々あります。

高齢者の甲状腺眼症で、両眼視神経障害による視力低下を発症し、転倒時に眼球破裂を起こした症例が報告されています。ステロイド全身投与・眼窩減圧術できなくても、リニアック照射(放射線外照射:視神経に体外から放射線を当てる治療)・ステロイド局所注射は可能ですが、効果は不十分の様です。(第56回 日本甲状腺学会 P2-029 視神経症、角膜潰瘍、転倒による眼球破裂を来した高齢者の甲状腺眼症の1 例)

妊娠中のバセドウ病眼症

妊娠時、中期以降、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の活動性は低下していきます。しかし、妊娠中甲状腺眼症の活動性が低下がするか不明です。妊娠中甲状腺眼症悪化の原因は不明です。また、妊娠中甲状腺眼症悪化の治療として、ステロイドパルス療法、放射線療法をすべきかと言うガイドラインは存在しません。 

妊娠29週に発症し、妊娠34週に球後視神経炎おこしたバセドウ病眼症の症例が報告されています。妊娠36週に骨盤位のため帝王切開後にステロイドパルス療法、放射線療法行ったそうです(第60回 日本甲状腺学会 O1-4 妊娠後期に診断され、急速増悪をきたしたバセドウ眼症の1例)。

甲状腺癌・亜急性甲状腺炎でも甲状腺眼症

普通ではあり得ない超稀な病態ですが、甲状腺癌亜急性甲状腺炎甲状腺眼症を来した症例が報告されています。亜急性甲状腺炎からバセドウ病が誘発される症例は数多く報告されており、バセドウ病眼症おこしても不思議ではありません。

しかし、甲状腺癌甲状腺眼症おこす機序は不明です(Journal of the eye 15(3), 451-453, 1998-03-31)。偶然、バセドウ病橋本病おこす遺伝的素因を持つ方が、甲状腺癌を発症したと筆者は考えます。

特に、甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)は、癌と言えども、正常な甲状腺濾胞細胞の性質を完全に失っていないため、体の免疫系が甲状腺濾胞細胞とみなし、バセドウ病抗体(TRAb, TSAb)、抗眼筋抗体を産生すると考えられます。

岡山済生会総合病院の報告では、バセドウ病の既往がなく、甲状腺乳頭癌全摘出後のTSH抑制療法中にバセドウ病眼症を発症したそうです(術後131-Iアジュバント治療行っているため、正常な甲状腺濾胞細胞がゼロの状態で)。(第53回 日本甲状腺学会 P-241 バセドウ病の既往がなく、甲状腺乳頭癌で甲状腺全摘後のTSH 抑制療法中に眼症を生じた一例)

甲状腺と白内障、緑内障

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、甲状腺眼症/バセドウ病眼症・白内障/緑内障の検査・治療は行っておりません。これらは眼科で行うものです。

甲状腺と白内障

内分泌代謝と白内障

「白内障は加齢よって起こるもの」と信じて疑わない人が大勢います。内分泌代謝の病気によって起きる白内障がかなりの数あります。代表的なのは

  1. 副甲状腺機能低下症
  2. クッシング症候群 副腎皮質ステロイドの長期投与
  3. 亜鉛欠乏症
  4. 糖尿病

白内障手術と甲状腺眼症/バセドウ病眼症

白内障 眼内レンズ挿入

白内障手術により沈静化している甲状腺眼症/バセドウ病眼症が再活性化される可能性があります(Jpn J Ophthalmol. 2009 Jan;53(1):44-46.)。

(写真 白内障 眼内レンズ挿入 第111回医師国家試験問題)

甲状腺と緑内障

緑内障

緑内障は視力障害・失明の原因の第一位を占め、発生率は年齢とともに増加します。緑内障は眼球内の圧力(眼圧)が上昇する病気です。(写真 eo健康より)

眼の中の水(房水)は、新たに産生される一方、隅角から、フィルターの役割をする線維柱帯を通って眼の外に排出されます。そのバランスで房水の量は一定に保たれていますが、線維柱帯が詰まると、房水を排出できなくなり、過剰な房水の蓄積で眼圧が上昇します。

甲状腺眼症/バセドウ病眼症緑内障

甲状腺機能亢進症/バセドウ病では緑内障(開放隅角緑内障、正常圧緑内障)の頻度が高いとされます。(Am J Ophthalmol. 2000 May;129(5):613-7.)

活動型バセドウ病眼症では緑内障おこす可能性がある(Ophthalmology. 1997 Jun;104(6):914-7.)

甲状腺眼症/バセドウ病眼症では、眼球の後ろにある眼窩の炎症により眼窩内圧が高くなります。一方、緑内障は眼球内の圧力(眼圧)が上昇する病気で、圧が上昇する場所が異なります。しかし、眼窩内圧が高くなると眼球を前に押し出すため、眼圧も連鎖的に上昇します(Otolaryngol Clin N Am. 2006;39:923–42.)。そのため、甲状腺眼症/バセドウ病眼症を、ただの緑内障と間違える事あります。

甲状腺機能低下症/橋本病内障

甲状腺機能低下症/橋本病緑内障の因果関係が報告されています(Eur J Ophthalmol. 2005;15:556–61.)(Ophthalmology. 2004;111:1649–1652.)。特に甲状腺ホルモン剤服用中の患者に多いとの報告もあります(Eye (Lond). 2004 Jun;18(6):600-8.)。

甲状腺機能低下症では、線維柱帯に過剰なムコ多糖体が蓄積し、界面活性剤のように隣接する内皮膜に、くっ付きます(Eye. 2004;18:600–608.)。

甲状腺機能低下症/橋本病緑内障に関連を否定した報告もあります。(PLoS One. 2015 Jul 31;10(7):e0133688.)

 

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪) 

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,浪速区,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪市東住吉区鷹合2-1-16

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