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まぶた(瞼)の腫れ:バセドウ病眼症との鑑別、ホルネル症候群[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

内視鏡的甲状腺手術(ETS)後のホルネル(ホルナー、Horner)症候群

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

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長崎甲状腺クリニック(大阪)では甲状腺眼症バセドウ病眼症橋本病眼症、眼の病気の診療を行っておりません。これらは眼科で行うものです。

まぶた(瞼)の腫れ:バセドウ病眼症との鑑別

Summary

バセドウ病眼症と鑑別必要なまぶた(瞼)の腫れ①血管神経性浮腫・遺伝性血管性浮腫)②アレルギー性結膜炎・春季カタル③重症筋無力症・老人性眼瞼下垂④ヘリオトロープ疹⑤HTL-V1関連ブドウ膜炎IgG4関連眼症先端巨大症⑧ハードコンタクトレンズ長期使用⑨ベンゾジアセピン薬。ホルネル(ホルナー、Horner)症候群は巨大甲状腺腫・甲状腺癌浸潤甲状腺癌転移リンパ節/悪性リンパ腫の圧迫・急性化膿性甲状腺炎の頚部膿瘍・リーデル甲状腺炎(Riedel甲状腺炎)甲状腺癌手術/経皮的エタノール注入療法(PEIT)/ラジオ波焼灼療法(RFA)合併症・パンコースト腫瘍。

Keywords

バセドウ病眼症,まぶた,瞼,腫れ,甲状腺癌,甲状腺,手術,甲状腺,ホルネル症候群,Horner症候群

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の瞼(まぶた)の腫れ

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)では、しばしば瞼(まぶた)の変化を伴います。上瞼(うわまぶた)の腫れは、

  1. 脂肪組織の増加
  2. 交感神経の緊張でまぶたを吊り上げるミュラー筋が異常収縮(上眼瞼後退)

が原因です。[Surv Ophthalmol. 2013 Jan-Feb;58(1):63-76.]

下眼瞼後退(下眼瞼の横方向の湾曲の増加)については、はっきりした機序はわかっていません[Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2016 May-Jun;32(3):161-9.]。

バセドウ病眼症(甲状腺眼症) 上眼瞼後退
バセドウ病眼症(甲状腺眼症) 上眼瞼後退[Orbit. 2011 Dec;30(6):280-8.]
バセドウ病眼症(甲状腺眼症) 下眼瞼後退

バセドウ病眼症(甲状腺眼症) 下眼瞼後退[Br J Ophthalmol 2004;88:1197–1200.]

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)との鑑別必要な瞼(まぶた)の腫れ

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)との鑑別を要する瞼(まぶた)の腫れは、

  1. 薬剤性血管性浮腫(血管神経性浮腫):血管運動神経の興奮、キニン系亢進により毛細血管の透過性亢進で、眼周囲のむくみ・口舌浮腫(気道閉塞をおこすことも)。降圧薬のARB/ACE阻害薬・Ca拮抗薬・アルテプラーゼ(血栓溶解剤)などが原因。
     
  2. 遺伝性血管性浮腫(クインケ浮腫)
     
  3. アレルギー性結膜炎、春季カタル
       
  4. 重症筋無力症の夕方増強する眼瞼下垂(甲状腺と密接な胸腺腫/重症筋無力症)
     
  5. 老人性眼瞼下垂 
     
  6. 皮膚筋炎のヘリオトロープ疹(甲状腺と筋肉痛・筋けいれん)
     
  7. 成人T細胞白血病リンパ腫の浸潤による眼瞼炎・眼窩内炎、HTL-V1関連ブドウ膜炎 
      
  8. IgG4関連眼症(IgG4関連甲状腺炎)
     
  9. 先端巨大症(成長ホルモン産生下垂体腺腫) 
     
  10. 好酸球性肉芽腫(木村病):上眼瞼涙腺の好酸球性肉芽腫。好酸球増多とIgE増加を認める(臨床眼科67巻 3号pp. 331-335)。頭頸部領域の多巣性好酸球性肉芽腫(ハンド・シュラー・クリスチャン病)は、歯肉、唾液腺、甲状腺、外耳に病変を認めたそうです[Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1988 May;114(5):561-3.]。
     
  11. ホルネル(ホルナー、Horner)症候群
     
  12. ミトコンドリアミオパチーミトコンドリアDNA異常で起こる両眼性眼瞼下垂、慢性進行性外眼筋麻痺。脳卒中様の症状を伴うメラス(MELAS)、ミオクローヌスてんかんを伴うマーフ(MERRF)などの病型がある。しばしば糖尿病や難聴を合併。(甲状腺の病気に似ているミトコンドリア病
     
  13. ボツリヌス菌食中毒 
     
  14. ハードコンタクトレンズの長期使用。ハードコンタクトレンズの機械的刺激による。
    コンタクトレンズ関連細菌性角膜炎は、呼吸器疾患および甲状腺疾患患者でおこりやすい[Optom Vis Sci. 2009 Jul;86(7):803-9.]
     
  15. ベンゾジアセピン系薬剤の副作用

眼瞼下垂:ホルネル(ホルナー、Horner)症候群

ホルネル(ホルナー、Horner)症候群は、視床下部から頚部交感神経節~内頚動脈へと至る交感神経路障害で生じる

  1. 中等度縮瞳(瞳孔散大筋障害)
  2. 眼瞼下垂(眼裂狭小、上眼瞼挙筋障害)
  3. 眼球陥凹(眼球後退)
  4. 顔面の発汗低下

です。[ACS Chem Neurosci. 2018 Feb 21;9(2):177-186.]

眼瞼下垂:ホルネル(ホルナー)症候群

ホルネル(ホルナー、Horner)症候群の原因として、

  1. 視床前核梗塞
  2. 内頚動脈瘤・内頚動脈閉塞
  3. Wallenberg症候群
  4. 頚部外傷
  5. 巨大甲状腺腫[BMJ Case Rep. 2020 Dec 12;13(12):e235313.]
    甲状腺癌浸潤[Endocr Pract. 2009 Sep-Oct;15(6):563-6.][Brain Tumor Res Treat. 2014 Oct;2(2):132-7.]
    甲状腺癌転移リンパ節/悪性リンパ腫の圧迫
  6. 急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍による頚部膿瘍
  7. リーデル甲状腺炎(Riedel甲状腺炎)[In: StatPearls [Internet]. 2022 Jan. 2022 Feb 3.]
  8. 甲状腺癌手術合併症
  9. 経皮的エタノール注入療法(Percutaneous Ethanol Injection Therapy;PEIT)合併症
  10. ラジオ波焼灼療法(RFA)合併症[Eur Radiol. 2017 Aug;27(8):3128-3137.]
  11. パンコースト腫瘍(下記

があります。 

甲状腺腫瘤性病変はホーナー症候群の0.14-1.3%を占めます[ANZ J Surg. 2004 Jun;74(6):442-5.][Endocr Pract. Sep-Oct 2009;15(6):563-6.]。また、甲状腺悪性腫瘍よりも良性甲状腺疾患の方がホーナー症候群をおこしやすいとされます[ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec. Jan-Feb 2002;64(1):49-52.]。‎甲状腺自体・甲状腺腫瘍による交感神経経路の2次または3次ニューロン圧迫や巻き込みによってホーナー症候群が生じます。

甲状腺癌浸潤によるホルネル(ホルナー、Horner)症候群

甲状腺乳頭癌浸潤によるホルネル(ホルナー、Horner)症候群1

甲状腺乳頭癌浸潤によるホルネル(ホルナー、Horner)症候群[Brain Tumor Res Treat. 2014 Oct;2(2):132-7.]

甲状腺摘出手術後のホルネル(ホルナー、Horner)症候群

甲状腺摘出手術後のホルネル(ホルナー、Horner)症候群

  1. 発生率は約0.2%です[J Korean Med Sci. 2010 Apr;25(4):541-5.]
  2. 術後2日目に発症する場合がある[Ear Nose Throat J. 2021 Sep;100(5_suppl):728S-729S.]

内視鏡的甲状腺手術(ETS)ロボット支援内視鏡的甲状腺摘出術(RAET)などの低侵襲甲状腺手術でも術後ホルネル(ホルナー、Horner)症候群の合併症はおこります[‎‎Oncol Lett. 2015 Jul;10(1):459-462.‎‎][ANZ J Surg. 2009 May;79(5):386-9.]。

内視鏡的甲状腺手術(ETS)後のホルネル(ホルナー、Horner)症候群

内視鏡的甲状腺手術(ETS)後のホルネル(ホルナー、Horner)症候群[BMC Surg. 2021 Jan 13;21(1):36.]

パンコースト(Pancoast)腫瘍(肺尖部浸潤肺がん;腕神経叢障害による上肢の痺れ(シビレ)と疼痛、肩甲骨の痛みも伴うCT画像(radiopaediaより)。 

パンコースト腫瘍 CT画像

甲状腺乳頭癌によるパンコースト(Pancoast)腫瘍が報告されています。甲状腺下部から下方に浸潤していけばあり得ることです。(Thorax. 1991 Apr;46(4):270-1.)。 

甲状腺乳頭癌によるパンコースト腫瘍 CT画像

Weber 症候群

Weber 症候群は中脳内腹側にある動眼神経核~大脳脚内側の障害でおきる病態です。Weber 症候群では

  1. 同側の動眼神経麻痺;眼瞼下垂、瞳孔散大、対光反射消失。複視、外転神経は正常なので外転は可能
  2. 対側の片麻痺(錐体路障害)

がおこります。

[Radiopaediaより]

Weber 症候群

老人性眼瞼下垂

老人性眼瞼下垂

瞼を持ち上げる上眼瞼挙筋の老化により、視野が狭くなる病態。眼が重くて開けにくい、真ん中より上が見えにくい、まぶたがうっとうしい等の症状が起こります。また、無意識に顎を上げて下目使いでものを見るため、頭痛・肩こりの原因になります。

霰粒腫

霰粒腫は、眼瞼のマイボーム腺が閉塞し分泌物がたまった腫瘤です。細菌感染による急性炎症をおこす場合があります。眼瞼良性腫瘍の乳頭腫、眼瞼悪性腫瘍の脂腺癌、基底細胞癌との鑑別を要します。

霰粒腫では血清ビタミンB12値が低いものの、甲状腺機能とは無関係[Ocul Immunol Inflamm. 2022 May 19;30(4):776-780.]。

霰粒腫2

霰粒腫

霰粒腫1

霰粒腫

脂腺癌

脂腺癌は主にまぶた(眼瞼)のマイボーム腺に発生する悪性腫瘍で高齢者に多い。本邦では最も多い眼瞼悪性腫瘍。黄褐色の霰粒腫との鑑別を要し、霰粒腫と思っていても治療に反応せず増大する場合には生検を行う。

脂腺癌、甲状腺乳頭がん乳がんを合併した重複癌の報告があります[J Med Case Rep. 2009 Jul 16;3:6905.]。

[MayoClinic HPより改変]

脂腺癌

基底細胞癌

基底細胞癌は脂腺癌と同じく高齢者に多い。皮膚癌(皮膚の表皮や毛包上皮から発生)につき、全身どこにでもできるがまぶた(眼瞼)[特に下眼瞼]にも発生する。外観は黄褐色の脂腺癌、霰粒腫と異なり、メラニンを含み黒褐色、出血、潰瘍形成を認めます。

[NIH libraryより]

基底細胞癌

 

甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,浪速区,東大阪市,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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