ラジオ波焼灼療法(RFA)、iPS細胞、腫瘍抗原ペプチドワクチン療法、甲状腺がん探知犬[橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。
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Summary
甲状腺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法(RFA)は手術不能・適応外の甲状腺微小乳頭癌、甲状腺癌術後再発・リンパ節転移に有用と思います。ES細胞やヒトiPS 細胞から甲状腺濾胞細胞を作る研究がされている。甲状腺がんのras変異部を含むペプチドは腫瘍抗原ペプチドで、腫瘍抗原ペプチドワクチン療法が研究されている。原癌遺伝子rasの変異部を含むペプチド(腫瘍抗原ペプチド)をワクチン的に甲状腺癌患者に投与し、癌細胞に対する免疫力・抵抗力を獲得させる腫瘍抗原ペプチドワクチン療法が研究されている。甲状腺がん探知犬がアメリカで研究発表された。
Keywords
甲状腺腫瘍,ラジオ波焼灼療法,RFA,ES細胞,iPS細胞,甲状腺がん,ras変異,腫瘍抗原ペプチド,ワクチン療法,甲状腺がん探知犬
長崎甲状腺クリニック(大阪)は、ラジオ波焼灼療法(RFA)を行う医療機関と提携していません。また紹介状を書くこともしておりません。
甲状腺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法(RFA;radiofrequency ablation)は、昭和大学で2007年より行われています。海外では研究・臨床適応が進んでいるそうです。超音波ガイド下に、皮膚上から電極針を甲状腺腫瘍の中心に到達させ、ラジオ波(電気メスと同じ450キロヘルツの高周波電流)の熱で甲状腺腫瘍を壊死させます。[J Med Ultrasound. 2021 Jun 21;29(2):77-83.]
確かに、手術不能・適応外の甲状腺微小乳頭癌・リンパ節転移、甲状腺癌術後局所再発・リンパ節再発に有用であることは筆者も認めます[Front Endocrinol (Lausanne). 2021 May 26:12:622996.][J Clin Endocrinol Metab. 2023 Oct 18;108(11):e1298-e1305.]。しかし、不思議な事に、ほとんど普及していません(昭和大学と、その関連病院くらい?)。機械そのものは、他臓器癌(肝癌など)に使用するものと同じなので、普及しそうなものですが・・・。保険適応外なので普及しないのかもしれません。(むしろ、合併症の問題かもしれません)
特に
- 注意深い経過観察の継続が可能な超低リスク微小乳頭癌患者(第66回 日本甲状腺学会HS2-2 超低リスク微小乳頭癌に対する新たな治療選択肢の提案 〜甲状腺ラジオ波焼灼療法(RFA)について)
- active surveillance(積極的経過観察)に不安がある甲状腺微小乳頭癌患者の初期治療[JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2022 Apr 1;148(4):317-325.]
- active surveillance(積極的経過観察)を拒否した甲状腺微小乳頭癌患者の治療[J Clin Endocrinol Metab. 2023 Oct 18;108(11):e1298-e1305.]
にも有用。
1~2cmで転移の無いT1bN0M0 甲状腺乳頭癌に対するラジオ波焼灼療法(RFA)の腫瘍消失率を、1cm未満のT1aN0M0と比較した報告があります。81.7% vs 52.7%, P < 0.001で、やはり無理がある様です。手術不能・適応外のT1bN0M0 甲状腺乳頭癌における病勢コントロールには有用かもしれません。[Eur J Endocrinol. 2021 Dec 1;186(1):105-113.]
甲状腺腫瘍が無制御に甲状腺ホルモンを産生する機能性結節に対しても、ラジオ波焼灼療法(RFA)が行われています。[Laryngoscope. 2022 Apr;132(4):906-914.][Front Endocrinol (Lausanne). 2020 May 22;11:317.]
腫瘍が大き過ぎると難しいかもしれませんが、昭和大学の報告によると、ラジオ波焼灼療法(RFA)を施行した11例の機能性結節は、
- 最大腫瘍径;焼灼前平均41.9mmから、焼灼後6か月で平均24.5mmに縮小
- 10例が甲状腺機能正常化
との結果です。ラジオ波焼灼療法(RFA)は、手術不能の機能性結節に有用。
もし機能性甲状腺乳頭癌だった場合、周囲のリンパ節郭清が出来ない難点があります。最初からリンパ節転移の無い、10mm未満の機能性微小甲状腺乳頭癌なら有用かもしれません。
(第56回 日本甲状腺学会 O2-3 甲状腺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法(RFA)の臨床的評価)(第62回 日本甲状腺学会 P5-3当科における機能性甲状腺結節に対するラジオ波焼灼療法(RFA)の治療成績)
ラジオ波焼灼療法(RFA)の合併症は、約3%と言われ
- 一過性反回神経麻痺(一時的な声の変化)で、エタノールを注入するPEITと同じ
- 気管・食道・反回神経・頸動脈など周囲組織の熱傷
- ホルネル(ホルナー、Horner)症候群[Eur Radiol. 2017 Aug;27(8):3128-3137.]
- 血腫の形成
- 皮膚熱傷
- 一過性軽度甲状腺中毒症(約50%);破壊された腫瘍組織から出た甲状腺ホルモンが血中へ流入するためでしょう。
- 数か月後の甲状腺腫瘍破裂(下記)
などです。(第56回 日本甲状腺学会 P1-094 甲状腺RFA 治療後に一過性甲状腺機能亢進症を呈した症例の検討)(Endocrinol Metab (Seoul). 2019 Dec;34(4):415-421.)
ラジオ波焼灼療法(RFA)の最も恐ろしい合併症は、数か月後の甲状腺腫瘍破裂です。突然の頚部痛と腫れが起こります。出血量が多いと、気管圧排されて呼吸困難になります。軽度なら入院の上、保存的に治療すれば改善しますが、血腫の吸引や切開・ドレナージを必要とするケースもあります。ラジオ波焼灼療法(RFA)が普及しない理由の一つかもしれません。
下記はラジオ波焼灼療法(RFA)後、数か月して甲状腺腫瘍破裂を起こした画像です。甲状腺腫瘍の境界は、飛び出した内容物で不明瞭になります(Endocrinol Metab (Seoul). 2019 Dec;34(4):415-421.)。
乳癌をはじめ様々な癌に凍結治療(凍結アブレーション法)が行われています。日本では保険適応なく、あまり普及していません。凍結治療の具体的には、凍結針を腫瘍に刺し、針の先端部を超低温にして癌を破壊します。
甲状腺形成に必要な甲状腺特異的転写因子Nkx2.1(TTF-1)とPax8をES細胞に発現させ、TSH添加培地で培養すると甲状腺濾胞細胞に分化するそうです(Nature. 2012 Nov 1;491(7422):66-71.)。
東京女子医科大学 先端生命医科学研究所の荒内 歩先生が、日本甲状腺学会で驚くべき発表をされていました。ヒトiPS 細胞をTSH添加培地で培養し、甲状腺濾胞細胞へ分化誘導させた後に、それらを甲状腺全摘出した免疫不全ラットに移植したそうです。移植された組織には、甲状腺濾胞構造と思われる形態が確認できたとの事です。(第59回 日本甲状腺学会 P3-6-1 ヒトiPS 細胞から分化誘導した甲状腺濾胞上皮細胞のin vivo における組織学的観察)
ヒトiPS 細胞より分化させた心筋細胞には、甲状腺ホルモンを不活化する3型5’-脱ヨード酵素が発現しており、甲状腺ホルモンの作用を調節しています[Life Sci. 2018 Jun 15;203:276-281.]。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は、腫瘍抗原ペプチドワクチン療法には一切かかわっておりません。
原癌遺伝子(癌の元になる遺伝子)Ras p21を活性化する点突然変異は甲状腺癌・膵癌・肺癌・大腸癌などに見られます。原癌遺伝子rasの変異部を含むペプチド(アミノ酸が繋がったもの)は、腫瘍抗原ペプチドと呼ばれます。
腫瘍抗原ペプチドをワクチン的に甲状腺癌患者に投与し、癌細胞に対する免疫力・抵抗力を獲得させる腫瘍抗原ペプチドワクチン療法が研究されています。
甲状腺疾患でもcfDNAの実験的研究が行われています。甲状腺疾患(甲状腺炎、甲状腺良性結節、甲状腺がん)で高値となるcfDNAを同定(Braz J Otorhinolaryngol. May-Jun 2020;86(3):321-326.)
cfDNAは、甲状腺がんの組織型(乳頭癌・濾胞癌・髄様癌・未分化癌)を問わず診断に有用(Biomed Pharmacother. 2013 Oct;67(8):723-30.)。
67と180 bp のcfDNAは甲状腺がんの診断に有用(Int J Mol Sci. 2017 Jun 24;18(7):1350.)
115と247 bpのcfDNAは甲状腺良性結節と甲状腺がんの鑑別診断に有用(Front Oncol. 2019 Sep 18;9:905.)
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、大阪大学 大学院医学系研究科ではNaI-131 に代わる甲状腺癌の放射線治療法として211At-NaAtの研究が行われています。(J Nucl Med. 2019 Sep;60(9):1301-1307.)
211At-NaAtはヨード(ヨウ素)によく似た性質を有し、ヨード(ヨウ素)と同じ経路で、ナトリウム/ヨードシンポーター(NIS)を通り甲状腺の濾胞細胞、甲状腺分化癌(乳頭癌、濾胞癌)に取り込まれます。
(J Nucl Med. 2009 Jul;50(7):1161-7.)(Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2002 Jul;29(7):842-54.)
そのため、従来のI-131を用いたβ線治療抵抗性(不応性)の甲状腺分化癌(乳頭癌、濾胞癌)患者にする効果が期待されています。
さらに、211At-MABGを用いた悪性褐色細胞腫細胞の治療研究も国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構で進められています。(Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2018 Jun;45(6):999-1010.)
がん探知犬
犬の嗅覚は人の100万倍以上、尿に含まれる癌特有の物質をかぎ分けるとされます。肺がんでは感度・特異性とも99%、乳がんは感度88%・特異性98%の驚異的な数字(Integr Cancer Ther. 2006 Mar;5(1):30-9.)。日本でも千葉県館山市に、がん探知犬育成センターがあって、ラブラドールレトリバーのがん探知犬がいるようです。
ヒストリーチャンネルで放映された「W・シャトナーの世界の怪奇現象S1 #11 動物の怪能力」では、おそらく飼い主の体液から出る進行卵巣がん(stage 3)の臭いに反応し、飼い主のお腹に頭を近付けてくるシベリアンハスキーの実例が紹介されていました。特にがん探知犬の訓練を受けていないのに、飼い主の体内の異変を察知していたのでしょう。腹部の検査を受けた結果、抗がん剤治療で寛解できる状態の進行卵巣がんが見つかったそうです。
甲状腺がん探知犬
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。