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急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍          [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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Summary

急性化膿性甲状腺炎は細菌感染による甲状腺/甲状腺のう胞性腫瘍、その周囲の急性炎症。原因は下咽頭梨状窩瘻[かいんとうりじょうかろう]の遺残、あるいは血行性免疫不全性。症状は発熱・頚部痛・皮膚の発赤・軽度の甲状腺中毒症。炎症所見(WBC, 好中球, CRP)の上昇強い、エコー検査で甲状腺内~外の境界不明瞭な低エコー領域、穿刺で膿。亜急性甲状腺炎との鑑別要。甲状腺膿瘍・甲状腺周囲膿瘍・深頚部膿瘍・降下性縦隔膿瘍も形成。治療は、抗生剤投与、切開排膿。下咽頭梨状窩瘻をエコー・下咽頭食道造影・下咽頭造影CTで確定し、手術切除、あるいは化学焼灼法おこなう。

Keywords

急性化膿性甲状腺炎,甲状腺,甲状腺のう胞性腫瘍,下咽頭梨状窩瘻,免疫不全,甲状腺膿瘍,深頚部膿瘍,降下性縦隔膿瘍,エコー,下咽頭食道造影,下咽頭造影CT,化学焼灼法

急性化膿性甲状腺炎とは

急性化膿性甲状腺炎は細菌感染による甲状腺/甲状腺のう胞性腫瘍とその周囲の急性炎症です。

急性化膿性甲状腺炎の原因

急性化膿性甲状腺炎の原因として、

  1. 通常型:胎生期の遺残物(第3-5鰓溝)の下咽頭梨状窩瘻[かいんとうりじょうかろう](90%以上左側)を通り、扁桃腺炎が甲状腺に広がるもので、12歳以下の小児に多いが、成人で発症する場合もよくあります。下咽頭梨状窩瘻を処理しないと再発します。
    腫瘍型:下咽頭梨状窩瘻が、のう胞性腫瘍の、のう胞部に開口している事あります(第58回 日本甲状腺学会 P2-7-4 40代で発症し著明な気道狭窄を呈した破壊性甲状腺炎を伴う急性化膿性甲状腺炎の一例)。
     
  2. 血行性免疫不全性:糖尿病、プレドニゾロン(副腎皮質ステロイド剤)・免疫抑制剤服薬中などの免疫不全で血行性に菌が甲状腺に到達します。(糖尿病と歯周病⇒急性化膿性甲状腺炎・全身膿瘍・感染性心内膜炎)
    のう胞性腫瘍の、のう胞部に下咽頭梨状窩瘻が開口していないのに感染起こします。
     
  3. 穿刺吸引細胞診(皮膚の上から針を刺して腫瘍などの細胞を採取、良悪性の診断をする事)での感染;糖尿病、プレドニゾロン(副腎皮質ステロイド剤)・免疫抑制剤服薬中などの免疫不全患者で要注意。
     
  4. 扁桃腺炎・扁桃周囲膿瘍・齲歯(虫歯)などによる頚部の深部感染症が、筋膜の間隙をつたい甲状腺に波及してくる

※成人の急性化膿性甲状腺炎は、瘻孔(ろうこう)が細く、炎症の治癒過程で自然閉塞する可能性があるため、1.2.判別付かない場合があります。

下咽頭梨状窩瘻[かいんとうりじょうかろう]の開口部

下咽頭梨状窩瘻[かいんとうりじょうかろう]

群馬大学の報告より1. 通常型の急性化膿性甲状腺炎では、下咽頭梨状窩瘻[かいんとうりじょうかろう]が、

  1. 甲状腺組織を貫き、甲状腺内に入る場合、胸腺組織を含む第3鰓嚢由来で、繊毛上皮です。
  2. 甲状腺組織内に入らず甲状腺被膜のすぐ外側に接し途切る場合、第4/第5鰓嚢由来で、重層扁平上皮です。甲状腺外に広がるため、重篤な深頸部膿瘍に成り易いと考えられます。

(第60回 日本甲状腺学会 O3-1 全摘した先天性梨状陥凹瘻1919例の解析による起源と経路/臨床症状:甲状腺と甲状軟骨との位置関係

急性化膿性甲状腺炎の症状

急性化膿性甲状腺炎

急性化膿性甲状腺炎の症状として、

  1. 発熱・頚部痛・皮膚の発赤があり、食事や唾を飲んでも痛みます。     
     
  2. 甲状腺のう胞性腫瘍内におこり、のう胞部分が腫大すると気管狭窄もあり得ます。
     
  3. 膿になります(甲状腺膿瘍・甲状腺周囲膿瘍・深頚部膿瘍・降下性縦隔膿瘍)
    :cold abcesss(冷膿瘍)は、痛みなく、炎症反応なく、エコーでニボー(液面)形成。(第54回 日本甲状腺学会 P187 学校検診で指摘発された無症候性右甲状腺膿瘍の1例)。
     
  4. 破壊性甲状腺炎による通常軽度の甲状腺中毒症。ただし、橋本病急性増悪様の高度の甲状腺中毒症もある。(第53回 日本甲状腺学会 P47 急性化膿性甲状腺炎に破壊性甲状腺炎を合併した1例)
     
  5. 敗血症(血行性免疫不全性);他の部位にも膿瘍形成、関節炎(関節内膿瘍)、人工血管入れている方はグラフト周囲膿瘍(第53回 日本甲状腺学会 P41 敗血症に伴って発症した急性化膿性甲状腺炎の一例)。

急性化膿性甲状腺炎の診断

急性化膿性甲状腺炎の診断は、

  1. 急性の細菌感染なので、炎症所見(WBC, 好中球, CRP)の上昇が強い
     
  2. 超音波検査(エコー検査)で、甲状腺内~甲状腺外の周辺組織に続く境界不明瞭な低エコー領域を認めます。甲状腺外の低エコー領域があれば、診断は容易ですが、無ければ、エコー所見のみでの鑑別が難しくなります。
    ①甲状腺内の低エコー領域は片側性が多い(特には下咽頭梨状窩瘻は左側)。甲状腺原発悪性リンパ腫様の入道雲様の事も。
    ②甲状腺外の低エコー領域は滲出液・膿瘍で、頭内側に多い
    ③腫瘍内感染は、腫瘍内に低エコー領域
    ④嫌気性感染は、ガス像
    ⑤cold abcesss(冷膿瘍)は、痛みなく、炎症反応なく、エコーでニボー(液面)形成。(第54回 日本甲状腺学会 P187 学校検診で指摘発された無症候性右甲状腺膿瘍の1例)。
     
  3. 穿刺細胞診すると、膿が出てきます。塗抹標本では、好中球主体。細菌培養を行う(可能なら嫌気性菌も)(他院で抗生剤が既に投与されていれば培養しても陰性になる事多い)。
     
  4. 下咽頭梨状窩瘻を超音波(エコー)検査で見つけ(空気を含むためガス像を認めます)、穿刺細胞診すると細菌・食物残渣・扁平上皮が確認できます。(写真:隈病院 第9,10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)
     
  5. 通常の造影頸部CTで、甲状腺外の膿瘍形成と、その範囲が明らかになります。
  6. 下咽頭部造影CTで、下咽頭梨状窩瘻を見つけます。
急性化膿性甲状腺炎 超音波(エコー)画像

急性化膿性甲状腺炎 超音波(エコー)画像

急性化膿性甲状腺炎(腫瘍内感染) 超音波(エコー)画像

急性化膿性甲状腺炎(腫瘍内感染) 超音波(エコー)画像

急性化膿性気腫性甲状腺炎 超音波(エコー)画像

急性化膿性気腫性甲状腺炎 超音波(エコー)画像

下咽頭梨状窩瘻 超音波(エコー)画像
下咽頭梨状窩瘻 病理組織
下咽頭梨状窩瘻 細胞診
下咽頭梨状窩瘻 下咽頭食道造影

耳鼻咽喉科・頭頚部外科に咽頭喉頭ファイバーを依頼。下咽頭食道造影・下咽頭造影CTで確定します。しかし、下咽頭梨状窩瘻が見つからず、摘出された甲状腺の病理標本から見つかることあります(第58回 日本甲状腺学会 P2-7-4 40代で発症し著明な気道狭窄を呈した破壊性甲状腺炎を伴う急性化膿性甲状腺炎の一例)。

急性化膿性甲状腺炎の鑑別

  1. 甲状腺未分化癌
  2. 甲状腺原発悪性リンパ腫
  3. 甲状腺乳頭癌被膜浸潤・腫瘍内出血・急速な増大・甲状腺乳頭癌周囲の炎症巣(炎症反応も出て、炎症部の穿刺細胞診でも癌細胞出ない)
  4. のう胞性腫瘍、のう胞内出血甲状腺エコーで一目瞭然
     
  5. 亜急性甲状腺炎:同じような症状。
    亜急性甲状腺炎は、
    ①亜急性の経過なので皮膚に発赤無い点
    甲状腺周囲に滲出液・膿瘍を示す低エコーが無い点
    ③病変が両側性の事が多く、移動性である点
    炎症所見(WBC, 好中球, CRP)の上昇が軽度である点(ただし、これには例外が報告されています。第54回 日本甲状腺学会 P097 核の左方移動を伴う白血球増加がみられた亜急性甲状腺炎の1例)
    が異なります。
     
    甲状腺エコーを行わず、
    亜急性甲状腺炎と高をくくり、ステロイド剤を投与してしまうと、急性化膿性甲状腺炎を悪化させます。(第58回 日本甲状腺学会 P1-8-3 亜急性甲状腺炎の診断でステロイド投与がなされた急性化膿性甲状腺炎の一例)
     
  6. 甲状腺結核
  7. 橋本病急性増悪:同じような症状。甲状腺エコーで簡単に判別
  8. リーデル甲状腺炎
  9. 頸静脈血栓性静脈炎:甲状腺エコーで簡単に判別

急性化膿性甲状腺炎の治療

急性化膿性甲状腺炎治療は、当然、抗生剤投与(投与例;MEPM 0.5 g x 2回, CLDM 600 mg x 2回)

甲状腺周囲~皮膚にも炎症が広がり、膿になる(甲状腺膿瘍)と切開排膿しないと治りません。時に亜急性甲状腺炎と誤診されステロイド投与されると、急性化膿性甲状腺炎が悪化します。

急性化膿性甲状腺炎根治療法は、

  1. 下咽頭梨状窩瘻を手術で摘除(大阪市立大学 内分泌外科に依頼)。術前に色素を飲み、下咽頭梨状窩瘻を染めてから行う。
     
  2. トリクロロ酢酸と電気メスで、梨状陥凹の廔孔入口の粘膜を電気化学焼灼する方法が考案されています。
    長崎甲状腺クリニック(大阪)では、隈病院に依頼します。
    ただし、廔孔閉鎖率は80%台で、2回目の電気化学焼灼が必要になる場合、結局手術になる場合があります。(第58回 日本甲状腺学会 O-6-2 下咽頭梨状窩瘻による急性化膿性甲状腺炎に対する化学焼灼療法の治療成績)

ceftriaxone(CTRX:ロセフィン®)

ラットにおけるCeftriaxone(CTRX:ロセフィン®)の体内動態に関する研究 (第3報)によると、ceftriaxoneは特に甲状腺, 脾臓, 腎臓に蓄積するため急性化膿性甲状腺炎の治療や、甲状腺生検の予防投与に有用と言えます。(CHEMOTHERAPY 1984, 32(7) 158-164)

降下性壊死性縦隔炎

降下性壊死性縦隔炎は、歯科治療・扁桃腺炎などによる頚部の深部感染症が、筋膜の間隙をつたい、縦隔まで下りてくるものです[Surg Gynecol Obstet (1983) 157 : 545-552]。

降下性壊死性縦隔炎は、発熱、強烈な頚部痛あるも、深部の感染症なので、耳鼻咽喉科で喉頭ファイバー(カメラ)しても異常なく、亜急性甲状腺炎のようです。もちろん、甲状腺超音波(エコー)すれば、亜急性甲状腺炎でないことは直ちに診断できます。降下性壊死性縦隔炎は、MRI/CTで診断可能です。

歯科治療・扁桃腺炎などによる頚部の深部感染症が、降下の途上で甲状腺周囲に膿瘍形成する降下性壊死性縦隔炎もあります。甲状腺の場所に痛みがおこるため亜急性甲状腺炎急性化膿性甲状腺炎と鑑別せねばなりません。甲状腺以外の場所にも痛みがおこるため、広範囲な急性化膿性甲状腺炎との鑑別が難しくなります。

急性化膿性甲状腺炎→深頸部膿瘍→降下性壊死性縦隔炎おこすこともあります。急性化膿性甲状腺炎との鑑別になります〔糖尿病52(7):569∼573, 2009〕。

降下性壊死性縦隔炎

降下性壊死性縦隔炎は、敗血症おこし死亡率高く、早期に診断して、縦隔ドレナージ(排膿)しなければなりません。ろくに超音波(エコー)検査もせずに、亜急性甲状腺炎と誤診し、ステロイド投与すれば敗血症を増悪させ大変なことになります。長崎甲状腺クリニック(大阪)では甲状腺専門医である院長自らが、その場で甲状腺超音波(エコー)検査するので、そのような事には絶対なりません。

アスペルギルス甲状腺炎

アスペルギルス甲状腺炎は、全身性のアスペルギルス感染症の一部で、大抵、肺が原発。診断・治療の遅れ、免疫不全状態では極めて死亡率高いです。アスペルギルス甲状腺炎が疑われたら、広域抗生物質に加えて速やかにアンホテリシンBとフコナゾール(あるいはバリコナゾール)を投与すべきです。(J Med Case Rep. 2014 Nov 21;8:379. 

アスペルギルス甲状腺炎

アスペルギルス甲状腺炎の穿刺細胞診所見。(左)メイギムザ染色、(右)グロコット染色

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

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