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バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の治療        [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー) 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は、内科系の甲状腺専門クリニックです。バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の治療は行っておりません。

Summary

バセドウ病眼症/甲状腺眼症治療は、禁煙、バセドウ病の治療(アイソトープで悪化)、ステロイドパルス、ステロイド服用、球後放射線照射、球後・上眼瞼ステロイド注射、手術(眼窩減圧術、眼筋手術、眼瞼手術)、上眼瞼ボツリヌス注射。

Keywords

バセドウ病眼症,甲状腺眼症,治療,禁煙,バセドウ病,アイソトープ,ステロイド,パルス療法,球後放射線照射,手術

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の治療は、内科医と眼科医、放射線科医の密接な協力が不可欠です。

禁煙

第一に禁煙:タバコはバセドウ病眼症の活動性に大きくかかわっており、タバコを吸うとバセドウ病眼症の活動性が上がり治療抵抗性になります。

バセドウ病自体の治療

通常のバセドウ病治療で、甲状腺機能の正常化をはかり、2次的にバセドウ病眼症の病態に深い関係のあるTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型])を減らします。

ただし、131-Iアイソトープ治療後は15%でバセドウ病眼症が増悪するので避けます。(抗甲状腺剤メルカゾール治療では3%)

喫煙者、治療前の血中T3高値、抗TSH受容体抗体(TRAb)高値などのハイリスク患者に、止もえなず131-Iアイソトープ治療おこなう場合、3ヵ月間のステロイド剤の予防投与(プレドニゾロン 20~30mg/日、漸減投与)が必要。

甲状腺全摘出術は、最もTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型])を減らし、理論上はバセドウ病眼症を改善しますが、逆に悪化させたという報告もあります。よって、バセドウ病眼症を改善させる目的で甲状腺全摘出術を勧めるガイドラインはなく、抗甲状腺薬のMMI(メルカゾール)、PTU(プロパジール、チウラジール)が使用できない時、甲状腺機能亢進症/バセドウ病をコントロールできない時に甲状腺全摘出すれば、バセドウ病眼症の改善も期待できると言う事です。

眼球突出の強い、複視をきたす中等症~重症例

眼球突出の強い、複視をきたす中等症~重症例、活動期には

①ステロイド療法

ステロイド・パルス療法(1g/日x3日x3週)→その後ステロイド内服、あるいは眼にステロイド注射

プレドニゾロン0.4~0.5mg/kg/日(20-30mg/日)で内服開始、2-4週ごとに経過を見て、3~6ヶ月間かけて漸減(日本での一般的方法)。(有効率60-80%)

EUGOGO(European Group On Graves' Orbitopathy)では、重篤な肝機能障害や死亡例があるのでメチルプレドニゾロンの総投与量を8g 未満とするように勧告しています(体格や人種差を考慮に入れていない手落ちがある)。日本でも、ステロイド大量投与したバセドウ病眼症患者の4%にAST(GOT)またはALT(GPT)>100U/l の肝機能障害がみられたとの報告があります。

しかし、現実には8g 未満で治まるバセドウ病眼症は軽度のものに限られます。ミニパルス(1 回投与量500mgx3日x3クール;計4.5g)では古典的な使用量より効果が弱いとする報告が多いです。(第56回日本甲状腺学会 P2-030 治療に難渋した甲状腺眼症の検討―甲状腺眼症に対するミニパルス療法は十分な治療効果が期待できるか?―)

ステロイド投与前の注意

ステロイド投与前には、

  1. 感染症のチェック(ステロイドによる免疫抑制で増悪の危険性);B型肝炎、結核
  2. 胃・十二指腸潰瘍の既往の確認(ステロイド潰瘍の危険性)
  3. 高齢者の甲状腺眼症は、
    ①ステロイド投与による不整脈起こし易いため、事前に心臓専門医(循環器専門医)にコンサルトが良い
    ②ステロイド骨粗鬆症のため、事前に骨量測定、ビスホスホネート予防的投与が好ましい

バセドウ病眼症で眼にステロイド注射

バセドウ病眼症の内眼圧上昇で失明の危険がある場合、眼窩組織に直接ステロイド剤を注射する球後注射があります。ステロイド球後注射で内眼圧が下がらなければ、緊急手術になります。

②球後放射線照射

球後放射線照射(眼球の後ろに放射線を照射。15-20Gy, 糖尿病性網膜症には禁忌);ステロイドを増量する事なく、効果を増強させる非常に良い治療です。球後放射線照射単独の有効率は60%ですが、ステロイドパルス療法と球後放射線照射の併用は、有効率88%なので、球後放射線照射が可能な施設は、併用療法が推奨されます。

バセドウ病眼症 治療

「バセドウ病悪性眼球突出症の診断基準と治療指針」作成委員会による日本での一般的方法

ステロイドパルス療法前後、治療終了後の計3回治療効果判定のため、MRI行います。

ステロイド・放射線外部照射併用治療中にウイルス感染症

ステロイド・放射線外部照射併用治療中にウイルス感染症おこす事あります。ステロイドや放射線治療によるによる免疫抑制が主たる原因と考えられます。

ステロイドパルスと放射線外部照射併用治療中に単純ヘルペス脳炎を発症した症例が報告されており、免疫抑制下に体内の単純ヘルペスウイルス(HSV)が再活性化されます。バセドウ病眼症以外にも、原発性・転移性脳腫瘍・下垂体腺腫にステロイド投与や放射線治療した際の単純ヘルペス脳炎も報告されています。

単純ヘルペス脳炎の約70~80%は、体内の単純ヘルペスウイルス(HSV)が再活性化され、側頭葉、前頭葉眼窩回などに急性壊死性脳炎をおこすことが多いです。治療しないと死亡率は60~70%になり、疑われたらウイルスの検出、ウイルス抗体の結果を待たず、即、抗ウイルス薬のアシクロビル投与します。(ヘルペス脳炎 国立感染症研究所

ステロイド・放射線外部照射併用治療は結核再燃に注意

陳旧性肺結核のある方の、ステロイド・放射線外部照射併用治療は結核再燃に注意が必要。まず、肺結核の活動性を否定した後、再燃予防目的で治療時にイソニアジド300 mg/ 日を併用。

非活動期

バセドウ病眼症の活動性が終息した後には、手術療法(眼窩減圧術、眼筋手術、眼瞼手術)が適応になります。

最重症例

バセドウ病眼症の最重症例;視神経障害(視力低下)は失明の危険あるため、ステロイド・パルス療法後2週間で改善なければ、緊急眼窩減圧術が適応。

難治性バセドウ病眼症

ステロイド治療を2年以上必要とする、難治性バセドウ病眼症が存在します。野口病院の報告によると、難治性バセドウ病眼症は治療前のTS-Abが高値で、治療後もあまり低下しないのが特徴。

教科書通りにステロイド減量し[1年以上再発ない予後良好群(26例)] vs  [難治性バセドウ病眼症群(9例)]

  1. 治療前TS-Ab値 (中央値) 1078% vs 3929%(正常値<120%)
  2. 治療3カ月後TS-Ab値 174% vs 2027%
  3. MRIで複数の外眼筋に炎症がある 2眼筋 vs 6眼筋

です。(第58回 日本甲状腺学会 O-6-5 長期間ステロイド治療を必要とした甲状腺眼症の検討

軽症例

軽症例;バセドウ病眼症の上眼瞼眼炎(まぶたの炎症)・眼瞼後退に眼にステロイド注射

バセドウ病眼症の上眼瞼眼炎(まぶたの炎症)・眼瞼後退に、ステロイドのトリアムシノロン注射(トリアムシノロンアセトニド)を、まぶたに行う事あります。上眼瞼眼炎・眼瞼後退は視力に関係なく、軽度のものも含めるとバセドウ病眼症の初期から出やすいため、緑内障等の副作用リスクを犯してまで行う必要ないと考えます。

久留米大学の報告では、

  1. 眼瞼腫脹に対して眼瞼ステロイド注射を施行した症例(17 例、23 眼)では9 眼(39.1%)
  2. 眼瞼後退に対して眼瞼ステロイド注射を施行した症例(14 例15 眼)では11 眼(73.3%)

で改善した。
眼球運動障害に対して施行した症例(6 例8 眼)では改善した症例はなかったとの事です。

(第55回 日本甲状腺学会 P2-07-03 甲状腺眼症に対するトリアムシノロンアセトニド局所投与の治療効果)

難治性の上眼瞼後退に対しては、ステロイド点眼/局注、あるいはボツリヌス毒素の局注が良いかもしれません。

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の補助治療(放射線球後照射以外)

シクロスポリンA

甲状腺機能亢進症/バセドウ病に合併し、あるいは抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の副作用で起きる再生不良性貧血に使用する免疫抑制剤シクロスポリンAを、副腎皮質ステロイド剤に併用する方法があります。

実際使用された久留米大学の谷 淳一先生曰く、あまり効かないそうです。(第60回日本甲状腺学会 専門医教育セミナーⅡ 甲状腺眼症の内科的治療-現状と今後の展望)

リツキシマブ(リツキサン®)

甲状腺原発悪性リンパ腫の治療に用いるリツキシマブ(リツキサン®)が、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)に有効(J Clin Endocrinol Metab. 2013 Nov; 98(11):4291-9.)との意見がある一方、無効との意見もあります(J Clin Endocrinol Metab. 2015 Feb; 100(2): 422–431.)。

エタネルセプト(エンブレル®)

TNF-α阻害薬エタネルセプト(エンブレル®)は、炎症性サイトカインをブロックするため、ある程度効くかもしれません(Eye (Lond). 2005 Dec;19(12):1286-9.)。

ソマトスタチン誘導体

末端肥大症(先端巨大症)治療に使用されるソマトスタチン誘導体もバセドウ病眼症(甲状腺眼症)への効果が報告されています(J Endocrinol Invest. 2004 Mar;27(3):281-7.)。バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の病態で重要な、眼筋や眼窩内脂肪組織での線維増殖や脂肪増殖を促進するinsulin-like growth factor (IGF)-I の産生を抑制するためと考えられます。

セレコキシブ(セレコックス®)

痛み止め、抗炎症剤セレコキシブ(セレコックス®);効くわけないと思いますが・・・

バセドウ病眼症と甲状腺機能亢進症自体の治療との関係

  1. バセドウ病眼症(甲状腺眼症)による眼球突出を伴う甲状腺機能亢進症は、眼球突出が17mm以上では抗甲状腺薬で寛解した後の再発率が高いと言われます。
  2. 甲状腺を全摘出して、TS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型])が下がれば、その後のバセドウ病眼症(甲状腺眼症)は起こりにくいです。
  3. 131-Iアイソトープ治療後は15%でバセドウ病眼症が増悪します。(抗甲状腺剤メルカゾール治療では3%)
    止もえなず131-Iアイソトープ治療おこなう場合、3ヵ月間のステロイド剤の予防投与(プレドニゾロン 20~30mg/日、漸減投与)が必要。

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の手術治療

緊急手術

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の最重症例で、視神経障害(視力低下)おこり失明の危険ある場合、ステロイド・パルス療法後2週間で改善なければ、緊急眼窩減圧術になります。

慢性期手術

甲状腺眼症

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の活動性が停止し、眼筋が肥厚した状態で固まった時。眼筋が眼球を引っ張る力のバランスが悪くなり、両眼が別の方向を向いて焦点が合わなくなります。

正面を見た時、両目の位置にずれが生じる斜視の状態です。斜視では、

  1. 焦点が合わないため、脳内での立体視が出来ず、遠近感がつかめない(事故の原因)
  2. 片目で見ようとするため、眼精疲労が激しい
  3. 見え易いように頚を傾ける(斜頸)ため、肩こり、頭痛が起こる

など、日常生活が、かなり障害されます。

眼筋を一部切除した後、眼球に付け直したり(前転法)、眼筋が眼球に付着する位置を付け変える(後転法)斜視手術が行われます。

(図;目の事典、日本眼科学会HPより)

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の手術治療

 

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