バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の治療[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会の年次学術集会で入手した知見です。
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Summary
バセドウ病眼症/甲状腺眼症治療は禁煙第一、バセドウ病自体の治療、ステロイドパルス、ステロイド服用、球後放射線照射、軽症の上眼瞼眼炎・眼瞼後退に上眼瞼ステロイド、ボツリヌス毒素の局注注射。EUGOGOでは重篤(重症)な肝機能障害や死亡例のためメチルプレドニゾロン総投与量8g未満を勧告(現実は無理)。止も得ないI-131アイソトープ治療では増悪予防のため3ヵ月間ステロイド剤投与。視神経障害(視力低下)、内眼圧上昇で失明の危険、ステロイドパルス療法後2週間か球後ステロイド注射で改善なければ緊急眼窩減圧術。活動性終息後に手術(眼筋手術、眼瞼手術)。
Keywords
バセドウ病眼症,甲状腺眼症,治療,禁煙,バセドウ病,アイソトープ,ステロイド,パルス療法,球後放射線照射,手術
バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の治療は、内科医と眼科医、放射線科医の密接な協力が不可欠です。
未治療バセドウ病の約7%に治療を要する中等症以上の活動性バセドウ病眼症(甲状腺眼症)を認めます(第62回 日本甲状腺学会 HSO3-5 バセドウ病眼症の頻度とリスク因子―未治療バセドウ病1702例を 対象とした後方視的検討―)[Intern Med. 2014;53(5):353-60.][Clin Ophthalmol. 2022 Mar 18;16:841-850.]
第一に禁煙:タバコはバセドウ病眼症(甲状腺眼症)の活動性に大きくかかわっており、タバコを吸うとバセドウ病眼症(甲状腺眼症)の活動性が上がり治療抵抗性になります。(Eur J Endocrinol 130: 494-497, 1994.)
通常のバセドウ病治療によって甲状腺機能の正常化をはかり、2次的にTSAb(TSHレセプター抗体[刺激型]、甲状腺刺激抗体)を減らします。TSAb(甲状腺刺激抗体)は、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の活動性に深く関係します。早期に抗甲状腺薬治療や甲状腺全摘手術すれば、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)が改善しやすくなります[Eur Thyroid J. 2016 Jul;5(2):106-11.]。
軽度バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の6〜58%は、バセドウ病自体の治療に伴い自然軽快するとされます。[J Endocrinol Invest. 2017 Mar;40(3):257-261.]
中等度以上のバセドウ病眼症(甲状腺眼症)の自然回復は難しい。[Front Endocrinol (Lausanne). 2020 Nov 30;11:615993.]
ただし、I-131 アイソトープ治療後は15%でバセドウ病眼症(甲状腺眼症)が増悪するので避けます[アイソトープ治療でバセドウ病眼症(甲状腺眼症)が悪化]。
※抗甲状腺薬メルカゾール治療では3%なので、明らかに高頻度。
喫煙者、治療前の血中T3高値、抗TSH受容体抗体(TRAb)高値などのハイリスク患者に、止も得ずI-131 アイソトープ治療をおこなう場合、3ヵ月間のステロイド剤予防投与(プレドニゾロン20~30mg/日、漸減投与)が必要(バセドウ病眼症悪化に対する予防的ステロイド投与)。
甲状腺全摘出術は、最もTSAb(甲状腺刺激抗体)を減らし[Clin Endocrinol (Oxf). 2019 Feb;90(2):369-374.]、理論上はバセドウ病眼症(甲状腺眼症)を改善します。
一方で、逆に悪化させたという報告もあります。筆者は、
- 手術ストレスや術創の痛みストレスによりTSAb(甲状腺刺激抗体)が増えた
- 手術侵襲により放出されたサイトカインの影響
と推測します。
よって、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)を改善させる目的で甲状腺全摘出術を勧めるガイドラインはなく、
- 副作用で抗甲状腺薬のMMI(メルカゾール)、PTU(プロパジール、チウラジール)が使用できない時
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病をコントロールできない時
に甲状腺全摘出すれば、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の改善も期待できると言う事です。[Eur Thyroid J. 2016 Jul;5(2):106-11.]
眼球突出の強い、あるいは複視をきたす中等症~重症バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の活動期には
- ステロイド療法
- 球後放射線照射
①ステロイド療法
ステロイド・パルス療法には、
- Daily法(メチルプレドニゾロン 1g/日x3日連続/週x3週など);日本では一般的
- Weekly法(①メチルプレドニゾロン 0.5g/日x1日/週x6週、②0.5g/日x1日/週x6週→その後0.25g/日x1日/週x6週);EUGOGO(European Group On Graves' Orbitopathy)が推奨している[Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2012 Jun;26(3):325-37.]。しかし、日本人では治療効果に乏しい(ほとんど効かないと言っても過言ではない)(第65回 日本甲状腺学会 R-1 バセドウ病悪性眼球突出症の診断基準と治療指針の作成」甲状腺診療の現状と今後の展望)
→その後、ステロイド内服あるいは眼にステロイド注射
プレドニゾロン0.4~0.5 mg/kg/日(20-30 mg/日)で内服開始、2-4週ごとに経過を見て減量、3~6ヶ月かけて維持量にするか、または終了する(日本での一般的方法)。(有効率60-80%)
EUGOGO(European Group On Graves' Orbitopathy)は、重篤(重症)な肝機能障害や死亡例があるので(特に53歳以上では)メチルプレドニゾロンの総投与量を8g 未満にするように勧告しています(人種差を考慮に入れていない手落ちがある)。(Eur Thyroid J. 2016 Mar;5(1):9-26.)
日本でも、ステロイド大量投与したバセドウ病眼症患者の
- 4%にAST(GOT)またはALT(GPT)>100 IU/L の肝機能障害
- 6%にALT >300 IU/L、35%に>40-100 IU/L の肝機能障害。男性、高用量メチルプレドニゾロン投与、50歳以上でおこりやすい。[Int J Endocrinol. 2015;2015:835979.]
しかし、現実には8g 未満で沈静化するバセドウ病眼症は軽度のものに限られます。ミニパルス(1 回投与量500mgx3日x3クール;計4.5g)でさえも古典的な使用量より効果が劣るとの報告が多い。(第56回 日本甲状腺学会 P2-030 治療に難渋した甲状腺眼症の検討―甲状腺眼症に対するミニパルス療法は十分な治療効果が期待できるか?―)
ステロイド投与前の注意
ステロイド投与前には、
ステロイド・パルス療法で続発性副腎皮質機能低下症はおこるか?
EUGOGOプロトコルに従いWeeklyステロイド・パルス療法(500 mgメチルプレドニゾロンを週に1回6週間、次に250 mgを週に1回さらに6週間)後、経口プレドニゾンを3か月間で30 mg /日から徐々に減量しても中枢性(続発性)副腎皮質機能低下症はおこらないとされます[Endokrynol Pol. 2017;68(4):430-433.]。
中等度バセドウ病眼症において、急性B型肝炎の既往、活動性結核のためにステロイド全身投与ができない場合、眼窩組織に直接、懸濁糖質副腎皮質ホルモン剤のトリアムシノロン(トリアムシノロンアセトニド)を注射する球後注射で代用する方法があります。全身性の副作用は観察されなかったものの、局所副作用として治療反応性の緑内障がおこったそうです。[J Med Assoc Thai. 2005 Mar;88(3):345-9.]
重度バセドウ病眼症による内眼圧上昇で失明の危険があり、かつステロイド全身投与ができない場合、トリアムシノロン(トリアムシノロンアセトニド)球後注射で代用。注射後に内眼圧が下がらなければ、緊急手術(眼窩減圧手術)になります。[Acta Ophthalmol. 2009 Feb;87(1):58-64.]
ステロイド球後注射に球後放射線照射を併用した報告もあります。(第66回 日本甲状腺学会 P8-5 放射線治療とステロイド局所注射で改善した甲状腺眼症の2例)
ニューモシスチス肺炎の予防投薬
- 30mg以上の大量プレドニゾロン投与が必要とされる場合
- プレドニゾロン換算20mg以上で1カ月以上投与する場合
には、ニューモシスチス肺炎の予防投薬が必要。
②球後放射線照射
球後放射線照射(眼球の後ろに放射線を照射。15-20Gy(1.5-2.0 Gy x 10回)/2週、糖尿病性網膜症には禁忌);ステロイドを増量する事なく、効果を強める非常に良い治療です。
球後放射線照射単独の有効率は60%ですが、ステロイドパルス療法と球後放射線照射の併用は有効率88%なので、球後放射線照射が可能な施設には併用療法が推奨されます。[Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2000 Oct 1;48(3):857-64.][Radiat Oncol. 2011 May 13;6:46.]
ステロイド・放射線外部照射併用治療中にウイルス感染症
ステロイド・放射線外部照射併用治療中にウイルス感染症おこす事があります。ステロイドや放射線治療によるによる免疫抑制が主たる原因と考えられます。
ステロイドパルスと放射線外部照射併用治療中に単純ヘルペス脳炎を発症した症例が報告されており、免疫抑制下に体内の単純ヘルペスウイルス(HSV)が再活性化されます。バセドウ病眼症(甲状腺眼症)以外にも、原発性・転移性脳腫瘍・下垂体腺腫にステロイド投与や放射線治療した際の単純ヘルペス脳炎も報告されています。
単純ヘルペス脳炎の約70~80%は、体内の単純ヘルペスウイルス(HSV)が再活性化され、側頭葉、前頭葉眼窩回などに急性壊死性脳炎をおこすことが多いです。治療しないと死亡率は60~70%になり、疑われたらウイルスの検出、ウイルス抗体の結果を待たず、即、抗ウイルス薬のアシクロビル投与します。(ヘルペス脳炎 国立感染症研究所
ステロイド・放射線外部照射併用治療は結核再燃に注意
陳旧性肺結核のある方の、ステロイド・放射線外部照射併用治療は結核再燃に注意が必要。まず、肺結核の活動性を否定した後、再燃予防目的で治療時にイソニアジド300 mg/ 日を併用。
バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の活動(炎症)が終息して、なおかつ眼球突出・複視などの症状が残存する場合には、慢性期手術療法(眼窩減圧術、眼筋手術、眼瞼手術など眼科的機能回復術)の適応となります。
結局、治療前に複視を認めたバセドウ病眼症患者の16.5%は、最終的に眼科的機能回復術が必要になります(第65回 日本甲状腺学会 R-1バセドウ病悪性眼球突出症の診断基準と治療指針の作成」甲状腺診療の現状と今後の展望)
また、発症時に視神経障害を認め緊急性の高い眼窩減圧手術を行ったバセドウ病眼症(甲状腺眼症)患者では、寛解後にも残存する複視に対して的機能回復手術が必要になります。[Thyroid. 2012 Nov;22(11):1170-5.]
最重症のバセドウ病眼症(甲状腺眼症)は視神経障害(視力低下)や重度の角膜障害を来たすもので、放置すると失明の危険性が高く、早急に治療が必要。ステロイド・パルス療法後2週間で改善なければ、緊急眼窩減圧術が適応。[Acta Otorhinolaryngol Ital. 2021 Apr;41(Suppl. 1):S90-S101.]
ステロイド・パルス療法で視力障害が改善しても、今度は複視が顕在化して、最終的に22%は眼科的機能回復術が必要になります(第65回 日本甲状腺学会 R-1バセドウ病悪性眼球突出症の診断基準と治療指針の作成」甲状腺診療の現状と今後の展望)
ステロイド治療を中止できず、2年以上の投与が続く難治性バセドウ病眼症は存在します。野口病院の報告によると、難治性バセドウ病眼症は治療前のTSAb(TSHレセプター抗体[刺激型]、甲状腺刺激抗体)が高値で、治療後もあまり低下しないのが特徴。
教科書通りにステロイド減量して1年以上再発ない予後良好群(26例) vs 難治性バセドウ病眼症群(9例)を比較すると、
です。(第58回 日本甲状腺学会 O-6-5 長期間ステロイド治療を必要とした甲状腺眼症の検討)
また、たとえ元々TSAb値が高くなくても、アイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療後に上昇し、難治性バセドウ病眼症を発症するケースがあります。[Clin Endocrinol (Oxf). 2004 Nov;61(5):612-8.]
ステロイド長期投与で大腿骨頭無腐性壊死(大腿骨頭壊死)をおこす危険があります(第65回 日本甲状腺学会 P8-2 RAI療法後に発症した甲状腺眼症に対して施行したステロイド治療が大腿骨骨頭壊死となったバセドウ病の1例)。
近年、分子標的薬のテプロツムマブ(Teprotumumab、テッペーザ®)などが開発され、難治性バセドウ病眼症に対する効果が報告されています。
軽症バセドウ病眼症(甲状腺眼症)は日常生活への障害が軽微なものです。多くは経過観察でも良く、せいぜい、ドライアイ・上輪部角結膜炎にヒアルロン酸点眼や眼軟膏を処方して角・結膜を保護する程度です。上眼瞼眼炎(まぶたの炎症)・眼瞼後退に対しては、眼にステロイド注射を行う場合があります。
軽症バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の報告
バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の上眼瞼眼炎(まぶたの炎症)・眼瞼後退に対し、懸濁糖質副腎皮質ホルモン剤のトリアムシノロン(トリアムシノロンアセトニド)を、まぶたへ皮下注射する場合があります。上眼瞼眼炎・眼瞼後退は視力に関係なく、軽度のものを含めるとバセドウ病眼症(甲状腺眼症)初期から高率に出現するため、緑内障等の副作用リスクを犯してまで行う必要ないと考えます。
久留米大学の報告では、
- 眼瞼腫脹に対して眼瞼ステロイド注射を施行した症例(17 例23 眼)では9 眼(39.1%)
- 眼瞼後退に対して眼瞼ステロイド注射を施行した症例(14 例15 眼)では11 眼(73.3%)
で改善が認められました。眼球運動障害に対して施行した症例(6 例8 眼)では改善がなかったとの事です。
(第55回 日本甲状腺学会 P2-07-03 甲状腺眼症に対するトリアムシノロンアセトニド局所投与の治療効果)[Int Med Case Rep J. 2018 Nov 9;11:325-331.]
難治性の上眼瞼後退に対しては、ステロイド点眼/局所注射の組み合わせ、あるいはボツリヌス毒素の局所注射が良いかもしれません。
更に軽症バセドウ病眼症(甲状腺眼症)だけの報告
オリンピア眼科病院の報告では、更に軽症バセドウ病眼症(甲状腺眼症)だけに絞り、MRIで上眼瞼挙筋の肥大と炎症を認めた102例116眼を対象とし、上眼瞼挙筋以外の外眼筋肥大がある症例を除外しています。
トリアムシノロン注射(トリアムシノロンアセトニド)20mg/生食0.5mL を上眼瞼に経皮注射。初回注射で眼瞼後退と眼瞼腫脹が改善しない症例・再燃例には、約3ヶ月ごとに複数回の注射を施行。
116眼中108眼(93.9%)は平均1.6回(1-4)のトリアムシノロン注射のみで眼瞼症状が消失(64 眼)または改善(44眼)。副作用は8例で生理不順、眼圧上昇は無し。7例8眼でトリアムシノロン注射は眼瞼症状に有効だったが、甲状腺機能亢進とTSAb(TSHレセプター抗体[刺激型]、甲状腺刺激抗体)上昇に伴い外眼筋炎をおこしたためステロイド全身投与となった(眼症先行型バセドウ病眼症 だったんですね)。
トリアムシノロン(トリアムシノロンアセトニド)眼窩内注射
懸濁糖質副腎皮質ホルモン剤のトリアムシノロン(トリアムシノロンアセトニド)を眼窩内に注射する眼窩内注射により、
- 眼瞼腫脹はほぼ全例で改善
- 痛み・複視は軽減
- 眼球突出・眼球運動障害・外眼筋肥厚はあまり変化なし
- ステロイド緑内障をおこす可能性がある[Arq Bras Oftalmol. 2023 Oct 13;86(5):e20230063.]
[Clin Exp Ophthalmol. 2010 Oct;38(7):692-7.][Br J Ophthalmol. 2004 Nov;88(11):1380-6.]
- バセドウ病眼症(甲状腺眼症)を伴う甲状腺機能亢進症/バセドウ病において、眼球突出が強い場合、抗甲状腺薬で寛解した後の再発率は高い。
- バセドウ病が免疫学的に寛解しない限り、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)は再燃する可能性があります。例えば、甲状腺機能を正常に維持しても、TRAb(TSHレセプター抗体)・TSAb(TSHレセプター抗体[刺激型]、甲状腺刺激抗体)が正常化しなければ、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)は進行します。[Horm Metab Res. 2021 Apr;53(4):235-244.]
- 甲状腺を全摘出して、TSAb(TSHレセプター抗体[刺激型]、甲状腺刺激抗体)が下がれば、その後のバセドウ病眼症(甲状腺眼症)の進行は起こりにくい。[Cochrane Database Syst Rev. 2015 Nov 25;(11):CD010576.]
- I-131 アイソトープ治療後は約10-40%でバセドウ病眼症(甲状腺眼症)が増悪します[アイソトープ治療でバセドウ病眼症(甲状腺眼症)が悪化]。
※抗甲状腺薬メルカゾール治療では3%なので、明らかに高頻度。
喫煙者、治療前の血中T3高値、抗TSH受容体抗体(TRAb)高値などのハイリスク患者に、止も得ずI-131 アイソトープ治療おこなう場合、3ヵ月間のステロイド剤予防投与(プレドニゾロン20~30mg/日、漸減投与)が必要(バセドウ病眼症悪化に対する予防的ステロイド投与)。
- 軽度バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の6〜58%は、バセドウ病自体の治療に伴い自然軽快するとされます。[J Endocrinol Invest. 2017 Mar;40(3):257-261.]
中等度以上のバセドウ病眼症(甲状腺眼症)の自然回復は難しい。[Front Endocrinol (Lausanne). 2020 Nov 30;11:615993.]
バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の最重症例で、視神経障害(視力低下)から失明の危険がある場合、ステロイド・パルス療法後2週間で改善なければ緊急眼窩減圧術になります。[Acta Otorhinolaryngol Ital. 2021 Apr;41(Suppl. 1):S90-S101.]
眼窩減圧術は
- 眼窩脂肪組織を一部切除
- 眼窩の骨を一部切除
します。
また、兎眼性角膜障害から失明の危険がある場合も緊急手術になります。
[Clin Endocrinol (Oxf). 2019 Jan;90(1):208-213.]
美容面(整容面)での手術
思春期や特に若い女性のバセドウ病眼症(甲状腺眼症)で問題なのは(もちろん男性もですが)、顔貌の変化による精神的なダメージ・苦痛でしょう。人前に出るのを遠慮し、社会生活が制限されたり、引きこもりや不登校になる人がいても不思議ではありません。
「人間は外見でなく中身」と割り切れる人は、極少数です。また当事者以外が口にしても、全く説得力はありません。最近では、脂肪切除、ヒアルロン酸注入、眼瞼(まぶた)の微妙な形成など美容外科の技術を応用して、バセドウ病眼症(甲状腺眼症)に特化した治療を行う医療機関もあるようです。甲状腺学会でも積極的に演題を出しておられます。バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の手術治療も、新たなステージに入ったようです。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区も近く。