中枢性(続発性)副腎皮質機能低下症と甲状腺異常[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
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- 中枢性(続発性)副腎皮質機能低下症と甲状腺異常(本ページ)
Summary
下垂体前葉機能低下症で中枢性甲状腺機能低下症と中枢性(続発性)副腎皮質機能低下症が同時に存在する事ある。副腎皮質ホルモン補充せず、先に甲状腺ホルモン補充すると、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)代謝・分解進み、最悪、急性副腎不全/副腎クリーゼ。ACTH単独欠損症は自己免疫疾患で自己免疫性甲状腺疾患(橋本病、無痛性甲状腺炎、バセドウ病)合併、副腎皮質ホルモン欠乏で自己免疫を抑える作用が弱まり、それらが発症し易い。無痛性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症/バセドウ病、TSH産生下垂体腺腫は過剰な甲状腺ホルモンが副腎皮質ホルモンを代謝分解、副腎皮質機能低下症悪化。
Keywords
下垂体前葉機能低下症,中枢性甲状腺機能低下症,続発性副腎皮質機能低下症,副腎皮質ホルモン,甲状腺ホルモン,コルチゾール,ACTH単独欠損症,橋本病,無痛性甲状腺炎,バセドウ病
下垂体前葉機能低下症で、中枢性甲状腺機能低下症と中枢性(続発性)副腎皮質機能低下症が同時に存在するときの症状はAPS(多腺性自己免疫症候群)2型とほぼ同じです。ただ、原因が脳下垂体や視床下部など脳の中にあります。もちろん、中枢性と原発性(甲状腺自体・副腎自体)の組み合わせもあります。さらに、脳下垂体に対する自己抗体が原因の自己免疫性下垂体炎も存在します。
中枢性あるいは原発性甲状腺機能低下症の治療のため甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS、レボサイロキシン)を投与すると副腎皮質ホルモンの代謝分解が亢進し、副腎皮質機能低下症を悪化させます。最悪、副腎クリーゼ(急性副腎皮質不全)もあり得ます。必ず副腎皮質ホルモン製剤(ヒドロコルチゾン;コートリル®)を先に投与し、少なくとも1週間してから甲状腺ホルモン剤投与を開始します。
ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)分泌が低下する中枢性(続発性)副腎皮質機能低下症(ACTH単独欠損症)では、2次的に潜在性甲状腺機能低下症を呈することがあります。副腎皮質ホルモンを補充する事無く、先に甲状腺ホルモンを補充すると、副腎皮質ホルモンの代謝・分解が進み、中枢性(続発性)副腎皮質機能低下症が悪化します。最悪、副腎クリーゼ(急性副腎皮質不全)もあり得ます。
もし、最初に体重減少・体毛脱落など、潜在性甲状腺機能低下症で説明できない症状があれば、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)も測定するべきです。(第54回 日本甲状腺学会 P130 潜在性甲状腺機能低下症を呈したACTH単独欠損症の4例)
ACTH単独欠損症は
- 自己免疫疾患と考えられ、橋本病・無痛性甲状腺炎など自己免疫性甲状腺疾患と合併します。
- 副腎皮質ホルモン(コルチゾール)欠乏で、自己免疫を抑える作用が弱まり、自己免疫性甲状腺疾患(橋本病、無痛性甲状腺炎、バセドウ病)が発症し易くなります。
- 無痛性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が発症すると、過剰な甲状腺ホルモンが副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の代謝(分解)を促進し、副腎皮質機能低下症が更に悪化します。
- 無痛性甲状腺炎が発症すると、通常の無痛性甲状腺炎に比べてFT3/FT4比が高くなり(2.5以上)、甲状腺機能亢進症/バセドウ病との鑑別が困難になります。副腎皮質ホルモンの欠乏(低コルチゾール血症)が、甲状腺内・末梢組織でのT4→T3を促進する可能性が考えられます。
逆にFT3/FT4比が高い無痛性甲状腺炎では、副腎皮質機能低下症の合併を疑う必要があります。
副腎皮質機能低下症で甲状腺の病気が誘発 を参照。
(第56回日本甲状腺学会 P2-109 ACTH 単独欠損症に無痛性甲状腺炎を合併した1 例)
(第56回日本甲状腺学会 P2-110 無痛性甲状腺炎を併発したために副腎不全が顕在化したACTH単独欠損症の1 例)
(Kurume Med J. 2012;59(3-4):71-7. doi: 10.2739/kurumemedj.59.71.)
最近では、免疫チェックポイント阻害薬[ニボルマブ(オプジーボ®)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)、イピリムマブ(ヤーボイ®)など]により、甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)]と下垂体炎が併発するケースが増えています(免疫チェックポイント阻害薬による甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)]と下垂体炎の併発)。
TSH不適切分泌症候群(SITSH)の一つ、TSH産生下垂体腺腫では、下垂体からTSH(甲状腺刺激ホルモン)が分泌され、甲状腺を刺激。中枢性の甲状腺機能亢進症になり、バセドウ病と同じ事になります。下垂体腫瘍の2次的影響で、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌が低下し、中枢性(続発性)副腎皮質機能低下症の状態になっている場合、過剰な甲状腺ホルモンが副腎皮質ホルモンを代謝分解し、副腎皮質機能低下症が悪化します。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
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- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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