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免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺・下垂体・副腎免疫関連有害事象 (irAE)[橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺・下垂体・副腎免疫関連有害事象 (irAE)

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等  をクリックください

(図; Kidney Int Rep. 2020 Apr 29;5(8):1139-1148.より)

長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は扱っておりません。

Summary

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による内分泌系の免疫関連有害事象 (irAE)は①甲状腺irAE;ほとんど無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)、最初から甲状腺機能低下症、稀に甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺眼症が発症・再発②自己免疫性(リンパ球性)下垂体炎;ほとんどは永続性ACTH単独欠損症による続発性副腎皮質機能低下症。生理量ヒドロコルチゾンのみ投与③原発性副腎皮質機能低下症(アジソン病)劇症1型を含む1型糖尿病が時間差を置いて異所性異時性に発症。irAEが起きた方が原疾患(元の癌)の予後良いため、無理にステロイド大量投与はしない。

Keywords

免疫チェックポイント阻害薬,ICI,免疫関連有害事象,irAE,甲状腺,破壊性甲状腺炎,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,下垂体炎

内分泌系免疫関連副作用[免疫関連有害事象 (immune-related adverse event, irAE)]の特徴

内分泌系irAE

免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor, ICI)とは、Tリンパ球細胞を活性化し癌に対する免疫力を高めますが、自分自身に対する余計な免疫(自己免疫)まで誘導します[免疫関連副作用(immune-related adverse event, irAE)]。特に内分泌系(甲状腺下垂体副腎膵臓のランゲルハンス島)の自己免疫疾患が問題になっています。内分泌系の免疫関連有害事象 (irAE)は、甲状腺に関しては、無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)・甲状腺機能低下症を高頻度におこします。甲状腺以外では自己免疫性(リンパ球性)下垂体炎原発性副腎皮質機能低下症(アジソン病)劇症1型を含む1型糖尿病などです。

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の添付文書には、「甲状腺機能障害、下垂体機能障害および副腎機能障害があらわれることがあるので、内分泌(機能)検査[TSH、遊離T3(FT3)、遊離T4(FT4)、ACTH、血中コルチゾールなどの測定]を定期的に行うこと」、また「必要に応じて画像検査などの実施も考慮すること」と記載されています。「定期的に」と言っても、何か月、何日間隔か大まかでも良いから具体的な数字を示さないのが相変わらずずるい所です。保険診療なので、毎月、漫然と測定すれば査定(減点、医療機関の赤字)されます。症状や検査所見から免疫関連有害事象 (irAE)の発生が疑われる場合(当然、その旨をレセプトに記載)を除けば、3 ヵ月に1度が限度でしょう。

内分泌系の免疫関連有害事象 (irAE)は、複数の内分泌腺(内分泌臓器)が時間差を置いて発症します。そのため、最初の疾患の治療中に別の疾患が加わり、治療内容の変更を余儀なくされます。特に、甲状腺機能低下症に対して甲状腺ホルモン剤を投与中、副腎皮質機能低下症が発症すれば、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が甲状腺ホルモン剤により分解されるので重症化します。

逆に、副腎皮質機能低下症に副腎皮質ホルモン剤を投与中、破壊性甲状腺炎バセドウ病が発症すれば、副腎皮質ホルモン剤が甲状腺ホルモン(T3)により分解され重症化します。

他の内分泌腺(内分泌臓器)にも異常が起きないか、常に注意を払う必要があります。

また、内分泌系の免疫関連有害事象 (irAE)は、マルチキナーゼ阻害薬(Multi-targeted Tyrosine Kinase Inhibitors:mTKI)の使用歴がある場合に起こりやすいとされます[Pharmazie. 2022 Feb 1;77(2):54-58.](第65回 日本甲状腺学会 O8-6)。

免疫関連副作用[免疫関連有害事象 (immune-related adverse event, irAE)]で下垂体炎、副腎皮質機能低下症、インスリン依存型糖尿病

自己免疫性(リンパ球性)下垂体炎(下垂体irAE)

自己免疫性(リンパ球性)下垂体炎

  1. 抗PD-1 抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)の1%前後(J Clin Endocrinol Metab. 98:1361−1375,2013.)
  2. 抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)の3.8%(JAMA Oncol. 2018 Feb 1;4(2):173-182.)

、投与後7週以降に起こります。不思議な事に報告例のほとんどはACTH(副腎皮質刺激ホルモン)単独欠損症による続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症です。

甲状腺学会での報告ですが、

  1. 下垂体irAEとしてのACTH単独欠損症の約半数はACTHが正常範囲にあるとされます。要するにコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の低下に応じたACTHの上昇が起こらないと言う事です。(第63回 日本甲状腺学会 CR2-4 抗PD-1抗体による下垂体関連有害事象は甲状腺機能異常を合併する)
    その際には、FT3/FT4比が上昇(第65回 日本甲状腺学会 HS3-4)。おそらく脱ヨード酵素2型(D2)が活性化され、甲状腺ホルモンT4 から T3(活性型) への変換が促進される機序が考えられます。
  2. 自己免疫性(リンパ球性)下垂体炎の発症時(ごく初期)は一時的にACTH、コルチゾールともに上昇します(その後低下)。(第64回 日本甲状腺学会 27-2 ニボルマブ、イピリムマブ投与後にTSHレセプター抗体(TRAb)上
    昇を伴う甲状腺中毒症と下垂体副腎皮質機能低下症を発症した一例)

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による自己免疫性(リンパ球性)下垂体炎(下垂体irAE)が起これば、

  1. 逆に原疾患(元の癌)の全生存期間は有意に延長[Ann Oncol. 2017 Mar 1;28(3):583-589.][Cancer. 2018 Sep 15;124(18):3706-3714.]
  2. 副腎皮質ステロイド薬、プレドニゾロンの大量投与は、
    ①免疫チェックポイント阻害薬(ICI)で高められた癌免疫も低下するため、原疾患(元の癌)の全生存期間を短くする可能性[Cancer. 2018 Sep 15;124(18):3706-3714.]
    続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症の予後を改善すると言うエビデンスは無い
    などの理由で
    続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症=ACTH分泌不全がある場合、生理量ヒドロコルチゾン 10-20mg/日を投与
    ただし、副腎クリーゼ(急性副腎不全)の場合は副腎皮質ステロイド薬大量投与してステロイドレスキュー治療行う。
     
  3. たとえ免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を中止しても自己免疫性(リンパ球性)下垂体炎の経過は不変。一端おこると最後まで止まらない。[Clin Cancer Res. 2015 Feb 15;21(4):749-55.]
     
  4. TSH分泌障害(中枢性甲状腺機能低下症)、性腺刺激ホルモン分泌障害は可逆的でも、ACTH分泌障害[続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症]は永続性[Clin Cancer Res. 2015 Feb 15;21(4):749-55.]。

高カルシウム血症副腎皮質機能低下症

免疫チェックポイント阻害薬による自己免疫性副腎皮質機能低下症は報告例が少なく、正確な頻度は不明ですが0.7%とされます。抗PD-1 抗体と抗CTLA-4抗体のコンビネーション治療で増え、4.2%になります。(JAMA Oncol. 2018 Feb 1;4(2):173-182.)

免疫チェックポイント阻害薬投与中に高カルシウム血症がおこれば、続発性(2次性、下垂体性)副腎皮質機能低下症原発性副腎皮質機能低下症の発症を疑わねばなりません(副腎皮質機能低下症でも高カルシウム血症 )。

もちろん、無痛性甲状腺炎独でも高カルシウム血症は起こり得ますが(甲状腺と高カルシウム血症 )、副腎皮質機能低下症も同時発症していると、さらに高カルシウム血症になります。報告では、補正Ca 13.2mg/dlまで上昇し、プレドニゾロン(PSL)30mg点滴静注、 ゾレンドロン酸静注により血清カルシウム値は低下したそうです。(第60回 日本甲状腺学会 P2-6-4 悪性黒色腫に対するニボルマブ治療中止後2ヶ月目に強い倦怠感・ 嘔気を伴う甲状腺中毒症、高カルシウム血症で緊急入院となった 一例)

インスリン依存型糖尿病

免疫チェックポイント阻害薬による自己免疫性インスリン依存型糖尿病は報告例が少なく、正確な頻度は不明ですが0.2%とされます。(JAMA Oncol. 2018 Feb 1;4(2):173-182.)

免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)で劇症1型糖尿病無痛性甲状腺炎を同時発症した報告もあります(Tohoku J Exp Med. 2018 Jan;244(1):33-40.)。このケースの劇症1型糖尿病は、明らかに自己免疫性インスリン依存型糖尿病が、加速されて発症しただけと筆者は考えています。

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺機能障害(甲状腺irAE)

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺機能障害(甲状腺irAE)は、

  1. 発症頻度はニボルマブで約7% 、イピリムマブで約2%
  2. 約6割は投与3ヶ月以内に発症
  3. 日本では無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)がほとんど
  4. 最初から甲状腺機能低下症をおこす事もあり
     
  5. 海外では多く、日本では稀だが、バセドウ病甲状腺眼症(Eur J Endocrinol. 2011 Feb; 164(2):303-7.)の報告もある
  6. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病が再発
  7. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病治療中に無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)が起きる
  8. 軽症が多いが、海外では甲状腺クリーゼの報告が2例ある[Endocrinol Diabetes Metab Case Rep. 2015;2015:140092.][J Med Case Rep. 2018 Jun 19;12(1):171.]
     
  9. 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与前より、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)が陽性の場合、陰性例に比べ
    無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)発症する確率が高く(50% vs 1.7%)
    永続的な甲状腺機能低下症になった後の甲状腺ホルモン剤(チラーヂン)補充量が多くなる(Endocr Pract. 2019 Aug;25(8):824-829.)(J Endocr Soc. 2018 Feb 6;2(3):241-251.)
  10. 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)が経過中に陽性化すると、顕在性甲状腺機能低下症に移行する頻度が高い
  11. 甲状腺irAEが起きた場合、約50%は甲状腺機能が正常化しますが、7.7%は甲状腺ホルモン補充が必要になります。永続性甲状腺機能低下症になるケースでは、
    ①元々のTSHが高い
    ②元々、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)陽性
    ③免疫チェックポイント阻害薬(PD-1/PD-L1阻害剤)の投与期間が長い(約3カ月)
    (Endocrinol Metab (Seoul). 2021 Apr 6.)
  12. 副腎皮質ホルモンで顕性甲状腺機能低下症への移行を阻止できるかどうか不明。そもそも、副腎皮質ホルモンの使用で、元の癌に対する免疫を低下させるデメリットの方が大きい。
  13. テセントリク®(アテゾリズマブ)では23.5%で甲状腺機能障害。
    非ウイルス感染性亜急性甲状腺炎[第64回 日本甲状腺学会 28-3 PD-L1抗体(アテゾリムマブ)による亜急性甲状腺炎(irAE)の一例]
    ②筋けいれんと血清CPK値の上昇(報告では8450 U/L)を伴う甲状腺機能低下症[Respir Med Case Rep. 2022 Jan 20;36:101585.]
    の報告があるのが特徴。

甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)、バセドウ病含む]

甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)、バセドウ病含む]は、抗PD-1 抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)の1.0-7.7%、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)の1.0-2.3%に起きます(JAMA Oncol. 2018 Feb 1;4(2):173-182.)

群馬大学の報告では、3例だけだが、甲状腺中毒症発症時・発症後に、何らかの理由で(効果不十分・下垂体炎、薬剤性肺炎、サルコイ ドーシス様の両側肺門リンパ節腫脹を発症した)免疫チェックポイント阻害薬を中止、または高用量プレドニゾロン投与すると永続性甲状腺機能低下症への移行を阻止できる可能性があるとされます。(第60回 日本甲状腺学会 P2-6-1 当院で経験した免疫チェックポイント阻害薬投与後に甲状腺機能異常を呈した6例の臨床的特徴)

しかし、筆者が思うに、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)で高められた癌免疫も、ステロイド(高用量プレドニゾロン)で低下するため、何もしない方が良いケースもあるかもしれません。

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)]は偽性バセドウ病

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)]の血液検査所見は、バセドウ病そのもので、甲状腺専門医でもバセドウ病と誤認する危険性があります(偽性バセドウ病)。もちろん、本物のバセドウ病の事も少ないながらあります。

偽性バセドウ病の特徴は、

  1. 明らかにFT3優位の甲状腺中毒症FT3/FT4比が高い);例えばFT3 10.9 pg/ml、FT4 2.92 ng/dlでFT3/FT4= 3.73 >2.5 [第64回 日本甲状腺学会 27-2 ニボルマブ、イピリムマブ投与後にTSHレセプター抗体(TRAb)上昇を伴う甲状腺中毒症と下垂体副腎皮質機能低下症を発症した一例]
     
  2. TR-AbとTS-Abが陽性、単に陽性でなく強陽性の場合も;例えばTR-Ab 5.0 IU/LとTS-Ab 827 %(第64回 日本甲状腺学会 28-1 バセドウ病との鑑別を要した抗PD-1抗体による甲状腺irAEの1例)
     
  3. しかし、甲状腺超音波(エコー)検査で内部血流が乏しく、99mTc(テクネチウム)シンチグラフィーでも集積が少ない

で、甲状腺超音波(エコー)検査を行わず、血液検査だけ(1.2.)ならバセドウ病そのものです。

筆筆者がPubMedで調べた限り、現時点で偽性バセドウ病に関する正式な英語論文はありません。(Rev Endocr Metab Disord. 2018 Dec;19(4):325-333.)(J Clin Endocrinol Metab. 2021 Aug 18;106(9):e3704-e3713.)

最初から甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、抗PD-1 抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)の0.5-3%、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)の2.3-6.5%に起きます(JAMA Oncol. 2018 Feb 1;4(2):173-182.)

PD-1抗体による甲状腺機能障害(甲状腺irAE)の機序

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、特にPD-1抗体による甲状腺機能障害(甲状腺irAE)の発症には、CD4陽性T細胞が必須で、活性化された細胞傷害性メモリーCD4陽性T細胞が甲状腺濾胞細胞を直接破壊する可能性があります。(Sci Transl Med. 2021 May 12;13(593):eabb7495.)

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺機能障害(甲状腺irAE)をおこした場合の予後

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺機能障害(甲状腺irAE)が起これば、逆に原疾患(元の癌)の全生存期間は有意に延長(Ann Oncol28(3):583-589, 2017)(Cancer 124(18):3706-3714, 2018)

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の再発甲状腺眼症を除けば、甲状腺irAE発症しても容易に対処できる事が多いため、甲状腺irAE発症リスク患者が免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の良い適応かもしれない。

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)]と下垂体炎の併発

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による内分泌異常は、異所性異時性に発症します。複数の内分泌腺の障害が、同時、もしくは時間差を置いて発症。

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)]と下垂体炎の合併報告もあります。特に、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の併用治療を受けている患者に起こり易く、下垂体炎破壊性甲状腺炎の発症までの時間は短いです(Version 2. Genes Dis. 2016 Dec;3(4):252-256.)

甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)]の急性期が過ぎて、甲状腺機能低下期続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症=ACTH分泌不全が起きた場合は、さほど問題にはなりません。先行してヒドロコルチゾンを投与、補充した後、甲状腺ホルモンを開始。(In Vivo. 2018 Mar-Apr;32(2):345-351.)

しかし、甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)]の急性期に続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症が同時発症すると、過剰な甲状腺ホルモンが副腎皮質ホルモンを分解するため、副腎不全の重症度が増します。

報告例では、プレゾニゾロン(PSL)70mg/日の大量投与おこない、甲状腺中毒症は沈静化、甲状腺機能も正常に回復するも、続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症は改善せず、ハイドロコルチゾンの補充療法のみを継続したそうです。(第62回 日本甲状腺学会 P13-3 抗CTLA4抗体イピリムマブ投与にて破壊性甲状腺炎、薬剤誘発性 肺炎、下垂体炎など多彩な自己免疫関連有害事象を呈した悪性黒 色腫の一症例)

また、ニボルマブ投与3ヶ月後に無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)を発症し、ニボルマブ中止4ヶ月後に続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症ACTH単独欠損症を発症した報告もあります。(J Med Case Rep. 2019 Mar 26;13(1):88.)

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と分子標的薬の併用療法による甲状腺機能障害(甲状腺irAE)

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)も受容体型チロシンキナーゼ阻害薬などの分子標的薬も、機序は異なりますが高頻度に甲状腺機能障害(甲状腺irAE)をおこします。

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と受容体型チロシンキナーゼ阻害薬の併用療法として、

  1. 切除不能肝細胞癌に対するペムブロリズマブとレンバチニブの併用療法では、甲状腺機能低下症4%以下、破壊性甲状腺炎2%以下と少なく[BMC Cancer. 2021 Oct 19;21(1):1126.]、術後4日目の臨床検査で甲状腺機能低下症下垂体機能低下症を認めた報告があるのみです[Surg Case Rep. 2021 Dec 20;7(1):267.]。
  2. 進行子宮体がんに対するペムブロリズマブとレンバチニブメシル酸塩の併用療法(KEYNOTE-775/E7080-309試験)では、甲状腺機能低下症を75%で認めます。

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と分子標的薬の併用療法で生じる甲状腺機能障害(甲状腺irAE)は、時間差を置いて現れるので厄介です。

子宮体癌に対するペムブロリズマブとレンバチニブメシル酸塩の併用療法では、

  1. (鳥取大学の報告)10週間後に甲状腺機能低下症、14週間後に破壊性甲状腺炎を伴う続発性(下垂体性)副腎皮質機能低下症に移行したそうです(第65回 日本甲状腺学会 P10-1)。上昇した甲状腺ホルモンが副腎皮質ホルモンを分解すれば、副腎クリーゼ(急性副腎不全)に至る危険性があります。
  2. (千葉大学の報告)18日後に潜在性甲状腺機能低下症、25日後に破壊性甲状腺炎による甲状腺クリーゼに。(第65回 日本甲状腺学会 P10-8)。

海外では、甲状腺癌未分化癌(ATC)甲状腺癌低分化癌(PDTC)に対してペムブロリズマブとレンバチニブの併用療法の治験が行われています。[Thyroid. 2021 Jul;31(7):1076-1085. doi: 10.1089/thy.2020.0322.]

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による下痢

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による下痢は、通常の抗がん剤による下痢とは異なります。重症下痢にはステロイド剤を投与。ロペラミド(ロペミン)などの止瀉薬は、かえって重症化させる危険があるため要注意。

無痛性甲状腺炎など甲状腺中毒症が起きている時は、下痢しやすいです(甲状腺ホルモンと便秘・下痢)。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療     長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

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  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
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