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ヘルペスウイルスと甲状腺;伝染性単核球症、EBウイルス、突発性発疹[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学で得た知識・経験・行った研究、毎年どこかで開催される日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。ヘルペスウイルスの病気、伝染性単核球症の治療を行っておりません。

Summary

ヘルペスウイルスと甲状腺。亜急性甲状腺炎と鑑別を要する伝染性単核球症はEBウイルス(エプスタイン・バールウイルス:EBV)サイトメガロウイルス(CMV)が原因で、甲状腺機能亢進症/バセドウ病無痛性甲状腺炎を発症する事も。甲状腺癌患者はEBVの陽性率が高い。EBVはメトトレキサート(MTX)誘発甲状腺悪性リンパ腫バーキットリンパ腫ホジキンリンパ腫亜急性甲状腺炎を発症。突発性発疹は乳児期のヒトヘルペスウイルス6型(HHV‐6)かHHV-7感染が原因で、橋本病に関係している説がある。

keywords

亜急性甲状腺炎,ヘルペス,EBウイルス,甲状腺機能亢進症,伝染性単核球症,バセドウ病,突発性発疹,橋本病,甲状腺,甲状腺癌

亜急性甲状腺炎と鑑別を要する伝染性単核球症

伝染性単核球症とは

亜急性甲状腺炎と鑑別を要する伝染性単核球症。喉の痛みと、首のリンパ節の腫れを甲状腺の病気と思い、長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方がおられます。

伝染性単核症(infectious mononucleosis, IM)は思春期頃にヘルペスウイルスの一種、

  1. EBウイルス(エプスタイン・バールウイルス:Epstein-Barr virus:EBV)
  2. 頻度は少ないがサイトメガロウイルス(CMV)

の初感染によっておきます。唾液感染によりキス病(kissing disease)とも言われます。

80%以上の人は乳幼児期にEBウイルスの初感染を受け、軽い感冒様症状で終わるので伝染性単核症を発症しません。

伝染性単核球症の症状

伝染性単核球症の症状は、

  1. 38 ℃以上の高熱が1〜2週間持続
     
  2. 眼瞼浮腫;他のウイルス・細菌感染でも起きる[甲状腺眼症(バセドウ病眼症)のよう]
     
  3. 扁桃は白苔・偽膜形成を伴い、咽頭痛
     
  4. 痛みを伴う著明な後頸部リンパ節腫脹は1〜2週頃がピークで、耳下腺の下、外側頚部まで累々と広がり、全身のリンパ節も腫大します。
    亜急性甲状腺炎溶連菌感染症では前頸部リンパ節腫大
      
  5. 1〜2週間後、体幹、上肢を中心に麻疹様紅斑、ヘルペス感染症に特徴的な癒合傾向
     
  6. 肝脾腫;わずかな衝撃でも脾臓破裂を起こす事がある[ほとんどが3週間以内に起きるため、最低3週間(できれば最初の1カ月)は運動制限が必要。激しい運動、コンタクトスポーツは制限期間を更に延長した方が無難。(Clin J Sport Med. 2008 Jul;18(4):309-15.)]

伝染性単核球症 扁桃

伝染性単核球症 扁桃;偽膜形成

伝染性単核球症 紅斑

伝染性単核球症 紅斑

伝染性単核球症

伝染性単核球症 体幹部皮疹

伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大 超音波(エコー)画像

伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大 超音波(エコー)画像

伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大 超音波(エコー)画像 2

伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大 超音波(エコー)画像

伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大 超音波(エコー)画像 ドプラーモード 2

伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

サイトメガロウイルス性伝染性単核球症 リンパ節腫大(水平断) 超音波(エコー)画像

サイトメガロウイルス性伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大(水平断) 超音波(エコー)画像

サイトメガロウイルス性伝染性単核球症 リンパ節腫大 超音波(エコー)画像(水平断) ドプラーモード

サイトメガロウイルス性伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大(水平断) 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

サイトメガロウイルス性伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大(垂直断) 超音波(エコー)画像

サイトメガロウイルス性伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大(垂直断) 超音波(エコー)画像

サイトメガロウイルス性伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大(垂直断) 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

サイトメガロウイルス性伝染性単核球症 リンパ節反応性腫大(垂直断) 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

伝染性単核球症の検査所見・治療

伝染性単核球症の検査所見は

  1. 肝機能異常がほぼ全例。2週頃がピークでAST/ALT が300〜500IU/L に上昇(数千もあり)。黄疸は稀。
  2. リンパ球優位の白血球上昇と異型リンパ球(写真)が出現
  3. 抗EBV VCA-IgMが陽性(外殻抗原に対するIgM、初感染で上昇)、抗EBNA抗体は陰性(核内抗原に対する抗体、初感染から数か月後に陽性)。

治療は対症療法のみで、沈静化を待つ。アンピシリンは薬疹があるため禁忌。

伝染性単核球症 異型リンパ球

伝染性単核球症で甲状腺機能亢進症/バセドウ病無痛性甲状腺炎を発症

伝染性単核球症に罹患後、2-4週間で甲状腺機能亢進症/バセドウ病を発症する事があります[Intern Med. 2010;49(23):2599-603.]。甲状腺機能亢進症/バセドウ病を発症しなくても、伝染性単核球症の急性期にバセドウ病抗体TR-Ab力価が一過性に上昇した報告もあります[Springerplus. 2015 Aug 27;4:456.]。

その理由として、

  1. 伝染性単核球症になる前、既に軽度の甲状腺機能亢進症/バセドウ病潜在性甲状腺機能亢進症など)である人が増悪した
     
  2. もともとバセドウ病素因のある人が、伝染性単核球症の炎症性サイトカイン(サイトカインストーム)で自己免疫反応を誘導された

  3. EBウイルス(エプスタイン・バールウイルス)自体が、甲状腺機能亢進症/バセドウ病を誘発

と考えられます。

伝染性単核球症以外では、

  1. A群溶連菌
  2. エルシニア菌

甲状腺機能亢進症/バセドウ病を誘発するのが有名です。(日本甲状腺学会雑誌 2(1), 45-47, 2011-04)

また、伝染性単核球症をおこさなくてもEBウイルス(エプスタイン・バールウイルス)自体が、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の原因の一つとされます(エプスタイン‐バールウイルス (EBV) バセドウ病発症)。

一方、伝染性単核球症後に無痛性甲状腺炎を発症する事もあります。(第60回 日本甲状腺学会 P2-4-2 伝染性単核球症発症後に発症したバセドウ病と無痛性甲状腺炎の 鑑別に苦慮した一例)

ヘルペスウイルスの一種、エプスタイン‐バールウイルス (EBV) でバセドウ病発症

エプスタイン‐バールウイルス(EBウイルス)

ヘルペスウイルスの一種、EBウイルス(エプスタイン・バールウイルス:Epstein-Barr virus:EBV)感染(J Cancer 2020; 11(7)1737-1750.)

EBウイルス(エプスタイン・バールウイルス)は、上咽頭に感染し、

  1. 上咽頭扁平上皮がん
  2. 伝染性単核球症

の原因になります。

また、Bリンパ球に感染し、

  1. 伝染性単核球症
  2. 悪性リンパ腫ホジキンリンパ腫 バーキットリンパ腫 メトトレキサート(MTX)誘発のMTX 誘発甲状腺悪性リンパ腫 )
  3. バセドウ病発症(下記)
  4. 亜急性甲状腺炎(Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2003 May;67(5):447-51.)

エプスタイン‐バールウイルス (EBV) でバセドウ病発症

ヘルペスウイルスの一種、エプスタイン‐バールウイルス (EBV) が持続感染しているBリンパ球の細胞表面には、バセドウ病の原因となる甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TRAb) が現れます。エプスタイン‐バールウイルス (EBV) が再活性化されると、宿主B細胞が形質細胞へ分化し、TRAb産生を開始します。

これが、一つのバセドウ病発症メカニズムとされます。(Viral Immunol. 2017 Apr;30(3):240-249.)

もちろん、全ての甲状腺機能亢進症/バセドウ病が、エプスタイン‐バールウイルス (EBV) によって発症する訳では無いと思います。バセドウ病に関与するHLA抗原(HLA-A2、HLA-DPB1*05:01)も一部見つかっており(ついに甲状腺にもHLA遺伝子診断)、バセドウ病家系は普通に存在します。

その他、急性扁桃炎(溶連菌感染)エルシニア感染症バセドウ病発症に関与するとされ、原因は複数存在します。

エプスタイン‐バールウイルス(EBV)が甲状腺癌に関与

発癌性を持つヒトパピローマウイルス18(HPV-18)は頭頸部癌の危険因子とされます(Medicine (Baltimore). 2019 Feb;98(8):e14551.)。

健常人と比べると、乳癌患者ヒトパピローマウイルス(HPV) エプスタイン‐バールウイルス (EBV) の陽性率が高く、甲状腺癌患者EBVの陽性率が有意に高い。HPVタンパクEBVタンパク乳癌細胞に、EBVタンパクは、それより弱いながらも甲状腺癌細胞に直接的および関節的な影響を及ぼすとされます。(Asian Pac J Cancer Prev. 2020 May 1;21(5):1431-1439.)

また、甲状腺未分化癌の方が、甲状腺乳頭癌よりもEBV核抗原-2(EBNA2)発現割合が高く、甲状腺乳頭癌の未分化転化に関与している可能性があります。[Hum Pathol. 2003 Nov;34(11):1170-7.]

エプスタイン‐バールウイルス (EBV) と甲状腺

その他、エプスタイン‐バールウイルス (EBV) が甲状腺に関与する病態として、

  1. メトトレキサート(MTX)誘発のMTX 誘発甲状腺悪性リンパ腫
  2. バーキットリンパ腫
  3. ホジキンリンパ腫
  4. 亜急性甲状腺炎 (Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2003 May;67(5):447-51.)
  5. 亜急性甲状腺炎と鑑別を要する伝染性単核球症を発症

などがあります。

突発性発疹のウイルスで橋本病(慢性甲状腺炎)が発症

突発性発疹はヒトヘルペスウイルス6型(HHV‐6)[HHV-7の事もある]感染症で、母胎の受動免疫の切れる生後6カ月以降~2歳までの乳児期に起こりやすく、3歳までにはほとんどの子供が感染します。症状が出る子供は6~8割。

突発性発疹の症状は、

  1. 突然の高熱と軟口蓋(口蓋垂根部両側)の点状紅斑(永山斑)が3日続く
  2. 解熱前後に発疹(2-3mmから米粒大の紅斑が出現、融合しながら全身に拡大。斑状丘疹)が出現
  3. 数日後には色素沈着を残さず消失
  4. 急性脳症;ヒトヘルペスウイルス6型(HHV‐6)は中枢神経に親和性があるため、解熱後も注意を要する。
突発性発疹

ヒトヘルペスウイルス6型(HHV‐6)が橋本病(慢性甲状腺炎)で活性化しているため、その発症に関係している説があります。真偽は現時点で不明です。[PLoS Pathog 2012; 8: e1002951.]

また、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV‐6)は、薬剤誘発性過敏症 で再活性化されます。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療      長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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