バセドウ病のIgG4.抗サイログロブリン抗体(Tg抗体).抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)、突然、甲状腺機能低下症に移行[長崎甲状腺クリニック]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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バセドウ病で長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方への注意
バセドウ病の治療開始(再開)後は、頻回の副作用チェックが必要なため①大阪市と隣接市の方に限定、②来院できず薬を自己中断する方をお受けできません。
Summary
バセドウ病でIgG4高値(≧135mg/dL)は①高齢者②低エコー③抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)反応性が良過ぎて甲状腺機能低下に④TR-AbとTS-Ab急上昇、著しく繊維化し甲状腺腫が急速増大。甲状腺原発悪性リンパ腫と鑑別。IgG4関連疾患合併は少ない。橋本病(慢性甲状腺炎)の抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)いずれかが甲状腺機能亢進症/バセドウ病の79%で陽性。難治性バセドウ病が突然、甲状腺機能低下症に移行するのは①IgG4高値②TSB-Abによる萎縮性甲状腺炎③橋本病に移行。
Keywords
甲状腺,バセドウ病,甲状腺機能亢進症,IgG4,抗サイログロブリン抗体,橋本病,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体,甲状腺機能低下症,Tg抗体,TPO抗体
Points
甲状腺機能亢進症/バセドウ病でIgG4が高い(バセドウ病型IgG4甲状腺炎)と、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の反応性が良く、効き過ぎて甲状腺機能低下になりやすい
免疫グロブリンの一つであるIgGの3~4%程度を占めるIgG4。和歌山医大の報告では、バセドウ病でIgG4高値[IgG4関連疾患(IgG4-RD)包括診断基準で血清IgG4≧135mg/dL]のバセドウ病型IgG4甲状腺炎では、
- バセドウ病の6.4%を占め、高年齢[IgG4高値群53(49-68)歳 vs. IgG4正常群42(13-79)歳、P=0.026]
女性に多い[IgG4関連疾患(IgG4-RD)は男性が多い] - 甲状腺超音波(エコー)検査で有意に低エコー領域が増大
- 抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の反応性が良く、効き過ぎて甲状腺機能低下になりやすい
(Thyroid. 2014 Apr;24(4):736-43.)
- TSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)とTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型])が急上昇、甲状腺腫が急速増大するにも関わらず、甲状腺機能低下が急激に進行します。[Endocrine. 2014 ;45(2):236-43.]
この際、
①TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])による萎縮性甲状腺炎の鑑別が問題になりますが、IgG4高値のバセドウ病では、甲状腺腫が急速増大する点が異なります。
②甲状腺原発悪性リンパ腫との鑑別が問題になりますが、
・sIL2-R (可溶性インターロイキン2受容体)正常(MALTリンパ腫では正常の事も多いですが)
・ガリウムシンチグラフィーは陰性です。
- 甲状腺組織は著しく繊維化しており、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)中止後も、TSHレセプター抗体(TSH Receptor Antibody:TR-Ab)とTS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型])が陽性であるにも関わらず、永続性甲状腺機能低下症になります。
組織的には、IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)と同じです[Thyroid. 2013 Nov;23(11):1496-7.]。
- IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)と同じく、IgG4関連疾患(IgG4-RD)の合併は少ない
甲状腺機能亢進症/バセドウ病、糖尿病とIgG4関連自己免疫膵炎の合併例は報告されています。
高年齢で、甲状腺低エコー領域が増大し、急激に甲状腺機能が低下した甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、IgG4高値の可能性があります。
IgG・血中蛋白分画測定にて高ガンマグロブリン血症を検査
IgG4を直接測定(保険適応にならない場合があります)
バセドウ病抗体と橋本病抗体が同時に存在したとき、バセドウ病抗体が圧倒的に強いため、甲状腺機能亢進症に傾きます。ただし、超音波(エコー)検査では、橋本病抗体による破壊性変化が、バセドウ病性変化と同時に存在するのが確認できます。
一見矛盾しているように見えますが、恩師 稲葉雅章 大阪市立大学 代謝内分泌内科名誉教授、兼、大野記念病院 名誉院長の抗体併存説では、矛盾なく説明可能です。すなはち、橋本病とバセドウ病はコインの裏表で、
- 何かのきっかけバセドウ病抗体が現れれば橋本病でもバセドウ病に傾き
- バセドウ病抗体が消えれば、橋本病抗体だけが残り橋本病になります。
橋本病とバセドウ病は入れ替わる可能性あるということです。(橋本病とバセドウ病は入れ替わる---元は同じ自己免疫性甲状腺疾患)
容易に再発し、甲状腺眼症(バセドウ眼症)、粘液水腫も合併する難治性バセドウ病でも、長期間治療していると永続性甲状腺機能低下症に移行する稀なケースがあります(※あくまで「永続性」で、一時的に抗甲状腺薬が効きすぎて低下症になり、減量すると速やかに再発する場合は含まない)。
東邦大学大森病院の報告では、バセドウ病の0.71%(1410 例中 10 例、男 1:女 9)と、1000人に7人の割合です。全例に甲状腺眼症を認め、永続性甲状腺機能低下症移行時には甲状腺腫は縮小。治療開始年齢は12-67歳(平均34.9歳)、治療期間は4-18年(平均7.4年)
「甲状腺眼症を認め、コントロールが難しい若年バセドウ病の中には、数年治療続けると、甲状腺が縮小し、永続性甲状腺機能低下症移行する」場合があります。
なぜ、このような事になるのでしょうか?筆者の推察ですが、
- TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])が激増し、TS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]; TSH刺激性レセプター抗体) が激減した。(筆者の経験上、この可能性が最も高い)
- バセドウ病型IgG4甲状腺炎;血清IgG4高値になり、甲状腺ホルモン産生細胞(甲状腺濾胞細胞)が高度に破壊された。むしろ高齢者に多く、甲状腺腫が急速増大する点が異なります。
- 抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)により、甲状腺ホルモン産生細胞(甲状腺濾胞細胞)が破壊され尽くした。
- 免疫系の相互移行によりバセドウ病から橋本病に変わった(橋本病とバセドウ病は入れ替わる---元は同じ自己免疫性甲状腺疾患 )。
などの可能性が挙げられます。
勘違いしてはならないのは、これらは、あくまで少数であり、「甲状腺眼症を認め、コントロールが難しい若年バセドウ病」の大半はコントロール悪いままで、永続性甲状腺機能低下症に移行しないと言う事です。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区にも近い。