不妊治療・体外受精(IVF)[採卵・移植]と甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学医学部附属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会学術集会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等 糖尿病編 をクリックください
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。不妊治療を行う産婦人科と提携して妊活中の甲状腺管理を行っています。
2022年4月から不妊治療が保険適用となりました。初めての治療開始時点で
- 40歳未満の女性は1子ごとに通算6何回まで
- 40歳以上43歳未満の場合は3回まで
が保険適用です。しかし、折角の不妊治療も甲状腺機能が厳格にコントロールされないと成功率が下がります。
Summary
不妊治療の体外受精[IVF、採卵・移植]は甲状腺機能が厳格にコントロールされねば成功率は下がる。採卵前治療、体外培養後胚の子宮内移植はTSH<2.5で行うべき。甲状腺に異常ない健常女性、橋本病/甲状腺機能低下症女性ともに採卵前のFSH/hMG頻回注射、排卵誘発剤hCG他ゴナドトロピン製剤、卵胞ホルモン剤、黄体ホルモン剤でTSH≧2.5に。FSH/hMG注射で甲状腺機能亢進症/バセドウ病が発症、寛解中に再発、排卵誘発剤GnRH投与で無痛性甲状腺炎の可能性。不妊治療専門クリニックを選ぶなら、甲状腺に関心のある所を。
Keywords
不妊治療,体外受精,IVF,採卵,胚移植,甲状腺,TSH,橋本病,甲状腺機能低下症,FSH/hMG
不妊治療の最後の砦、体外受精[IVF:in vitro fertilization、採卵・移植]も甲状腺機能が厳格にコントロールされていなければ、成功率は下がります。
甲状腺に関心の無い不妊治療クリニック・病院で、「こんな甲状腺の状態でいくらやっても無駄だわ・・」という患者さんを、これまで多数見てきました。
不妊治療専門クリニックを選ぶなら、甲状腺に関心のある所を選んでください!![長崎甲状腺クリニック(大阪)と提携している不妊治療クリニックは、甲状腺に関心のある産婦人科です。]
体外受精[IVF、採卵・移植]は、以下の手順で行われます。
- 採卵前治療で卵子を成熟させます(TSH<2.5 μIU/mLの状態で行わねばならない)
- 採卵手術で成熟した卵子を排卵直前に体内から取り出します
- 質の良い卵子を体外で精子と受精させます
- 正常な受精が起こり、順調に細胞分裂を繰り返して発育する胚(2-5日間の体外培養後胚)が得られれば、それを子宮内に移植。
※TSH<2.5 μIU/mLの状態で行わねばならない。次項の如く、採卵前治療で排卵誘発剤、卵胞ホルモン剤、黄体ホルモン剤、ゴナドトロピン製剤)をバンバン使用すればTSH≧2.5 μIU/mLになっている可能性があり、その状態で移植しても着床が悪くなります。甲状腺ホルモン剤(チラージンS)を増量し、TSH<2.5 μIU/mLにしてから子宮内に移植した方が良い。新鮮胚移植の場合は仕方ないが、凍結保存と言う手段もあります。
採卵前の頻回注射(FSH/hMG)
体外受精(IVF)をおこなう際、採卵前の頻回注射(FSH/hMG)(上図)は急激な甲状腺機能低下(TSH上昇・ FT4低下)を起こします(下図)。甲状腺に異常がない不妊治療女性でも、TSH≧2.5になる場合があります。まして、元々甲状腺ホルモン産生能力の低い橋本病/甲状腺機能低下症女性では、健常女性に比べ甲状腺機能低下の程度がはるかに大きくなります(下図)。(Fertil Steril. 2012;97:585-91.)
甲状腺に異常がない健常女性、橋本病/甲状腺機能低下症女性ともに、甲状腺機能低下(TSH上昇・ FT4低下)のピークは、排卵誘発のhCGワンショット後1週間におきます。
この時の甲状腺機能低下が、その後の着床・妊娠成功率にどのような影響を与えるのか、いまだ論文・学会発表はありません。しかし、良い影響があるはずもないので、長崎甲状腺クリニック(大阪)では
- 元々のTSHを正常範囲内(0.5-5.0)で可能な限り下げておく(TSH1台が安全圏と考えています)。
- ヨード(ヨウ素)過剰摂取制限を行い、橋本病(慢性甲状腺炎)の炎症を改善させ、可能な限り炎症の無い健常人の甲状腺に近付ける。
そうすればFSH/hMG、hCG注射後のTSH上昇も、幾分か抑えられるはず。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病が誘発される事も
採卵目的のFSH/hMG注射で甲状腺機能亢進症/バセドウ病が発症、あるいは寛解中に再発する可能性があります(Br Med J (Clin Res Ed). 1988 Jan 16;296(6616):171-2.)。FSH/hMGはTSH(甲状腺刺激ホルモン)と類似構造であるため、甲状腺を刺激して”寝た子を起こす”様に、くすぶっているバセドウ病を目覚めさせるのかもしれません。
排卵誘発剤GnRH
排卵誘発剤GnRH投与で、甲状腺を破壊する抗体;抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]が陽性者は無痛性甲状腺炎(痛みを伴わない甲状腺の亜急性破壊)を誘発おこしやすくなります。
長崎甲状腺クリニック(大阪)ではAMH(抗ミュラー管ホルモン、アンチミューラリアホルモン)の測定は行っておりません。不妊治療専門クリニックで測ってもらってください。
AMH(抗ミュラー管ホルモン、アンチミューラリアホルモン)は、発育中の卵胞から分泌されるホルモンで、原始卵胞から発育する前胞状卵胞数(卵巣内に残っている卵の数)を反映します(卵巣予備能の指標)。そのため、年を取る程、AMH(抗ミュラー管ホルモン)は低下します。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、あくま卵子の数であり、卵子の質を反映しません。もっとも、卵子の量に加えて質も年齢とともに低下し、老化した卵子は受精後の発育が悪くなります。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)は生理周期に関係なく、血液検査で簡単に測定できます。
橋本病(慢性甲状腺炎)女性の血清AMH(抗ミュラー管ホルモン)値は低く、自己免疫が関与するいされます[Front Endocrinol (Lausanne). 2021 Jul 29;12:657752.][Turk J Med Sci. 2021 Apr 30;51(2):716-721.]。
また、甲状腺ホルモンの低下自体も血清AMH(抗ミュラー管ホルモン)低値の原因になります[J Assist Reprod Genet. 2015 Feb;32(2):243-7.]。甲状腺ホルモン剤を補充すると血清AMH(抗ミュラー管ホルモン)値も改善します[J Obstet Gynaecol Res. 2018 Apr;44(4):739-746.]。
放射性ヨウ素治療を行った甲状腺分化癌女性の血清AMH(抗ミュラー管ホルモン)値は低下します[Maturitas. 2021 Jun;148:40-45.]。
子宮移植は、世界16カ国で85例実施されています(2021年3月の時点)が、日本では1例もなく、ようやく議論が開始されたばかりです。日本医学会の「子宮移植倫理に関する検討委員会」が発足し、生体子宮移植に限り臨床研究を開始するとの事です。
生まれつき子宮の無いロキタンスキー症候群、子宮がんなどで子宮を全摘出した後天性子宮性不妊症について検討するようです。
日本医学会子宮移植倫理に関する検討委員会報告書によると、海外で行われた子宮移植(2021年3月の時点)は、生体子宮移植が約75%、脳死子宮移植が約25%で、妊娠率は約80%だが、出産率は約47%(生体子宮移植約50%、脳死子宮移植約36%)。生体子宮移植の方が明らかに成功率は高いようです。
でも、生体子宮移植のドナーは、血縁者に限られるんでしょうが、果たして、日本で行えるのかと思ってしまいます。また、1卵性双生児で無い限り、拒絶反応が出るため、一生、免疫抑制剤を飲み続けねばなりません。当然、新型コロナウイルスを含む感染症で重症化の危険、甲状腺癌を含む2次発がん、元に子宮がんがあったなら再発の危険が増すでしょう。
おそらく今後は、脳死子宮移植も含めて議論される事でしょう。
ロキタンスキー症候群(マイヤー・ロキタンスキー-キュスター・ハウザー症候群)
ロキタンスキー症候群(マイヤー・ロキタンスキー-キュスター・ハウザー症候群)は、胎生期のミュラー管(将来、子宮・膣になる器官)異常による子宮形成不全および(部分~全部)膣形成不全(腟がない)。
卵巣・卵管は正常なので、女性ホルモン分泌や排卵は起こるものの、子宮がないので生理(月経)は来ません。
ロキタンスキー症候群と甲状腺癌との合併(J Med Case Rep. 2012 Nov 6;6:377.)、甲状腺機能亢進症/バセドウ病との合併(J Pediatr Endocrinol Metab. 2012;25(11-12):1169-71.)が報告されています。
不妊治療中・妊娠中では、わずかな甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の上昇が明暗を分ける場合が多々あります。日常生活を送るだけなら、TSHの正常範囲は0.5≦ TSH ≦5.0 μIU/mLですが、
- 不妊治療中・妊活中:TSH<2.5 μIU/mL
-
妊娠前期(13週まで):TSH<2.5 μIU/mL妊娠中期~後期(14週~41週):TSH<3.0 μIU/mL
と、非常に狭い範囲を厳格に維持しなければなりません。
よって、検査の精度が低いとTSHの測定値がわずかにズレて測定誤差が生じ、不安定で信頼性に乏しい数値が出てしまいます。
最近では、検査精度を保証する「国際規格 ISO15189」の認定を受ける検査センター、病院が増えています。「国際規格 ISO15189」を取得しているのは、大学病院、国立病院機構に属するなどの国立病院、公立病院、日本赤十字社系の病院、一部の大規模民間病院、BMLのような大規模検査センター[長崎甲状腺クリニック(大阪)はBMLと契約しています]だけです(認定取得機関リスト)。
大学病院を除けば、東京の国立成育医療研究センター、伊藤病院 など妊活中・妊娠中の甲状腺患者の治療に力を入れている医療機関も「国際規格 ISO15189」を取得しています。
長崎甲状腺クリニック(大阪)の元には、産婦人科、不妊治療専門クリニックから甲状腺の治療精査依頼で絶えず患者さんが紹介されてきます。不妊治療専門医は、甲状腺に関心のある医師と関心の無い医師が両極端です。
甲状腺に関心のある不妊治療専門医なら、甲状腺専門医を紹介し、不妊原因の十数%に当たるTSH≧2.5 μIU/mL の甲状腺機能低下状態を解除しようと努めます。長崎甲状腺クリニック(大阪)と提携している不妊治療専門の岡本クリニック(大阪市 住吉区 長居東)は、甲状腺を重要視しておられる数少ない医療機関です。
甲状腺に関心の無い不妊治療専門医は厄介です。実際、筆者が度々経験する症例は、TSH高値なのに(5-10 μIU/mLの場合が多い)、5年以上、延々と体外受精(IVF)を続けていて、結局、妊娠しない、流産、不育症で胎児死亡を繰り返すパターンです。患者さん自身が、ネットで「甲状腺は不妊原因の十数%を占める」のを知り、長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診されます(もちろん紹介状などありません)。無意味な数年間で、卵子は経年劣化し、今更、TSH<2.5 μIU/mLにしても妊娠しにくくなるのが実情です(卵子自体がダメになってはどうしようもない)。
不妊治療専門クリニックを選ぶなら、甲状腺に関心のある所を選んでください!!
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区,生野区も近く。