脳腫瘍と甲状腺、甲状腺癌の脳転移[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
動脈硬化:専門の検査治療/知見[橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪]
甲状腺専門・動脈硬化の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院 代謝内分泌内科(内骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)では脳腫瘍、甲状腺癌の脳転移の診療を行っておりません。これらは脳神経外科の領域です。
Summary
甲状腺癌分化癌(乳頭癌、濾胞癌)の脳転移は、遠隔転移の約1%。脳神経症状・けいれんを起こし、予後に大きく影響。単発性の場合、原発性脳腫瘍と区別できず、摘出後の病理標本で甲状腺乳頭癌・甲状腺癌濾胞癌の脳転移と分かる。最初からI-131を取り込んでいれば放射線内・外照射、γナイフ、分子標的薬で治療。下垂体腫瘍で中枢性甲状腺機能低下症(非機能性下垂体腫瘍は、ほとんどが血清TSH基準値内)。ACTH産生腫瘍は中枢性甲状腺機能低下症を起こし易く、成長ホルモン(GH)産生腫瘍(先端巨大症)は起こし難い(いずれも約50%で血清TSH基準値内)。
Keywords
甲状腺癌,乳頭癌,濾胞癌,脳転移,脳腫瘍,下垂体腫瘍,中枢性甲状腺機能低下症,TSH,ACTH産生腫瘍,先端巨大症
最初からI-131 を取り込み、甲状腺乳頭癌による転移性脳腫瘍と分かっていれば、
- I-131 アイソトープ治療(放射線内照射);有効性は乏しい[J Clin Endocrinol Metab. 2010 Mar;95(3):987-93.]
- 放射線外照射;周囲の脳組織も障害される(脳浮腫・脳損傷)
- γナイフ(ガンマナイフ
- 放射線治療無効な場合、分子標的薬ネクサバール・レンビマ[Thyroid. 2012 Aug;22(8):856-60.]
などを行います。
(写真;甲状腺濾胞癌 脳転移MRI画像 radiopaediaより改変)
脳腫瘍の髄膜腫は、(転移性脳腫瘍を除く)原発性脳腫瘍の中で、最も高頻度で約25%を占めます。くも膜細胞(髄膜皮細胞)から発生し、90%以上は良性、50-60歳代の中年以降の女性に多いとされます。
進行が非常に緩徐なため、
- 無症状な事が多いですが
- 起床時の頭痛
- 発生場所によって認知症状、てんかんや、四肢麻痺で発症する事も多いです。
甲状腺濾胞癌、乳がんの脳転移・頭蓋骨転移と鑑別を要する事があります(NeurolMed Chir (Tokyo) 27: 995~999, 1987.)(耳展 38:2; 216~221, 1995)。
CTでは、高輝度・境界明瞭・石灰化もあり・頭蓋骨へ浸潤し骨破壊を認めます。造影CTでは均一に造影されます。MRIはT1で低輝度、T2で高輝度、境界明瞭な腫瘤(脳実質との境界には低信号帯があり、脳実質外の腫瘤なのが分かります)
歯科X線と甲状腺癌・髄膜腫
頻回に歯科X線を行うと甲状腺癌、髄膜腫および頭頸部領域の癌リスクが増大します(Thyroid. 2019 Nov;29(11):1572-1593.)
甲状腺癌の放射線治療は髄膜腫の危険因子
甲状腺癌のI-131 放射線治療は、髄膜腫発生の危険因子です(J Neurosurg. 2011 Dec;115(6):1072-7.)
甲状腺癌と髄膜腫の合併
甲状腺癌と髄膜腫の合併が複数報告されています。
- 先天性甲状腺機能低下症、未分化成分を含む微小濾胞癌と髄膜腫が合併[Medicina (B Aires). 1980 Nov-Dec;40(6 Pt 1):693-7.]
- 多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)遺伝子変異を有し、原発性副甲状腺機能亢進症、原発性アルドステロン症、Hürthle細胞甲状腺癌[甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)]、髄膜腫が合併した非定型MEN1症候群[J Korean Med Sci. 2012 May;27(5):560-4.]
甲状腺眼症/バセドウ病眼症、甲状腺機能亢進症/バセドウ病のMRI撮影時に髄膜腫が見つかる
甲状腺眼症:バセドウ病眼症 /甲状腺機能亢進症/バセドウ病に伴う頭痛を診断する際の眼窩MRI、脳MRI撮影時に、偶然、髄膜腫が見つかる場合があります。髄膜腫自体は症状に乏しいことが多いため、このような時でなければ見つかりません。
バセドウ病眼症と両側視神経髄膜腫が合併した報告があります[Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2015 Jul-Aug;31(4):e94-5.]。
脳実質を形成する神経細胞(ニューロン)と神経膠細胞(グリア細胞)のうち、神経細胞(ニューロン)に栄養供給し保持する役割の神経膠細胞(グリア細胞)が腫瘍化したものが神経膠腫(グリオーマ)です。原発性脳腫瘍のうち、髄膜腫に次いで多い脳腫瘍です。
神経膠腫(グリオーマ)は、星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫、脈絡叢乳頭腫など多くの悪性度が異なる型が存在します。いずれの型でも脳神経線維に沿って癌細胞が広がるため、完全摘出が難しく、予後不良です。
神経膠腫(グリオーマ)の50-80%に認められるIDH1点突然変異は、腫瘍特異性が高く、甲状腺癌、胆管癌、急性骨髄性白血病(AML)位にしか見られません(N Engl J Med 360: 765-773, 2009)。神経膠腫(グリオーマ)と甲状腺癌と言う、掛け離れた悪性腫瘍にどんな共通点があるか全く不明です。
膠芽腫(こうがしゅ、glioblastoma)は平均生存期間が約1 年の極めて悪性度が高い原発性脳腫瘍です。50~70 歳に好発し、前頭葉・側頭葉が多い。MRI では
- 辺縁不整、境界不明瞭、病巣周辺の浮腫
- 中心部は壊死して嚢胞変性
- 不均一な造影効果
甲状腺ホルモンが膠芽腫の増殖を促進する可能性が指摘されています[Endokrynol Pol. 2015;66(5):444-59.]。
34歳女性の神経線維腫症1型(NF1、レックリングハウゼン病)患者で甲状腺乳頭癌と膠芽腫が同時発生した報告があります。[Ann Med Surg (Lond). 2022 Mar 28;76:103556.]
下垂体腫瘍
視床下部―下垂体系の障害により、下垂体前葉の甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生・分泌が障害されると、甲状腺からの甲状腺ホルモン分泌も低下し、中枢性甲状腺機能低下症になります(脳下垂体と甲状腺--中枢性甲状腺機能低下症 )。
中枢性甲状腺機能低下症の原因のうち、下垂体腫瘍が約60%を占めます(ホルモン産生下垂体腫瘍、非機能性下垂体腫瘍含む)。
- 下垂体腫瘍の約15%
- 非機能性下垂体腫瘍の約25%;血清TSHが基準値内を示すものがほとんど
- ACTH産生腫瘍の約20%;
高コルチゾール血症でTSH産生が抑制され、末梢でのT4からT3への変換が阻害されるため、頻度高い
血清TSHが基準値内を示すものが約50% - 成長ホルモン(GH)産生腫瘍の約10%;
GH-IGF1系が直接、甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモン産生が促進されるため、頻度が低い
血清TSHが基準値内を示すものが約50%
逆に、潜在性甲状腺機能亢進症(約23%)(第59回 日本甲状腺学会O7-2 先端巨大症における中枢性甲状腺機能低下症の特徴)
(先端巨大症が甲状腺に与える影響 )
に中枢性甲状腺機能低下症が認められます。(Nat Clin Pract Endocrinol Metab 12:683―694,2008.)
頭蓋咽頭腫
甲状腺癌の脳転移、脳腫瘍で低ナトリウム血症
甲状腺癌の脳転移、脳腫瘍で低ナトリウム血症を起こす可能性があります(悪性腫瘍(癌)が原因の低ナトリウム血症)。
性格を決めるのは脳の前頭連合野と大脳辺縁系です。そこに脳腫瘍、動静脈奇形(AVM)などの遺物ができると性格変化が起きる可能性があります。たとえば、温厚な性格が攻撃的になったり、その逆もあり得ます。甲状腺癌の脳転移でもい起こり得ます。
甲状腺が関連する性格変化の原因として、
などがあります。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)
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