甲状腺と皮膚の異常② [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。皮膚疾患の診療は行っておりません。
甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等 をクリックください
Summary
CREST(クレスト)症候群(限局性皮膚硬化症)は抗セントロメア抗体陽性の膠原病で橋本病(慢性甲状腺炎)に合併。掌蹠膿疱症で橋本病(慢性甲状腺炎)・バセドウ病]の合併頻度は53%。尋常性天疱瘡は男性のみ橋本病(慢性甲状腺炎)と合併。主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症)は甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症で悪化。ベーチェット病などによる結節性紅斑の治療に大量のヨウ化カリウム投与し甲状腺機能低下症、無痛性甲状腺炎(痛みのない破壊性甲状腺炎)誘発。甲状腺乳頭癌・甲状腺未分化癌の皮膚浸潤で発赤・変色・潰瘍形成、急性化膿性甲状腺炎・橋本病急性増悪の皮膚炎も起こる。
Keywords
CREST症候群,橋本病,甲状腺,掌蹠膿疱症,バセドウ病,尋常性天疱瘡,主婦の手湿疹,進行性指掌角皮症,甲状腺機能低下症,結節性紅斑

CREST(クレスト)症候群(限局性皮膚硬化症)は、自己免疫抗体の一つ抗セントロメア抗体陽性の膠原病で、橋本病(慢性甲状腺炎)に併発することあります。
- 指先が硬くなり(皮下石灰沈着)、毛細血管の拡張が見られます。レイノー現象もあり、強指症(細く、蒼白い、硬化した指)になります。
- 内蔵障害は食道・胃腸管に限定されます。食道運動障害による食物が詰まるような感じは、びまん性甲状腺腫・甲状腺腫瘍による圧迫のようです。
進行性指掌角皮症
主婦の手湿疹
赤い丘疹(きゅうしん)が手指にできると、かゆみを伴います。 頻回の手洗いや洗剤の使用などにより皮脂が失われ、皮膚バリアが破綻するのが原因です。
手湿疹(主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症) は、甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症で悪化
手湿疹(主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症) は、甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症等で悪化
- アトピー・アレルギー素因の人は皮膚がさらに乾燥しやすいです。
- 甲状腺機能低下症では皮膚の新陳代謝が悪く、乾燥が増強
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、治療にともない甲状腺ホルモンが正常化すると、異常な発汗で潤っていた肌が元の状態になり、隠れていた手湿疹(主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症) が現れます。
- 亜鉛欠乏症も皮膚炎起こすので主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症が増悪。
掌蹠膿疱症と甲状腺

掌蹠膿疱症は手のひらや足底に、無菌性の膿疱(黄色の液体の水袋)を繰り返します。痛みのため歩行に障害が出たり、物を握れなかったりします。掌蹠膿疱症は甲状腺疾患、糖尿病、高脂血症、クローン病、IgA腎症に合併する事あります。逆に、掌蹠膿疱症をきっかけに、自己免疫性甲状腺疾患が判明する事あります。
掌蹠膿疱症は原因不明のことが多いですが、30%は慢性扁桃腺炎、歯槽膿漏(歯周病)、蓄膿(慢性副鼻腔炎)、金属アレルギーの存在が原因だろうといわれます。特に、歯科治療で詰め物(パラジウムなど)を保険診療内で済ませた人は要注意!少々高くついても金属アレルギーの出ない保険診療外の材質、セラミック、ジルコニアにした方が良い。掌蹠膿疱症の治療を延々と続ければ、余計高くつきます。
バセドウ病を合併した掌蹠膿疱症性骨関節炎の報告例では、掌蹠膿疱と診断された後、突発性難聴になり、ステロイド投与開始直後より蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)とバセドウ病を発症したそうです。(Jpn. Clin. Immun. 16 (1):58-63, 1993.)
金属ア レルギー検索のためのパッチテストで蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)とバセドウ病は共に増悪。パッチテストで強陽性 を示 したアンチモンを除去するため、歯科治療を行い、蹠膿疱症自体は軽快したそうです。
一般的に、突発性難聴に対するステロイド投与は、プレドニゾロン20mg/日以上の大量使用するにも係わらず減量するのが早過ぎます。報告例も2週間後には中止され、リバウンドによる自己免疫疾患の誘発・増悪を引き起こします。
掌蹠膿疱症における自己免疫性甲状腺炎[橋本病(慢性甲状腺炎)・バセドウ病]の合併頻度は53%と報告されています(J. Am. Acad. Dermatol. 19:1009-1016,1988.)。
SAPHO(サフォー)症候群
です。橋本病(慢性甲状腺炎)・バセドウ病で、上前胸部に痛みおこり、圧痛あれば、SAPHO(サフォー)症候群の可能性あります。ただし、15%は皮膚疾患を合併せず、30%は皮膚疾患に先行して現れるため、掌距膿疱症が無くても否定できません。

尋常性天疱瘡は、自己免疫による皮膚・粘膜の炎症により水疱(水ぶくれ、表皮内水疱)が生じる病気です。表皮細胞間接着因子デスモグレインに対する自己抗体により接着が阻害され、水疱が生じます。
どういう訳か男性においてのみ自己免疫性甲状腺炎の橋本病(慢性甲状腺炎)と合併するとされます。一方で、バセドウ病や甲状腺癌とは関係ありません(Front Med (Lausanne). 2018 May 30;5:159.)。自己免疫性甲状腺疾患と言っても、橋本病(慢性甲状腺炎)とバセドウ病は、関与する免疫細胞が異なるからだろうと筆者は考えています。(橋本病とバセドウ病)

環状肉芽腫は、IV型アレルギーにより生じる原因不明の皮疹で
- 糖尿病、高脂血症などの代謝異常が原因(Clin Cosmet Investig Dermatol. 2017 Apr 26;10:141-145.)
- 自己免疫性甲状腺疾患などの代謝内分泌異常(環状肉芽腫の12%に認める)(J Am Acad Dermatol. 2003 Apr;48(4):517-20.)
- 帯状疱疹治癒後
手の甲や関節、体幹に発生します。
白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群(MDS)などの合併報告が多い。
自然軽快する事もあります。治療はステロイド外用・局所注射・内服が主体、抗ウイルス薬は無効との報告が多い。(WebMDより)

Sweet病は、上気道感染後に発熱、好中球増加、好中球皮膚浸潤による有痛性浮腫性紅斑で、皮膚生検にて血管炎(ヘノッホシェーライン紫斑病)ではないことを確認する必要あり。
「慢性甲状腺炎とシェーグレン症候群を合併したSweet病の1例」[日本皮膚科学会雑誌 2008,118(3);420]などの報告あり

梅毒第二期の発疹は、感染後3カ月頃より出現
- 梅毒性ばら疹、丘疹性梅毒は、全身の痒みのない紅斑で、数週間で自然消退。甲状腺機能亢進症/バセドウ病で使用する抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)は投与初期に薬剤誘発性過敏症おこす事あり、紛らわしいです。(MedicalNoteより)
- 扁平コンジローマは、肛門周囲、外陰に多発する扁平小丘疹で、痒み痛みありません。
- 梅毒血清反応が陽性になり、梅毒でもないのに梅毒血清反応陽性になる抗リン脂質抗体症候群と鑑別要。
梅毒第二期の発疹は、感染後3カ月頃より出現
- 梅毒性ばら疹、丘疹性梅毒は、全身の痒みのない紅斑で、数週間で自然消退。甲状腺機能亢進症/バセドウ病で使用する抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)は投与初期に薬剤誘発性過敏症おこす事あり、紛らわしいです。
- 扁平コンジローマは、肛門周囲、外陰に多発する扁平小丘疹で、痒み痛みありません。
- 梅毒血清反応が陽性になり、梅毒でもないのに梅毒血清反応陽性になる抗リン脂質抗体症候群と鑑別要。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の補助治療薬、ヨウ化カリウム(KI)は意外にも第三期梅毒のゴム腫の吸収を促進する効果があります。しかも、保険適応になっています。
梅毒第二期の発疹は、感染後3カ月頃より出現
- 梅毒性ばら疹、丘疹性梅毒は、全身の痒みのない紅斑で、数週間で自然消退。甲状腺機能亢進症/バセドウ病で使用する抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)は投与初期に薬剤誘発性過敏症おこす事あり、紛らわしいです。
- 扁平コンジローマは、肛門周囲、外陰に多発する扁平小丘疹で、痒み痛みありません。
- 梅毒血清反応が陽性になり、梅毒でもないのに梅毒血清反応陽性になる抗リン脂質抗体症候群と鑑別要。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の補助治療薬、ヨウ化カリウム(KI)は意外にも第三期梅毒のゴム腫の吸収を促進する効果があります。しかも、保険適応になっています。
結節性紅斑の治療で無痛性甲状腺炎・甲状腺機能低下症
大量のヨウ化カリウムは、
- 甲状腺ホルモン合成・分泌を阻害し甲状腺機能低下症
- 元々、橋本病(慢性甲状腺炎)があると起こりやすい無痛性甲状腺炎(痛みのない破壊性甲状腺炎)
の甲状腺異常を(特に投与期間が長ければ)高率におこします。
結節性紅斑とは
局所再発進行甲状腺乳頭癌の皮膚浸潤に対する治療例
局所再発し皮膚まで出て来た進行甲状腺乳頭癌は、表面から出血し、貧血が進み、輸血が必要になる事があります。また、「放射線治療無効な甲状腺癌」にネクサバール・レンビマ を用いた場合も、癌組織が崩壊すると出血が起こります。
あまりにコントロール不能な進行甲状腺乳頭癌の、腫瘍表面から出血、貧血に、皮膚科的なMohs氏法と腫瘍栄養動脈塞栓術を組み合わせて治療した報告があります。(第53回 日本甲状腺学会 P-225 Mohs 氏法により治療した局所再発進行甲状腺乳頭癌の一例)
Mohs 氏法は、末期がんの緩和ケアで、局所の出血・感染をMohs ペーストで治療するものです(Arch Surg 1941; 42: 279-295.)。Mohs ペーストは、 塩化亜鉛、亜鉛華でんぷん局方品、グリセリン局方品が主成分で、塩化亜鉛が腫瘍表面の水分によってイオン化、タンパク凝集作用により止血、殺菌効果が得られます。(Palliat Care Res 2009; 4(2): 346-350)
パジェット病(Paget病)とは
パジェット病(Paget病)は、主に汗を産生する細胞が癌化し、表皮内から真皮に浸潤したもので、60歳以上の高齢者に多いです。乳頭・乳輪に生じる乳房パジェット病と、陰部・腋などに生じる乳房外パジェット病があります。
パジェット病(Paget病)の症状は、陰部や腋などに赤くて湿っていて、かさぶた、痒みを伴います。湿疹、白癬(水虫)と誤認され、抗菌剤、ステロイド軟こうを塗っても縮小せず、徐々に広がります。最後は腫瘤化し、遠隔転移します。パジェット病(Paget病)の予後は不良で、5年生存率が60%です(お茶の水医誌21: 97-105, 1973)。
特徴的なPaget細胞は一度見たら忘れません(写真 Oncology Letters. 2012; 4(1): 83-85)。

外陰部パジェット病(Paget病)の症例
最初は扁平上皮癌を疑われ、摘出後、外陰部パジェット病(Paget病)と診断された報告例があります。術後5年して、PET-CTで甲状腺にびまん性集積を認めるも、甲状腺超音波(エコー)検査で特に腫瘤は無く、橋本病(慢性甲状腺炎)の様な、不均質なびまん性腫大。術後4年間のPET-CTで甲状腺に異常なかったため、外陰部パジェット病(Paget病)の甲状腺転移を疑い、穿刺吸引細胞診でPaget細胞を確認したそうです。(第60回 日本甲状腺学会 P1-9-8 甲状腺転移を来した外陰部Paget病の1例)
乳房パジェット病(Paget病)
乳癌の甲状腺転移の約半数は、びまん浸潤型で橋本病(慢性甲状腺炎)と誤診される危険性があります(Cancer 15: 557-565, 1962)。(橋本病の甲状腺内に広範な、びまん性砂粒状石灰化)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
も御覧ください
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区も近く。