甲状腺と皮膚の異常② [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。皮膚疾患の診療は行っておりません。
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 附属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等 をクリックください
Summary
CREST(クレスト)症候群(限局性皮膚硬化症)は抗セントロメア抗体陽性の膠原病で橋本病(慢性甲状腺炎)に合併。掌蹠膿疱症、乾癬で橋本病・バセドウ病合併。プロピルチオウラシル(PTU)服薬中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病でMPO-ANCA陽性の壊疽性膿皮症。尋常性天疱瘡は男性のみ橋本病と合併。主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症)は甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症で悪化。ベーチェット病などの結節性紅斑治療にヨウ化カリウム投与し甲状腺機能低下症、無痛性甲状腺炎。急性化膿性甲状腺炎・橋本病急性増悪の皮膚炎も起こる。
Keywords
CREST症候群,橋本病,甲状腺,掌蹠膿疱症,バセドウ病,尋常性天疱瘡,主婦の手湿疹,進行性指掌角皮症,甲状腺機能低下症,結節性紅斑
- 甲状腺ホルモン異常と皮膚・脱毛①
- 甲状腺と皮膚の異常③悪性腫瘍編(悪性黒色腫、甲状腺乳頭癌・甲状腺未分化癌の皮膚浸潤、ボーエン病、基底細胞母斑症候群、パジェット病、メルケル細胞がん)
以下、本ページ

CREST(クレスト)症候群(限局性皮膚硬化症)は、自己免疫抗体の一つ抗セントロメア抗体陽性の膠原病で、橋本病(慢性甲状腺炎)に併発することがあります。しかし、全身性強皮症(全身性硬化症:SSc)とは異なり、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)の陽性率は高くないとの報告もあります(Scand J Rheumatol. 2011;40(4):299-303.)。
- 指先が硬くなり(皮下石灰沈着)、毛細血管の拡張が見られます。レイノー現象もあり、強指症(細く、蒼白い、硬化した指)になります。
- 内蔵障害は食道・胃腸管に限定されます。食道運動障害による食物が詰まるような感じは、びまん性甲状腺腫・甲状腺腫瘍による圧迫のようです。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は、イソトレチノイン(ロアキュティン®、アキュテイン®)とは一切、関わりません。

イソトレチノイン(13-シスレチノイン酸)は、ビタミンAの生物活性を持つ代謝産物(ビタミンA誘導体)です。イソトレチノイン(ロアキュティン®、アキュテイン®)は海外で、にきびの治療に使用されるが、日本では未認可です。ネットでの違法な個人輸入が問題になっています。イソトレチノインは薬剤性甲状腺機能低下症おこす可能性があります。
報告では、正常範囲ながら甲状腺刺激ホルモン(TSH)上昇、甲状腺ホルモン(FT3,FT4)低下が認められたそうです。しかし、なぜイソトレチノインが甲状腺ホルモン合成を阻害するのか不明です。(J Dermatolog Treat. 2017 Mar;28(2):141-144.)(Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2016 Sep-Oct;82(5):587-8.)。
また、イソトレチノインが甲状腺機能亢進症/バセドウ病を誘発した報告があります(Case Rep Dermatol. 2012 Sep-Dec; 4(3): 256–260.)。
イソトレチノイン(ロアキュティン®、アキュテイン®)の甲状腺以外の副作用として、
- 妊娠中、妊活中の患者が服用すると、胎児奇形、流産、死産、早産
- うつ、精神病(幻覚、幻聴)、自傷行為、自殺企図など重大な精神障害
- 炎症性腸疾患(Isr Med Assoc J. 2009 Aug; 11(8):505-6.)
がある危険な薬です。(Ophthalmic Physiol Opt. 2008 Sep; 28(5):497-501.)
黒皮症(しみ、肝斑)は、メラニン色素が沈着して皮膚が黒褐色になる病態。形状が肝臓に似ているため肝斑とも言いますが、肝臓とは何の関係もありません。
黒皮症(しみ、肝斑)の原因として、
- 女子顔面黒皮症(リール黒皮症);化粧品に含まれる香料、防腐剤などへの過敏反応。妊娠や経口避妊薬、紫外線、遺伝性が関与します(Postepy Dermatol Alergol. 2015 Oct;32(5):327-30.)
- ヒ素中毒症
- 原発性副腎皮質機能低下症、アジソン病
- 末期の悪性黒色腫
があります。
黒皮症(しみ、肝斑)と甲状腺の関係として、
- 黒皮症(しみ、肝斑)の58.3%に甲状腺機能障害を認めた
- 妊娠中または経口避妊薬の使用中に発症した黒皮症女性の70%が甲状腺機能障害を認め、特発性黒皮症の39.4%と比較して有意に高かった。
(J Clin Endocrinol Metab. 1985 Jul;61(1):28-31.) - 黒皮症(しみ、肝斑)では甲状腺機能低下症/橋本病の頻度が高い(Int J Dermatol. 2019 Nov;58(11):1231-1238.)。
日焼け止めの化粧品に使われ、紫外線をカットする紫外線吸収剤ベンゾフェノン2(オキシベンゾン2)は、甲状腺ホルモン合成酵素の甲状腺ペルオキシターゼ(TPO)を阻害します。ベンゾフェノン2(オキシベンゾン2)の甲状腺ホルモン合成阻害効果は、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の20倍-200倍です。ただし、あくまで動物実験の話で、体内にベンゾフェノン2(オキシベンゾン2)が100%吸収されるのを前提としており、実際はそれほど吸収されないと考えられます。(Endocrinology. 2007 Jun;148(6):2835-44.)
ベンゾフェノン2(オキシベンゾン2)は、環境省が内分泌かく乱物質に指定してあり、わずかな甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の上昇が明暗を分ける不妊治療中の女性、妊婦は注意を要します(不妊症/習慣性流産・不育症と甲状腺)(妊娠と橋本病/甲状腺機能低下症)]。
進行性指掌角皮症
主婦の手湿疹
赤い丘疹(きゅうしん)が手指にできると、かゆみを伴います。 頻回の手洗いや洗剤の使用などにより皮脂が失われ、皮膚バリアが破綻するのが原因です。
手湿疹(主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症) は、甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症で悪化
手湿疹(主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症) は、甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症等で悪化
- アトピー・アレルギー素因の人は皮膚がさらに乾燥しやすいです。
- 甲状腺機能低下症では皮膚の新陳代謝が悪く、乾燥が増強
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病は、治療にともない甲状腺ホルモンが正常化すると、異常な発汗で潤っていた肌が元の状態になり、隠れていた手湿疹(主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症) が現れます。
- 亜鉛欠乏症も皮膚炎起こすので主婦の手湿疹・進行性指掌角皮症が増悪。
掌蹠膿疱症と甲状腺

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は手のひらや足底に、無菌性の膿疱(黄色の液体の水袋)を繰り返します。痛みのため歩行に障害が出たり、物を握れなかったりします。掌蹠膿疱症は甲状腺疾患、糖尿病、高脂血症、クローン病、IgA腎症に合併する事があります。逆に、掌蹠膿疱症をきっかけに、自己免疫性甲状腺疾患が判明する事もあります。
掌蹠膿疱症は原因不明のことが多いですが、30%は慢性扁桃腺炎、歯槽膿漏(歯周病、歯肉炎)、蓄膿(慢性副鼻腔炎)、金属アレルギーの存在が原因だろうといわれます。特に、歯科治療で詰め物(パラジウムなど)を保険診療内で済ませた人は要注意!少々高くついても金属アレルギーの出ない保険診療外の材質、セラミック、ジルコニアにした方が良い。掌蹠膿疱症の治療を延々と続ければ、余計高くつきます。掌蹠膿疱症患者のほとんどは喫煙者で、禁煙指導により軽快する場合があります。
バセドウ病を合併した掌蹠膿疱症性骨関節炎の報告例では、掌蹠膿疱と診断された後、突発性難聴になり、ステロイド投与開始直後より蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)とバセドウ病を発症したそうです。(Jpn. Clin. Immun. 16 (1):58-63, 1993.)
金属ア レルギー検索のためのパッチテストで蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)とバセドウ病は共に増悪。パッチテストで強陽性 を示 したアンチモンを除去するため、歯科治療を行い、蹠膿疱症自体は軽快したそうです。
一般的に、突発性難聴に対するステロイド投与は、プレドニゾロン20mg/日以上の大量使用するにも係わらず減量するのが早過ぎます。報告例も2週間後には中止され、リバウンドによる自己免疫疾患の誘発・増悪を引き起こします。
SAPHO(サフォー)症候群
です。橋本病(慢性甲状腺炎)・バセドウ病で、上前胸部に痛みおこり、圧痛あれば、SAPHO(サフォー)症候群の可能性があります。ただし、15%は皮膚疾患を合併せず、30%は皮膚疾患に先行して現れるため、掌距膿疱症が無くても否定できません。
抗IL-23p19抗体のグセルクマブ(トレムフィア®)が保険適用。
壊疽性膿皮症は自己免疫性皮膚炎で、好中球性の皮膚壊死が特徴。わずかな外傷が毛包炎→膿疱→急速に潰瘍化→数週間で拡大します。自己免疫なので細菌培養は陰性。
壊疽性膿皮症の約75%は
などを合併します。
壊疽性膿皮症の治療は軽症はステロイド塗布、ヨウ化カリウム内服、中等度以上はステロイド全身投与。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の治療中に発生した壊疽性膿皮症
甲状腺乳頭癌全摘出後の創傷部に発生した壊疽性膿皮症
甲状腺腺腫様結節が基礎疾患だった壊疽性膿皮
甲状腺腺腫様結節が基礎疾患だった壊疽性膿皮症が報告されています(Ann Dermatol Venereol. 1987;114(10):1229-34.)
乾癬(かんせん)は角化した硬い銀白色の鱗屑(りんせつ)を伴う炎症性の紅斑。活性型ビタミンD3・副腎皮質ステロイド軟膏で治療。乾癬は自己免疫疾患とされバセドウ病、関節リウマチ、クローン病と同じTh17免疫、橋本病(慢性甲状腺炎)と共通のTh1免疫。乾癬の21.6%に橋本病、14%に甲状腺機能異常との報告あり。乾癬性関節炎は家族性発症が多く組織適合抗原HLA-B27などが関連、皮膚症状の先行が多く、強直性脊椎炎を伴うものもある。最近の乾癬治療は生物学的製剤を使用。
乾癬(かんせん)とは
乾癬は
- バセドウ病(Thyroid. 2009 May;19(5):495-501.)、関節リウマチ、クローン病と同じTh17免疫(PLoS One. 2013; 8(1): e54895.)
- 橋本病(慢性甲状腺炎)と共通のTh1免疫
による自己免疫疾患とされますが、なぜかメタボリック症候群との関連が示唆されています。
乾癬の症状は
- 前述の発疹は全身に多発し、かゆく、掻いているうちに広がります。入浴時、こすり過ぎると広がります。ストレスで悪化します。
- 爪変形・脱落(高頻度);
①点状陥凹・白斑・油滴様爪床変色(爪乾癬に特徴的)、横溝、線状出血、爪甲剥離(ポケットに手を入れたり、冷水に浸すと痛み)など
②皮膚・関節症状を欠き、爪のみに病変があると爪乾癬。乾癬全体の5-10%。真菌症などと鑑別要。
後爪郭の紅斑より組織生検(爪自体は生検できない) - 約10%に乾癬性関節炎
- 膿疱性乾癬;発熱と化膿
尋常性乾癬の病理組織所見は、
- 不全角化を伴う表皮肥厚、棍棒状の表皮突起延長、真皮乳頭部の毛細血管拡張
- 特徴的なのは、Munro(マンロー)微小膿瘍で、角質層下に好中球が浸潤して微小膿瘍を形成します。(Reumatismo. 2007;59 Suppl 1:46-8.)
乾癬の外用療法は
- ドボベットフォーム®;カルシポトリオール(活性型ビタミンD3)・ベタメタゾンジ(副腎皮質ステロイド)配合剤
- オキサロール軟膏®;マキサカルシトール(活性型ビタミンD3)
- 副腎皮質ステロイド軟膏
最近の乾癬治療は、生物学的製剤
- 抗TNF-αモノクローナル抗体のアダリムマブ、インフリキシマブ
- 抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体のウステキヌマブ
- 抗IL-17A抗体のセクキヌマブ、抗IL-17A受容体A抗体のブロダルマブ
などです。
乾癬と甲状腺
自己免疫疾患である乾癬と橋本病(慢性甲状腺炎)、バセドウ病は共通の免疫異常があります(前項)。
乾癬と甲状腺の病気の合併率が高いと言う報告もあれば、否定的なものもあります。
乾癬の21.6%に橋本病(慢性甲状腺炎)を合併(Rev Assoc Med Bras (1992). 2021 Jan;67(1):52-57.)。
また、
- 乾癬全体の14%
- 全身性膿疱性乾癬の45%
- 乾癬性関節炎の13%
- 尋常性乾癬の8%
に甲状腺機能異常。
甲状腺機能異常のある乾癬患者は、重症度が高く、炎症マーカーの血清C反応性タンパク質(CRP)が高いとされます。 (J Dermatol. 2019 Dec 5. doi: 10.1111/1346-8138.15178.)
尋常性天疱瘡は、自己免疫による皮膚・粘膜の炎症により水疱(水ぶくれ、表皮内水疱)が生じる病気です。表皮細胞間接着因子デスモグレインに対する自己抗体(抗デスモグレイン1抗体、3抗体)により接着が阻害され、水疱が生じます。
どういう訳か男性においてのみ自己免疫性甲状腺炎の橋本病(慢性甲状腺炎)と合併するとされます。一方で、バセドウ病や甲状腺癌とは関係ありません(Front Med (Lausanne). 2018 May 30;5:159.)。自己免疫性甲状腺疾患と言っても、橋本病(慢性甲状腺炎)とバセドウ病は、関与する免疫細胞が異なるからだろうと筆者は考えています。(橋本病とバセドウ病)
水疱性類天疱瘡では抗BP180抗体が陽性になります。

環状肉芽腫は、IV型アレルギーにより生じる原因不明の皮疹で
- 糖尿病、高脂血症などの代謝異常が原因(Clin Cosmet Investig Dermatol. 2017 Apr 26;10:141-145.)
- 自己免疫性甲状腺疾患などの代謝内分泌異常(環状肉芽腫の12%に認める)(J Am Acad Dermatol. 2003 Apr;48(4):517-20.)
- 帯状疱疹治癒後
手の甲や関節、体幹に発生します。
白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群(MDS)などの合併報告が多い。
自然軽快する事もあります。治療はステロイド外用・局所注射・内服が主体、抗ウイルス薬は無効との報告が多い。(WebMDより)

Sweet病は、上気道感染後に発熱、好中球増加、好中球皮膚浸潤による有痛性浮腫性紅斑で、皮膚生検にて血管炎(ヘノッホシェーライン紫斑病)ではないことを確認する必要あり。
「慢性甲状腺炎とシェーグレン症候群を合併したSweet病の1例」[日本皮膚科学会雑誌 2008,118(3);420]などの報告あり
梅毒はスピロヘータ属の梅毒トレポネーマによる性行為感染症(STD)。5類感染症で増加傾向、女性は甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症/橋本病と重なる妊娠可能年齢の20代前半に多く胎児感染の先天梅毒増加が危惧される。2期①梅毒性バラ疹は抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の薬剤誘発性過敏症と紛らわしい②神経梅毒、進行麻痺の髄膜脳炎、脳神経症状、けいれん、認知症様の精神症状で橋本脳症と鑑別要。神経梅毒3期の髄膜脳炎症状は抗生剤の普及で減少したが認知症、抑うつ症状が増えている。

梅毒第2期の発疹は、感染後3カ月頃より出現
- 梅毒性ばら疹、丘疹性梅毒は、全身の痒みのない紅斑で、数週間で自然消退。甲状腺機能亢進症/バセドウ病で使用する抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)は投与初期に薬剤誘発性過敏症おこす事あり、紛らわしいです。(MedicalNoteより)
- 扁平コンジローマは、肛門周囲、外陰に多発する扁平小丘疹で、痒み痛みありません。
- 梅毒血清反応が陽性になり、梅毒でもないのに梅毒血清反応陽性になる抗リン脂質抗体症候群と鑑別要。

第3期梅毒は3年~10年後に出現(晩期梅毒)。皮膚、骨、筋肉、肝臓、腎臓などにゴム腫と呼ばれる硬い腫瘍ができます。
鼻骨は脆いため、梅毒になると鼻が落ちるとされました。
近松門左衛門の浄瑠璃「曽根崎心中」に登場する梅田墓の発掘調査で、埋葬人骨は平均30歳代と若く、3割近くが骨に梅毒のゴム腫の痕があり、梅毒の大流行があったと推測されます。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の補助治療薬、ヨウ化カリウム(KI)は意外にも第3期梅毒のゴム腫の縮小を促進する効果があります。しかも、保険適応になっています。(MedicalNoteより)
また、梅毒第2期以降には神経梅毒、あるいは進行麻痺 も起きます。
甲状腺梅毒(梅毒甲状腺炎)
甲状腺梅毒(梅毒甲状腺炎)がベルギーで報告されています。39歳の白人女性、急激な首(甲状腺)の腫れ、呼吸困難、嚥下障害で発症。皮膚病変と片側性の視力喪失があったため、梅毒バラ疹を疑ったのでしょうか。それとも入院時の感染症スクリーニングで、偶々、梅毒の血清検査が陽性だったのでしょうか。
甲状腺穿刺細胞診検体で行ったPCR検査はトレポネマ・パリダム陽性。ベンジルペニシリンの静脈内投与で、頚部症状が改善。(Acta Clin Belg. 2020 Jun 26:1-5.)
甲状腺梅毒(梅毒甲状腺炎)は、1949年、既に報告されています(Med Illus. 1949 Jan;3(1):26-9.)。梅毒自体が減ったため、甲状腺梅毒(梅毒甲状腺炎)も稀な病気になってしまいました。
結節性紅斑の治療で無痛性甲状腺炎・甲状腺機能低下症
大量のヨウ化カリウム(KI)は、
- 甲状腺ホルモン合成・分泌を阻害し甲状腺機能低下症
- 元々、橋本病(慢性甲状腺炎)があると起こりやすい無痛性甲状腺炎(痛みのない破壊性甲状腺炎)
の甲状腺異常を(特に投与期間が長ければ)高率におこします。
結節性紅斑とは
結節性紅斑は、
- 若年~更年期の女性の下腿前面に好発
- 痛みを伴う直径1〜5mmの硬いしこりのある紅斑
- 発熱、全身倦怠感、関節痛などの全身症状を伴うことあり
が特徴です。原因は不明ですが、
- 細菌(甲状腺機能亢進症/バセドウ病発症を誘発する溶血性連鎖球菌が最多)、結核菌、ウイルス、真菌などの感染アレルギー
- 悪性腫瘍(悪性リンパ腫、白血病など)
- ベーチェット病、サルコイドーシス
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
- 経口避妊薬、サルファ剤
などが考えられます。治療は
- 安静と下肢挙上
- 非ステロイド性抗炎症薬
- 溶連菌には抗生剤

新型コロナウイルス感染症予防のため、マスクを常時着用する事による皮膚の障害(マスクトラブル)が増加しています。マスクトラブルの本体は
- アトピー性皮膚炎の増悪
- 接触皮膚炎
- 尋常性ざ瘡(にきび);皮脂が毛穴に詰まり、毛穴の中でアクネ菌が増殖→炎症、膿が出る
- カポジ水痘様発疹症;単純ヘルペスウイルス、コクサッキーウイィルス、ワクチニアウイルス感染。アトピー性皮膚炎の不適切治療などにより皮疹のコントロールが悪い状態で感染。水疱内容をスライドガラスに塗布、数分間染色後ニ顕微鏡でウィルス性巨細胞を確認(Tzanckテスト:ツァンク試験)
長時間、マスクをしていると皮膚の角質に過剰な水分が溜まり、マスクに油分が吸い取られ、皮膚のバリア機能が低下します。
特に、発汗量が多く、蒸れやすい甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人、皮膚の油分が少なく、乾燥しやすい甲状腺機能低下症/橋本病、亜鉛欠乏症の人は要注意。
マスクトラブルの予防は、
- 最も新型コロナウイルス感染症予防効果の高い不織布マスクを止めるのは難しいので、薄いガーゼを挟むと、過剰な水分がガーゼに吸収され、マスクトラブルが軽減される可能性がある。
- 新型コロナウイルス感染症予防効果は高くないが、肌に優しい綿100%マスクに変える
- 石鹸による洗顔;尋常性ざ瘡の原因となる皮膚常在菌を洗い流す。顔は洗いにくい場所だが、しっかり洗う。石けんは泡立てれば、洗浄力を発揮する。タオルやスポンジで洗うと角質層が剝がれ、皮膚のバリア機能が低下するので手のひらで優しく洗う。最後は、よくすすいで石鹸を落とす。
- スキンケアを怠らない(保湿薬、化粧水、乳液の使用は問題ない)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
も御覧ください
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区も近く。