甲状腺片葉欠損症・錐体葉[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 甲状腺機能低下症 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
甲状腺片葉欠損症は胎生期、舌盲孔に生じた甲状腺原基の分葉化異常で、片葉の完全欠損か、重度低形成。甲状腺形態形成と降下に関与するPAX-8遺伝子異常説あり。先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)だけでなく、橋本病(慢性甲状腺炎)(約50%)、バセドウ病(約25%)、甲状腺乳頭癌(約4%)合併の可能性。甲状腺機能亢進症/バセドウ病合併すると、代償性肥大した健側は元々、血流が多いため血流増加が分かりにくい、低形成側は血流増加せず診断に迷う。錐体葉では稀に甲状腺機能亢進症/バセドウ病の甲状腺全摘術後再発、腫瘍発生などの問題がおきる。
Keywords
甲状腺片葉欠損症,先天性甲状腺機能低下症,クレチン症,橋本病,甲状腺,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺乳頭癌,錐体葉,低形成
甲状腺片葉欠損症の病因は明らかではありませんが、一卵性双生児での症例が報告されており、遺伝子異常と考えられます。(第54回 日本甲状腺学会 P007 甲状腺左葉欠損を示す一卵性双生児の甲状腺機能の変動)[Eur J Nucl Med. 1985;10(7-8):346-8.]
胎生期、舌盲孔に生じた甲状腺原基は、頚部を下降中に右葉と左葉に分かれ、妊娠7週頃に気管の前方に到達します。甲状腺片葉欠損症は、左右の分葉が不完全なため生じると考えられます(ラングマン人体発生学:医学書院,東京,1996, p281-284.)。甲状腺形態形成と降下に関与するPAX-8遺伝子の異常との説があります。(Acta Biochim Pol. 2013; 60(4):573-8.)
甲状腺片葉欠損症は、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)だけでなく
- 橋本病(慢性甲状腺炎)(約50%)
- バセドウ病(約25%)(Hormones (Athens). 2015 Jul-Sep;14(3):451-8.)
- 甲状腺乳頭癌(約4%)(Indian J Surg Oncol. 2020 Sep;11(Suppl 1):84-86.)
を合併するとの上條甲状腺クリニックの報告があります。「上條甲状腺クリニックの甲状腺疾患Q&A」より
- 稀ながら中毒性多結節性甲状腺腫と橋本病の合併もあります(G Chir. 2017 Nov-Dec;38(6):291-294.)
- 副甲状腺の欠損も伴い副甲状腺機能低下症と橋本病の合併もあります(World J Surg Oncol. 2017 Oct 6;15(1):182.)
- 欠損した甲状腺側の副甲状腺腺腫による原発性甲状腺機能亢進症と橋本病の合併もあります(BMC Endocr Disord. 2012 Nov 13;12:29.)
- 頚部異所性甲状腺と甲状腺片葉欠損症の合併もあります(Endocrinol Diabetes Metab Case Rep. 2018 Apr 27;2018:18-0026.)
- 甲状腺髄様癌の合併もあります(Head Neck. 2014 Nov;36(11):E106-11.)
頚部異所性甲状腺と正位置の甲状腺片葉欠損症の合併
片葉欠損した甲状腺自体が、異所性に存在し、橋本病も合併
片葉(左葉)だけの甲状腺が、上甲状切痕の左に位置し、片葉甲状腺自体が異所性甲状腺になっている珍しい自験例です。しかも、橋本病(慢性甲状腺炎)も合併しています。
甲状腺片葉欠損症で甲状腺機能亢進症/バセドウ病を発症した時、片葉の完全欠損なら診断に迷う事は無いでしょう[Thyroid. 2004 Jan;14(1):75-7.][Thyroidology. 1989 Apr;1(1):49-50.]。中途半端に片葉が低形成なら、
- 代償性肥大した健側(正常な半分)は、元々、血流が多いため、甲状腺機能亢進症/バセドウ病による血流増加が分かりにくい
- 低形成の病側は、甲状腺機能亢進症/バセドウ病になっても血流増加しない
ため、診断に迷う可能性があります。(第61回 日本甲状腺学会 O28-2 甲状腺片葉にテクネチウム99mの異常集積を認めたBasedow病 の一例)
甲状腺片葉不完全欠損症(低形成)で、頚筋組織があたかも甲状腺悪性リンパ腫のように見える場合があります。
錐体葉が残っていても、特に問題になる事はありませんが、稀に以下の様な問題が生じます。
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病の甲状腺全摘術後に、
①甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)服薬を怠ったために上昇したTSH(甲状腺刺激ホルモン)
②残存するTSHレセプター抗体(TRAb)
が甲状舌管に残存していた甲状腺組織を刺激すると、腫大した錐体葉が出現→甲状腺機能亢進症/バセドウ病が再発
報告例では術後5年でした。(第61回 日本甲状腺学会 O29-3 内視鏡下甲状腺全摘術後に錐体葉による再発を認めたバセドウ病 の1例)
- 錐体葉に腫瘍が発生(甲状腺錐体葉に生じた甲状腺硝子化索状腫瘍の1例 臨床放射線 2017;62(12):1689-93)
-
錐体葉に甲状腺乳頭癌が発生[Clin Case Rep. 2023 May 16;11(5):e7189.]
-
錐体葉に甲状腺乳頭癌が再発[Medicine (Baltimore). 2019 Apr;98(15):e15210.]
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。